Capriccio in "F"〜不二子をめぐる綺想曲

ジグラット 作
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5.ラスプーチン編

 不二子が目を覚ました時、あたりは光ひとつない闇に包まれていた。
(わたし――どうしたの?)
 手首が痛い――位置を変えようと腕を動かしてみたが、ガシャガシャと鉄のこすれる音がするだけでまるで自由にならない。首を音の方に向けると、暗闇に慣れた目の中に鉄の輪がはめられた手首がうっすらと映った。振り返るともう片方の手も同様に締め付けられている。そしてその輪に続く鎖はしっかりと壁に埋めこまれていた。
(古典的なことをしてくれるじゃない)
 試しに足を動かしてみたが、やはり鉄の音がするだけでほとんど動かせない。腕と同じようになってるに違いなかった。
(やはり…ね)
 視線をふと下にやる。かといって別に足許を確認しようとした訳ではない。見ようにもそこには胸から砲弾のように突き出した巨大な乳房が不動の構えでそびえ立ち、視界のすべてを覆ってしまっていた。身につけた漆黒のレザースーツはとてつもなく大きく張り出し、びっちりと覆われたその胸は、中に空気を詰め込みすぎた風船のように限界を超えて、光を当てたら中身が透けて見えてしまいそうなほどぱんぱんに膨れ上がっている。不用意に触れようものなら一気に破裂しかねない勢いだ。
(とりあえず変なことはされてないみたいね…)
 ジッパーが先ほどと同じ位置で止まっている事を確認して不二子はほっと一息ついた。レザースーツの下はショーツ以外ほとんど裸同然だったのだが、どうやらスーツを脱がされた形跡はなさそうだ。
(もっともこのジッパー、ちょっとやそっとじゃ下ろせないだろうけどね)
 身体の自由を奪われ、どことも知れぬ所に監禁されていながら、不二子は冷静さを失っていなかった。そう、これぐらいの事で動じてちゃ怪盗なんて名乗っていられないわ、とばかりに。

――そう、あれはルパンから仕事のメールをもらい、1週間後に細かい打ち合わせをしようと約した直後だった。ルパンに逢える、そう思っただけで不二子は自分がどこか浮かれている事に気がついた。
(そんな、小娘でもあるまいし…)そう思いながらも、頬笑みが止まらないのが自分でも可笑しかった。
(これは、大仕事を前にした高揚感よ)無理矢理自分を納得させようと理由を後づけした不二子は、気持ちを振り払うかのように今回のターゲットの下調べにかかった。
 ターゲットは、一週間後に都内で開かれるイギリスのとある富豪が集めたコレクションを一堂に集めた宝石展だった。めざすお宝はその中の1点。コンピューターはお手のものな不二子は、ネットを駆使してその展覧会の表向きの情報はもちろん、ハッキングを繰り返して極秘の内部情報まですべて入手してしまった。
「ルパンも、ネットを使えばいいのに」不二子は苦笑した。ルパン達は今だに自分の手や足で情報を集めることにこだわっているのだ。不二子に言わせれば効率の悪いことこの上ない。
 しかし不二子は、その流れで現在の展示物についても調べているうちに変なことに気がついた。
「これは…」警備が妙に手薄なところがあるのだ。しかもそれをつないでみると、進入路からある展示物に渡り、脱出路まできちんと線で結べてしまう。どういうことだろう、これじゃまるで盗んでくださいと言っているようなものだわ…。逆にその明確さゆえに意図的なものを感じた。誘ってる――。目的は分からないが、わざと警備に穴を開けて泥棒をそこにおびき寄せようとしているとしか思えなかった。
 さらに気になるのはそのルートだ。潜入口は警備上ポイントFと呼ばれている所。そこから侵入してポイントUを経由してポイントJのお宝まで行き――最後の脱出口であるポイントOまで続いている。そして各々のポイントを順につないでいくと…。
「F-U-J-I-K-O…。わたしを誘ってるの…?」
 お宝そのものはチンケな宝石で、さして魅力を感じない。しかし――不二子の胸に不敵な挑戦心がむくむくと湧きあがってきた。それは泥棒としてのプライドのようなものだった。(いったいどんな目的でこんな事を仕掛けたんだろう。きっと――何か裏があるに違いないわ。誰だか知らないけれど、このわたしに挑戦しようだなんて、いい度胸してるじゃない――。わかったわ。そのお誘い、乗ってあげる…)

