超乳少女 久美子

ジグラット(物語)・怪人ごっこ(挿し絵) 作
Copyright 2004 by Jiguratto (story)
Copyright 2005 by Kaijingokko (picture)

episode 3 身体測定

 その日の朝、久美子はいつものようにジョギングを終えると、浴室に飛び込んでシャワーを浴びた。
 いよいよ春も本格的になってきた。身体を動かしていくうちにいつしか汗ばみ、身体の水分を奪っていく。
(ああ、もうのどカラッカラ)
 思わず自分の身体に浴びせかけられている水を飲みたくなる。しかし今はまだ我慢だ。
 のどの渇きをこらえ、シャワーを止めて体を拭くと、とりあえずショーツだけ穿いてそのまんまの姿で台所に駆け込んだ。
(まだあったわよね) 心の中で呟きながら冷蔵庫を開ける。中に1リットルパックの牛乳がずらりと並んでいるのを見ると、思わずにっこりした。未開封の1本を手に取ってまた足早に脱衣所に戻る。
(よっく冷えてる)指に伝わる冷たさを心地よく感じながら、もどかしげに開け口を開いた。それをそのままラッパ飲みだ。コクコクと小気味よくのどが鳴る。熱を帯びた身体の中心に、よく冷えた牛乳がまっすぐと通り過ぎ、内側からじわじわとしみわたっていく――。
 コクコクコク…。傾けた牛乳の角度がどんどん上がっていき、遂には垂直になる。久美子の牛乳好きは筋金入りだった。小さい頃から大好きだったけど、中学に入った頃、いつまでも胸がふくらむきざしのないのを悩んでさらに輪をかけて飲むようになって以来、水代わりに毎日何リットルも飲んでいた。のどが渇いた時など、1リットルぐらい軽いものだった。今も一息に飲み干してようやく人心地がついた。
「ほぅっ」この時のために生きてる、とでも言いたげなほど満足そうに一息ついた。実際、久美子はこの一瞬がなによりも好きだった。大人がビールを飲むのもこんな感じなのかなぁ、なんて時々思う。ビールにまだ苦味しか感じられない久美子にはあんまりピンとこなかったけども…。
 しかし、口を離す時、ちょっと勢いがよすぎた。パックの開け口から、その拍子にわずかに残った牛乳が1滴はね飛び、大きく弧を描く。普通なら到底当たらないほど遠くに飛んだはずだが、久美子の胸は飛び越せなかった。ふと左胸の先に冷たい点が生じる。
「ひャん!!」思いもかけないその刺激に久美子は瞬時に体を硬直させた。大きな胸がぶるんとさらに大きく跳ね回る。
「もう…」久美子は手を伸ばして胸の先についた牛乳をそっと指でぬぐい取り、最後の1滴とばかりに大事そうに舐めた。
「うふ、おいし」
 その指をそのまま伸ばし、脱衣場に置いてあったブラジャーを手に取る。そしてまるでこれから何やら儀式を迎えるように深く息を吸った。肺に息が満たされるにつれて胸がさらにせり出し、一層ふくらんだように見える。
「さーて、と」
 先週Tから入手した例のブラジャーだった。16歳になって1週間、久美子は毎朝、常にひやひやしながら神経を集中させてこの時を迎えていた。そう、最初のうちはけっこう余裕があるように感じたブラジャーだったが、この1週間、毎日つけるごとに日に日にカップの中がおっぱいで満ちあふれ、余裕がなくなってくるのが自分でもはっきり分かるのだ。今日はいったいどんな具合だろうと毎回不安になる。
 じっくりと丁寧にカップの中におっぱいを包み込むように入れると、背中に手を回して12個並んだホックを順繰りに止めていく。
 最後のホックを止めた時、ピタッとすべてがすっきりはまったのを感じた。カップの中はおっぱいで必要充分な感じでぴったり納まり、きつくもぶかぶかでもない。何もかもちょうどいい、という風に充実しきっていた。
(よし。今日が一番いい日かな) 鏡の中の自分が久美子ににっこりと頬笑み返してきた。ブラジャーを変えた後、たいがいそういう日が来る。しかし――そういう日はたいてい1日しか続かない。次の日からはまた日々きつくなる格闘の日が始まるのが常だった。そういう考えがふと頭の中をよぎり、ちょっと暗い気持ちがたちこめた。しかし次の瞬間そんなネガティヴな考えをすぐさま払うかのように頭を振り、今日一日この感触を楽しもう、と決意した。
「それに、この感じ。ひょっとすると――ちょうど今日当たり、ピタリかもしれない」
 久美子の顔が、いたずらっぽそうにニコリとした。

