超乳少女 久美子

ジグラット(物語)・魏乳(挿し絵) 作
Copyright 2004 by Jiguratto (story)
Copyright 2005 by Ginyu (picture)

episode 6 診察

「ふぅっ!」
 久美子は、パジャマ姿のままベッドの上に半身を起こすと、思いっきり両手を天井に向けて伸びをした。途端に胸のあたりに朝の冷気が差し込んでくる。ヒヤッとする刺激を胸に受けて体がぶるっと震えた。
「あ…そうか」
 ゆうべ、寝る前にパジャマを着ようとしたところ、きのうまで何とか留まっていた胸のボタンがどうしても届かなくなり、いいかげん眠かったこともあって一番上とお腹の辺りのボタンを留めただけで寝てしまったのだ。
 だから伸びをすると、パジャマの前がバストに引っ張られて大きくパックリ開いてしまい、胸の谷間が丸見えだった。絶対他人には見られたくない格好だ。
(これもまた作り替えかぁ)
 いくらかかるかな、と頭の中で計算していた。この胸のおかげで、まったく洋服代もばかにならない。

 日課にしているジョギングを終え、いつものようにシャワーを浴びると、久美子はクローゼットから、きのう着ていたのとは別の真新しい制服を引っぱり出してきた。
(今日からこっちなんだよね)
 そう、今日は6月1日、衣替えである。今までの冬服から夏服に変わる。しかしその変化の意味するところは久美子には人一倍大きかった。なにせ久美子が通う学校の夏服は、上は白い半そでのブラウス1枚なのだ。
「去年とは比べ物にならないからなぁ――」
 去年の今頃、久美子のバストはまだ140センチを超えたぐらいしかなかった。もちろんそれでも充分すぎるほど大きかったのだが、それが今年はもう――2メートルの大台を軽々と突破してしまっている。その迫力たるや、1年前と比べても子供と大人ほどの差がある。
 もちろんぬかりなくそれ用にブラウスは先日新調済みだ。ちゃんと計算して少し大きめになるように作ったはずなのだが――バストはその予測をさらに上回って成長してしまったらしい。手を伸ばしてなんとか胸のボタンを止めていくのだが、余裕をもって作ったはずのブラウスは、もう本当にギリギリまで生地を伸ばさなければ合わせ目が届かないほどになっていた。
 ようやくすべてのボタンを止め終わると、姿見の前に立ってチェックしてみた。
「あ…やっぱり」
 胸を覆うものは半そでのブラウスしかない。しかも夏仕様に薄手の生地でできている。鏡に映ったブラウスはバストの圧力で大きくテントを張ったみたいにピンと張り切っていて、内側から厚手のブラジャーがくっきり透けて丸見えだった。しかももうそれを上から覆い隠すブレザーは存在しない。

「これは――まずいよね、さすがに…」
 奥のほうからさらにベストを出してみた。ニット地のベストは元から胸を大きく作ってある上によく伸縮する。頭からかぶるとまずは久美子のバストに引っかかりはしたが、裾を引き下げると胸の上を盛大に擦りながらもちゃんとバストを覆っていった。
 改めて鏡を見る。ベストに隠れてブラは透けなくなったけど、ベストの胸の辺りは伸びきって目地が大きく拡がり、下からブラウスの白がしっかり浮き出てしまっている。けどブラが見えちゃうよりはよっぽどいい、と久美子は安心して鏡の中の自分を見つめた。全身が映るほどの大きな鏡の中で動く自分の姿についつい目を奪われてしまうのは女の子の性か、時間がないっていうのになにやらポーズまでとってしまって飽くことがない。最後に胸をピンと張ってバストをさらに強調してみせると、ブラウスもベストも今にも爆発してしまいそうだ。
(こうすれば――ちょっとはセクシーかな、エヘッ)
 くるっと体をまわした表紙にふと時計の文字盤が視界に入る。その瞬間、久美子の動きが止まった。
「いっけない、遅刻しちゃう!」
 途端になりふり構わず、自転車に飛び乗ってかけ出した。

 力強くペダルを踏み込む。その度に胸がキツキツのブラウスの中で大きく上下に揺れ動いているのだがいつものことで気にしてなんていられない。それよりも気になるのはお天気のほうだ。朝のうちからなにやら危うかったけど、ここに来て急に空の色が黒くなり出していた。
(雨、来るのかな…。いやだなぁ)
 せめて学校に着くまで降らないで! と心の中で必死で祈っていた。
 祈りが通じたのか、どうにか降り始める前に学校に間一髪すべり込むことができた。懸命にこいできたので体が熱い。校庭脇の自転車置き場に停めると、たまらず着ていたベストを頭から引き抜いた。途端にその内側に溜まっていた熱気が一気に吹き上がり、ふーっと楽になる。
「あっつー」
 代わりに冷たい空気が襟元からすーっとしみ込んできて心地いい。しかし、その時おでこにぽつんと冷たいものが当たった。
(あ、降り始めた…)
 急いで教室に向かおうと足を踏み出したが、天は遂に耐え切れなくなったかのように大粒の雨を次々とこぼれ落とし、またたく間に本降りになった。
(あーっ、間に合わなかったぁ)
 とにかく鞄から折りたたみ傘を引き抜く。しかしそれでも久美子の顔は晴れなかった。開いた傘の外周を確かめるように眺めると、ため息混じりにつぶやいた。
「これじゃあ――ね…」