 その夜さっそく、不二子は単身その展覧会場に潜入した。思ったとおり、例のルート通りに侵入すると、難なくお宝を手に入れることができた。
「さて、何が起こるの?」
 お宝を手にしたまま、不二子は大胆にも最後のポイント0で立ち止まった。待ち構えるかのようにその場でじっと辺りを見回す。しかしいつまで経っても何も起こる気配はない。
「なんだ、拍子抜けね」
 腰抜けには用はないわ、とばかりに不二子は建物の外に出ようと窓枠に足を掛けた。しかしそれがスイッチになっていたかのように、両脇からいきなり強烈な刺激臭のするガスが吹き出し、一瞬にして不二子のまわりを完全に囲い込んだ。意識が急速に薄れていく。
(やるわね、案外大物なのかも――)不二子は心の片隅でニヤリと笑いながら、その場に倒れこんだ。

 そして、次に気がついた時にはこの暗闇の中にいた。最後の最後に隙を突かれたが、自分の予想が当たったことには喜びを感じていた。後は相手の出方を待つだけだ。おそらくそう待たせることもないだろう。
 案の定、それから数分もしないうちに、暗闇の向こうから人の気配が近づいてきた。
(そうら、おいでなすった)
 チンピラではない。その者がかもし出す雰囲気からそう感じた。誰かは分からないが今回の首謀者に違いない。
「誰だか知らないけど、早いとここの鎖をほどいた方が身のためよ」不二子は先手を打って相手に言葉をたたきつけた。口調にはたっぷりと余裕すらただよわせている。
「不二子…」
 地の底から響き渡るような声だった。それほど大きくはないが声そのものに圧倒的な迫力がある。
「誰、誰なの?」不二子はその声にちょっと威圧されて、思わず聞き返した。
 その男はゆっくりと、しかし着実に近づいてくる。強烈な存在感はますます強くなっていった。
「ようこそ、わたしの屋敷に。歓迎するよ」
「あら、ずいぶんと手荒い歓迎ね。レディー向きではなくってよ」
「ふふ…気が強いのぉ。気に入った」
 その時、いきなり部屋の中に明かりが満ちあふれた。一斉に部屋の電気が点けられたらしい。
「ン――」突然のことで不二子はまともに光源を見てしまい一瞬目が眩んだが、次第に目が慣れてくるにしたがって徐々に部屋の様子が目に入ってきた。
 地下室だ、と一目見て思った。窓ひとつない殺風景な部屋。広さはかなりあるようだが、そのスペースをほとんど無駄にしていた。まったくといっていいほど物が置かれていないのだ。
「あらためて挨拶するよ。ようこそ、峰不二子」
「あなたは…」改めて声の主を見る。そこにはスーツ姿の老人がひとり立っていた。その顔を見て不二子は意外に感じた。全体をしわに覆われ、おそらく80歳は優に超えているだろう。しかし背筋はしっかりと伸び、精悍な感じすらただよっている。その雰囲気はとても80過ぎの人間のものではない。事実、暗闇の中で感じていた存在感は到底老人とは思えなかった。
「それにしても、あなたは猫のように俊敏だと聞いていたが、この老いぼれにこうもあっさりつかまるとはな。その胸のせいでさすがのあなたも動きがにぶったのかな」
 その男はそう言いながら不二子の胸元を無遠慮に見据えた。不二子はムッとしとして相手を見返す。
「ご心配なく。この胸は、わたしの動きをなんら制約するものではないわ」
 そう言うと存在感を誇示すべく一層胸をピンと張って見せた。胸のあたりの革が引きつるような悲鳴を上げている。
「ほんとに気が強いのぉ。ますます気に入った」
 老人は楽しそうに目を細めて同じ言葉を繰り返した。
 男は不二子の元に歩み寄り、その手を不二子の胸元に伸ばす。(なにを…)身構えようとする不二子にその隙を与えず、その手はためらうことなく胸を覆っているジッパーをつかんで一気に下ろそうとした。しかし、内側からギチギチに張りつめているスーツのジッパーはがっちりかみ合いすぎて生半可なことでは下りそうにない。業を煮やしたその手はジッパーをそのまま力任せに引きずり下ろした。
 バリバリバリッ。
 あきれたことに、ジッパーのまわりの革ごと破り去って強引に下ろす。スーツは一瞬にして縦に裂け目が入り、その亀裂はウエストまで一直線に続いた。すさまじい腕力だ。その途端、それまでめいっぱいに詰め込まれていた不二子の乳房が、その裂け目からスーツをはじき跳ばさんばかりの勢いであふれ出てきた。
「おお、おお、おお…」
 不二子の半分以上露出した乳房を見つめながら、老人の口から感嘆としかいいようのない声が湧きあがった。
「大きさといい形といい張りといい、まったく申し分ない…」
 思わずその胸に手を伸ばしかける。不二子はキッと老人をにらみつけてそれを制した。
 しかし老人はそれにも屈しない。何かを確かめるかのように不二子のはみ出した胸に手をあてがい、感触を味わった。
「これだけになるには、さぞや沢山の男の精を吸い尽くしたことだろうな」
(こいつ、わたしのおっぱいの秘密を知ってるの?)
 不二子は初めて、この男の存在に不安を覚えた。

