4.Intermission
「おっかしいなぁ」
不二子は鏡の前でメジャーを手にしたまま納得いかない表情を浮かべた。無理もない、あれほど急激な成長を続けていたバストの発育ペースが、300センチを目前に控えたあたりでにわかに滞り始めたのだ。
「296センチ。やっぱりほとんど増えてない…」
不二子はちらりと脇に置いたブラジャーを見た。このブラだって、もうかれこれひと月あまりも同じものを使っている。こんなことはここしばらく考えられなかったことだ。
「やっぱり…最近おっぱいを使ってないからかなぁ」
不二子は自分の胸から極限にまで張り出した超特大のバストを見つめた。それは相変わらず上向き加減に力強く突き出しており、張りもつやも申し分ない。しかし不二子には、心なしか元気がないように見えた。
「ルパンにもしばらく会ってないし…」
ルパンに会いたい。そんな気持ちがふっと不二子の心によぎった。やはり胸のせいでちょっと弱気になってるのかな?不二子は自分に言い聞かせるように心の中でそうつぶやいた。
不二子の胸が、今のような急成長を遂げ始めたのは――そのきっかけは、ルパンとの初めてのパイズリだった。
そう、それは不二子がルパンと知り合ってまだ間もない頃。一緒に仕事をした回数もまだ数えるほどしかなく、不二子自身、正体不明の謎の美女を気取ってはいたがまだまだ今以上に若かった。あの時…ルパンとの仕事の中で、不二子は自分のミスでルパンを思わぬ苦境に追いやってしまった。なんとか機転を利かせて最終的には2人とも脱出に成功したものの、お宝は盗れず、不二子はルパンの前で立つ瀬がなかった。
「ごめんね」
やっとのことで駆け込んだアジトの一室で、不二子はいつになくしおらしい態度を取った。ルパンは何も言わない。ことさら不二子を責める訳ではないのだが、普段饒舌なほどうるさい男がむっとおし黙っているだけで、充分すぎるほどの怒りが伝わってきた。ルパン自身、口を開けばつい文句があふれ出そうであえて口を閉ざしていたのかもしれない。
生半可なことでは許してもらえそうにない。それまで経験したいくつかの仕事だけでも、ルパンのすごさは肝を冷やすほど刻み込まれていた。そんな男が本気で怒っているのだ。不二子は今までにないほどのプレッシャーを、その時のルパンから感じていた。
それまでつかず離れずの関係を続けてきた2人――。ルパンは執拗にせまり続けるが不二子はあっさりと受け流す、そんな微妙なバランスの上に2人の関係は成り立っていた。あるいはこの時、不二子がルパンを受け入れて肉体的により親密な関係へと進展させれば、ひょっとして修復の余地があったかもしれない。ルパンが本気なことは分かりすぎるほど分かっていた。しかし不二子は自分の立場を保つためにもこの一線だけはなんとしても越えたくなかった。しかし自分も盗賊としてのプライドがあり、ルパンへの負い目もある…。
どうしていいか先の見えない膠着状態の中、まるでルパンが助け舟を出すかのように――ううん、やっぱりあれは自分がしたかっただけだわ――自分の股間を指差しながらいきなりこう言い出した。
「あのさぁ、俺はいいんだけっども、こいつがさぁ、どうしてもおさまりつかないっていうんだよね。だから、ふ〜じこちゃんのそのボインちゃんの谷間でさぁ、こいつをおとなしくしちゃってくんない?」
不二子は唖然とした。それまでパイズリなんて一度もした事がなかったのだ。正直どうしていいのかもよくわからない。けれども今この部屋に充満している重苦しい空気をなんとか払いたかったし、冷静に考えて妥協案としても悪くはない。不二子は思い悩んだ末にその申し出を呑むことにした。
