BB-Virus

ジグラット 作
Copyright 2006 by Jiguratto All rights reserved.

Case 5

 次に来る患者のカルテを見て、私は思わず緊張感が走るのを覚えた。――彼女がこの病院にいることは、私がここに来た時点でもちろん聞いてはいた。しかしとうとう顔を合わすことになるのかと思うと、どういう風に接していいのか戸惑いを隠せなかった。

 ノックの音がした。
「お入りなさい」
 私の声に応じて、ドアが開いてひとりの少女が入ってきた。先ほどの古室さんよりさらにひときわ大きく発育した乳房がやっとのことでドアを通り過ぎてくる。私は思わずハッとなってその少女を見直した。しかしそれは胸の大きさのためだけでは必ずしもなかった。その子は、皆と同じく病院で支給された地味な白衣を着ているにも関わらず、なにやら体中からオーラがにじみ出ているような存在感があったのだ。その態度も、1歩踏み出すたびにノーブラの胸がどゆんどゆんと勢いよく揺れてるのも構わず、背筋をぴんと伸ばして堂々としている。年齢に似合わず、いかにも人前に出ることに慣れているように感じられた。
「まず、名前と発病時の年齢を教えてちょうだい」
 すると少女は、わかるでしょ、と言わんばかりの不満そうな表情を一瞬浮かべ、自信ありげにある名前を口にした。しかし、それはカルテに載っている名ではなかった。
 私は唇を真一文字に結んだ。もちろんその名前は知っていた。というか多くの人にとって、彼女はその名前で知られている。しかし今ここで必要なのはそれではないのだ。
「――それはあなたの本当の名前ではないわね。本名を言ってちょうだい。それから年もね」
 今度は相手のほうが表情を固くした。数秒間そのまま動かず、やっと観念したかのように口を開いた。
「石津ゆかり、16歳です」
 なんだか本名を言う方が苦痛のようですらあった。その理由も容易に想像がつく。彼女は最初に言った名前では、グラビア雑誌やTVでその顔を見ない日はない、というほどのトップアイドルだったのだから。そう、ほんの半年ほど前までは。
 そんな彼女が人気絶頂のさなか、いきなりTVはもちろんすべてのマスコミからパタリと姿を消してしまったのだ。騒がれないはずはない。一時期は失踪説から不倫逃亡、はては死亡説までまであらゆるデマがスポーツ誌やネット上を飛び交った。最近は少し沈静化してきたが、幸いにして彼女がこの病院に隔離されていることはどこにも漏れていなかった。

 名前を言ったきり押し黙っている。こちらも少しそのまま彼女を観察した。どこか落ち着きなくそわそわと体のあちこちを揺すっている。少なからずいらついているようにすら見えた。無理もない、彼女はほんのちょっと前まで、連日多くのファンの目にさらされ、注目を浴び続けてきた存在なのだ。それが外界からいきなり隔絶され、この病院の建物内から一歩も出る事を禁じられてしまったのだから。
 気持ちは分かるが、この病気の治療法はもちろん予防方法すら確立されていない現在、外出を許すわけにはいかなかった。そのことは一応理解してはいるようだが、それでも我慢は限界に達しているようだ。

 改めてゆかりの胸を見る。大きい。いままで診察してきた患者の中でも格段に膨張していることが一目でわかった。アイドル時代、彼女はかなりスレンダーなスタイルだったはずだが、今も体そのものはほとんど変わらずに、乳房だけが巨大化していた。そのバストはボディラインからほとんどあふれ出さんばかりに膨れあがってとてつもない重量感があるのに、にも関わらずまるまると張りつめて力強く前に張り出しているのが服の上からでもはっきり分かる。着ているものはサイズ的にそうとう大きめでだぶつき気味に作ってあるのに、胸の辺りだけは中からいっぱいに張りつめてボタンが飛びそうになっている。自分でも気になるのか、少しでも余裕を作ろうとしょっちゅうあちこち引っぱっていた。明らかにミルクも相当たまっていそうだ。いったいどれぐらい搾ってないのだろう。これは覚悟が必要だと思った。
「それじゃあ、あなたの胸がそうなった時の事を話してくれる?」
 彼女はしばらく俯いたまま黙っている。こちらが再び声をかけようとした時、ようやくぽつぽつと話し始めた。

