超乳少女 久美子

ジグラット(物語)・埴輪(挿し絵) 作
Copyright 2005 by Jiguratto (story)
Copyright 2005 by Haniwa (picture)

episode 9 なぞの転校生

「これで…よしっ、と」
 その日の朝、久美子はいつものようにエプロン姿で台所に立っていた。胸につけられたエプロンはその超特大バストを受け止めてかわいそうなぐらい引き伸ばされ、強烈に前に突き出していたが、久美子は気にしている様子もない。その突き出した分をきちんと計算に入れてるように器用に各器具の間をすり抜けて、立ち居振舞い続ける。頭の中に段取りがすべて入っているのか、まったく動きにそつがなかった。
「あとは…と」
 久美子は包丁を持つとまな板の前に立った。まな板の前の壁には、なぜか大きな鏡が掲げられていて、久美子の上半身をくまなく写しだしていた。久美子は手元を見ようとせず、じっと鏡の中の自分を見つめ続けた。
 実は、久美子は手元を見ようにも見えないのだった。下を向いても、見えるのは一面に広がる自分のおっぱいばっかりで、まな板なんかかけらも見えない。胸が膨らみ続けていくうちにだんだん視界が塞がれていって、もう1年以上前からこんな具合だった。まあある日突然そうなった訳でなし、毎日使い慣れている台所だから、見えなくても手の感覚だけでさして困ることはなかったが、やっぱり手探りでやるのはどこか不安だし、何か事故が起こらないとも限らない。そう思っていた矢先、TVを見ていたらアメリカの胸の大きな女性(といっても久美子とは比べ物にならないほど小さかったが)がキッチンに鏡を置いて包丁を使っているのを見て、これだ、とばかりにさっそく台所に鏡を据えつけたのだ。最初のうちは左右逆の情報に却ってとまどったけども、今はすっかり慣れてまったく問題なく包丁が使えるようになっていた。

「できたわよ」
 朝食を持ってテーブルに赴くと、珍しく久美子の父がもうそこに座って新聞を読んでいた。
「ん」分かったんだかどうだかはっきりしない生返事が返ってきただけだが、新聞を置いたので伝わったのだと分かる。相変わらず無愛想だけど久美子はもうそんなこと慣れっこになっていた。
 父親と一緒に食事するのは本当に久しぶりのことだった。
 堀江高久と言えば、日本の遺伝子工学の世界ではちょっとは名の知れた研究者――のはずだった。とはいえ見た目は普通のさえないおじさんにしか見えない。身の回りにぜんぜん気を遣わないこともあって、お世辞にもかっこいいとは言えなかった。第一、どんなに偉くても一般的な知名度は皆無なのだ。だから久美子も、友達に父親の事を訊かれると決まって「しがない学者先生です」と卑下して答えるのが常だった。(ま、ノーベル賞でも取れば別でしょうけどね) 自分でそれなりに調べて父の学会での存在の大きさを認識し、なんだかんだ言って尊敬している父だったが、それでもそこまで行く事はあるまい、と思っていた。
 普段留守がちで、研究室に泊まることだってしょっちゅう、家にいなくても気にしなくなってる父だったが、今日はこれから学会出席のためにアメリカに赴くということで、珍しく帰ってきていたのだ。もっとももうすぐ家を出て、そうしたら3週間ほど日本には戻らない。そんな父のために、この日の朝食はごはんに味噌汁、焼き魚と思いっきり日本風のものにした。

 2人は黙々と食べ続ける。朝食のわりには量も品数も多い。――それは久美子の旺盛な食欲を満たすために自然とそうなっているのだが――父は特に何も言わなかった。そしてこれもいつものこととはいえ、娘の作った料理を無表情に口に流し込むその姿に、久美子はちょっとさみしさを覚えた。
「お父さん、この大根、どう?」
 久美子は、並べられた小皿をひとつ指し示して訊いた。
「あ、うん…いいよ」
 やっとそれだけ、そっけない口調で言葉が返ってくる。それなりに力を入れた一品、それをそれだけで片付けられるのはやっぱり物足りなかった。
(タクはこれ、すごいおいしいって言ってくれたんだけどなぁ)
 しかし久しぶりに卓次に会ったことは口にはしなかった。というか、母親の所に行っていた事自体、あんまり父には言い出しづらい。もちろん行く事は事前に伝えてはいたけども、行ってどうだったかはいつも何も触れてこなかった。
 それにしても父と母は今、お互いの事をどう思っているのだろうか?――久美子にはそれが長年の謎だった。もちろん母はとっくに再婚しているし、これから2人がどうなるという訳はないのは分かっていたが、それでも、両親の仲が悪い所は娘としてあまり見たくなかった。
 2人がどうして別れたのか――当時まだ5歳にもなっていなかった久美子はさすがにほとんど何も憶えていない。でも、憶えてなくってよかったのかもしれない。それぞれ別々に会っている久美子には、お互い今だ相手に何かわだかまりがあることは何かにつけて感じていた。
 でも、なんとなく、お父さんもお母さんも相手の事をさして憎からず思っていそうなのが不思議だった。もちろん久美子のあずかり知らぬ理由があったのだろうが…。
「お母さん、元気だったか」
 食後に久美子が淹れたお茶を飲みながら、父がふと思い出したように口を開いた。あまりにいきなりだったので、久美子は驚くより先に素直に反応してしまった。
「うん。全然変わってない。元気そのものよ」
「そうか――ならいい」
 話はそれで終わってしまった。久美子も取りつく島もなく、お互いそのまま出発の時間まで一言も言葉を交わすことはなかった。
「それじゃ、出かけてくる。帰るのは3週間後の予定だ」
 この予定も、おそらくまた10日ぐらい平気で伸びちゃうんだろうな、なんて思いながらその言葉を聞いていた。
 父親を見送りながら、久美子はなにげなく訊いた。
「今度は、アメリカのどこだっけ?」
「ロスアンジェルスだ」
「ロス…」反射的に繰り返す。久美子の顔がかすかに曇った。
「そうだ。懐かしいか?」
「――ううん、全然」
「そうか――」
 そのまま荷物の詰まったキャリングケースを引きずりながら玄関を出ようとした時、ふと立ち止まって振り返った。
「学校、楽しいか?」
「もっちろん!!」久美子はここぞとばかりに満面の笑顔で応えた。
 玄関のドアが閉まる。家の中は物音ひとつしない閑散とした空気に包まれた。
「さ、学校いこっ」
 久美子はエプロンをはずす。その下からは、久しぶりに着る制服が現れた。
 夏休みも終わり、今日から新学期。新調した制服も調子いいし、いつものように学校が始まる――はずだった。

「おっはよー、久美子、ひさしぶりー」
 教室に入った久美子を真っ先に迎えたのは、胸にぶつからんばかりのしのぶの突進だった。
「おはよう、しのぶ」危機を察してうまいこと体をよけると、自分の机に着いた。椅子に座った途端、どさりと机の上いっぱいにその胸が乗っかってかすかにきしんだ。
「ちょっと久美子…」しのぶはその様子を見て眼を丸くして驚いていた。そして息を潜めると、久美子の耳元でささやいてきた。
「なによ」
「しばらく見ない間に、さらに巨大化の一途をたどってない? この胸」
「――いきなり人を怪獣みたいに言わないでくれる」