不二子は決死の覚悟で自分の服に手をかけ、ためらいがちにルパンの前で初めてその胸をさらした。形のいい美巨乳が重苦しい空気を打ち破るようにツンと突き抜ける。それを目にした時のルパンの興奮ぶりときたらなかった。まるで初めて女性の胸を見た子供のようにはしゃぎまわっている。
「ふ、ふ、ふ〜じこちゃんのおっぱい、夢にまで見たおっぱい、すげー。服の上からでも分かってるつもりだったけど、生おっぱいは迫力が違うなぁ」
不二子は正直な所こういう男の欲望むき出しな姿は好きではなかった。しかし今はそんな事を気にしている場合ではない。さっさと済ませてしまおうと顔を上げると、ルパンは既に準備万端、ズボンもパンツも一瞬にして脱ぎ捨て、股間を大きく屹立させて不二子の前に立ちはだかっていた。
不二子はこの時ルパンのモノを初めて間近で見た。大きい。不二子は目を見開いた。その99.9センチの巨乳をもってしても到底包みきれそうにない。しかも充血しきって鋼のように堅く突き上げている。「負けた」なんだか不二子は自負心が傷つけられた気がした。なんだかんだ言っても自分の形もよく、張りのある巨乳は不二子の自慢だったのだ。
ルパンは先にベッドの上で横になり、今か今かと不二子が来るのを待ちかまえている。息のテンポは既にはぁはぁと犬のように上がっていた。不二子はこの期に及んでやっぱり腰が引けてきたけども今さら聞き入れてもらえそうにない。
(どうしよう)
パイズリというからには胸の間にこれを挟みこむんだろう。そこまでは分かる。しかし――見れば見るほど、それはうっかり近づいたら胸に突き刺さらんばかりの勢いで天に切っ先を向けている。
(こんなの、さわれないよー)
思わず目をそらしたくなる。しかしもう逃げられない。不二子は自分の胸を両手で左右に広げると、その谷間にその逸物を思い切って包み込もうとした。
「うっ」
その途端、ルパンが小さくうめき声を上げる。しかし当の不二子はそんなのを気にする余裕もなかった。
(うわ、堅い…)
ほとんど身体の一部とは思えないほどの硬度だった。案の定それは胸の間に納まりきらずに先っぽが突き出し、顔に当たりそうになる。
(これからどうすれば…)
とにかく目の前にまで迫ってくるその先っぽをなんとか目の前から隠してしまいたい。両手で自分の胸を両側から押さえ込もうと力を込めると、ルパンのものを上へ下へとこねくり出した。
「うぉ…うぉ…」
ルパンがまたうめき声を上げる。しかし不二子はそれどころではない。なんかして胸の中に包み込み、その切っ先を目の前からなくそうとするのだが、どうやってもそのゴツゴツしたものが容赦なく隙間の奥から突き上がってきて、どうしても隠せない。それどころかますます堅くなってくるみたいだ。大きさもさっきより増したみたい…。
(ああん、どうしたらいいの、これ)
ところが次の瞬間それは唐突に終わった。「う…」ルパンがひときわ短いうめき声を上げ、同時に逸物の動きが一瞬止まる。次の瞬間、その先からおびただしい量の白いものが一斉に噴き出してきたのだ。
「きゃっ」
不二子は思わず女の子みたいな声を上げて飛びのいた。間に合わずに顔といわず髪といわずルパンの精が振りかかる。
(もう、最低ーっ)
しかしルパンはご満悦だった。実際不二子の胸の魅力は絶大だったらしい。挟まれた両の乳房の間で、ルパンはあっという間に果ててしまった。
「いやー、こんなに気持ちのいいおっぱい初めてだよ。もう1回」
次の瞬間、不二子はルパンを張り倒して何も言わず出て行った。もう2度とごめんだった。