 その日、久美子の通う学校では朝から全校一斉に身体測定が行われていた。あわただしい空気がただよう中、男子側の進行に関わって校舎を右に左にかけずりまわっている男がいた。世界史の高梨先生だった。
 一番働かされるのは、どこの世界でもやっぱり新入りだった。若さを買われたこともあろう、進行やら連絡やらで、校舎の端から端までひたすら走り回っていた。
 高梨が担当していたのはもちろん男子生徒だったが、校内をかけずりまわっているうちに途中女子生徒の測定現場に出くわすことも何度かあった。もちろんそこでぐずぐずしている暇はないし、高梨自身そんな自分の気持ちを認めたくなかったのだが――そんな時、女生徒の中にある特定の生徒を――いや、正確にはその胸をついつい探してしまうのを止めようがなかった。
 堀江久美子――。登校初日に嵐のような衝撃を与えられて以来、高梨の頭からは彼女の事が一時といえども離れなれなくなってしまっていた。生徒になんて事を…とは思ってみてもその気持ちはどうにも消え去りそうにない。
 一目見れば間違えようのないその胸を、高梨は今日まだ一度も見ていなかった。「ま、仕方ないよな。これだけ人がいるんだから」そう自分を納得させようとはするのだが、それでも残念な気持ちはぬぐいきれなかった。

 どうにかひと段落つき、廊下の片隅で一休みしてると、声をかけられた。
「先生」
 いきなりのことに、はっ、と顔を上げると、そこには3人の女生徒が立っていた。見憶えがある、というか自分のクラスであることは確かなのだが、実は今だに顔と名前が必ずしも一致してないのだった。
 とにかく黙っている訳にはいかない。声をかけた生徒に向かって話しかけた。
「あ、こんちわ。えと…中村――さん、だったよね」
 言った途端、女生徒はあーっと言う口をし、隣の子を指さした。
「せんせー、中村はこっちです。私は小村です。こ・む・ら!」名前をしっかり脳味噌のしわに刻ませようとするかのようにと、一音々々はっきりと発音してみせた。
「ああ、ごめんごめん」
「まったく。先生のくせに憶え悪いんだから。久美子ばっかり見てるからそんなことになるんですよ」
 高梨はギクッとした。
「え…いや――そんなことは…」
「もう…。バレバレなんですからね、今さらウソつかないでくださいよ。そりゃあさ、わたしは久美子みたくかわいくないし胸だって大きくないですけどもね」
「あ、いや…彼女は非常に優秀で歴史にも興味を持ってくれてて…」
「もう――」
 しかし3人の顔は怒っていなかった。若い先生をからかうのが面白くってしょうがないという風だった。
 高梨はそれを見て開き直った。この3人、確か彼女と仲がよくていつも一緒にいたはずだ。この3人に訊けば…。
「ところでその、堀江さんは今日は――」
「久美子? 今日は来ませんよ」
「え、欠席か?」
「そうじゃなくって、彼女だけ別の日に測るんです。保健の先生の特別の計らいとかで。だって、彼女が裸になってバスト測るなんてなったら――大騒ぎになるでしょ。男子生徒とか」それからちょっとニヤッと笑った。「先生みたいのとかが」
 高梨は思わずムッとする。図星だったけども…。
「でもさー、久美子、そういう所はガード固いよね。バストいくつ?って訊いても絶対教えてくれないの」
「そうだよねー。みんな絶対知りたがるのに」
「でもさ、わたしこの前、ちょっとしつこく訊いちゃったの。そしたら『自分でもよくわからない』って言うからさ、そんなことないでしょってさらに問い詰めたら、彼女なんて答えたと思う?『だってあっという間にどんどん大きくなっちゃうんだもん。今何センチあるかなんて今測ってみないと分からない』って。ほんと真剣な顔してよ…。なんか妙に納得しちゃった」
「すご…。けど久美子ならそれあるかも。1年の頃と比べても段違いだもんね、久美子の胸」