「離して!」不二子はたまらずに思いっきり身体をゆさぶった。大きな胸がその動きを何倍にも増幅してぶるんと揺れ、老人の手をなぎ払う。しかし手を思いっきり持っていかれても老人の体は微動だにしなかった。
「いい加減にして。あなたは誰なの?わたしをこんな目にあわせて、ただで済むと思ってるの!」
「わたしの名は、ラスプーチン3世。聞いたことはないか?」
「ラスプーチン?」たしかに聞き覚えのある名前だ。帝政ロシア末期の怪僧ラスプーチンの子孫で、旧共産圏で縦横無尽の活躍をしたという謎の怪盗にして伝説の性豪。しかしもうそうとう年配のはずだが。
「ラスプーチン。話には聞いてるわ。まだ生きてたとは知らなかったけど」
 不二子は改めて間近で相手の顔を観察した。顔こそ老人であるものの、その内側からわきあがるオーラのようなものは年齢をまったく感じさせない。
(どうやら、ニセモノではなさそうね)
 ラスプーチン3世。不二子も名前だけは何度となく聞いていた。主な活躍の場が旧ソヴェト連邦だったために相間見えた事こそなかったが、そのめちゃくちゃな精力絶倫ぶりはほとんどホラ話の域に達していた。しかし今その姿を見ていると、それがあながち嘘とも思えなくなってくる。
「ふふ…。わたしも今年100歳になった。お前を呼んだのは他でもない。100歳の記念に、伝説の超乳美女と一戦交えたくなってな」
 不敵に笑うと、ラスプーチンはおもむろに自分のズボンを脱ぎ始めた。
「ちょ、ちょっと…。勝手に決めないでくれる?」
 不二子の言葉を無視して、ラスプーチンは自分の下半身をむき出しにした。
「わたしをその胸でなぐさめておくれ」
 さらに文句を言おうとした不二子の口が、その瞬間硬直した。
(な、なんなのこれ!?)
 想像を絶する大きさのものが股間からそそり立っていた。馬並みなんて言葉があるけども、まさしく馬のペニスほどのものが天に向けてまっすぐ突き上がっているのだ。
「もちろんただでとは言わん。そう…わたしを満足させてくれたら、わたしの財宝のすべてをおまえに譲ろう」
「財宝すべて――」不二子の耳がぴくりと反応した。
「そう。わたしもさすがに年だ。あと何年かと命の逆算をするようになってきた。わたしとてあの世にまで財宝を持っていく訳にはいかんからな。ならばその財宝すべてとひきかえにしても価値のある何かを生きているうちにしておこうという気持ちになってきた。本当に価値のあるもの…それを探して何年もの間、世界中から情報を集め続けた。そして――不二子、最後にお前を選んだのだ」ラスプーチンはさらに一歩、じりっと不二子に踏み込んでいった。

「そりゃあ高く買ってくれたものね」
 憎まれ口をたたきながら、不二子はじっと考え込んでいた。たしかにラスプーチンの財宝は魅力的だ。かといってこんな得体の知れない老人の、しかもこんなとんでもないものをはさみ込むだなんて…。
(この大きさはさすがに、わたしの胸でも包みきれないかも…)
「そしてお前を誘い出すために、この日本で開かれるわたしの息のかかった美術展で、わざと警備に穴を開けて誘いをかけた。不二子、お前ほど優秀な泥棒ならばきっとこの誘いに気づいてくれると思ってな。うれしいかな、お前はその誘いにちゃんと乗ってくれた。感謝するよ」
 ラスプーチンはさらに続けた。やはり裏があったのね。ラスプーチンの財宝すべてという…。けどそのためには――。
 しかし結局、お宝の誘惑には勝てなかった。
「わたしのおっぱいの代償は高いわよ。それでもいいのね」
「おお、やってくれるか」ラスプーチンはさも嬉しそうに感嘆した。
 その途端、手足を縛っていた鉄の輪ががちゃんと鳴り、ぶらんと力なく垂れ下がった。いったいどこで制御してるのだろう、やはりどこか得体の知れない所があった。