しかし次の日の朝、目が覚めると不二子は自分の胸が妙に張ってきているのに気がついた。ブラジャーをつけようとすると何だかきつい。不思議に思ってバストを測ってみて驚いた。1メートル目前でしばらく成長が止まっていた胸が、あっさり大台突破していたのだ。
「どうして――?」
理由はわからなかったが、思わず顔中に笑みがこぼれた。心はささやかな達成感に満たされていた。
「きのうのあれのせい?まさか…」とはいえ思い当たるのはそれしかない。ひょっとして今まで未体験の刺激を胸が受けて、それで成長がまた始まったのだろうか?それにしても急すぎない?――それで納得がいった訳ではないが、とりあえずそう考えるしかなかった。
結局その時の成長は数センチ、ブラジャーのカップをかろうじて1つアップさせる程度で収まったが、腑に落ちないながらもこの事は不二子の心に強く印象付けられていた。
(ひょっとして今度またパイズリしたら――)
その機会は程なく訪れた。機嫌を直したルパンとの間でまたすぐ次の仕事が始まり、今度は首尾よく成功。しかしその直後2人の間で盗んだお宝の争奪戦が始まったのだ。
お互い自分のものだと主張してやまない。再び膠着状態が続いた。そんな時、ルパンがニヤリといやらしい笑みを浮かべて口を開いた。
「ねぇ不二子ちゃん、また不二子ちゃんの胸でしてくんない?もししてくれたらお宝のこと、考えないこともないんだけっどもなぁ」
どうやら先日のことで味をしめたらしい。夢をもう一度、とでも言いたげな目で訴えかける。
いつもの不二子ならそんな申し出、瞬時に一蹴してたろう。しかしこの時は、真っ先に先日の事が頭にちらついた。(ひょっとしたらこれでまた胸が大きくなるかも…)
「えー、どうしようかなぁ」しかし不二子はそんな気持ちをおくびにも出さず、気のないそぶりでじらしながらも自分の有利な方向に誘導していった。「それじゃ、わたしの胸でルパンをいかせたら、これだけじゃなく、この前のダイヤも、先月の金塊も、ぜーんぶわたしにちょうだい。それなら考えないこともないわ」
法外な――おっと、泥棒はもともと法外なものだっけ――要求にルパンはたじろいだが、不二子はここぞとばかりにたたみかけた。
「そのかわり、もしわたしが負けたら――わたしのからだ、一晩ルパンの自由にしてい・い・わ・よ…」
最後はルパンの耳元に口を近づけてそっとささやく。ルパンは信じられないという顔をしたが、不二子がにっこり頬笑むとにわかに色めきたってきた。明らかに興奮のヴォルテージがぐんぐん上がっていくのが伝わってくる。
「本気なんだな」
「ええ、もちろん」不思議と負ける事は考えなかった。
そうしてふたたびルパンと不二子の"勝負"は始まった。ルパンが下半身を、不二子が上半身の服を脱いで準備を整える。そして不二子がブラジャーをはずした時、ルパンは目ざとく何かに気がついた。
「あれ、不二子ちゃん…この前よりちょっと胸ふくらんでない?」
これには意表を突かれた。もともと巨乳だった不二子のわずか1サイズの成長をルパンは的確に見抜いていた。この男、女性についての観察眼はどれほど根深いものがあることか。執念と言ってもいい。
そうかしら?なんてうそぶきながら、不二子は内心緊張が走っていた。
しかし再びルパンの股間を見た時、なんか肩透かしを喰らったような不思議な安堵感を感じた。
(あれ、ルパンのって、こんなもんだっけ?)
前回はあれほど強烈に迫ってきたのに、今はそれほどの威圧感はない。なんかあの時より心持ち小さく見える――。
(わたしの胸が大きくなったから?)
