Capriccio in "F"〜不二子をめぐる綺想曲

ジグラット 作
Copyright 2011 by Jiguratto all rights reserved.

6.ルパン編ふたたび

「××までお願いね」
 サングラスを取って車内に乗り込もうとしてきた女性の顔を見て運転手はハッと目を見開いた。まだ若い――どう見ても20代を越していることはないだろうが、にもかかわらずその表情には酸いも甘いもかみ分けた者のような、コケティッシュななまめかしさが漂っていた。特にその奥深い光に満ちた瞳には、思わず吸い込まれそうな魅力にあふれている。
 しかしなによりも特筆すべきはその胸だった。あまりに大きすぎていったいどれぐらいあるのか見当もつかない…。その胸が薄いタンクトップ1枚に覆われているだけで目の前でゆらゆらと揺れているのだ。左右に振れるたびにふくらみきった胸の生地が今にもはちきれんばかりにひきつれている。。
 タンクトップにタイトスカートと、着ているもの自体はさほど豪華という訳ではない。なのに服に包まれた肉体そのものがあまりに圧倒的すぎて、とてつもないゴージャス感をかもし出していた。
(何者なんだ、こりゃ――)
 気にならないという方が無理だ。後部座席に乗り込もうとするも、バストだけで車内がいっぱいになってしまって体が入りきらない。
「ごめんなさい、前、倒してくださる?」あわてて前の助手席をめいっぱい倒してなんとかスペースを作り、それでようやく体まで車内に入り込むことができた。腰かけようとする体の動きに合わせて大きな胸がタンクトップを引き千切らんばかりに激しくたわむ。シートに深く腰を落としても、背をしっかり後ろにつけているにも関わらず、胸が後部座席の空間のすべてを占拠するばかりか、倒した助手席の背に女のバストがめいっぱい乗っかり、その先が運転席にまで侵食しようとしていた。そのため、運転手は肩口のすぐそばでその女性の乳房がふるふると絶えず揺れ動いているのを気配で感じずにはいられなかった。たまったものではない。
 しかしこちらもプロのはしくれ、客に対して変な態度をとってはならない、と運転手はありったけの自制心を総動員して何事もないかのように車を走らせ始めた。
 別に何か特別なそぶりをしている訳でもない。しかしこの狭い社内にとびっきりの超乳美女と2人きり、たとえ背を向けていても後ろから、その女性の身体中から強烈に発散されるオーラのような存在感を絶え間なく浴びせかけられて、むせかえるようだった。
 体がいつしかこわばり、ハンドルを握る手に常ならぬ力が入ってしまう。気がつくと掌はじとっと汗ばんでいた。
 運転に集中しようと必死に前方をに注意を向ける。しかしバックミラーを覗けばミラーいっぱいに彼女の胸が広がってあふれてしまいそうだ。しかもその胸が、車の振動に合わせてゆったりと大きく波打っている。それが前を見ててもチラチラとどうしても目に入ってきてしまい、気になってしょうがない。
(もしかしてノーブラなんじゃ…)
 そのやわらかな動きからして、ふとそんな考えが浮かんだ。
 まさかな、と自分に言い聞かせる。だって乗る前に彼女の立ち姿を見ているが、胸がぜんぜんたれてなかったじゃないか。この大きさだ、ノーブラならもっと…。しかし考えるほど却って確かめようという好奇心が湧きあがってきて、一層バックミラーの中の胸を注視してしまう。タンクトップは布がぱっつんぱっつんに張りつめて今にも張り裂けそうだ。その襟ぐりから、とてつもなく深遠な胸の谷間が、奈落の底に誘い込むかのように広がっている。そして胸の先が、かすかにぽちりと突き出ているのに気がついた時、緊張は最高潮に達した。
(あっ…!)
 一瞬注意がそれ、車体は対向車線に向かいかけた。一瞬のこととはいえ、判断を誤ったら大事故になりかねない非常事態だ。動揺を押し殺してちらと後ろの客の表情を見る。まるで何事もないように顔色を動かさなかった。気づかれていない。ほっとひとつ息をついた。
「運転手さん、ちゃんと気をつけて運転してくださいね」
「あ、はい。もちろん」安堵した瞬間を突いていきなり声をかけられ、あわてて気が動転し、思わず馬鹿みたいな返事をしてしう。気づかれている。運転手は自分の心を見透かされたようで一気に恥ずかしさが身体中を突き抜けた。いつしか掌の汗は身体全体にじっとりと拡がっていた。