「で、どこでやるの?まさかこんな雰囲気もなんにもない所で…なんて言わないでよね」
「ぜいたくは言わんでもらおう。老人は気が短いんじゃ」
 え?と不二子が口に出す暇もない早業だった。ラスプーチンはものも言わず先ほど縦に裂いたレザースーツを左右に力任せに押し開き、かろうじて隠れていた不二子の乳首まですべてをあらわにした。
「!」あわてて胸を隠そうとする不二子にその隙を与えず、すさまじい力でその肢体を抱えあげるとそのまま隅のほうに置かれたベッドの上に押し倒した。莫大な乳房の重みが一気に不二子の胸の上に襲いかかり、思わずむせこみそうになる。今やその全貌が明るい光の下にさらされた不二子のバストは、そうなってもなおほとんど横に流れることなく胸の上にうず高くそびえ立ち、巨大な峰となってふるふると震えている。両の乳房はお互いにその存在を主張するようにぶつかり合い、びっちりとひしめきあっていた。
「すばらしい…」ラスプーチンは感に堪えない風につぶやくと、そのまま自身の身体を倒し込んでいく。(犯される!)その姿に、不二子は一瞬貞操の危機を感じた。
 しかしラスプーチンはまっすぐ不二子の胸の谷間に自分の逸物を強引に押し込みはじめた。お互いぎゅうぎゅうに押し込め合っている谷間をむりやりこじ開けてその極太のものを差し込もうというのだ。不二子はそれだけでも強姦されているような屈辱的な気持ちに襲われた。
「ちょ、い、痛い!無茶しないで…」
 不二子は横になったまま両手を精一杯伸ばして自分の胸を抱え込み、どうにかして乳房の間をおし広げようとした。そのわずかな隙間を突いて、ラスプーチンはドリルのように自分の逸物をずんずん押し込んでいく。
(な、なんて大きさなの…)
 不二子はどうにか胸の谷間にその逸物をはさみこんだ。それは不二子のバストをもってしても、やっとのことで包み込めるほどの大きさだった。ほとんど余裕がなく、ちょっと動かしただけで、すぐに先端がはみ出そうになる。
「おお…。わたしのものを、すべて呑み込める女性がこの世に存在したなんて…。感激だ」
(冗談じゃないわよ。こんなばけものみたいなの。胸の中でつっぱっちゃってしょうがないわ)
「さあ、わたしを満足させておくれ」もう一秒たりとも待てないとばかりにラスプーチンは不二子の谷間の中でしきりに揺り動かし始めた。
(んなこと言ったって)と文句のひとつも言いたくなる。太すぎてキツキツの上どうしようもなくゴツゴツして、あちこちに当たりまくっているのだ。それにちょっとでも動かせば、そのグロテスクな先っぽが胸の谷間からひょっこりと飛び出しそうになってくるんだから。
(しょうがないな、これもお宝のためよ)
 どうにか割り切ると、不二子は仕方なく両腕で胸をゆさぶり、その途方もないものをやっとの思いでしごき始める。するとすぐある事に気づかされた。
(な、なにこれ…!)
 それは今まで感じたことのない感触だった。今までパイズリしていても、自分では胸の内側がなにやら蠢きだすような感覚でなんとなく分かるだけだったが、その時の感触はまったく別物だった。胸の間にはさみ込んだ逸物全体から、なにか強烈なエネルギーのようなものが絶えず放射されていき、それがどんどんおっぱいの中に吸収されていくのがはっきり感じられたのだ。
(これが――そうなの!?)
 それまでなんとなく感じていただけだったものが、今やはっきりとその存在が自覚できて、不二子は驚いていた。1月ぶりだからだろうか、不二子のバストは巨大なスポンジのように、そのエネルギーをどんどんありったけ吸い上げていく。しかしラスプーチンの逸物からは、動かすたびに後から後へと尽きることなく大量のエネルギーが放射され続け、不二子の巨大なおっぱいの中はまたたく間にそのエネルギーが充満していった。そしてその隅々にまでエネルギーがいきわたった途端――不二子の乳房が内側から猛烈に活性化し始めた。
(ああっ、これは…)
 山のようにふくらんだ胸全体がじわじわと、くすぐったいような、こそばゆいような感覚で満たされていく。今までもうっすらとは感じていたことだが、この時のはそんなものとは比べ物にならないほど激烈だった。
(あ、お、おっぱいが…)
 今まさにパイズリするそばから膨らみだしてきた事を不二子は感じ取っていた。両の乳房はこれまでにないほど漲って張りを強め、より一層ラスプーチンの逸物を締め上げていく。
「お、おおう、おおお…」
 ラスプーチンもその事を感じ取ったのか、さらに強烈にピストン運動を繰り返した。
(あ、や…もう…)
 こすりつけるそばから、ますます大量のエネルギーが放出されていくのが分かる。まるで激流のように渦巻いてきてとめどない。
(や、やめて、おっぱいはもう満杯なのに…)
 しかし不二子のおっぱいは、本人の意思などお構いなしにそのエネルギーをますます勢いよく呑み込んでいった。胸の中全体にとてつもなく大量のエネルギーが満ち満ち、ますます濃密になっていく――。
 まるで自分の胸が自分のものではないかのようだった。形のないエネルギーは、いくらでも胸の中に吸い込まれていってしまう。今や不二子の胸いっぱいにとてつもなく大量のエネルギーが満ちあふれ、ぶつかり会い、はじけ飛んだ。その度にみしみしと音を立てんばかりの勢いで内部からおっぱいがふくれ上がってきて、皮膚をピーンと張りつめさせた。
(だ、だめ…このままじゃ、おっぱい、破裂しちゃう…)
 不二子はなんとかしてラスプーチンの逸物を胸から外そうとした。しかしラスプーチンはその動きを察知したのか、そうはさせじと両手でがっと不二子の乳房をつかみ、さらに深々とその谷間に自らを突き刺してきた。
「に、逃げないでおくれぇ。わたしには、もう――お前しかたよりにできるものがいないんだぁ」
 ラスプーチンの声がことさら高く響く。その声に不二子は妙な違和感を覚えた。今までの不敵な様子とはどこか違う。その声はかん高く上ずり、興奮して――というよりどこか悲痛で、必死さが隠しきれず表に出てしまったような感じだった。
 イきかけてるの?不二子はふっと腕の動きを止めた。しかしそのスキを縫って、ラスプーチンはさらに強烈に不二子の乳房を攻め立てる。あふれるエネルギーはさらに濃密さを増した。
(そ…そんなのないわぁ!!)