 ――あの日…。そう、あの頃は特に忙しくて、3日ほど睡眠時間もろくにとれない日が続いてたわ。けど念願の映画初出演も決まって、その監督やプロデューサーとも顔合わせを済ませた日だった。もう3日後には映画のための稽古に入ることもあって、次の日はほんとうに久々のオフになったの。撮影が始まったらまた当分休むどころじゃなくなるから今のうち英気を養っておくようにってね。実際、家に帰った時には口をきくのもおっくうな状態だったわ。
 でも疲れすぎて気分が昂ぶってたのか、どうにも目が冴えて寝付けなかった。だから仕方なく起き出して気分転換にシャワーを浴びてみたの。そうしたら水が胸に当たった時になんか今まで感じたことない変な気持ちになっちゃって――でもその時はなんだろ、って思っただけだった。
 でもお風呂から上がってまたパジャマを着た途端、胸が布地にすれただけでいきなり体がびくんとして…。え?何?と胸に手を当てたら、その内側からしびれるような感触がどんどん湧いて出て止まらなくなっちゃったんです。
 それから先のことは正直よく憶えてません。いいかげん眠かったし、しかし胸に当てた手がどうにも離せなくなって、そのまま横になったまま夢うつつでずっと胸をいじくってたんだと思います…。
 どれぐらい経ったのか時間感覚がないんですが、ドアのベルが何度もはげしく鳴らされたので目が覚めました。その時になって――自分の目の前に信じられないほどの大きなふくらみが2つ覆ってるのに気づいたんです。思わず大声を出しそうになって――けど、次の瞬間、それが自分のおっぱいだってことに気づいて気が遠くなりかけました。一方ドアの外では、マネージャーさんがインターフォンを通して大声でがなっているのが妙に遠くからのように聞こえてきました。
「何かあったの? 今日は10時にはスタジオ入りしなきゃならないのに、もう昼過ぎよ…」

「それじゃあ…」
「ええ、もうオフの翌日になっていたんです」
「ということは…その日の夜からずっと、オフの1日を挟んで、翌々日の昼ごろまでずっと胸を揉み続けてたってこと?」
「はい。おそらくそうだと思います。よく憶えてないんですが…」
 それでこんなに…。私は改めて彼女の超乳を見た。今までの4人と比べても格段に大きい。しかも恐ろしいほどぱんぱんに張りつめている。発病時に一昼夜まるまる揉み続けたらここまで大きくなるんだという実例を目の当たりにして、改めてこの病気の恐ろしさを思い知らされた。
「それでどうしたの?」
「わたしは驚いて何がなんだか分からず、思わず『助けて!』て叫んでしました。マネージャーさんが合鍵を使って入ってきて、わたしの胸を一目見るなり固まっていました。マネージャーさんもどうしていいか分からずその場で社長に連絡し――結局以降の仕事はすべてキャンセル、わたしは着れる服がある訳もなく、部屋にあった一番大きな毛布を体にくるんだ状態でマネージャーさんの車にそっと乗せられて――その日のうちにここに入れられたんです」
 話し終えると彼女は落ち着かない様子で足を小刻みに床に打ちつけた。

「それで、あなたの今のバストサイズは?」
 その質問に、ゆかりはちょっと得意げに胸を張った。重力をはねつける様に、乳房の先がぴくんと勢いよく上を向く。
「この前測った時で280センチぐらいだったかな。すごいでしょ。ここまで胸の大きなアイドルなんて前代未聞よ。はやくここを出て、今度は超乳アイドルとしてカムバックするんだから。もっともっとおっきくするつもりよ」
 自信に満ち溢れた顔だった。なんというプロ根性。こんなになってもまだアイドルをあきらめようとはつゆとも考えてないのだ。逆にこの胸を自分の新たなチャームポイントとして売りに出そうと考えているとは!
「え? あなたの胸、まだ成長してるの?」
「だってそういう病気でしょ、これ」
 事もなげに言う。私は内心不安になった。
(これで2人めだわ。成長期間が短いという報告にも疑いが出てきた)