 女生徒のたわいのない会話に内心ドギマギしながらも、(そうか、いないのか)とちょっと落胆していることを隠せなかった。なんとかそれを顔に出さないようにしながら、高梨がふらりとその場を去りかけた時――後ろからこんな声が聞こえた。
「あれ、久美子!? どうしたの? 今日休みじゃなかったの」
 高梨は思わず振り返った。
「あ、高梨先生、こんにちわ」
 その目にいきなりあの胸が飛び込んでくる。高梨はいきなり現れた久美子の胸を思わず見つめてしまった。おろしたてらしいそのブラウスはかなり大きめのようだったが、その異様なまでの盛り上がりかたから見ても、布一枚向こうに、計り知れないほどの大きさを持ったバストがひそんでいることは疑いようがなかった。
――バストいくつ?って訊いても絶対教えてくれないの。
――だってあっという間にどんどん大きくなっちゃうんだもん。
――1年の頃と比べても段違いだもんね。
 さっきの女の子達の声が、高梨の頭の中にこだました。
(いったい、何センチあるんだ――?)
 高梨は人知れずつばをゴクリと飲み込んだ。
「先生、どうかしました?」
 またもや動かなくなってしまった高梨に、久美子が不思議そうに訊いた。
「あ、いや…」
 その胸に手を伸ばしたくなるのを必死で押さえていた。しかしどうしても目が胸から離せない。
「あ…」久美子も高梨の視線に気づき、あわてて手で胸を隠そうとした。しかしその大きさは彼女の細い腕で到底隠せるようなものではなかった。押さえつけたその間からまるで別の生き物のようにあふれ出し、大きくたわんだ。それは却って一層その胸のとてつもない巨大さを強調してしまっていた。
「ご、ごめ…。そんなつもりじゃ――」
 視線をバリバリと音を立てんばかりの勢いで引き剥がし、高梨は小走りにその場を去った。
「ああ、行っちゃった」
 先ほど小村と名乗った子が言った。
「でも高梨ちんって、からかいがいあるよね。あそこまでわかりやすいとかえってかわいいっていうか――」
「えーっ、菜保美ったらああいうのが趣味だったの?」
「え、そ、そういうんじゃないって…」妙に大あわてで否定し、話題を変えようと久美子の方を向いた。
「で、久美子、どうして学校来たの?」
「まあ、そういう気分になったもんでね」
 そう言い残すと、久美子は3人が今しがた出てきた測定場所になっている教室へと入っていった。

 年に一度のこの日、測定場所は戦場のように忙しい。入れ替わりたちかわり、いったい何人の生徒が出入りしたろうか。しかしその忙しさもようやく終わりに近づき、細川先生もほっと一息ついた時だった。
「すいません、お願いします」
「何? 今頃になって…」
 声の方向を見ずに応答してしまってから顔を上げ、そこに突然久美子の姿を認めて細川先生は驚いた。
「堀江さん、どうして…」
「へっへー」ちょっと照れたように笑った。「ちょっと気になっちゃって、バストだけでも測ってもらおうかなーなんて」
 まわりに残っていた数人の女子がざわっと揺れた。当然のことながら学校で久美子の事を知らない人はいなかったから、そのバストのことは興味深々だった。
 そのどよめきに、ボタンに伸びかけた久美子の動きがピタと止まった。女生徒がみな、固唾を飲むようにその様子を見つめている。視線が、指の先にある胸のふくらみに痛いほど突き刺さった。
「はいはい、みんなもう終わってるんでしょ。早く教室に戻りなさい」
 空気を察した細川先生がさりげなく助け舟を出した。残っていた他の生徒は皆、その言葉に従い名残り惜しそうな顔をしながらしぶしぶ戸を開けて出て行った。
「さ、これでいいでしょ」戸がしっかり閉められて他に誰もいなくなった事を確認してから、久美子に声をかけた。
「すいません」静かになった教室で、さらに少しの間耳をすませてから、ようやく久美子はブラウスのボタンに手をかけた。ひとつひとつ、ボタンがはずされるたびにその胸があらわになっていく。すべてをはずし終わると、自信ありげにブラウスを一気に脱いだ。