 久美子は雨が苦手だった。以前はそれほどでもなかったと思う。しかし今や、胸から大きく突き出したバストがどんなにうまく傘をさしてもはみ出して、胸の先が濡れてしまうのだ。ふつうの大きな傘でもそうなのだから、ましてや折りたたみでは――。去年の梅雨の時はまだなんとかなったけど、今年は相当の覚悟が必要だろう。
 でも――これでもないよりはましだ、とばかりに傘を掲げると、意を決して校庭を一直線に突っきった。案の定、胸の先に冷たいものを感じる。しかし仕方ない、なるべく気にしないよう歩き続けた。
 とはいえその足は教室に向かったわけではなかった。実は今日、先生公認の保健室登校なのだ。
 保健室に入ると、中にはもう細川先生がひとりで待っていた。
「先生、おはようございます」
「おはよう。とうとう降り始めちゃったわね」
「ええ。あー冷たい」
 細川先生がこちらへ振り向く。しかし久美子を一目見るや、その顔にさっととまどいの表情が浮かんた。どう言ったものか――ちょっと考えあぐねたあげく、おそるおそる声をかけた。
「ねえ、堀江さん――。服、なんとかしない?」
(あ…やっぱり言われちゃった) そう思って視線を下に向けると、自分で驚いた。
 胸の大半がもう雨でびしょびしょになり、そのため薄いブラウスがぴたっとバストに張りついて、その下のブラジャーまで水を吸ってその輪郭がくっきり浮かび上がってしまっているのだ。なんだかさらにその下の乳首まで見えてきてしまいそうだ。
「あ…」
 あわてて手を伸ばして胸を隠そうと無駄な抵抗をする。こんな格好で校内を歩いてきたのか、と思うと耳まで赤くなってしまいそうだった。しかし、今日はまだ廊下でも誰にも会ってない。不幸中の幸いだった。
 毎月1日は恒例の定期身体測定の日。それだけなら放課後でも充分なのだが、今日はさらにその後の予定があった。
 いつも通りの測定を終えると先生の車に同乗してTに行き、また最新のブラジャーを入手。どうにもきつくなったブラジャーとおさらばしてほっとしたのもつかの間、再び先生の車に乗って病院に向かった。

――一度専門の先生に診てもらわない?
 初めて細川先生にそう言われたのは、ちょうど久美子が16歳になった日のことだった。あれから2ヶ月、久美子のバストの成長は収まるどころかますますその勢いを増している。5月も後半になったある日、久美子の方から保健室に顔を出してこう切り出した。
「あの――前に先生が言ってた…わたしの胸を専門家に診てもらおうって話――」
 細川先生はぱっと顔を上げ、久美子に最後まで言わせなかった。
「受けてみる? じゃなるべく早い方がいいわよね。訊いてみるわ」
 すぐさま受話器にかみついてなにやら連絡をとり始めた。5分後には、今日、こうして診察を受けることが決定していた。