大きくなったのはわずかだが、それでも自分の胸と比べて相対的に小さく見えたらしい。不二子は精神的にぐっと余裕ができた。
相変わらず胸の谷間から先っぽがはみ出してしまうが、前回ほどの圧迫感はない。隠れている部分が幾分多くなったみたいだ。質量を増したおっぱいの中から見え隠れしつつ、まるで乳肉の間で翻弄されるように浮き沈みする様になんだか愛着すら湧いてきた。
(フフ…こうして見るとちょっとかわいいかも)
そう思った途端、ルパンの身体が硬直する。「え、もう?」反射的に身体を引くと次の瞬間この前をも上回る勢いで白いものが噴き出してきた。直撃こそまぬかれたものの、飛散したそれは完全には逃げられず飛沫の一部は胸にかかった。
なんかあっけなかった。この間より時間もずいぶん短かったのではないだろうか。しかしルパンの消耗はあの時よりもはげしそうだった。
「も、もう1回!」ルパンが眼を血走らせながら叫ぶ。明らかにこの前よりもずっと必死になっている。不二子は自分が優位に立っている事を知ると、がぜん面白くなってきた。「いいわよ。その代わり、次はあの古代ペルシャの王冠が欲しいなぁ」
「いいっ!くれてやる!だからもう1度!」
不二子が再びその胸にルパンのを包みこむ。なんだかコツがつかめてきたみたい――。胸の谷間の感触で、ルパンがどういう風にすれば悦ぶかがなんとなく分かってきたような気がしたのだ。
2回戦、ルパンはさらに意気込んで不二子の胸の谷間を攻めこんだ。しかし不二子はルパンのどんな動きもがっちりと受け止めて逆に攻め立てる。またもや不二子の圧勝だった。「もう1回!」「うーん、今度はねぇ…」3回、4回とルパンが求めるままに続けていくが不二子の勝ちはゆるがない。息も絶え絶えに求め続けるルパンの底なしの精力に半ばあきれたが、一方で不二子は自分の胸が次第に変化していってるのに気がついた。
(あ、なんだかおっぱいがじんじんしてきて――張ってきたみたい)
それは不思議な感覚だった。まるでそれまで眠りについていた胸の細胞組織が一気に目覚めて活性化し始めたみたいに感じる。(わたしの胸、いま成長してる――)
結局、ルパンは全精力を使い果たして足腰立たなくなるまで不二子への挑戦をやめようとしなかった。もう精も根も尽き果てて指一本動かせないってのに、それでも口ではなお求め続けようとするんだからあきれた人だ。
結果、一晩で不二子はルパンから思いがけないほどのお宝をせしめたのだが、それ以上に大きな喜びがあった。
帰ろうとして、してきたブラジャーを改めてつけようとする。さっきまでぴったりだったブラがもう既にきつくてしょうがない。(やっぱり…)不二子の頬に自然に笑みがこぼれる。帰途についている途中でもブラジャーの中でおっぱいがさらにぐんぐん内側から張り出してくるみたいで、今にもホックを弾き飛ばすのではないかと心配になってくるほどだった。自分のアジトにつくや否や、我慢できずにすぐさまブラをはずす。今まで押し込められ続けていたバストが一気に開放されて勢いよくぷるんと跳ね回った。
「すごい――」
不二子の胸は既に見違えるほど、自分でも触るのをためらってしまうほどぱんぱんに張りつめていた。その胸の内側で、今まさにおっぱいが怒涛の勢いでぐんぐん作られていっている感じがしてちょっとくすぐったい。その感覚はそれから一晩中絶えることなく続き、結局わずか1日で8センチもバストがアップしていた。確実に眼に見えるほどの成長を目の当たりにしたのだ。
不二子の推測は確信に変わった。
「パイズリすると胸が大きくなるんだわ」
それからは、2人で仕事をするたびに、どちらが言うともなく、お宝の取り分をめぐって対決するのがならいになった。結果は――もちろん不二子の連戦連勝。勝負のたびにぐんぐん大きくなる不二子のバストは無敵だった。最初のうちは包みきれずに頭がひょこひょこ出ていたのが、次第に出てくる部分が小さくなり、まもなく乳肉の中に埋まって見えなくなってしまった。そうなった後も成長はとどまるところを知らず、今やその谷間に完全に埋没してしまう。それとともにその圧倒的な質量の中でルパンの逸物を思い通りにころがし、いたぶり、いじりまわし、と自在にもて遊べるようになっていった。胸の中でルパンがどのように感じているのかが手に取るように分かる。今度はどんな風に攻め立ててやろうかと思うと勝負が待ち遠しくてしょうがなかった。