 それはとてつもなく長い時間だった。不二子が今まで経験したどのパイズリともまったく桁が違う。10分…20分――。ラスプーチンから絶えず放射されるエネルギーはいつまで経っても勢いを増しこそすれ衰える気配は微塵もなく、不二子は今にも張り裂けんばかりに膨れ上がった乳房を抱えて苦痛の表情を浮かべていた。しかも――ラスプーチンはいつまで経っても一向にイく気配を見せないのだ。彼の精力はまさしく底なしだった。
(いったい――いつまで続くの…これは…)
 不二子はもはや胸の感覚がなくなっていた。どちらの胸もいつ果てるともなく続く膨乳によりとてつもなくピーンと張りつめ、間断なく襲いかかる痛みで自分でももう訳が分からないぐらいになっているのに、それでもなお無制限にラスプーチンの精を貪欲に呑み込み続けていく。それに抵抗したくても自分ではどうにも制御できなかった。
 不二子の胸はもうとっくに限界を超えていた。そのまんまるに膨れ上がった超乳は今まさに音を立んばかりの勢いでより一層質量を加えていき、今この瞬間にも破裂してしまうかもしれない。しかしどうあがいてもこの流れを止めることができなかった。もうダメかも…あきらめかけて不意に体から力が抜けた。
 その途端、胸の中に注ぎ込まれるエネルギーがさらに堰を切ったように勢いを増し、ラスプーチンの様子がまた変わった。
 その時、不二子の耳に、信じられない言葉が響いてきた。せつない声だった。
「ああ…、今宵、わたしは生まれて初めて…イ…けるかもしれない――」
 ええっ!
 しかしその言葉を聞いて、不二子は頭の中で何かがつながった気がした。伝説の性豪ラスプーチン。しかし彼は実は、どんなに頑張ってもイけない男だったのではないのか…。その桁外れの精力を抱えていながら、手当たり次第に何千人、いや何万人という女性を相手にしていても、結局自分は最後までいけず、満足することなくその性エネルギーは自分の体内に蓄積されるばかりだったのでは…。そのまま100年、気の遠くなるような時間の中、世紀の性豪といわれながらも彼は絶えざる欲求不満の中で生きてきたのかもしれない。彼の中に溜まっていた、この途方もない性エネルギーの量も、そう考えると腑に落ちた気がする。
「かわいそうなひと…」
 不二子の顔からふっと苦痛の色が消え去り、代わって慈愛といってもいいような表情が現れた。
(いいわ、たとえわたしのおっぱいが張り裂けようとも、あなたの精、すべて受け入れてあげる)
 ふっと肩の力を抜いたその途端、ラスプーチンが放散するエネルギーがそれまでに倍するほどの量に増大した。不二子の胸に奔流となって堰き切って流れ込んでくる。
(ンやぁ、やっぱりだめぇ、ほんとにはちきれちゃう――)