 続いて奈保美も来て、お互いに久しぶりの挨拶を交わしたが、その後、加寿子がなかなか現れなかった。新学期早々遅刻か――と心配になってくる頃、ようやく加寿子が教室に入ってきた。しかしどこか様子が変だ。まるで何か信じられないものを見てきたかのように、どこか上の空だった。
「おはよう、加寿子」
 声をかけられてびくっとして、加寿子は久美子の姿を認めると、急に落ち着かないようにおどおどし始めた。言っていいものかどうか――しばらく迷った末に、ようやく勇気を持って口を開いた。
「あ、久美子」ここでまたひと息吸い込んだ。「大変よ…」
「何よ加寿子、どうしたの?」
「あの――今日からうちのクラスに転入生が来るんだって」
「へえ、珍しい。男? 女?」
「女の子よ。それも――わたし、さっき職員室の前を通ったんだけど、開いた窓から高梨先生と話してる女の子が見えたの。どうやらこの子が転校生らしいんだけど――ちらっと見ただけで、その途端動けなくなっちゃった――」加寿子は少しづつ声を潜めていった。久美子たちも自然に体を乗り出す。「その子、ものすごっくおっぱい大きいの。ほんともう、信じられないくらい。ひょっとしたら――久美子より大きいかもしれない…」
「う、うそっ!!!」しのぶの声のトーンがいきなりはね上がった。
「そんなばかな――久美子より大きいおっぱいだなんて…」
 声がおおきい!と加寿子の制する声も届かず、しのぶの驚いた声はクラス中に響き渡った。教室の空気が一瞬にして変わる。あちこちでざわめきが聞こえてきた。
 久美子も内心の驚きを隠せなかった。
 自分より胸の大きい子がいる――なんとなく、そういうのってもうないものだと勝手に思っていたのだ。――そう思った途端に感じたのは、見てみたい好奇心と、一種の敗北感のようなものがない交ぜになった初めての感情だった。久美子はもちろん、クラスの全員が、どんな転校生が来るのかと興味心身に待ちかまえていた。

「はじめまして。愛原みちると申します。これからよろしくお願いします」
 間もなく、担任の福田先生に連れられて、ひとりの少女が入ってきた。一斉に生徒全員の目はその胸に集中した。しかしその突き刺さるような視線にまったく臆することなく、堂々と正面を向いて挨拶した。
 久美子を始め、一人残らずほとんど信じられないような目で転入生をじっと見つめている。その子は小柄で童顔にもかかわらず、妙にコケティッシュな、人をとろけさすような不思議な魅力があった。まるで成熟した大人の女性のような落ち着きと、そして妖しささえ見える。問題の胸も、巨大の一言だった。制服が間に合わなかったのか、自前のらしいおとなしめのブラウスとスカートでまとめていたが、小さな体に不釣合いなほど大きく張り出し、ブラウスのボタンを今にもはじき飛ばしそうなほどぱんぱんに膨らませている。実際、ボタンとボタンの間がバストに引っ張られて左右に隙間ができ、そこから中身があふれだしそうになっていた。その迫力たるや、確かに久美子に勝るとも劣らない。生徒の中からごくりと固唾を飲む音があちこちから聞こえてくるようだった。
「それじゃあ愛原さんの席は…と」
 しかし福田先生の声を無視して、愛原みちるはまっすぐ久美子の席に向かっていった。そして久美子のすぐそばに立つと、ニコッと頬笑みかける。
「あなたが堀江さんね、よろしく」
「よ…よろしく」わたしの事を知ってるの? と久美子は妙は不安感にみまわれた。実際久美子の存在は学校中でも噂になっているほどだからそれも無理もないのだが、久美子にはその笑顔に何か含むものが感じられた。
 久美子とみちる、そのすさまじいまでの超乳がすぐ隣に相対して、誰もがその4つのふくらみに視線が集まっていった。久美子より大きいかも、と加寿子は言ったが、2人が並んでみるとその大きさにはやはり明確な差があった。久美子の方が断然大きいのだ。しかし、みちるの方が小柄な分、相対的に大きく見える上に、久美子がなんとか少しでも余裕を持たせようとかなりだぶついた(とはいえもうだいぶいっぱいいっぱいになっていた)サイズのブラウスを着ているのに対して、みちるはぴっちりとした、いやが上にも胸のラインが浮き出るようなきつめのブラウスを着込み、しかもどうだとばかりに胸を張ってみせているので、一層その大きさが強調されていて、サイズ以上に胸が大きく見えた。遠目で、一瞬見ただけの加寿子がその大きさを見誤るのも無理はなかったろう。
 とはいえ、それでもおそらくそのバストは2メートル近くはあった。通常から見れば、信じられないほどの超乳としか言いようがないスケールだった。

「堀江さん、この席、空いてるわね」みちるは久美子の左斜め後ろの席を指さしながら尋ねた。そう、たまたまそこは春から空いていたままになっていたのだ。
「ええ」久美子は仕方なくそう答えると、みちるは福田先生の方を向いた。
「先生、わたし、この席にしたいんですけど――いいですよね」腹の底から響きわたる、有無を言わさない力強さのこもった声だ。福田先生も思わずうなずいてしまうほどの。
 みちるはその席に腰を下ろす。やはりその胸が机の上にどっかと乗っかり、そのほとんどが胸で埋まってしまった。

 その日、最初の授業は高梨先生の世界史だったが――文字通り目のやり場に困ってしまった。教壇の上から生徒の方を向くと、有無を言わさず久美子の胸が目に入ってしまう。今まではそこからなんとか目を逸らせばなんとかなったのに、今はやっとの思いで久美子から目を逸らすと、今度はまたみちるの大きな胸が目に飛び込んでしまうのだ。
 しかも胸だけではない。そのルックスもプロポーションも、久美子同様ずば抜けていた。久美子が清楚で透きとおるような美しさが際立つ正統派美少女なのに対して、みちるは全身にいたずらっぽい小悪魔的な魅力をその小さな体に詰めこんではちきれそうにしていた。タイプこそ違うがどちらもあたりに強いオーラのようなものを発散させているように見え、甲乙つけがたいとびっきりの超乳美少女としか言いようがなかった。
 久美子ひとりでもやりにくかったのに、それがいきなり2人になってしまうなんて。(やりにくいなぁ) 正直、久美子ひとりを持て余していた高梨先生はほとんどの時間顔を黒板に向けたままだった。
 久美子はいつものように胸の上に設置したディスプレイを見つめながら一心にノートをとっている。みちるの方は――胸に占拠された机の上に何を出すでもなく、ただひたすら高梨の方を見つめ続けていた。先生は注意しようとも思ったが、別にさぼっている訳ではなく、授業にじっと耳をすませているようにも見える。何よりその胸を見てしまってはものが言いづらい。結局最後まで何も言い出せずに終わった。
「ねえ堀江さん」
 休み時間になると、みちるが真っ先に話しかけてきた。「面白いもの使ってるわね」
「え? ああこれ」久美子は閉じかけたノートパソコンを手に取った。「便利よ。胸を気にすることなくノートがとれて。おかげで授業に集中できるわ」久美子はちょっと得意げだった。さっきはちょっととまどったけど、考えてみれば、胸について久美子同様の感覚を共有できる友達って今までいなかったのだ。それについて話せる人ができて、ちょっと嬉しかった。「作ってくれたお店、紹介しましょうか」
「うーん、どうしよう…。わたしパソコンってどうも苦手なのよねぇ。考えとくわ」そのままパソコンには目もくれず、無遠慮なまでに久美子の胸を見つめ続ける。どうやらパソコンは話しかけるきっかけにすぎず、本当に興味があるのは久美子本人の方らしかった。

