薬罐の魔人物語

蓮沼刑部 作
Copyright 2014 by Gyoubu Hasunuma All rights reserved.

第2章 1つ目の願い


 「あ、そうだ、ここで予め大事な事を二つ言っておきます。」

 手を打つ素振りを見せる葉子。

 「え、大事な事ですか?。」

 訝しがる彩。

 「まず、一つ目。」

 聞き入る彩。

 「私が適えた願い事は後から取り消す事は出来ません。前に適えた願い事を無効化して欲しいという様な願い事や、前に適えた願い事と明らかに矛盾する願い事についても、採用する事は出来ません。」

 (成る程、当り前って言えば当り前だけど、願い事を取り消したり、矛盾する願い事は駄目なのか。これは願い事は慎重に選ばないとだなあ。って、何を願い事を適えてもらう事を前提に考えているんだ僕は。)

 自分に突っ込みを入れる彩。

 「そして、二つ目。」

 真剣に聞く彩。

 「私の身長は、5尺8寸よ。」

 どてっと、転びそうに成る彩。

 「それ、大事な事なんですか?。」

 「あら、大事な事でしょ?。」

 頬笑む葉子。

 (でも、身長174cmかあ、僕が168cmだから僕より6cmも高いのかあ。)

 見た目で分かってはいたが、女性に身長差で負けている事を数字で示され、ちょっとショックな彩。


 と、廊下からドアの開く音と共に、

 「兄(にい)、煩い!。勉強の邪魔何だけど!。何さっきから騒いんでんの!。」

 という、怒鳴り声と一緒に廊下をこちらに向かって来る音。


「まずい、結香(ゆうか)が来る。」

 慌てふためく、彩。

 潟東 結香(かたひがし ゆうか)。町立水仙中学校に通う中学校三年生である。因みに、彩の部屋の隣りの部屋が結香の部屋である。

 「済みません、葉子さん、急いで押入れに隠れて下さい!。」

 「え、どうしたの?。」

 「説明は後でしますので、とにかく早く。」

 慌てて葉子を押入れに押し込む彩。

 (女性を、しかもこんな美人を部屋に連れ込んだと勘違いされたら、何言われるか分かんないよ。)

葉子を入れた押入れの戸を閉めたのとほぼ同時に、彩の部屋のドアが開く。

 「兄、さっきから煩い。宿題している気が散るんだけど。一体、何してんの?。やめてくんない。」

 「ごめん。今日古物市で買った薬罐を磨いていたら、中から埃が出て来て、咽ちゃって。」

 と、葉子の事は伏せつつ、ほぼ本当の事を語る彩。

 「薬罐?、何兄こんな古惚けてるの買ったの?、意味分かんねし。まあ、兄の勝手だけど、とにかく静かにしてね!。」

 と、言いたい事だけ言って自分の部屋に帰って行く結香。

 「ふう〜、助かったあ。もう大丈夫ですよ葉子さん。」

 「今の女の子は誰?。」

 押入れから出て来つつ葉子が尋ねる。

 「僕の妹の、潟東 結香です。14歳です。あっ、因みに言い忘れていましたが、僕は16歳です。」

 「へえー、かわいい娘ねえ。」

 「そうですか?。」

 (中学ではかわいいという評価らしいけど、ああいう風に気が強いからなあー、、、、、。何とも言えないよなー。)

 と、考える彩。

 「そういえば、葉子さんはこの後どうされますか?。」

「彩君の4つの願い事を適えるまではここにいるつもりだけど。」

 と頬笑む葉子。

 (取り敢えず今回は、葉子さんの事は結香には見付からなかったけど、このまま僕の部屋に葉子さんがいたら、見付かるのは時間の問題だよなあ。
と言っても葉子さん、440年振りに封印が解かれたんだから、他に行ける所が有るとも思えないしなあ。って言うかそもそもこのまま葉子さんに僕の部屋にいてもらうというのも有り得ないし。
出て行って下さいって言うのも酷いよなあ。どうしよう。
何にせよ、家族に葉子さんの事を説明しないとだよなあ。でも、どうやって説明したら良いんだろう。