「でも…」
 まだこの前測ってから1週間しかたってないでしょ、と口に出しかけたが止めた。そのブラジャー姿を見ただけで、細川先生にも彼女が何を感じているのか分かった。この新しいブラにかえてまだ1週間ほどなのに、そのブラの中身は見違えるほど中身がぎっしりと詰まっていた。またきつくてつけてられないと文句が出るまで、もうさほど時間はかからないだろう。
「まあいいわ。ちょっとこっち入って」久美子を布製のパーテーションで四方を囲まれた一角に招き入れた。その中でブラをとって測ることになっていたのだ。

「もう…。そうならそうと連絡ぐらいしてよね」メジャーを手に持ちながら話しかける。しかし久美子はまだブラジャーをしたままの姿で座っていた。「堀江さん。そのブラジャーのまま測る気? そんなごついブラつけたままで、正確な数値が出るはずないでしょ」
 久美子はちょっと名残惜しそうな顔をしながら立ち上がった。
「はぁーい。今日はブラの付け心地がすごくいいんで、していたかっただけです」
「じゃあ、ブラを取って」
 久美子は自分から背中のホックをひとつひとつはずしにかかった。細川先生はその様子を見ながら、1年前、女性である自分の前でさえ胸をはだけるのをはずかしがってごねていた事をふと思い出していた。今はもう、自分の前ではためらわずにブラをはずしてくれる。しかし他の人がいるとやっぱりずいぶん抵抗があるみたいね――。
 背中のホックをすべてはずし終わると、次に肩をすぼめて幅5センチはあろうかというストラップを下にすり落とした。それでもブラのカップはぴったりと胸にはまりこんだままゆるぎもしない。そうした上で久美子は両手でカップの端を押さえると、まるで型からすっぽり抜き出すようにブラをはずした。
 その内側から姿を現した乳房は、まるでブラを型取りしたかのように寸分の狂いもなく丸々とした球形を保ち、その先端はいたずらっぽく上向きかげんにツンとこちらを指さしている。違うことといえば、支えを失って彼女のわずかな動きにも反応してフルフルと絶えずかすかに揺れ動いていることぐらいだろう。
 この瞬間は、何度見ても、見慣れるということがなかった。いや実際、毎回見る度に、前に見た時よりも確実に迫力が増していることがはっきりと実感できてしまうのだ。今回、この前測った時からわずか1週間しかたっていないはずなのに――その重量感や充実した張りぐあいは明らかに増大していた。おそらくこのわずかな間にもそのバストは少なくとも数センチはアップしているのだろう。
(月に1回でも足りないかもしれない…)
 細川先生はついまじまじと見入ってしまった。(わたしはこの子の胸を見たくてこんなにひんぱんに測定してるんだろうか…。女のわたしでもこれほど夢中にさせちゃうんだもの。もし男性がこの胸を見たら――どうなっちゃうんだろうな…)ふと、好奇心と不安がないまぜになった考えが湧いて出てきた。
 しかし今は考えている場合じゃない。軽く頭を振り払ってメジャーを持ち直した。
「それじゃ、特別に測ってあげるからね」
「はーい」久美子は言われなくても両腕を上げ、メジャーを通すのを待ち構えた。いつもの通り細川先生は乳首の下にメジャーを当てると背中にまわりこんだ。そこでメジャーを合わせれば…いつもならそれで計測完了なのだが、この日はなかなか合わせられなかった。久美子の息が妙にはずんでいて、なかなか落ち着いてくれないのだ。
「どうしたの? 今日は。これじゃあ測れないわよ」
「あ、すいません。期待に胸ふくらむ思いなんで…」指摘されて冗談っぽく受け答えた。
「なによそれ、それじゃあまず深呼吸しなさい」
 吐いてー、吸ってー、と細川先生が口にする号令に合わせて素直に深呼吸を繰り返す。吸い込む度に、胸に回したメジャーが大きく引っ張られていき、思わずつんのめりそうになる。
 ようやく落ち着いてきて、メジャーがずれてないかをチェックした上で背中で合わせた。
「うーんと、ちょうど200センチね」
「やった」それを聞いた途端、久美子は小声でつぶやいた。
 細川先生はそれを耳にした途端、(なんだ、そうだったの)と思わず肩の力が抜けた。今日いきなり来た訳も、さっき息がはずんでいた事もすべて理由が分かった気がした。子供っぽい達成感といえばそれまでだけど、まあ気持ちも分からないこともない。むしろそんな理由でホッとしたともいえる。
 そんな細川先生の気持ちをよそに、久美子はいそいそとまたブラをつけていた。カップを胸にあてがい、ストラップを通してホックを順に止めていく。しかしつけ終わった時、何か違和感を感じて、そのままの状態で両腕をぐるぐる回したり胸を左右に揺すってみたりした。
「何? どうしたの」
「あ、別に…。なんでもありません」
 しかし久美子はどうしてもその違和感を消せなかった。
(なんか今朝つけた時みたいにしっくりこない…。なんかちょっときつい気がする…)