「堀江さん、こちら相川先生」
「あ、はじめまして」
 着いた先は思いのほか立派な病院だった。ここなら最新の医療設備等も揃っていそうだ。通された診察室もゆったりとしていて清潔感にあふれている。病気とはほとんど縁がない生活を送っていた久美子だったが、入っただけでなんとなく安心感を与えてくれる、というのは病院として大きなメリットだな、とあたりを眺めながら考えていた。
 しかしそこに現れた先生は――髪をひっつめてぞんざいにしばったざっかけない格好をしていて、お世辞にもおしゃれな女性とは言えなかった。くたびれきった白衣はだぶつき気味でもっさりした印象を与え、かつ度の強そうな垢抜けない眼鏡のせいでそのイメージはますます助長されていた。そのせいだろうか、医者、というより研究者と言った方がぴったりだ。年は――いくつぐらいだろう。その身の回りを気にしないおばさんくさい格好のためにそれなりの年に見えたが。眼鏡の向こうにある肌は意外につやつやして張りがあった。実はけっこう若いのかもしれない。けどやっぱりおばさんぽいし…。だからと言ってこれから診てもらおっていう初対面の女性に「いくつですか?」と訊くのも気が引けて、そのまま黙りこくった。
「相川です、よろしく」
 久美子の胸を、驚くでもなく観察するかのようにただじーっと見つめている。
「細川さん――この子なの?」
 口調はぞんざいだが、なりふり構わず久美子の胸を見据える視線は怖いぐらいだった。照れとか気づかいとは無縁の、対象を客観的にとらえようとする喰い入るような眼だった。
 どれぐらい見つめていたろう。ふと思い出したように顔を上げると、いきなり本題に入った。
「さっそく診てみましょう。堀江さん――だったわね、上に着ているもの、ぜんぶ脱いでくれない?」
 それじゃよろしく、と細川先生が診察室から出た後、そう言った。
 生乾きのブラウスを脱ぐと、先ほどTで手に入れたばかりの新しいブラジャーが現れる。
「そのブラは――どこで?」
「あ、新宿のTです。ここに来る前に寄ってきたんですけども」
「そう。あそこ、評判がいいわね。特に大きいサイズでは」
 おしゃれに無縁そうなのに、そんな事をがすらすら出てくるのがちょっと意外だった。
「でも、悪いけどそれもはずしてくれない?」
「あ、はい」診てもらうんだから当然だろう、とは思ったが、やはり同性とはいえ初対面の人の前でブラをとるのは勇気がいった。しかし相手は医者だ、とむりやり自分を納得させて背中に手を伸ばした。
 新調したばかりのブラはまだサイズに余裕がある。いつになくスムーズにすべてのホックをはずし終わると、すぽっとカップを胸からとりはずすように脱いだ。
 中から、中身を満々にみたした水風船のように張りつめた2つの乳房が現れた。久美子の胸があらわになった途端、相川先生の視線はさらに鋭さを増した。まるで久美子のバストが形作るきれいな曲線を、そのすべてを微に入り細にわたり眼の中に収めようとするかのようだった。
 実際、それだけの価値が久美子の胸にはあった。その巨大さにも関わらず隅々までむっちりと張り詰め、たれ下がるどころかさらに力強く前へと伸びていきそうなそのライン。乳房は胸いっぱいに、いやそれからはみ出そうとするほど土台が大きく、そこからどこまでも大きく突き出していく。その頂点には、そこだけ小さく、まわりの色よりほのかに色づいただけの淡いピンクの乳輪がちょこんと乗っかり、その中央に、申し訳程度にわずかな突起がかわいらしくとび出していた。
「こんなことが…」かすかに口が動き、声が漏れる。しかしそれは向かい合った久美子にすら聞き取れないほどだった。
「え?」
 訊き返すがそれすら耳に入らない様子で、相川先生はなおも久美子の胸を見つめ続ける。
「信じられないわ――」
 細川先生の口がまたわずかに動く。しかし声はのどの奥にすべて消え、外には漏れなかった。

「あの――」じっと動かない相川先生の様子に、おずおずと久美子は問いかけた。もうかれこれ2~3分もこうしている。
「あ、ごめんなさい。それじゃあ――まず、サイズを測らせてくれる?」
「もう今日、細川先生に測ってもらったのがそこに書いてありますけど――」
「いや――わたしが自分の眼で確かめたいの」有無を言わさない態度で言う。もう既に手にはメジャーが握られていた。
まず、その巨大なふくらみの裾野のあたりにメジャーを当てる。乳房以外は相変わらず驚くほど細い。
「アンダーは――63センチね」
 先生の口から声が漏れる。すぐさまメジャーを外すと今度はその小さな乳首のすぐ下に当ててまっすぐ背中へと伸ばしていった。指と指の間から握られたメジャーがくりくりとどこまでも繰り出されていく。
「218センチ」
 やっとのことでメジャーの端と合わされると、低い声でその数値を読み上げた。その声はあくまでも冷静だった。

「失礼します」
 コンコンと2度ドアがノックされ、続いて外から誰かが入ってきた。久美子は反射的に胸を手で隠そうとしたが、入ってきたのが女性だったのでちょっとほっとした。先生の助手らしい。
「先生、マンモの準備ができましたが」
「あ、マンモね――いいわ。キャンセルして。代わりにエコー用意」
「あの――マンモって…」言葉尻をとらえて久美子の方が口を挟んだ。「マンモグラフィーのことですか? おっぱいを写すレントゲンの」
「そうだけど――よく知ってるわね」
「いや、話に聞いただけですけども…」その眼は好奇心にあふれていた。「やんないんですか? せっかくだからちょっとやってみたい!」
 相川先生はふっとかすかにため息をついたようだった。「あなたには――無理よ」とはいえ納得できなさそうな様子にあきらめたようだ。「じゃ、いらっしゃい。確かめてあげるわ」
 そうして隣の部屋に連れていかれた。その中央には人の高さほどもある大きな機械が置かれている。
「これがマンモグラフィーよ。ほら、この台に乳房を置いてここに挟んで撮るんだけど――。あなたのはとても無理よ。大きすぎて」
「これが――」久美子はその台を一目見て悟った。この台、あまりに小さすぎる。これに自分のおっぱいが乗り切るとは到底思えなかった。
 でもせっかくだから…と、試しになんとか台に胸を押し込もうとした。しかし――乳房の先っぽの方何分の一かがやっと入っただけで、とてもじゃないがそれ以上は入っていかなかった。
「ほらぁ、分かったでしょ。それに、マンモって、その台の上でおっぱいをこの器具で押しつぶすのよ。でなきゃレントゲンがとれないんだもの。あなたの胸、大きいだけじゃなくて――厚みがありすぎるのよ。一目見て分かったわ。レントゲンはどうにも無理ね」