 それは次の授業が終わった時も同じだった。休み時間になる度に、何かと話しかけてきては久美子にぴったりと貼りついてきて、久美子はちょっと辟易としてきた。なんというか――なれなれしすぎるのだ。
「ねえ堀江さん、久美子ちゃん、って呼んでもいい? もちろん、わたしの事はみちるって呼んで」今日会ったばかりなのにそういう事を言われるのはちょっと苦手だった。それにぴったり貼りついて離れず、奈緒美たちが付け入る隙すら与えないのだ。

 この日最後の授業が終わると、久美子はみちるをさっと避けるようにして加寿子と一緒に教室を出た。「なんか久しぶりって感じ」とお互い顔を見合わせて苦笑した。

(ああ、なんか調子狂うなぁ。肩こっちゃいそう)
 下駄箱で加寿子と別れた久美子はちょっと伸びをすると、いつものように保健室に向かった。そう、今日は9月1日、毎月の定期計測の日だった。
 保健室のドアを開ける。「いらっしゃい、待ってたわ」細川先生の声が聞こえる――と共に、その奥に先客の顔を見つけてどきりとした。
「あ、堀江さん。彼女は――知ってるわね。2学期からあなたと同じクラスになった愛原さん。ほら、彼女も胸がすごく大きいじゃない。やっぱり検診しようって話になって、来てもらったの」
 みちるは久美子の顔を認めると、嬉しそうににっこりと頬笑んだ。久美子はなんだか体から力が抜けていくような気がした。

 普段ならこの時間、保健室には細川先生と2人きりで他の人は決して入れない。しかし今日は、同性とはいえ知り合ったばかりの他人がいる。いつもなら早く終わらせようと来てすぐに服を脱いでバストを測ってもらうのだが、まだよく知らない女性の前で服を脱ぐのにはためらいがあった。
 どこか落ち着かない様子で、そのまま空いていた椅子に腰掛けてじっとしていると、その様子を見て、みちるの方が立ち上がった。
「どうしたの? 堀江さん。恥ずかしがることなんかないのに――。じゃあ、わたしから先に測らせてもらうわね」
 そう言うと、みちるは久美子の前で臆することなく制服を脱ぎ始めた。まるで自分のうちでお風呂に入る時みたいになにげなく。腕を伸ばしてブラウスのボタンを一個一個はずしていく。ボタンをはずすたびに広がっていくすき間から、大きく盛り上がった純白のブラジャーが垣間見えた。
 久美子はなんか不思議な気がした。自分以外でこのように大きなバストの持ち主は見たことがない。なんか自分がそこにいて服を脱いでいるような、そんな錯覚にみまわれそうになった。
 ブラウスを脱ぎ終わるとよどみなくブラジャーをはずしにかかる。パチン、パチンと背中のホックがひとつひとつはずされていく。最後のホックをはずし終えた途端、はじき飛ばされるようにブラが踊った。
 ぷるん。中から豊満この上ないおっぱいが現れた。大きい――。久美子に勝るとも劣らないきゃしゃな身体にも関わらず、その胸は成熟しきった超特大の果実のようだった。胸の大きさそのものは久美子には及ばないものの、その果実はまったく垂れ下がることなく、さあもいでくださいとばかりに大きく張り出しているのだ。やはり比類のない迫力に満ちていた。
(たしかちょっと前までは、堀江さんの胸もちょうどこんな感じだったわね)
 細川先生はふとそんな事を考えていた。確かに大きさではかなわないが、その張り、突き出し具合、そのすべてが久美子の胸と酷似しているように思えたのだ。
「堀江さん、脱がないの?」
 みちるは自信たっぷりに胸を反り返らせながら、久美子に見せつけるかのごとく胸を突き出してみせた。久美子は恥ずかくて身じろぎもできない。みちるはそんな様子を見ると、今度は臆することなくバストを細川先生の前にさし出した。
「それじゃ先生、お願いします」
「え、ええ。じゃあちょっと脇を開いて…」
 細川先生も、そのあまりに堂々とした態度にちょっととまどっていた。が、いつものようにメジャーをみちるの胸にまわす。
「えーと、173センチね」
 細川先生の声が、保健室の中にぴっと通った。

「それじゃあお先に」みちるは自分の計測を終えるとさっさと服を来て保健室を出て行った。久美子は細川先生と黙って目を見合わせた。なんか毒気に当てられたかのようにしばらくそのまま押し黙って動けなかった。
「なんか――すごかったですねぇ」久美子がぽつりと口を開く。
「うん。なんかあの年の割には腹が据わってるというか…とにかく立派なものだわ。生まれついての性格なんでしょうね」
「胸も…すごい大きかったし」
「何言ってんのよ。あれよりはるかに大きな胸してるくせに――」でもその落ち着いた態度からか、小柄な身体のせいか、サイズ以上に胸が大きく見えたことは細川先生も感じていた。
(それにしても、ああいう乳房の持ち主が他にもいるだなんてね…)
「さ、あの子のことはもういいわ。あなたの方も早く測りましょう。夏休みの間にどれだけ大きくなったか、じっくり見せてもらうからね」
「え…あ、はい…」
 ゆさっと胸を躍らせながら久美子は細川先生の前に立った。
 久美子はブラウスのボタンを上からはずしはじめる。しかし第2・第3ボタンといくうちにどんどん腕が遠くなっていき、胸の頂点にあるボタンは、指先にひっかかるだけでかなり外しにくそうだった。なんだ落ち着かない。その心の揺れが指先に伝わり、かすかに震えてなかなかうまくはずれなかった。
(この子、とうとうここまで…)
 もどかしげに指を動かす久美子を見かねて、細川先生はそっと立ち上がってボタンに手を伸ばそうとした。
「あ、いいです。自分でやりますから」
「無理しないで。見てられないわ」
「でも…」
 久美子は顔が真っ赤になって手を下ろした。自分の思い通りにならないのが恥ずかしいのだろう。
 しかし細川先生もボタンをはずそうとして意外に難しいことに気づいた。とにかくブラウスが内側からすさまじい勢いでピンとはりつめているため、ボタンをはずそうにもそうそうは穴に通りそうになかった。
 ちょっと力をこめてボタンを引っ張る。
「あ、そんなに力いれたら――」
 久美子の声も空しく、その途端ボタンはピーンとすごい勢いで飛んでいった。それとともにブラウスも大きくはだける。
「あ――ごめんなさい…」
「いえ、いいんです。むりむり詰め込んでましたから…」
 むりむり詰め込んでいたのはその下のブラジャーも同様だった。いや、こっちの方がもっとひどい。もうカップの四方八方から胸があふれ出さんばかりになっているのをどうにか強引に押し込んでいる。
(これはもう、限界どころの話じゃないわね)
 背中に回ると、縦に15個並んでいるホックはすべて変にゆがんでかろうじて止まっている感じだった。強度的にも限界だろう。
「ブラ、はずしてあげるわ」
 有無を言わさずホックを"解体"しにかかる。もう2度とつけられなくなるだろうが、それを承知で壊していかないともはやはずせそうになかった。
 すべてのホックをはずし終わると、久美子がふーっと深く息をするのが聞こえてきた。
「苦しかったでしょうに…」
「あ、え、いや。慣れてますから」
(そんな無理して、せっかくのバストラインが崩れたら…)そんなことを思いながら前にまわると、愕然とした。
 久美子のバストは、先月までとは比べ物にならないほど充実して張りつめているように見えた。大きさだって、また格段に大きくなったような…。バストラインが崩れる心配なんてどこ吹く風、どんなものでもその胸を変形できないのではないか、と思えるほどの力強さが感じられた。
(夏休みの間だけで予想以上に大きくなっているわ。まったくちょっと目を離しただけでこんなになるなんて…) その胸を改めてみて、先生は内心驚きを隠せなかった。
「それじゃあ、バスト測るわね」
 さっきの転校生もすごかったけど、今となってはずいぶんと貧弱に見える。それほどまでに久美子とはスケールが違っていた。
 なんとなくメジャーを持つ手が震えてくるのを必死で押さえながら、苦労して胸に一周させた。
「254センチ」
 一語一語に力を込めて、メジャーの数字を読み上げた。