 服を着なおした久美子が測定場所を出ると、そこには先ほどの女生徒3人が待ち構えていてすかさず取り囲んだ。
「く〜みこ〜」
「え、な、何よしのぶ…」
「さーもう言い逃れできないわよ。今測ったばかりなんだから分かるでしょ。バストいくつあるのよ」
「あ――もう…」なんか照れくさくて言い訳していた事を思い出して、久美子は絶句した。確かにこれでは言い逃れできない。少しの間抵抗したけど、あきらめてとうとう久美子は口を割った。
「えと――なんか恥ずかしいな。本日、めでたく…その、大台に達しました」
「大台?って1メートル…のはずないか。そんなに小さい訳ないよね」
「え、だから…2度めの…」
「ってことは――2メートル?」
 思わず高くなってしまったしのぶの声に、あっ――と久美子は咄嗟に口を押さえるようなしぐさをした。まわりを見回して他に誰もいない事を確かめると、あきらめたように小さくこっくりとうなずいた。
 自分から訊いといてなんなんだけども――3人はそのあまりに想像を絶する数字に言葉を失っていた。

 その日の夜、久美子は湯船にお湯をためていた。
 もうすぐ湯船がお湯でいっぱいになりそうなことを確認してから着ていた服を脱ぎ始める。ブラジャーをはずすのは最後だ。すべてのホックをはずし終わった時、昼間とは違いわずかながらほっとするような開放感があった。
(やっぱり…)早くもきつくなり始めてる。その瞬間をとらえてしまった気がした。
(明日からはこのブラも、日に日にきつくなっていくんだろうなぁ)
 久美子は少し残念そうなおももちではずしたブラジャーを洗濯かごに入れた。Tのブラジャー、とにかく付け心地は最高なのだ。サイズさえ合えば…。それが自分の胸の成長のせいでほんのわずかしか味わえない、それが残念でならなかった。
 ふと風呂場に目をやると、お湯は湯船にいっぱいいっぱいになりかかっている。あわてて駆け込んで蛇口を締めると、軽く身体を洗って、お湯に体を沈めた。胸のあたりが湯に沈むや否や急激に水面が上がっていき、多めに張ってあったお湯が湯船からあふれ出してしまった。さらにその後おっぱいがぷかーっと浮かび上がってくる。その大きさたるや、狭い湯船の半分を占めてしまうほどだった。
「ふふ。とうとう2メートルかぁ」
 久美子は浮かび上がった胸を見つめながら満足げにつぶやいた。ブラのことは別として、胸の成長そのものはやっぱり嬉しい。
「こら、お前達もちゃあんとあったまりなさい」
 と両腕でお湯の中に押し込めようとする。しかしこの大きさとなると、浮力だってはんぱでない。押し込むそのそばからぷかぁりと浮かんできてしまう。
 意味のないおっかけっこを楽しそうに続けるうちに、体もすっかりあったまっていた。