はあー、思い付かない。何とかうまく説明出来たらなあー。)

 と、考え込む彩。

 「ふむふむ、彩君は私の事を家族にうまく説明したいと。」

 「はい、そうなんです。」

 「でも、何で?。」

 「そうしないと、葉子さんが僕の部屋に居る事が家族に見付かると、大変な事に成りますよ。」

 とここで彩はふと気付く。

 (あれ、僕、さっき考え込んでいた事口に出していたかなあ?。)

 「へえー、そうなんだ。」

 「はい、やっぱり見知らぬ女性が急に部屋に居るなんて不思議じゃないですか。ああー、やっぱり説明しないとだよなあ。でも出来るかなあ、難しいよなあ。」

「成る程、成る程、つまり彩君は私がここに居る事を家族に説明したいと。でも、出来そうにない。だから困っていると。」

「はい、そうです。」

 「それで、何とかこの問題、つまり私の説明問題を解決したいと。」

 「あ、はい。」

 「其の願い、私が適えてあ げ る。私にま か せ て ね。」

 と、頬笑む葉子。

 「え?。」

 驚く彩。

 「そうだなあ、久し振りの術だし、ちょっと大掛りに成りそうだしねえ。この時代の情報収集もしたいから、今夜一晩待ってくれるかな?。」

 「あ、はい。」

 呆気に取られる彩。

 「それじゃあ、準備も有るので、行って来まーす。」

 と言って急に駆け出すと、2階である彩の部屋の窓から飛び降りる葉子。

 驚いて窓まで駆け寄る彩。

 しかし、葉子は窓から飛び降りるとふわりと浮かびながら、彩の家の庭と塀を飛び越えると、道路に着地し、再び駆け出すのであった。

 「うわー、びっくりしたなあ。」

 溜息をつく彩。

 「葉子さんアグレッシブだなあ。それに、もしかして、僕の心を読んでいたのかなあ。はは、何か出来そう。」

 再び溜息をつく彩。

 「それはそうと、葉子さんどうするつもりなのかなあ。あ、もしかして、今のが一つ目の願い事に成るのかなあ。」

 との考えに至る彩。

 「もったいなかったかなあ。って、何をまた4つ全部願い事を適えて貰う事を考えているんだ僕は。」

 首を振る彩。

 「でも、どうするんだろう葉子さん。行っちゃったけど。一晩待って、って言っていたから、待つしかないけど。」


 こうして、彩は家族には葉子の事を説明せずに、1日を終え、少し不安を抱きつつ、眠りにつくのであった。




 翌日の朝。


 「ふあー、ああ。」

 彩が眠気眼を擦りながらベッドの中で起き上がる。すると、小型テーブルの上に置かれている薬罐が目に入る・

 「はは、昨日の事、夢じゃなかったんだ。」

 苦笑いする彩。

 段々と、頭が冴えてくると、部屋の違和感を感じる彩。

 「え、何で!。」

 驚く彩。
彩の部屋が、内装や家具、小物等はそのままであるが、明らかに広く成っているのである。

 慌てて、廊下に飛び出すと、更に驚く彩。廊下も広く成っており、家全体が広く大きく成っている事に気付くのである。

 慌てふためきながら、階段を降り食堂に向かうと、

 「あら、今日は早いのね。」

 と、母親の潟東 縁梨(かたひがし ゆかり)が、朝御飯を作りながら声を掛ける。

 「おはよう。」

 父親の潟東 敏孝(かたひがし としたか)も、新聞を読みながら声を掛ける。

 だが、其の姿を見て、彩は三度驚く。

 まず父親の敏孝であるが、年齢は48歳であるにも関わらず、今の見た目は20代に若返っている様にしか見えない。しかも、顔の造りはほぼ変わらないにも関わらず、明らかに美男と成っている。以前に見た、敏孝の20代の頃の写真よりも美男である。