 久美子は持っていた針と糸で先ほど飛んだブラウスのボタンをつけていた。ブラジャーは、なんとか壊れず残ったホック3つをどうにか引っ掛けてそれで済ましていた。これから「トリオンフィ」に行って新しいブラを手に入れるのだ。それまで持てばいい。
「ねえ、ボタンはいいとして、それどうやって着るの?」さっき、指がボタンにほとんど届かなくなっているのを見て、気になったのだ。今はまだなんとかなっているが、この調子では早晩、どうにも届かなくなる…。
「あ、それはもう"匠の技"があるんですよ」
 久美子はなぜか自身ありげに答えた。「こないだ思いついたんですけどねー」なんて楽しそうにしながらボタンのつけ終わったブラウスを広げると、胸の辺りのボタンを予めはめ始めた。
「まずは着る前にこうしといてですね…」
 そうした上で頭からすっぽりとかぶった。ブラウスの下の方はボタンが外れているのでなんてことはないが、案の定胸の辺りがつっかかった。しかしもともとそれを見越して作ってあるブラウスだから、通らないことはない。かなり慎重に少しづつブラウスを下にひっぱっていき、ぴったりと胸をその中にはめ込むように着こんでいった。
 最後に上下の布を微妙にひっぱって微調整すると久美子はニコッと笑う。それからおもむろに上下のボタンをはめていく。すべてのボタンを止め終えると、あたかも普通にブラウスを着たようにしか見えなかった。
「なるほど…」言われてみれば単純。コロンブスの卵としか言いようがない方法だったが、「着てからボタンを嵌める」という既成事実にとらわれてしまうとなかなか思いつかない、うまい手だと思った。
「要は、止められない所のボタンだけあらかじめ止めといて、後はかぶった後で止めるってだけです。まあ止めてあるボタンの所を無理に押し込もうとするとボタンが飛んじゃうんで、そこら辺の力加減が"匠の技"ってとこなんですけどね」久美子はちょっと得意そうだった。ようやくいつもの調子を取り戻したらしい。

 それじゃ車出してくるから、と細川先生が駐車場に向かうと、久美子も一緒に保健室を後にした。最初の角を曲がろうとした時、その影のところに女の子がひとり立っているのを見つけた。真っ先にその大きく突き出した胸が目に入る――みちるだった。どうやら久美子が出てくるのをここでずっと待っていたらしい。
「終わった? ね、一緒に帰らない?」
「え――あ、あのう…」久美子がとまどって返事しないうちに、みちるは興味深々とばかりに訊いてきた。
「で、何センチだった?」
「え――な、何のこと」
「もう、分かってんでしょ。ね、おっぱいの大きい同士さ、仲良くしよ」
「――254センチ…」久美子はちょっと迷った上、結局正直に答えた。
 みちるは目を丸くした。
「すっごーい。それって、ちょうど100インチじゃない。100インチのロケットおっぱいかぁ…うらやましい」
「愛原さんだってすごい大きいじゃないですか。そのうち…」
「みちるでいいよ。それにね――わたし、もう胸の成長止まっちゃったんだ。あ――今ほっとしたでしょ」
「え、そんなことない…」
「いや、今ちょっと口元がゆるんだ。抜かれる心配がなくなったんで安心したんだ」
 久美子がどう答えていいかわからず口ごもった時、外から細川先生の車のクラクションが聞こえてきた。
「あ、悪い。わたし、今日これから行く所があるから。また明日ね」久美子はこれ幸いと細川先生の車に飛び乗った。
 みちるは、久美子が乗った車が校門を出て行くのを眺めながら、興味深そうにつぶやいていた。
「ふうん――そういうことかぁ」

 それから1週間ほど経つうちに、みちるはまたたく間にクラスの中での存在感を大きくしていった。それは性格的な要素もあったろう。少し内弁慶な所のある久美子に対し、みちるは外交的で、誰とでも仲良くなれるような快活さを持っていた。なんだかそのまわりをパッと明るくするような、久美子とは一味違ったオーラに満ちあふれていて、人を惹きつけずにはいられない魅力がある。
 この突然現れたもうひとりの超乳美少女の存在は恐ろしいまでのスピードで他のクラスにも伝わっていった。男子生徒の間では、早くも久美子派/みちる派に分かれて人気を二分しているらしい――と本人のあずかり知らない所で熾烈な競争が始まっていた。
 しかしみちるは――そんな騒ぎをよそに、なにかというと久美子になれなれしいほどまとわりついてきた。それは奈保美たちいつものグループが入りこめないほど執拗で、正直久美子は辟易していたが、それでいて妙に憎めない、人あたりのやわらかさがあって、どうもいやとは言いにくい雰囲気があった。
 それに、初めて会った超乳の持ち主同士、他の人には分からない話題で盛り上がれる、という面も確かに存在した。
「ねえ、久美子ちゃん。久美子ちゃんはブラジャーどこで作ってんの?」
「新宿のトリオンフィよ」
「やっぱりー。わたしも。あそこいいよねー。作りがしっかりしてて」
 今までそんなことを話せる友達がいなかったこともあって、久美子もちょっと嬉しかった。そんなこともあっていつしかみちると一緒にいることが急速に多くなっていった。

(ああ、なんか調子狂っちゃうなぁ)
 その日、久美子はまたいつものように学校のプールを借りてひとり泳ごうとしていた。今日もまたみちるにずっとつきまとわれて、ちょっとげんなりしていたのでそれを泳いで吹き飛ばしたかったのだ。水着に着替えてさて飛び込もうとプールサイドに立ったその時、背後に人の気配を感じて振り返った。
「あは、久美子ちゃん、いた」
 みちるだった。それもちゃんと水着姿で。ツーピースの久美子に対して、みちるはなんとスクール水着を着こんでいる。ワンピースの胸がとてつもなく大きく盛り上がって壮観だった。
(どうして…ここに) 久美子はここは自分一人だけの時間だと思っていたので驚いた。
 みちるが久美子の元に駆け寄ってくる。スクール水着の胸がぶるんぶるんと跳ね回った。
「え…あ…」
「久美子ちゃん、ひとりでこんないいことしてんだもの。ね、わたしもいいでしょ。お願い」細川先生だ、とその瞬間思い当たった。先生、どうもみちるを久美子と区別なく扱おうとしている所がある。そりゃ先生として当然のことなんだろうけど――なんとなく先生は「自分の味方」でいて欲しかったな…。