 仕方なく別の部屋に通され、今度はベッドのような台に寝かされる。久美子のバストはあおむけになってもまったく横に流れることなく、胸からこんもりと巨大なドーム状にうず高く盛り上がっていた。先生はそこで何やら大きなスキャナーのような器具を手にすると、それで久美子のおっぱいをあちこちまさぐり始めた。これは久美子もTVなんかで見たことがあった。超音波エコーだ。
 よく妊婦の胎内にいる赤ん坊を映し出したりされるのを見るが、今は久美子の胸をためしすがめつ様々な角度に当てていき、その様子が横のディスプレイにリアルタイムで映し出されている。久美子には何が映し出されているのかまるで分からなかったが、じっとそれを見つめ続ける相川先生の眼が怖いぐらい真剣で、しかも次第に見開かれていくのが分かった。途中何度か「まさか…」とか「そんなばかな――」とかいう声がかすかに漏れるのも、気になってしょうがなかった。
 かなり長い時間観つづけて、ようやく手を離したと思ったらすぐさま先ほどの助手を呼び出した。
「MRI、これから使えるかしら?」
 なんだかだんだん大事になってきた。予定してなかったらしく助手がかけずりまわっていたが、しばらく待ってどうやら使えることになったらしい。久美子は先生に連れて行かれて別棟まで連れて行かれた。
(ブラ、替えたばかりでよかったぁ)
 久美子はこんなことをふと思っていた。きのうまでのつけるのにも苦労するほどきついブラじゃあ、こんなにひんぱんに取ってはつけての移動はたまったものではなかったろう。

「それじゃあ、ここに横になってね」
 久美子はショーツ一枚の姿になると、再び細長い台の上にあおむけに寝転んだ。頭の先には巨大な機械が設置され、久美子に向かってぽっかりと丸い口を開けている。
(なんかやだな、これ…)
 台がゆっくりと移動して、その口が少しづつ久美子の体を頭から飲み込んでいった。まるで機械の中に全身を食べられてしまうような妙な気分だ。しかし、顔がすべて入ったところで、胸の先をひんやりとした感触が襲った。
 機械が異常を察知して急停止する。相川先生があわてて駆け寄ってきた。「そんな…」
 異常の実体を知るとあきれたように口をあんぐり開けた。要は――口の縁の部分に、久美子の大きく突き出したバストの先がひっかかってしまったのだ。よくよく確かめてみると、ひっかかるのは口の部分だけで、中に入ってしまってからはそれより若干広めにできているため、ギリギリではあるがなんとか撮影は可能のようだった。
「ねえ、堀江さん」相川先生はちょっとためらいがちに言った。「中、入る時だけでいいから、おっぱい、押し込んじゃっていい?」
 久美子も苦笑いしてうなずくしかなかった。

「悪いけど、その胸、さわらせてもらうわね」
 一旦最初の診察室に戻ると、今度は触診が始まった。分かってはいたことだが、最初に先生の指の先が乳房の中腹に触れた瞬間、ちょっと背筋がピッとなるような緊張が走った。
 お医者さんだもん、診てもらうんだからしょうがないじゃない――そう頭では思ってはみるのだが、それでも心の内の抵抗感は消えなかった。
 その手つきは、当然のことながらいやらしいものはない。非常に慎重に、客観的だった。しかし、それが執拗に続く。最初は乳房の表面を手で押しあててその感触を確かめるようなものだったのが、それが久美子の大きな乳房全体をぐるりとひとまわりし終わったとみるや、徐々に手に力が加わっていった。そしてあちこちを押し込んでは「ここは痛い?」「ここはどう?」と訊いてくる。最初は「え、別に…」「ちょっとくすぐったいです」と答えていた久美子だったが、次第にその力がこもってくるや、だんだん冗談ではなくなってきた。
「きゃ――!」「はっ、え――」しばしば、自分の意思とは関係ないような言葉が漏れる。きわめつけは、先生が両手で久美子の乳房をむんずとばかりに掴み込み、ねじるように絞り上げた時だった。
「先生…い、痛い――」これは本気で痛くて、久美子は思わず苦痛の声を上げる。それを左右それぞれ、何度となく繰り返すのだ。
 触診が終わった時、久美子は荒げた息をなんとか沈めようとしばらく深呼吸をしていた。深く息を吸い込むたびにそのバストが一層大きくせり上がってくる。なんだか胸に今まで受けたことのないような刺激を短い時間に集中してたっぷり受けたみたいで、なんだかおっぱいが自分のものでないような、全体がじわんじわんと大きく鼓動しているような感じだった。
「はい、おしまい。お疲れさま」
 最後に、先生は久美子の乳房の先を、指先でそっとなすってみせた。
 そのさりげない動きに、久美子は自分でも信じられないほど過剰に反応した。背中が思わずびくんと揺れる。そのほんのわずかな刺激が、胸全体に雷の直撃を受けたような強烈な電気ショックを与え、おっぱい全体がはじけるのではないかと心配になるほどだった。なんだか、自分が感じてはいけない禁断の刺激を受けてしまったかのような――。
(この先生、いったい何をしようというの…?)
 その直後、血液検査をするためと言われて採血されながら、久美子は得体の知れない不安にとらわれていた。