「で、一番最近の射乳はいつ?」私はおそるおそる訊いてみた。しかしゆかりの返答は予想もできないものだった。
「え? なんのことです?」訳が分からないといった顔ですっとぼけたのだ。
「わたしはこう見えてもトップアイドルですよ。アイドルがいくら胸が大きくても、おっぱいからだらしなくミルクを垂れ流すなんて――ありえません」
 そう言えば聞いていた。彼女は院内でもかなり扱いが難しく、特にその胸を誰であろうと決してさわらせようとしない、男性にはそれが医者であろうとちらりとも見せもしないのだ、と。清純派アイドルのプライドと言えば聞こえはいいが、患者としては困り者だった。
 しかも彼女、この顔はちゃんと知っていながら、わざと…。
「それじゃあまさか、あなた、今まで一度も…」
「当たり前じゃないですか。そんなこと、許されません」
(なんてことを! そんなことしたら…)
 私は絶句した。プライドだとしても、程がある。あなたは病気なのよ――。

 わたしは密かになんとしてでもこの場で彼女のミルクを搾らなければ、と決意していた。しかしその態度から言っても、生半可のことでは胸にさわらせてすらくれそうにない。考えるのよ、なにかいい手が…。

「確かにあなたの胸はすごい立派だわ。わたしも医者としてこの病気の患者に何人も会ってきたけども、あなたほどの人は見たこともない」
 やはり彼女のアイドルとしての自尊心を刺激するのが一番いいだろう、と私は話しかけてみた。彼女は黙っていたが、口元がかすかにゆるんでいるのを見逃さなかった。内心やっぱり嬉しいらしい。
「それにしても280センチって――そんなに小さいかしら。今もっとあるんじゃない? よかったら測ってあげましょうか」
 私はメジャーを持って彼女に近づいてきた。彼女は、え、いいですよ、と言いながらもまんざらでもないらしく、逃げようとはしなかった。大きくなっていると言われてやっぱり気になるようだ。
 測るから、と言われて彼女はそっと服のボタンに手をかけた。しかしボタンをはずそうにも胸のあたりは手が届かずにうまく脱げない。私はそっと手を伸ばしてボタンをひとつひとつはずしていった。
「すいません」
 ボタンひとつはずすにも生地がぱつんぱつんに伸びきっているので骨が折れる。すべて終わった時にはかすかに汗が浮かんでいた。
 やっとのことで服を脱ぐと、ぷるん、と乳房が中から大きくひと跳ねする。すごい――わたしは絶句した。その大きさはもちろん、まるで触れるのがためらわれるほど乳房が2つともぱんぱんに張りつめている。いったいこの中にどれほどのミルクが溜めこまれているのだろうか、想像すらできない。
 わたしはゆかりの背中にメジャーをまわし、その両端を彼女の胸の前で合わせるよう伸ばしていった。
「そういう風に測るんですか?」ゆかりは不思議そうに声をかけた。「前にはいつも背中で合わせてたんですが」
「あなたぐらいの大きさの人の場合、こうやった方が正確な値が出るのよ」手の内を見透かされたのではないかと内心冷や汗を書きつつ、私は適当なことを言った。彼女の胸の前に自分の手を持ってくるのが目的だとは口が裂けても言えない。
 実際、測ろうとするだけでメジャーがむちむちと押し返してくる胸にはじき飛ばされそうで、なかなか上手く伸ばせない。何度もメジャーをすべらせてしまう度に「すごいわぁ、あなたの胸、こんな形よく張りつめた乳房なんて見たことない」と褒めちぎりながら、なんとかしてやっとうまく上手くメジャーを這わせて胸の前に持ってくることができた。やれやれ、とようやく端と端を合わせようとした時、予想外の事が起こった。
「え? メジャーが足りない!」
 3メートルあるメジャーを懸命に伸ばしても、胸の前では数センチの隙間ができてどうしても埋まらなかった。ということは、以前測った時から既に20センチ以上膨張していることに…。
 彼女の顔に驚きと、ちょっと嬉しそうな困惑の表情が浮かんだ。そこに隙が見えた。今だ!と私はメジャーを放り出すと、両手でも抱えきれないほどの乳房を力いっぱい揉みしだきはじめた。