 それにしても、スクール水着に包まれたみちるの胸はいつにも増して壮観だった。おっぱい全体がみっちりとすき間なく詰め込まれているせいで、いつも以上に大きく張り出しているように見える。
(なるほど――スクール水着って、こうして見ると却って胸が目立っちゃうのね…) 久美子は今さらながら水泳大会の時に自分に向けられた視線を思い出していた。それにしてもみちるはいつものブラウスといいこのスクール水着といい、どうやったら自分の胸が大きく見えるかを知り抜いていて、それを実践しているような気がしてしょうがなかった。
「それにしても」みちるはみちるで久美子の水着姿をじっと見つめ続けていた。「久美子ちゃんのおっぱい、すごいわねぇ。今にも水着がはじけ飛んじゃいそう」
「あなたの胸だってすごいじゃない」
「ううん、久美子ちゃんとは比べものにならないよ。だって久美子ちゃん、どう見たってわたしよりずっと大きいじゃない。それに…聞いたんだけど、今もものすごい勢いでおっきくなり続けてるんでしょ。いいなぁ。わたしももっともっと大きくなりたい。久美子ちゃんの胸、ちょっとでいいから分けてもらえたらなぁ」
 まるで今にもかぶりつかんばかりの勢いでみちるは久美子の胸を凝視し続けていた。
 久美子はその視線に耐え切れず、自分から「さ、泳ぎましょ」とみちるを誘ってしまった。結局それから1時間あまり、2人でプールで並んで泳ぎ続ける。相変わらず底なしのスタミナでダイナミックに泳ぎ続ける久美子に対し、みちるは――やはりなかなかの泳ぎを見せた。久美子につきあって最後までついてくる、というだけでもすごいものだ。とはいえ終わった頃にはかなり息が上がっていて、足元も疲れでこころもとなかったけども。
「はぁ…。久美子ちゃん、すごいわねぇ。まるっきり休みなく…。いつもこんなに激しく泳いでるの?」
「え? うん、まあね」一方の久美子は息ひとつ切らしてない。正直時間さえ許せばまだまだ泳ぐ気満々だった。
「すっごーい」みちるは素直に感嘆の声を上げた。「ねえ、そのおっぱいの中に、いったい何が入ってるの?」
「え?」久美子は驚いてみちるの方を振り返った。正直、そんなこと考えたこともない。
「そのおっきなおっぱいの中いっぱいに、エネルギーがびっちり詰まっちゃってんじゃない? でなきゃ――信じられないよー、その元気っぷり」
 なんだぁ、と久美子は笑いかけた。みちるが冗談を言っていることが分かっってなんだかほっとしたのだ。
 その時、久美子のすぐそばまで歩み寄っていたみちるの足がもつれた。
「きゃっ!」
 かわいらしい声とともに、みちるは久美子の体にだきついた。
(あ…) 久美子はハッとした。その拍子に、みちるの片手が支えを求めて久美子の胸に伸びていき、ぎゅっと力いっぱいつかみかかったのだ。
 しかし久美子の胸はあまりに大きく、しかも張り切っていたのでうまくつかめずに手から逃げてしまう。そのため一層みちるは、今度は両手いっぱいにその胸をもみしだくようにはさみ上げた。
「だ、大丈夫?」
 みちるは思いっきり久美子の胸に顔をうずめ、両手でバストを抱え上げるような体勢になってしまっていた。それでようやく体が安定すると、ちょっと恥ずかしそうに足元を確かめてから手を離した。
「ご、ごめんなさい」自分の足で立つと照れ隠しのように苦笑いをした。「おっぱい大きすぎるから、バランスくずしちゃったぁ。ね、久美子ちゃんはそんなことない?」
「うーん、特にあんまり気にならないけど…」
「やっぱり久美子ちゃんはすごいなぁ、わたしなんかしょっちゅうだよ」
 その日はその後すぐ服に着替えてそのまま別れたが、ひとりきりになると、みちるは先ほど久美子の胸をさわった感触を思い出すかのように両手を見つめると、ぽつりとつぶやいた。
(久美子ちゃん、ほんとすごいわぁ。もう、ぎっっしり詰まってる…)

 ――――――――――――

「ね、久美子、今日さぁ…」
「あ、ごめん。急いでるから」
 終業のベルが鳴り響くと、久美子は奈保美の誘いを振り切って急いで帰途についた。
「もう…最近つきあい悪いんだから」
 ぼやく奈保美の声を背にしながら、久美子は振り返りもせずに足を速めた。とはいえ実は特に用がある訳ではない。しかし、顔には一刻を争うあせりの表情が浮かんでいた。
(早くしなきゃ――もう、もたない…) 自転車のペダルをこぐ足にもいつも以上の力がこもっている。おかげで普段よりだいぶ早く家に帰りつくことができた。

 玄関に駆け込むと、あわててドアに鍵をかけて、そのまま靴も脱がずにブラウスのボタンに手をかけた。胸の先のあたりのボタンがあせった指に引っかからずうまくはずれない。「ええい」襟元とお腹の部分だけをはずすとそのまま頭からブラウスを引き抜いた。
(早く…)
 そのまま両手を背中に回してブラのホックをはずしにかかる。背中の肉にがっちり食い込むようになっていてなかなかうまくはずれないが、こればっかりは無理するわけに行かない。ひとつひとつ丁寧に外していく。
「ふうっ――」ようやくすべてをはずし終わった時、久美子はやっと大きく息をついた。
(間に合ったぁ――)
 ブラがきつくなってきて、どうしようもなく苦しかったのだ。今朝は時間はかかったがなんとか胸に嵌められたけど、昼頃からまるで胸をブラで縛りあげられているかのようにどんどん胸が張ってきて、我慢しきれなくなってきていた。ちょっとでも力を込めたらホックが吹っ飛びそうだった。だから懸命に我慢してそーっと息を潜めつつ一目散に帰ってきたのだ。今までブラに胸を締めつけられて続けていた分、胸全体にとてつもない開放感が漂う。
(あー楽だぁ。ブラしてないのってこんなに気持ちいいものだったんだ…)
 ホックを外してカップが胸の上に乗っかっているだけのブラを肩から引き抜き、久美子は上半身裸のあられもない姿でしばらくそのままその気持ちよさを味わっていた。
(なんかますますブラがもたなくなってきたなぁ)
 最近、また一段と胸の成長が加速してきた気がする。それに伴い、ブラの使用期限がどんどん短くなっていくようだった。去年は月1回で済んだ。それをこの春から半月に1回に変えた。しかしそれでも――近頃、ひとつのブラはそのたった2週間すらもたすのが難しくなってきていた。3日ぐらい前からホックがなかなかしまらなくなった。おとといは一日中ブラの存在が気になってしょうがなかった。きのうはきりきり締め付けられるような感覚があって、帰ってはずしてみたらあちこちに跡がくっきりついていた。そして今日…。
 久美子は視線を下に向ける。そこには――ブラジャーなんか必要ないと言わんばかりに山のようなふくらみが隆々と盛り上がって、視界の大半を奪っていた。胸から下は、自分の体だって全然見えない。
(それにしても、近ごろますます元気だね、君たちは)
 久美子は目の前に拡がるバストにふと語りかけてしまった。実際、これ以上大きくなってどうするの?というぐらい隅から隅までぴっちり張り切っている。
 カレンダーを見る、明日はようやくトリオンフィに行く日だ。ようやく新しいブラジャーが手に入る――。とりあえず久美子は頭の中で今日これからのことを計算していた。
(ま、いいや。牛乳もまだ冷蔵庫にたっぷりあるし…。今日は特に出かける必要もないし、このまま家の中でノーブラでいよっと)