 ようやく検査も終盤、問診に移った。久美子はようやく普通に服を着て、相川先生の質問に答えていた。これまでの既往症や生活習慣についていくつか訊かれた後、相川先生は意を決するように座りなおし、顔つきも今まで以上に真剣なものに変わった。
「それでは堀江さん。最後にいくつか突っ込んだ質問をしたいだけど…。プライヴェートに関わることだから、どうしても嫌だったら答えなくてもいいわ。でも――重要なことだから、できれば正直に答えて欲しい。いいわね」
「はい…」何を訊かれるんだろう。表情に不安が走った。
「まず、あなた…男性経験は、ある?」
 一瞬虚を疲れたようにぽかんとしたが、次の瞬間意味が分かってどぎまぎした。
「あ…ありません」
「本当に? 嘘はついてほしくないんだけど」
 そんな言われ方をしてちょっとカチンときて、思わず声が鋭くなる。
「ありません!」
 先生はそれを聞いてにっこりした。
「悪かったわね。じゃ次に、その胸をもまれた経験は?」
 聞いた途端、久美子は思わずカーッと顔が赤くなるのが自分でも分かった。
「え…あ…それは…この前、クラスの子と温泉行った時に…ちょっと…」
「クラスの――女の子?」
「はい…友達3人と…」
 またにっこり笑う。「そういうのはいいわ。わたしが聞きたいのは、男性に、よ。――意味わかるわね」
「あ、はい…。それは――そういうのも…ない、です」
 先生はなんだかほっとしたようだった。
「分かったわ。悪かったわね、立ち入った事を聞いて。これで検査はすべて終わりよ」

 久美子がようやく解放された時、6月の長い日も既にだいぶ傾きかけていた。その間辛抱強くずっと待ち続けていた細川先生は、久美子を見て少しびっくりした。いつになく疲れたようにげんなりしているのだ。
「どうしたの? どう、何だって?」
「緊張しっぱなしで…なんか疲れたぁ。――あ、結果は1週間後にまた来てくれって…」
 口をきくのもおっくうな感じだった。しかし先生の車に乗ると、いつもの調子を取り戻したように今日あった検査の様子をまくしたてた。
 細川先生は運転しながらもっぱら聞き役に回っていたが、その内容にどこか解せないものを感じていた。
(変ねぇ、なんでそこまでいろいろやらなきゃならなかったのかしら――。まさか変な病気の疑いがあるんじゃ――)

 1週間後、結果が出たというので2人はもう一度相川先生のところへ向かった。先週と同じ診察室で、まるで判決を受ける前のように緊張した面持ちで一緒に先生を待った。
 来院を告げると待ち構えたかのように程なく相川先生が現れた。かなり忙しい立場のはずなのに、その迅速さに細川先生の方が驚いていた。
 しかしその態度はさらに輪をかけて変だった。2人の前に座ると一言もしゃべらずに、また何かにとらわれたかのように久美子の胸を見つめ始めたのだ。
「あの…」おずおずと細川先生が口を出すと、相川先生はそれを遮るように口を開いた。
「堀江さん、悪いんだけど、その胸、もう一度見せてくれない? 確かめたいことがあって」
 2人は目を見合わせたが、仕方ない、久美子はまた服を脱ぎ始めた。
 上半身ブラジャーひとつの姿になった時に、相川先生がまた声をかけた。
「ねえ、今しているブラジャーって、先週とおんなじもの?」
「ええ、そう…ですけど」なんだろう、と久美子は不審がった。
「この前と比べて、ずいぶんきつそうに見えるけど」
 久美子はハッとした。確かにこの1週間でブラジャーはずいぶんきつくなった。間違いなくまた2~3センチは大きくなっているのだろう。しかしそれはもういつものことなので、さほど気にもしなくなっていた。
「ああごめんなさい。続けてちょうだい」
 背中に手をまわしてホックをひとつづつ外していく。この動作も、1週間前と比べてかなり難しくなっていた。そのことも読み取っているのだろうか、久美子の指先の動きまでひとつひとつ冷静に観察しているようにさらに見つめ続ける。
 ふたたびブラジャーが外される。目の前ではだけられた久美子の胸を見て、先生は端から見ても分かるほどぎくっとした。たった1週間のことなのに、久美子の胸は明らかにまた一段と張りつめて大きくなっていた。思わず胸に手を伸ばす。この前の事を思い出して後ろに引く久美子に構わず、相川先生はその感触を確かめるかのようにやさしくさわり始めた。触診するとさらにはっきりと分かる。たった1週間のことなのに、先週とは比べ物にならないほど張りつめていた。
「なんてことなの…」思わず相川先生の口から言葉がこぼれる。今度は2人にも聞こえるほどはっきりしたものだった。