ある時、ルパンはあきれたようにつぶやいた。
「かなわねーなー。こっちだってそれなりに鍛えて強くなってるつもりなのに、不二子ちゃんのおっぱい、それ以上にどんどんきもちよくなってるんだもん…」
それを聞いて、不二子はこっそりほくそ笑んだ。
もちろん不二子にだってそれなりの苦労はある。ブラジャーだって服だって、またたく間に胸が入らなくなってしまうのだ。なにせ勝負の度に2〜3カップ分はバストが確実に大きくなっていくのだからたまったものではない。元々Kカップあったブラジャーのサイズは、次々とアルファベットを塗り変えていき、あっという間にZを越えてしまった。とはいえもともと特注のブラが必要なサイズだったし、服飾には金を惜しまない方だったからさほどの影響とは言えないかもしれないが。
それよりも男性の胸への視線が日に日に痛くなってきた。無理もない。その膨らみはもはやどんな格好をしようが隠しようがないほど巨大なものになっていたのだから。数え切れないほどの男を色仕掛けで篭絡し続けていく不二子にとって、男の目がどんどん膨らんでいく胸に突き刺さるのを嫌がるわけにもいかない。これはもう割り切るしかなかった。これは他の誰も持ってない有力な武器なのだ、活用しない手はないわ、と次第にそれまでにも増して胸のラインを強調する服を着るようになっていった。
不二子のバストの魅力に落ちない男はいなかった。もちろんそれらの男たちに対し、体を許す気など毛頭ない。ほとんどの男には、期待させるそぶりだけを繰り返していいようにあしらった挙句、その身体に指一本触れさせはしなかった。けれども色仕掛けを続けていく上で、いつもそれで上手くいくとは限らない――。
ある時、どうしてもそうした状況から逃げるに逃げられなくなってしまった。世界を股にかけて巨万の富を築きあげた、若く精力的な実業家が相手だったのだが、なかなかの切れ者で、不二子と丁々発止のやりとりの末、どうしてもベッドを共にしなければならない状況に追い込まれてしまったのだ。しかたない。不二子は覚悟を決めて男の寝室に入るとその横に腰かけ、服の上から自分の胸を両手でそっと抱え上げながらこう言った。
「このおっぱいでしてあげる」
それを聞いた時の男の喜びようったらなかった。そのあからさまな反応に不二子の気持ちはちょっと複雑だったけども、自分から言い出したことなので文句は言えない。とにかく渡りに船とその男の前で上半身に身につけていたものをゆっくり脱ぎ始めた。
ルパン以外の男のものをこの胸に挟み込むなんて、これが初めてのことだった。大見得切ってしまったけども、はたしてこの男にも通用するのだろうか。もし通じなかったら――。胸のボタンをはずす時、いつになく緊張して指先がふるえた。しかしそんな気持ちを相手に悟らせる訳には行かない。それに自分の自慢の胸を見て、世界を股にかけている男が色めき立つ様を眺めるのは気分の悪いものではなかった。
「なんだか恥ずかしいな」妙にういういしいそぶりを見せながら、不二子はブラジャーのホックを静かにはずした。
ストラップを肩からずり落とし、超特大のバストが男の目の前にさらされる。その瞬間――それまで一応カッコつけて冷静さを装っていたその男が、いきなりその装いをかなぐり捨てて極度に興奮しだした。まるであの時のルパンのように…。
「ど、どうしたの!?」
不二子もその豹変ぶりに驚いたが、男は鼻息荒く口を開けるだけで、まともに言葉すら発せられないほどいきり立っていた。
(わたしのおっぱいには、男を興奮させる何か特別なものがあるんだろうか…)
男はやみくもに自分のそそり立った逸物を不二子の胸に押し付けようと飛びついてくる。不二子はなんとか落ち着かせようとしながらその男のモノを組み伏せるように胸の谷間に挟み込んだ。試しにちょっとゆさぶってみる。
「うっ――」
(え…?)