 すっかり湯だってしまった体にはしばらく何も身につける気にはならない。仕方なくショーツ1枚のあられもない姿で部屋に戻るとドアをしっかりと閉めた。
「さて、今日もやるか」
 久美子には朝のジョギングの他に、寝る前にもうひとつ日課にしている事があった。
「さあ、今日も元気に腹筋50回がんばろう」
 久美子は自分に言い聞かせるように声を出すと、ベッドの隅に腰掛け、そのまま体を倒した。膝が折れ曲がったままあおむけに横たわった状態になる。胸の上に大きなおっぱいの重量が一気にのしかかってきて、気をつけて呼吸しておかないとむせかえってしまいそうだった。しかしその状態で久美子は両手を頭の後ろで合わせると、胸の重みをはねのけんばかりの力をお腹に入れてじわりと上半身を持ち上げた。
「いーっ、ち」
 力みながら数える。反動でおっぱいが大きくたっぷんと揺れるが、それをものともせず腰が直角になるまで上半身を上げた。おっぱいが勢いで腿の上に乗っかる。久美子がベッドに腰掛けた状態で腹筋をやるのはこのためだった。床に寝て、膝を立ててやるのが正しいやり方だとは知ってはいるけども、久美子の場合そうするとちゃんと上半身が持ち上がる前に胸が腿にぶつかってしまい、最後までいけないのだ。
 その状態から再びゆっくりと体をベッドの上に倒し、2回目にかかった。
「にー、い」
 ほんと、これをやるといかに胸がどんどん重くなっていくかがよく分かる。冗談でなく、日に日にきつくなってくる気がするのだ。しかし…それに絶対負けたくなかった。久美子がジョギングや水泳、そしてこの腹筋にこだわってるのも、基本的に体を動かすのが好き、というのももちろんだけど、今後どんなに胸が大きくなっても体のキレみたいなのを失いたくない、という気持ちがあった。実際、ジョギングと腹筋は胸が大きくなり始めるずっと前から何年も続けている日課だったが、1年ぐらい前から、そうした意識が徐々に加わってきて、意地でも毎日続けるようになっていた。
「じゅー、いち」
 久美子の体は早くも汗ばんできた。胸の重みが1回ごとに楔のようにお腹に響いてくる。しかし久美子は動きを止めない。
「さんじゅー、ご」
 次第にお腹の辺りはしびれて感覚が麻痺してきた。
「よんじゅー、に」
 ここらになるとまたなんだか元気になる。ゴールが近くなり、腹筋もまた力が戻ってきた感じがする。
「ごー、じゅ。やったーっ」
 久美子は胴体と腿の間に胸を抱え込んだまま、荒い息を静めるようにしばらくじっとしてた。

「ざまーみろ。ぜっったい負けないんだから」
 再び自分に言い聞かせるようにつぶやく。正直、1点集中の腹筋はジョギング以上にきついものがあったけど、久美子はその達成感がけっこう好きだった。
 呼吸が落ち着いたところでパジャマに着替えると、一日の最後に、寝る前のストレッチを行った。これは以前本で読んだきりの自己流のものだったが、要はゆっくりと体のあちこちの腱を伸ばしていくことだろうと、本に載っていた様々なポーズをとる。やっていくうちに体がしなやかに、伸びかになっていくような気がして、リラックスしてくる。
 それとともに次第に眠気がさしてきた。そのままベッドに横になると、右を向いて両胸を抱え込むように寝っころがった。視線の下の方に、大きなお供え餅のようなおっぱいが2つ重ね合わさっている。これは胸が大きくなるにつれ、普通に寝るのがだんだん苦しくなってきた頃、どうしたら一番楽に眠れるかをいろいろ試した上、だんだんにそうなってきた寝方だった。あおむけだと胸の重みで肺が押しつぶされそうでさすがに苦しい、うつぶせだと胸のせいで身体が浮き上がってしまいそうだし、第一胸がつぶれて痛くてしょうがない。結局横向きになって、胸を体でくるむようにして眠るのが一番安定していることに気がついたのだ。最近ではその体勢をとるだけで自然に眠気がおそってくるようになった。
「おやすみなさい」
 明かりを消してその体勢をとり、誰に言うでもなくつぶやくと、まもなくその呼吸は静かな寝息に変化していった。