「あの、どうなんでしょう」
 細川先生は心配げに問いかけた。触診はほんの数分で終わり、久美子は再び服を調えていた。しかしその目は相川先生の先の見えない言動のせいで不安が隠せなかった。
 しかしそこまできて、相川先生はパッと態度を急変し、妙に明るくしゃべりだした。
「そんな顔しないで。問題ないわ。あなたは文句なしに健康よ」
「それじゃ、この胸は…」
「うん、正常に成長していった結果なの。ただ――なんていうか、乳腺を発育させるホルモンがあなたぐらいの年齢の女の子はたくさん分泌されるんだけど、あなたは生まれつきその量が多いの。その結果…」
「?」
「ふつう、胸が大きい人っていうのはね、その大半は脂肪分なの。乳房の大きさに関わらず、乳腺そのものの大きさってあんまり変わらないのね。ほら時々、『胸の大きい人に限ってお乳の出が悪い』とかってうわさがあるじゃない。あれってそのせいなの。なまじ乳房が大きい分、目立っちゃうのよね。
 ただ…あなたの場合、これはちょっと珍しいんだけど…ホルモンが大量に分泌されているため、乳腺が人より大きいの。ふつうより大きめの乳腺組織がおっぱいの中に詰っている、と思っていいわ。ちょうどその周りを脂肪がくるむ感じであなたの乳房はできてるの」
「それって…異常じゃないんですか?」
「大丈夫よ。健康よ。健康すぎるぐらいね」

 検査結果はあまりに拍子抜けするように簡単だった。この後もいろいろ生活上のアドヴァイス等が2~3あっただけで、結論だけ言えば「文句なしの健康体。問題なし」だった。
 あれだけいろいろやった検査はなんだったのか? 2人は腑に落ちないものを感じながらも、健康だというのに文句を言うものでもなし、そのまま帰っていった。

 ――――――――――――

 その日の夜、細川先生の自宅の電話が鳴った。受話器を取ってみると「相川です」とぶっきらぼうな声が聞こえてきた。
「あ、どうもいろいろありがとうございました」
「いえ、こちらこそわざわざ2回も来ていただいて…」おかしい、と細川先生は思った。いつも冷静沈着な彼女とはどこか違う。いささか興奮しているように聞こえるし、物言いも奥歯にものがひっかかったような感じがする。
「あの…あなたには、やはり言っておいた方がいいと思って…」
「堀江さんのことね。――やっぱり何か異常なの?」
「いや、そんなことはないわ。わたしだって医者よ。今日だって、特に嘘はついていないわ。ただニュアンスは若干抑えたけども――。あの子はあの時言った通り文句なしの健康体と見ていいわ。ただ…」
 不意に言葉が途切れる。その沈黙はかえって相手を不安にさせた。
「ただ…何なの。お願い、どんなことでもいいから言って」
「ただ――なんて言っていいのかな、変な言い方だけど、あの子、健康すぎるのよ」
「健康すぎる? いったいどういうことなの?」
「ああ、なんか私も頭がまとまってないわね。とにかくあの子の身体に問題はどこにもない。ただひとつだけ、乳腺を発育させるホルモンがとにかくとてつもなく大量に分泌されているのよ」
 それは細川先生もなんとなく予想がついていたことだった。「そんなことを昼間も言っていたわね。それって、エストロゲンのことでしょう?」
「いや、違うわ」意外なことに即座に否定されていた。「確かに今まで、乳腺の発育はエストロゲンの働きによると言われてきた。けども――これはまだ研究中で発表できる段階にないんだけども、判別がつきにくいけど乳腺をダイレクトに発育させる物質が別に存在する事が最近分かってきたの。まだ正式名称も決まってない、未知のホルモンがね」
「――――」
「実はわたしが今専門に研究しているのはその新しいホルモンのことなの。そのホルモンの特性のことならわたしなりにある程度分かってきたつもりよ。それが思春期の女性は量の多少はあれ誰しも分泌していることもね…。まだ被験者は少ないけど、大体の平均的な分泌量も分かってきた。しかしあの子の…堀江さんの血液検査結果を見て、てっきり検査ミスだと思ったわ。だって、あまりに通常とかけ離れた数値だったもんだから」
「ね、いったいどれぐらいだったの? 教えて!」
 しかし電話の主はその声を無視するかのように続けた。
「だからもう1回自分の手でやり直して見た。慎重に、慎重に…。けど何度やってもその数値は同じだった。信じられないけどわたしはそれを受け入れるしかなかったわ」
「いったい…」
「――信じがたいことに…そのホルモンの分泌量は通常の80倍の数値を示していたの」
「80倍…! それって、異常ではないの?」
「違うわ。その値も含めて、あの子の身体のどこにも異常はないの。ただ全体的に、基礎代謝力・筋力・運動能力…その他すべて非常に高いレヴェルにあるってことは事実ね。あなた、あの子が何をやらせてもずば抜けてる、って言ってたけど、数値的にもそれが実証されてたわ。ただ、その中でも…このホルモンの分泌量だけがかけ離れて高いの…。健康すぎるってのは…通常の健康レヴェルをはるかに超えて健康なのよ」
 なんだか頭が混乱してくるようだった。健康すぎるって、いったい、いいの? 悪いの?
「ねえ…それって、危険なの…?」
「わからない…。あまりに常識はずれなのでわたしにも見当がつかないのよ。ただ…ひょっとするとおそろしい事になるかもしれない」
「ちょっと待って、どういうこと」
「あの子の胸はね…どうしようもないくらい危ういバランスの上に成り立ってるの。そう、あの子のおっぱいはね…厖大なホルモンの影響で際限なく発育し続ける巨大な乳腺組織をなんとか包み込もうとして必死に大きくなり続けてるのよ。それはもう人体の神秘としか言いようのないほどのスピードでね。
 でも、そんな事いつまで続けられるか分からない。ホルモンの分泌が収まって乳腺の発育が止まるのが先か、乳房の成長ペースがにぶるのが先か…。
 もし、そのバランスがちょっとでも崩れたら…」
 2人の間を沈黙が襲う。細川先生はごくっとつばを飲み込むと、おそるおそる訊いた。
「――どうなるの?」
「最悪の場合、冗談でなく、あの子のおっぱい破裂しちゃうかもしれない…」