「やめて、そんな――無理矢理…。やめなさい」
「いいえやめないわ。あなたのためなのよ」
 掌を押し当てるようにしてぐいっとつかみかかる。「ひぃっ!」彼女が思わず声を上げた。
 やっぱり――乳房の中は、たまりにたまったミルクでぱんぱんに張りつめている。感度も極限まで敏感になっていることだろう。ここまでになるためには、相当の我慢をしていたはずだ。それでもなお抵抗するのはさすがというか…。
「だ、だめ…いやっ」
 にわかに口調が弱まる。意地でも出さないつもりらしいが、本当はもう我慢も限界で、自分でも出したくてしょうがないのだ。案外さわらせなかったのも、ミルクがあふれてしまうのが心配だったからかもしれない。それにしてもなんという弾力だろう。座ってて自分の膝の上いっぱいを占領しながら、押しても押してもそれに倍する力で押し返してくる。まるで空気を詰め込みすぎたゴムマリだ。うっかりするとこちらがはじき飛ばされてしまいそうになる。
(でも今出さなければ、大変なことになる)
 わたしは必死でその胸にへばりついた。その巨大な胸に、ほとんど体ごと乗っかってしまいそうだ。
「や、やめてぇぇっ」
 彼女の声が必死さを増す。しかし感じすぎてもう体が自由に動かないみたいだ。歯を喰いしばって耐えるのが精一杯でほとんど抵抗すらできない。あと一息だ。私はここぞとばかりに胸を力任せに揺さぶった。うっかりすると振り落とされてしまいそうで、自然に手にも力が入る。胸の先がかすかに痙攣しているのが見える。もう少しだ。乗っかってるのを幸いと、体重を思いっきりかけて、ぐいっ、ぐいっ、と乳房を押し込んだ。
 相手の表情がひきつってくる。しかしあと一歩の所でなかなかミルクが出てこない。なにかあと一押し、と思ったところに、彼女の乳首が目に入った。ここだ、とばかりにわたしは両の乳房に乗ったまま乳首を口に含むと、思い切り吸いたてる。
 その時ふっと私の頭の中に心配がよぎった。患者のミルクの中には大量のウィルスが混入しているという説がある。それを直接吸うのは感染の危険が高い…。しかしそれをじっくり考えている時間はない。乳首の向こうから、遂に我慢しきれず鳴動するのが感じられた。私は心配をむりやり追い払った。
「だ、だめぇ…」
 それまで懸命に耐えていたゆかりの顔が、ふっと力が抜けたように変化した。その途端、遂に乳首の先から、とろっとしたミルクがあふれ出してくる。一旦出始めるともう止まらない。口の中に濃密なミルクがとめどなく注ぎ込まれ、勢いよく私ののどに流し込まれてくる。
 彼女はあきらめたかのように体から力を抜く。まさしく堰を切ったようにぴゅーぴゅーとミルクが湧きあがっていつまでも止まらなくなった。私が口を離しても、乳首からは噴水のように大量のミルクが噴き出し続ける。もう部屋中が白一色になり、私もすっかりミルクまみれになっていた。しかし彼女の顔はさっきとは違ってとろっと呆けたようになっている。それはずっと耐えてきた重荷から一気に開放されたかのようだった。
「ミルク…きもち――いいよぉ…」

 そのまま小一時間も噴き出し続けただろうか。ようやくひと息ついた頃、彼女の態度は憑き物がとれたように柔和になっていた。頑なに守り続けてきたアイドルとしてのプライドをかなぐり捨てて、ひとりの女として何かに目覚めたようにすら見える。
 恐ろしいほど張りつめていた乳房も、多少はやわらかくなったように見えた。おそらくもうこんな風に無茶することもないだろう。
「あの…また、搾ってくれます?」部屋を出る時、彼女は恥ずかしそうにそっと耳打ちした。「ええ」私はにっこりと頷いて返した。
 彼女が出て行った後、私は、このミルクまみれになった部屋をどこから手をつけていいのか途方にくれていた。それに、感染、本当に大丈夫だろうかという一抹の不安が、今になって心に引っかかっていつまでも取れなかった――。