驚いたことに、その男の股間はただそれだけで大爆発を起こしていた。不二子の広大な胸の谷間いっぱいに尋常ならざるほどの量がべっとりとまとわりついている。見ると、男は恍惚の表情を浮かべながら失神してしまっていた。あまりにあっけない幕切れだった。
(なーんだ)拍子抜けしてその日はそれで終わったが、本当に驚いたのはその後だった。それっきり、その男の人生は下降線をたどり始めたのだ。風のうわさではあれ以来極度の不能に陥ったとかで、あれほどまでに活力に満ち溢れていた男だったのが、まるで生き胆を抜かれたかのようにどこにも生気が感じられなくなってしまったという。それとともにそれまで順風満帆だった数々の事業も次々と傾いていき、あっという間に没落していった。今では失踪して生きているかどうかも分からない。もっともそうなる前に不二子がその男の資産をがっぽり手中にしていたのは言うまでもないが。
(うそ…。わたしのせい?)
まさかとは思うが、あまりにタイミングが合いすぎている。気になった不二子は、それから他の男を篭絡する時にも、あえて同じような状況に持っていった。そして不二子の罠にかかった2人の男は――やはりその胸を見た途端異様なまでの興奮状態に陥り、同じように胸の谷間にはさまれた瞬間、果てつくしてしまった。そして――それっきり表舞台から姿を消した。今はもうどうしているか知らない。
(どうやら――)不二子はこう考えるしかなかった。(わたしのおっぱいは、男の人を極限まで興奮させ、そして全精力を根こそぎ吸い取ってしまうみたい。そして吸い取った精力をエネルギーに成長している――。そう考えるとつじつまがあうわ。そして成長の度合いはその人が持つ精力の量に比例するみたいだし…)実際、不幸にも犠牲になった3人との時には、バストはほんとにちょっぴりしか大きくならなかった。結局それだけの男だったと言うことか。
(これは、滅多やたらにおっぱいを使うわけにはいかないわね…)
自分のおっぱいの持つ影響力の大きさを自覚した不二子は、それからルパンとの勝負以外ではパイズリを封印した。今は、人前で胸をはだけることすら、極力避けるように心がけるている。(おっぱいは…わたしの本当に最後の武器。最後の切り札として大事に秘めておかなくては…)しかしバストがここまで大きくなると、そこまでする必要はまずなかった。わざと胸のラインを強調したぴったりとした服を着て、さらにその奥深い胸の谷間をちらりと見せさえすれば――男は皆彼女の魅力に釘付けとなってしまう。そう、どんなに誘惑しても落ちず、遂に最後の封を解かざるを得なかった銭形警部を唯一の例外として。
こうなってみて、ルパンの精力がいかに絶大なものかが改めて身にしみた。不二子に何度搾り取られても搾り取られても短時間ですぐ回復するその精力は驚くべきものだ。銭形警部もなかなかのものだったけども――やはりルパンには遠く及ばない。
不二子は、自分の巨大に成長した胸を抱え込んでつぶやいた。
「考えてみれば、わたしの胸がこんなに大きくなれたのも、ルパンのおかげなのよね」不二子はルパンに感謝したくなった。
しかしそれはルパンの方も同様なのかもしれない。ルパンも以前は、明らかにそのありあまる精力を持て余していた。初めて会った頃、あの若さで、とっくの昔に千人切りを達成していたと豪語していたが、そうせずにはいられない理由があったのだ。今は、不二子にひんぱんにその精力を搾り取られていることでようやくバランスをとっているように見える。まるでお互いを補完しあっているかのように――。
やっぱりルパンは自分にとってベストパートナーなのかもしれない、そんならしくない事を不二子はふと考えていた。
不二子の携帯にメール着信のアラームが響く。ルパンからだ。
さっそく開くとあの相変わらずの文面が目に飛び込んできた。
「よぉ〜っ、ふ〜じこちゃん、元気ぃ?ひと月もほっといてごめんねぇ――」
新しい仕事の話だ。またルパンと――と思うと自然に胸が高鳴る。さっそくOKの返事を書いて送信した。
「ルパン…またたっぷり搾り取ってあげるわ」
ディスプレイを見つめる不二子の顔が、いつしか頬笑みに包まれていた。