 久美子は裸の胸をさらしたまま、その上にタンクトップをじかに着込んだ。
(うわっ、これもきつい…)
 ブラの厚みがない分、かなりましになっているはずだが、それでも胸のあたりがぱんぱんにふくれあがってはじけ飛びそうだ。ぱっと見ではブラしている時と特に変わらないように見えるが、すこし体を動かすと一目瞭然、支えを失ったバストはちょっとの動きも逃さず増幅し、タンクトップの中で大波のようにざぶんざぶんと暴れまわった。
(これは…やばいよね、やっぱり)
 もしまたこれでタンクトップが破れでもしたら、おっぱいが丸見えになってしまう。7月のあの一件以来、「服は無理して詰め込んだら破裂する」というのが頭にこびりついている久美子は、ついつい慎重になってしまっていた。やっぱり外出はやめよう、そう決意した。
 けど家の中で歩いていても、動くたびに胸が服の裏地とこすれ合ってしまい、おっぱいの先がなんかこそばゆい。
(やっぱりノーブラじゃ、おっぱい落ち着かないなぁ)
 ブラジャーを着けさえすれば、そうしたものがすべてピタリとはまって安定するのだが――。そういう所はさすがトリオンフィだと思う。もっともその頑丈さゆえ破ける心配はまずないものの、その代わり無理すると久美子の張りつめた胸を情け容赦なく締めあげてしまうのだ。なかなかうまくいかないものだ。
 改めて自分の胸を見下ろす。おっぱいの谷間が上半分丸見えになっているけども外に出なければまあ大丈夫だろう。そうと決まれば、と家の仕事にとりかかろうと立ち上がった。
 ピンポーン。
 タイミングよく、ドアのチャイムが鳴る。なんだろう、届け物かな? と久美子は玄関に向かった。しかしその時インターフォンから流れてきた声は、思いもよらない人物のものだった。
「もしもし、久美子ちゃん、いる?」
 みちるだ。一体どうしたのだろう? 久美子の顔が不審な思いで曇った。

「うわぁ、久美子ちゃんの格好、すっごぉいセクシー。もうダイナマイツ!って感じ」
 ほっとく訳にもいかないし、みちるを家に上げると、みちるは久美子の格好を見た途端感激したようにはしゃぎだした。
「そ、そう…?」久美子はその反応にとまどっていた。これってセクシーっていうの? けっこう、必要にせまられて仕方なくやってるところあるんだけどな…と内心訝りながら、みちるにお茶を淹れた。
「うーん、おいし」お茶を一口飲んでから、みちるがまた口を開いた。「今時、こんなおいしいお茶淹れられる女の子なんてそうそういないよ。そういえば久美子ちゃん、お料理も上手なんだって? いいなぁ、久美子ちゃんの旦那さんになる人は幸せだ」
「そんな――」久美子はみちるのストレートな、ちょっと古臭いほめ言葉にとまどっていた。彼女には、奈保美たちとはどこか違った独特なノリがある。こういうノリ、どっかで会ったことあるんだけどなぁ、記憶を追おうとするが思い当たらないでいるうちに、みちるはさらに畳みかけてきた。
「ね、久美子ちゃんってカレいるの」
「え? い…いないよぉ、まだ…」
「え、いたこともないの? へえ、そうなんだ。欲しいとも思わない?」
「うーん、あんまり――。そりゃ、いつかは――まあ、わたしにもそういう時が来るんだろうとは思うけど…なんかピンとこないの。まだ早いかなって感じ」
「そんなことないって。久美子ちゃん、絶対早くなんかないよぉ」みちるは妙にきっぱり言い切った。
「その…みちるちゃんは…?」久美子はどうにか自分への矛先を変えたくて、相手に切り替えした。
「わたし? わたしはねぇ、ふふ…」そう言った途端、口の端をきゅっと上げて含み笑いをした。そのどこか艶美さを含んだ微笑がすべてを物語っているような気がする。
 久美子はちょっと不気味なものを感じた。その表情、なんだか同年代のものとは思えない。まるで酸いも甘いもかみ分けた年長者のような…。この人、今までどんな経験を積んできたきたのだろうか…。
「と、ところでみちるちゃん、今日はどうしたの? わざわざこんな所まで…」
 そう、思わず毒気に当てられて忘れる所だったけども、なんで彼女が久美子の家まで来たのか、その目的を訊いていなかった。
「今日? 今日はね…」みちるは、よくぞ訊いてくれましたとばかりにうなずくと、すっと立ち上がった。「2人っきりで、久美子ちゃんとじっくり話がしたかったのよ」
 そのまま手をブラウスのボタンに這わせると、いきなりするすると服を脱ぎ始た。ブラウスの下から雪山のようなブラジャーが見える。その形に久美子も見憶えがあった。久美子も愛用している、トリオンフィのブラだ。しかしみちるはそのブラもためらいなくはずしていく。またたく間に上半身裸になって生のおっぱいをさらして、自身ありげに胸を張った。やはり大きい。中身がぱんぱんに詰まっていてまったく垂れる気配がないのもどこか久美子に似ていた。
「どう、私のバスト。大きいでしょう。久美子ちゃんのも見せてよ」