 しかしそれは最後の爆流だった。
「おおおおおおおおおお!!!」
 低く深い、しかしどこまでも突き抜けるような雄たけびが、部屋の隅々までこだました。
 長い長いトンネルを抜け、遂にラスプーチンは射出した。どろっと濃いものが逸物の先からおびただしい量どくっ、どくっと何度も噴き出し続け、不二子の胸と言わず顔と言わず一面にふりかかった。
(おわっ…た――)
 不二子はもう呆然としながら、噴きかけられたものをぬぐいもせずに天をあおいだ。ラスプーチンのあの巨大な逸物が、まるで手品のようにスルスルと縮んでいくのを視界の片隅で見つめながら…。自分の胸が破裂せずに最後までもったことがただただ不思議だった。
「あり…が…とう」
 小声だが、上の方で確かにそう言ったように不二子には聞えた。カチリとどこかでスイッチが入るような音がする。次の瞬間、無愛想な壁の片面がバッと開くと、その向こうから数え切れないほどの財宝が現れた。
「これが…ラスプーチンの財宝…」
 さすがに我に返って不二子は体を起こした。張り裂けんばかりの胸の痛みも一瞬忘れたほどだった。
 しかし続いて自分のすぐ横でラスプーチンが倒れる気配がする。ハッとして、その体に駆け寄ってみて驚いた。そこにはあの精力の塊のような精悍さは微塵もない、すっかり枯れはてた老人の顔があった。そっと自分の手を鼻に寄せてみる。しかしもう既に息をしている様子はなかった。
(そうか、この人も、自分の強力すぎる精力をもて余していたのね。肉体はもう若くないのに、そのあり余る精気がそれを許してはくれなかった。だから…最期にわたしにその精力をすべて吸い尽くしてほしかった――。)
 不二子はなんだかじんと感じ入ってしまった。そして最期に自分を選んでくれた事をなんだか嬉しく思った。

(しかし――どうしてくれるのよ、このおっぱい!)
 世紀の絶倫怪人ラスプーチンの一生分の精力を余す所なく吸い取ってしまった不二子のバストは、今までとは比べ物にならないほどパンパンに膨れ上がっていた。胸の中にまさしくはちきれんばかりに詰め込まれたエネルギーは今も胸の中でとぐろを巻いて暴れまわっており、今まさにどんどん内側からおっぱいを作り出していっていた。胸の皮膚は今や自分でも怖くて触れられないほどぴーんと張りつめてしまって、くすぐったいとかこそばゆいとかのレヴェルですらない、強烈な痛みを伴っていた。それはじっとしていてもほとんど堪えがたいほどですらあった。
 服は――いや、服を着るどころの話じゃない。今、ごくわずかの刺激をちょっと当てただけでも胸がどうにかなってしまいそうだ。いつまでもここにこうしている訳にはいかないことは頭では分かっている。とはいえレザースーツはジッパーを完全に壊されていたし、たとえ大丈夫だったとしても一晩で見違えるほど膨れ上がってしまったバストは、その中に全然収まりそうにない。かといって裸で外に出る訳にいかないし――。それどころか、ちょっとでも体を動かそうものならその動きが何倍にもなって胸に響きわたり、じわんじわんと本当に破裂してしまいそうだ…。

「どうしよう…。これじゃ動けない」
 数え切れないほどの財宝に囲まれるという、彼女としてはこれ以上ない最高のシチュエーションに置かれながら、不二子は途方にくれていた――。