「まさか…」再び襲ってきた沈黙に耐え切れなくなったように細川先生は声を漏らした。
「もちろん人間の身体は不思議なもので、そういう破壊的なことは自然と回避するようになってるわ。通常そうなったら、ホルモンの分泌の方が止まってくれるの。でも――あまりに桁外れなので、わたしもそうだと言い切る自信が持てないの。
 あのホルモンが他の人より多い、という症例は今までにもいくつか発見されているわ。で、そうした女性の乳房には明らかに他と違った特徴があるの。みな一様に大きいんだけど、どんなに大きくても型崩れせずにピンと張りつめてるのよ。いわゆるロケットおっぱいね。あの子の胸があんなに大きいのに全然型崩れしてないのも納得がいくでしょ。だって、あの巨大なおっぱいの中に、乳腺が縦横無尽に張りめぐらされて核となっているんだもん。そして脂肪がちょうどそのまわりをくるむように層を成していて…脂肪ばかりのふつうの巨乳とは訳が違うわ」
 電話の主は、いよいよ本題に入るとばかりにひとつ大きく息を吸い込んだ。
「けど――そんな普通の80倍だなんて数値は聞いたことがない。だって…あの大きな乳房の実に70パーセント以上が乳腺なのよ。とてもじゃないけど自分が計測したのでなければ絶対信じないわよ、こんなめちゃくちゃな数値。いや、わたしだって始めはてっきり計測ミスだと思ったわ。でも、何度チェックしてやりなおしても間違いないの…。だって、容積にして普通の人の100倍以上よ。もしあの子が今妊娠してあの巨大な乳腺組織がいっせいに活動を開始したら、いったいどうなることか…」
 三たび沈黙が訪れた。腹に溜まっていたことを吐き出したせいか、相川先生は少し落ち着きを取り戻したようだった。
「まあとりあえず今のところその心配はなさそうだけども――あの調子じゃキスのひとつもしたことないみたいね――それでも安心はできないわ。それに妊娠しなくとも、あのホルモンは、性的刺激を受けることによってさらに分泌を促進されてしまうことが分かっているの――。16歳の思春期真っ只中の女の子に対して、『おっぱい破裂しちゃうから男の子に興味持っちゃいけません』なんて言える? わたしはできなかった。それにそんなこと言えば却って興味を持たれてしまうかもしれないし…。わたしは結局何一つ言えなかったわ…」
「でも…なんか方法はないの? ホルモンの分泌を抑える薬とか何か…」
「無理よ。繰り返しになるけど、あの子は病気じゃない、正真正銘健康体なのよ。ホルモンの分泌そのものだって…たしかに普通の量じゃないけど、それ自体は正常なものなの。基本的にホルモンを補充する注射ならあるけど抑制するのは副作用が多すぎて危険だわ。まだまだ研究途中で分からないことだらけのあのホルモンだけを抑制するなんてとても無理よ。ただ、あの子の第二次性徴が終わり、ホルモン分泌が自然に落ち着くのを待つしかないわ」
「そんなぁ…。いったいいつまで…」
「あの子まだ16なんでしょ。あの様子だと、少なくともまだ2~3年は…」
「2~3年! あの子の胸の成長ペースはますます加速しているのよ。今の大きさになるのだってたった2年しかかかってない。その上あと3年だなんて――その間に、あの子の胸はいったいどこまで大きくなっちゃうのよ!?」
「――分からないわ。そう…あなたもうすうす感じ取ってるんでしょ。あの子の胸が――見かけはどんなに大きくても、まだまだふくらみ始めたばっかりの固いつぼみだってことにね…。
 あの子の胸は、これからようやく本当に咲き始めるのよ。そうなった時、いったいどんなに大きな大輪の花が咲くのか、わたしには想像もつかない――。
 それにわたしはさっき『少なくとも』と言ったのよ。3年で止まる保障はどこにもない…。なにしろ桁外れですものね。見当もつかない。後は、あの子の乳房がいったいどこまでその成長に耐えられるか、それだけよ」
 ようやく話が終わったように相川先生は言葉を切った。細川先生は、やっとの思いでふりしぼるように言葉を吐いた。
「――わたしに…何ができる?」
「今までどおり、あの子を見守り続けてやって。とにかくあなた、学校で毎日会ってんでしょう。これからも観察をおこたらないでね」