 久美子はあまりに予想外の事態に唖然としてしまった。いきなりクラスメイトの家にやってきて自分から服を脱ぎだすだなんて――。しかし久美子も他人事ではなかった。みちるはその大きな裸の胸を揺らしながら久美子のすぐそばに寄り、タンクトップひとつに包まれた胸に手を伸ばした
「ねえ、久美子ちゃん…ひょとして今、ノーブラ?」
「え…」久美子は反射的に両手をガードしようとしたが、みちるの手が久美子の胸に伸びる方がはるかに早かった。久美子はなんとかその手を払おうとしたが、みちるは巧みにその手をすり抜けて久美子の着ていたタンクトップの裾をつかみ、一気に引き上げた。
「キャッ! なにするのよ!!」
 さっきブラジャーををはずしたままのタンクトップの向こうから、そのまま無防備にべろんと超特大のバストがまろび出てきた。
「きゃは、やっぱりぃ。久美子ちゃん今日、学校ですっごいブラきつそうにしてたもんね。ここ数日、見てると日に日にどんどんきつくなっていくみたいで、今日はもう限界!って感じになってたから、きっと家でははずしてるんだろうなーと思ったんだ。大正解!」
 久美子はハッとした。それじゃあ何日も観察して、今日を見越してやって来たっていうの――。
「やめてよ、もう…」
「いいじゃない。見せてよ。こんな立派なもの持ってんだからさ」みちるはよだれをたらさんばかりの勢いで久美子の胸に顔を寄せた「それにしてもすごいわぁ。わたしよりおっぱいの大きい人なんて初めてよ。それも80センチも大きいだなんて――ううん、ここ数日でもっともっと大きくなってそう。わたしなんかもうぜんぜん比べ物にならないわ。うらやましい…」
 両手にぎゅっと力をこめて久美子の胸につかみかかった。
「キャッ! や…めてよ」
 久美子は抵抗しようとする。しかし、どうしたことだろう。みちるに胸をつかまれた途端、なんだか身体中から力が抜けていくような感じがして、思うように動けなかった。
(え…なに――? 力が入らない)
「あっらー、久美子ちゃん、ひょっとしておっぱい感じちゃった?」
「そ――そんなこと――ない…。わたし――そんなんじゃ――ない――もん」
 必死に力を振り絞ろうとするのだが、どうにも体がいう事をきかなかった。みちるは、そんな反応を楽しむかのように、脱ぎかけたタンクトップを両腕から引き抜くと久美子のおっぱいの感触をじっくりと味わうように乳肉の中に手を埋めるように突っ込んだ。
「ねえ、久美子ちゃんってほんとにカレいないの?」
「え? い…いないよぉ」
「ふーん、じゃあ、このおっぱい、まだ誰にもさわられたことないんだね。誰にもまれた訳でもないのに、こんなに大きくなっちゃったんだ…」
 みちるは感に堪えないように久美子のおっぱいをさらにこねくり回す。
「でもさ、びっくりしたよ。まさかわたしよりおっぱいの大きい女の子がいただなんて。正直ショックだった。できることならそのおっぱい奪いとっちゃいたい…」
「え――や、やだ」久美子は反射的に体をよじって胸の向きを変えた。
「やっだぁ、冗談よ。できっこないじゃん、そんなの。でも――うらやましい…。大きいだけじゃない。本当に雪が降り積もったみたいに真っ白で、しみひとつない、きれいだわぁ」
 みちるはさらに力を込めようと前に乗り出す。近づくとどうしても2人の超乳がぶつかりあってしまい、みちるは手だけでなく胸でも直接久美子のおっぱいを刺激しだした。
「すっごーい。久美子ちゃんのおっぱい、もう中身がぱんぱんに詰まってんじゃない。もうぷりっぷり――。ね、これ、ミルク出ないの?」
「で…出るわけないでしょ」突然何を言い出すんだろう、と久美子はとまどった。
「出ないの? ふーん」みちるは久美子のそんな反応を面白がるように見つめた。
「でもさ、久美子ちゃんがそっち方面はまるっきり奥手だってうわさ、本当みたいね。今時まだキスしたこともないってのもウソじゃなさそう…。
 ――ね、子供ってどうやってできるかって知ってる?」
「し、知ってるわよ。精子と卵子が結合して…」
「ふふっ、わたしが訊いてるのは、どうやったらその2つが結合できるか、よ。そのプロセスにある不可欠な行為について」
「も、もちろん! ま、まず男性のせ、性器をじ…女性の――」久美子はカーッと顔が血が昇っていくのを感じて続けられなくなってしまった。
「ぜーんぶ本で知った知識ね」
「わ、悪い!?」
「ねえ久美子ちゃん、いっくら本を読んだからって、実践が伴わなきゃ死んだ知識よ」
 真っ赤な顔のまま黙りこくった久美子をみちるはさも面白そうにじっと眺めていた。
「フフッ、ごめんごめん。実はね、久美子ちゃんがぜんぜん男を知らないっての、一目で分かっちゃったんだ。だって、そうでなきゃこんな大きなおっぱいかかえてながらあんなに男の子の前で無防備でいられるはずないもの。みんなを妄想の無間地獄に追い込んでいるのも知らずにね…。処女でなきゃ、そんな無神経なことできっこないわ。
 ね、久美子ちゃんだって、興味ないわけじゃないんでしょ」
「そんな――わたしには、まだ、早い――わ」
「そんなこと言ってたって――体は全然そうは思ってないわよ。もうこぉんなにおっぱいが大きくふくらんじゃってるのに…」

 みちるはそのまま体重をかけて久美子を押し倒した。久美子の胸に、自分の乳房の重量がまともにかかる。みちるはそのまま馬乗りになって久美子の両腕を押さえつけた。久美子の顔にいつにない恐怖が走る。
「ね、わたしが女の子でよかったわね。もし乗ったのが男の子だったら――久美子ちゃん、なにされちゃうと思う?」
 みちるはさも嬉しそうに頬笑む。一方久美子は得体の知らない恐怖を感じていた。乳首の先がふるふると小刻みに震えている。
 みちるは改めて久美子のバストをつくづくと眺めた。2つのふくらみは、横になってもまったく型崩れすることなく、巨大な鋭角のドームのようにうず高く盛り上がってふるふるとやわらかそうに揺れている。
「ほんとすごいわぁ。寝てもぜんぜん横に流れないじゃない。高さもすごいあるし。まるでアルプスのお山みたいよ。――わたしなんか全然かなわない…」
 みちるはちょっと表情に影を落とすと、つんと指先で久美子のおっぱいを突っついた。おっぱいが一瞬大きく揺れる。しかしひと揺れするたびに少しづつその幅が小さくなっていき、間もなくまた落ち着いていった。みちるはその動きをじっと観察しながら、なにやら重大な秘密をそっと明かすかのようにひっそりと口を開いた。
「ねえ、久美子ちゃん、まだ自分じゃ気がついていないのかもしれないけれど、実はもう久美子ちゃんの体の中には、そういう気持ちが今にも満ちあふれんばかりになってるのよ」そして自分のおっぱい越しにじっと久美子のバストを見つめた。「ねぇ――女の子のおっぱいの中に、ほんとはいったい何が詰まってるか知ってる?」
「し、知らないわよ」
「あのねぇ、実は、女の子のエッチな気持ちがいーっぱい詰まってるのよ。男の子とああしたい、こうしたいって気持ちが、みんなおっぱいにため込まれちゃってるの。ほんとはね、エッチな子ほど胸が大きいの。だからねえ、久美子ちゃんは実は他の子の何10倍も――ううん、何100倍もエッチな女の子なのよ。なのにそんな気持ちをむりやり押さえ込んじゃってるから、こんなにおっぱいが膨れあがっちゃったの」
「ち、違う。わたし、そんな女の子じゃない」
「自分で気づいていないだけよ。このまんまじゃ、エッチな気持ちがどんどんおっぱいにたまってって、しまいにはパンクしちゃうぞ。ほぉら、聞こえてこない? おっぱいに手を当てると、今だって、久美子ちゃんの中でどんどんわきあがってくるエッチな気持ちが、滝のようにおっぱいの中に流れ込んでいくのが…」
「や、やめ…」
「ねぇ、クラスの男子の視線、感じない? みんな、久美子ちゃんのおっぱいさわりたくってうずうずしてるわよ」
「いやっ! 聞きたくない!!」
「でも、それも無理ないよね。だって久美子ちゃんの体、どこをとってもサイッコーにおいしそうなんだもん。特にこのおっぱいが…」
 両手で久美子のおっぱいをさらにもみしだこうとする。久美子の胸の上で、4つの超乳がぶつかり合い、ひしゃげて形を変えた。しかしどの乳房も張りつめてすぐに元の形に戻ろうとする。
「や、やめて…」
 いくらやってもみちるの両腕の間で2つの胸がぷるぷるするだけで、なかなかうまくつかめなかった。「ふぅ、すごい…。なんて大きさなの、想像以上よ。腕をいっぱいに伸ばしてもつかまえるのがやっとだなんて…。それにこのおっぱいの張り! どこもかしこもぷりっぷりして、ゴムまりみたいに何やってもぜんぶ吸収しちゃっう。まるで歯が立たないわ…」
「いいかげんにして! 怒るわよ」
 久美子はなんとか声をふりしぼり、怒りをあらわにしようとした。しかしどうにも迫力が出ない。
(ほんとにどうしたっていうの? 力が…ぜんぜん入らない)
 あたかもエネルギーを吸い取られたかのように、胸をさわられていくうちに、何だか体から力が抜けていくような気がした。いつもなら女の子ひとりぐらい訳なくはね飛ばせるのに――。
 久美子の様子が普通でないことを察して、みちるはそのままさらに久美子の乳首に目をやった。そこは、他の肌の色に比べてほんのりとピンク色に色づいているぐらいで、その境界線もあいまいだった。その先端に、ちょこんとかわいらしい突起が乗っている。
「すごいわね…。このおっぱい、真っ白でぷにぷにして、指に吸い付くわ。まるで赤ちゃんの肌みたい。ぽよっぽよ…。そうよね。久美子ちゃんのおっぱい、どんどん成長していくから、いつだって生まれたての細胞でできてるんだよね、きっと。それにこの乳首…。もう最高にかわいらしいわ。ここだけ子供みたい。ここもまだ誰にもさわられたことないのね」
「や…やめて…」
「ほんと、久美子ちゃんのおっぱいおいしそ。食べちゃいたいくらい」
 そう言うと久美子の胸の先をぱくっと口に含んだ。
「!」 今までに感じたことのない感触にびっくりした。さらに事もあろうに、含んだ口の中で乳首をぺろりと嘗め回したのだ。その瞬間、久美子の胸の中心を稲妻が突き抜けるような衝撃が走った。
「だめっ!」
 反射的に、今まで動かなかった体が反応する。なんとかみちるを振り払おうと思いっきり体をゆすった。
 ビシッ!
 思いもかけず、振り回したもう片方のおっぱいがみちるの頬に当たる。「え?」予想外の衝撃に、みちるはなすすべもなくカウンターをまともに喰らってしまった。その質量たるや半端でない。気がついたときには体が1メートルほども吹っ飛んでいた。
 それから数秒、2人は何が起こったか把握できず、呆然と見つめ合っていた。先に気がついたのは久美子だった。胸がみちるの腕から開放された途端、体はいつもの様子に戻っていた。そして自分がなにをしてしまったのかを把握したのだ。
「あ、ご、ごめん。大丈夫?」
 久美子はすぐさま起き上がってみちるの許に向かう。みちるは、ちょっとわざとらしげに痛がってみせたが、大したことはなさそうだった。
「うーっ、効いたぁ。あ、大丈夫よ。けど、すごい威力ねぇ。久美子ちゃんのおっぱいびんた」
「そ…そんな言い方しないでよ…」久美子はまた恥ずかしくなってうつむいてしまった。
「ごめんねぇ。久美子ちゃんがあんまりうぶだからからかいたくなっちゃったの。さっき言ったことはみんな忘れて。じゃあね」
 みちるは脱ぎ捨てたブラとブラウスを手早く身につけると、来た時同様風のようにさっと出て行ってしまった。