 そして母親の縁梨であるが、縁梨も46歳であるはずなのに、敏孝同様、見た目が20代に若返っている。そして、又敏孝同様、顔の造りはほぼ変わらずして、明らかに美人と成っており、それは又々以前に見た、縁梨の20代の頃の写真より美女であった。
 しかも、縁梨には更に特筆すべき変更点が見受けられた。人並みであったはずの胸部が一段と大きく成っているのである。昨日見た葉子の胸部には及ばない様に見えるが、それでも爆乳と言って差し支えないものであった。

 彩が呆気に取られ耄けっていると、

 「おはよーう。」

 と眠そうな声を上げながら、結香が食堂にやって来る。

 其の姿を見て、彩は四度驚く。

 結香も平均的中学生3年女子の体型であったはずであるが、胸部が明らかに大きく成っている。葉子や今の縁梨よりは見劣りするものの、中学生にも関わらず、巨乳と言えるレベルのものである。

 彩が呆然としていると、

 「二人とも、部屋に戻ってパジャマから着替えてきなさい。あとそれから、彩、部屋に戻る際に、お姉ちゃんを起して来て。」

 と声を掛ける。

(え、うちは僕と結香の二人兄妹のはずなのに、お姉ちゃん?。)

 訝しがりつつ、肌寒いものを感じる彩。

 「うん、分かったよ、、、、、、。」

 一応、そう答えて、二階に戻る彩。

 すると果して、先程は気が付かなかったが、壁であったはずの結香の部屋とは反対側の彩の部屋の隣りに、もう一部屋、部屋ができている。

 恐怖に駆られつつも、何となく状況を察した彩は、其の謎の「新しくできた」部屋の前まで行くと、部屋をノックする。すると、

 「はーい、良いよ。」

 という、聞き覚えの有る声が返って来る。

 彩が意を決してドアを開けると、果してそこにはパジャマ姿でベッドに座る葉子の姿が有った。

 「一体、どう成っているんですが、葉子さん。」

 五度驚きながら、彩が葉子に尋ねる。

 「彩君からの1つ目の願い事を適えました。」

 と答える葉子。

 「姉弟に成れば、私がここに居る事を説明する必要も無く成るから、私の説明問題は解決だね。どうだった?。」

 頬笑む葉子。

 彩は言葉に成らない。

「私の家族なんだからお父さんやお母さん、結香ちゃんには格好良く、綺麗に成って貰いました。この家にもグレードアップして貰いました。」

 彩はやっぱり言葉に成らない。

 「ああ、世間体的にも私は元から彩君達と血の繋がった姉弟と言う事にしておいたから、其の辺は心配いらないよ。それに昨日中にこの時代の情報も収集して、大体分かったから其の点も大丈夫だよ。仕事が早いでしょ。」

 彩はまだ言葉に成らない。

 「それから、私達は姉弟と成ったのだから、彩君の事は彩って呼ぶから、私の事も姉さんか、葉子姉さんって呼んでね。」

 彩は未だ言葉に成らない。

 「改めてよろしくね、彩。」

 彩の一日は五度の驚きに包まれながら、明けるのであった。




 こうして、潟東 彩と、紋物 葉子改め潟東 葉子の物語は進んで行くのであった。

続く。






【ここまでの登場人物】

潟東 彩(16歳)   身長 168cm、体重 59kg
古物市の骨董露店店主(?歳)
潟東 敏孝(48歳)  身長 172cm、体重 62kg

紋物 葉子 改め 潟東 葉子(?歳)

 身長 174cm、体重 60kg、バスト 120cm、ウエスト 57cm、ヒップ 81cm

潟東 縁梨(46歳)  身長 158cm、体重 46kg→52kg
          バスト 78cm→114cm、ウエスト 58cm、ヒップ 70cm→80cm

潟東 結香(14歳)  身長 154cm、体重 40kg→44kg
          バスト 70cm→96cm、ウエスト 52cm、ヒップ 60cm→68cm