「――――」
「ね、あの子、胸が張って苦しいとか痛いとか言ってきたことはない?」
「あ、それは今の所ないわ。いつもこっちが驚くぐらいけろりとしている」
「そう…じゃあ少なくとも当面は大丈夫そうね。けどお願い、あの子の胸に何かおかしい事があったらすぐわたしに知らせて。バランスが崩れ始める前兆かもしれないから。根本的な解決はできないけど、対症療法的な手当てはできると思うの。だから――」
「ずいぶん弱気ね。あなたらしくもない」
「しかたないのよ。わたしだって…できることならば――。
 けど――あんなに大きく育った乳房は見た事がない、というか想像したこともなかったわ。だから――自信がもてないの」
「わかったわ。でも…」
「けどね――繰り返すけども、決して病気じゃないの。あの子はすごい健康よ。それは保障できるわ。でも――健康すぎるの。あんなに大きく成長した乳房、ふつうの人間に耐えられるはずないもの」
「ど、どういうことよ…」
「あなたの報告によると、あの子、基礎体力もとにかく人並みはずれてずばぬけているわね。その体力があればこそ、今も平気で生活していられるのよ。あの子の健康には気を使ってやってね。もし身体を壊したら、今の胸の大きさにも耐え切れなくなっちゃうかもしれないから」
「――――」
「あの子、ほっそりしているけど、必要充分な筋肉はついてるわよ。触診の時一緒にあちこち確かめさせてもらったけど、特に背筋の発達ぶりには眼を見張ったわ。プロのスポーツ選手でもあれほど見事な筋肉は見た事がない。そう、ちょっとしたワンダーウーマンよ」
「ワンダーウーマン?」
「あら知らない? ちょっと前にTVでやってたアメリカ製のヒーローものだけど」言われて細川先生も思い出した。けどちょっとじゃなくって、放映してたのは確か自分が生まれた頃だったような気がする。妙に古い例えを出すな、となんだかおかしかった。「まあいいわ。けど、他の筋肉もそうだけどもボディビルとかで特別に鍛えて作ったものとは違う。あの巨大な胸を常時支え続けているうちに自然についたものね。だから筋肉のつき方に無理がない。しかもあの子いつも背筋がピンと伸びて姿勢もいいし。正しい日常生活を送ってるなってそういう所に出てくるの。
 お願い。あの子のこと、ずっと見守ってやって。きっと何かバランスがおかしくなるような、そんな日が来るような気がしてしょうがないの。1週間前に会ったばかりでこんなこと言うのも変かもしれないけど、医者として、なんとかあの子の力になってやりたいのよ。お願い――」
 電話から伝わる言葉は終いにはほとんど哀願になっていた。細川先生は正直とまどっていた。久美子の胸に関する驚くべき秘密はもちろんだが(だが正直、この時はまだ半信半疑だった)、あの常に冷静沈着な相川先生が、論旨が混乱するほど我を忘れてしまうだなんて――。そちらの方に驚いていた。
「わかったわ。堀江さんのことはこれからもわたしがしっかり様子を見るから、安心して」

 こちらは病院の一室、相川先生は、気が昂ぶって取り乱しそうになるのを必死で抑えながら、ようやく長い電話を終えた。
 受話器がかすかにチンと鳴り終えたのを確かめ、ひとつ長いため息をついた。
「まさかあんな子がいるなんて…」
 力なく立ち上がると他に誰もいない部屋の大鏡の前で、相川先生はだぶついた白衣を脱いだ。体のラインがあらわになると、意外なほどほっそりしてるのが分かる。しかしただひとつ、胸だけは目を見張るほど大きく突き出していた。さらに着ているものを次々と脱いでいき、上半身裸になると、中から久美子には遠く及ばないもののかなりの大きさを持った2つの乳房が現れた。支えられなくてもピンと張り詰め、前に突き出してるその形は明らかに久美子のものと同じものを感じさせた。
「わたしなんか全然かなわない…」
 両手で自分の胸の大きさを確かめるようになでまわしながら、またひとつため息をついた。しかしにわかにその目は力を増していき、きらりと光ったように見えた。
「でも…あの子なら…ひょっとして――」