「なんなの…」
 みちるが出て行った後、久美子は服を着るのも忘れてじっとしていた。胸には先ほどみちるにもまれた手の感触があちこちにくっきり残っている。
「いやっ!」
 さっきまでの事が生々しく思い出されそうで、久美子はたまらずに胸を抱え込んだ。
 そのまま風呂場に入るとすぐさまシャワーを浴び、スポンジにたっぷり石鹸を含ませると自分の胸に何度も何度もこすりつけた。さっきみちるが刻み込んだ指の感触が一刻も早く消えてくれるよう祈るかのように…。
(あんなの――嘘よ。ぜったい嘘。わたし、そんな女の子じゃ、ない…)

 ――――――――――――

 次の日の朝、久美子は学校に行く足がいつになく重かった。きのうの事が気恥ずかしくてしょうがなく、みちるにどういう顔をして会えばいいのか見当がつかなかったのだ。なんて挨拶したらいいだろう…。だからしぶしぶ教室に足を踏み入れた時、みちるの机がまだ空いているのを見て、思わずほっと胸をなでおろした。
 しかしそのまま、いつまで経ってもみちるは姿を現さない。とうとう予鈴が鳴る。しかし教室にはもう誰も入ってくる気配はなかった。
 今日は休みかな?と思った時、高畑先生が朝のホームルームをしに教室に入ってきた。
「えー、突然ですがお知らせがあります。この9月から編入してきたばかりの愛原さんですが、お父さんの仕事の都合で急遽引っ越さねばならず、この学校もまた通えなくなってしまいました。既にきのうのうちに引越しを済ませ、新しい学校に向かっているとの事です」
 えっ! とクラス全員にどよめきが走った。
「えと、愛原さんからメッセージを預かっているので読み上げます。『短い間でしたがお世話になりました、お別れの挨拶もできずにごめんなさい』とのことです」
 ――きのうのあれは何だったの? 久美子は訳が分からず混乱した頭の中で、次々と疑問がわきあがって止まらなくなっていた。最後だからあんなことを? ううん、なんか違う。なんだかまるできのうので目的が達成されたからもうここに来る必要がなくなったみたいな――でも、何で――?…。

「あ、お姉ちゃん? わたし」その頃、当の愛原みちるは道端に置いた大きなキャリーバックに腰掛けながら、携帯で話しこんていた。「――うん。例の堀江久美子ちゃんに会ってきたわ。――だぁいじょうぶだって。まあ久美子ちゃんのおっぱいはちょっともんできたけどね。――んもう、ちょっとだけよぉ。で、お姉ちゃんが心配している件だけどね、少なくとも今んところはまだ全然大丈夫そうよ。うん、まだまだあれぐらい余裕で受け入れちゃってるみたい。乳首なんてかわいいもんよ。別に血管浮き出てるわけでもないし――ほんと、久美子ちゃんのおっぱい、真っ白ですっごいきれいなの。うらやましくなっちゃった…。それにしても――お姉ちゃんの推測はわたしも当たってると思う。うん、まちがいなくわたし達と同類だわ。ちょっとさわってみただけだけども、あの感触、間違いない。あのおっきなおっぱいの中にね、例の"あれ"がたまりまくってるのよ。それももう信じられないほど厖大な量がね。しかも今、おっぱいの中に刻一刻とさらにたまっていってるのが、それこそ触れた手からその勢いが伝わってくるぐらい分かるの。もう想像を絶するぐらいの量のね。それにしても――あのおっぱいをさわった時はびっくりしちゃったわ。あんなに桁違いなものだなんて…。わたしなんてもう全然太刀打ちできない。うーん、確かにちょっと心配だけど、このまま様子見ててもいいんじゃないかなぁ。むしろ、いったいどこまで大きくなってくれるか、そっちの方が興味津々なの。もう――、お姉ちゃんの方が心配性なだけよ」
 口調は一貫してくだけた気安いものだった。しかし言葉とは裏腹に、みちるの表情は真剣そのものに見えた。
「うん、詳しいことはこれから報告に行く。え? ――いいわよぉ。久しぶりに女子高生気分も味わえたし。楽しかったわ…」
 話し終わって携帯を切る。その途端、みちるの口は舌なめずりをせんばかりの妖しい笑みを浮かべた。心に浮き上がってくる感情が抑えきれないようにその笑いはいつまでも止まらなかった。
(まだちょっと早かったみたいね。"食べごろ"になるまで――あと1年ぐらいかなぁ。――ああっ、今から楽しみっ!)