「お釣はとっておいてね」
 目的地の店の前に着くと、その女性は財布から何枚もの札を出して手渡した。
「え――でも…」多すぎる。実際の料金の倍以上ある。
「いいの。なんだか変に気を使わせちゃったみたいだから。迷惑料と思って」そう言って運転手の手に無理矢理札を押し込んだ。
「――まいどどうも…」運転手はまるで操られたようにその札を握りしめていた。

(何者なんだ、ありゃ――)
 その女性が立ち去った後、運転手は、全身からまたどっと汗が噴き出すのを感じた。狭い空間に2人きりとはいえ、そんな長い時間な訳でもないのに、そして特に何をしたという訳でもないのに、あと1分でもあのまま長くいたら自分はどうにかなってしまったのではないだろうか、そんな不安な気持ちにとらわれていた。色気とかそんな言葉がどうにも安っぽく聞こえてしまうほどの圧倒的な妖艶さ、それが底知れないパワーを持って迫ってきて、男を狂わさずにはいられない何かを強烈に発散させていた。
「ありゃ…"魔性の女"ってやつかもな――」
 誰もいなくなった社内でひとり、運転手は人知れずつぶやいた。

「さて――と」
 運転手に気前よく代金を払って降り立った不二子は、そんな事を言われているとはつゆ知らず、気合を入れるかのように背筋をぴんと伸ばしてみた。途端に胸が一層張りつめて、タンクトップを突き破りそうになる。
(やばい――)
 すかさず肩の力を抜いた。
(これでもまだきつかったかなぁ…)
 実はこのタンクトップ、アジトに置いてあった自前のものを、自分で改造して作ったものだった。
(まったくラスプーチンのやつ、このわたしに針仕事をやらせるなんてね――。憶えてらっしゃい)
 やつあたりとしか言えない文句をつぶやいた。まあ不二子自身にとってはそれも無理らしからぬところなのだが。

 明るい日差しが目にしみる。なにせ1週間ぶりの外出なのだ。1週間前のあの時は、ラスプーチンの屋敷から、なんとか身ひとつで一番近い自分のアジトまで移動するのが精一杯だった。手に入れた財宝もとても持ち帰る余裕はない。とりあえず封印だけしてまた後で持ち出すことにして立ち去った。
 それからが大変だった。今日までの間、不二子は絶え間ない膨乳の嵐にとらわれていた。胸は始終自分でも触るのがためらわれるくらいぱんぱんに張れあがり、そっと触っただけでもびっくりするぐらい熱を帯びていた。
(熱い…)肌の内側で何か強大なエネルギーが出口を求めるようにうねりめぐり、たった今盛んに細胞が増殖していって、むくむくとふくれ上がっていくのがはっきり感じられる。それがいつもなら一晩で済むものが、今回は2日経っても3日経っても終わる気配すらない。あの夜一晩でいきなり10センチ以上も大きくなってしまったのを皮切りに、その後も日に4〜5センチのすさまじいペースで大きくなり続けていった。特に直後の2〜3日は胸がほてってしょうがなく、ほとんどベッドの上でじっとしているしかなかった。
 それが来る日も来る日も続くのだ。(いつまでこんなのが続くの…?)さすがの不二子も不安になってくる。そうするうちに、ブラジャーはもちろん、持っていた服はすべて入らなくなってしまった。これもまた全て買いなおさなければ――いや、作り直さなければならないだろう。しかしこの膨乳がおさまらないうちはいくら作ってもまたすぐ無駄になってしまう。結局不二子はこの1週間、着る服もままならないままアジトに足止めを余儀なくされていた。無論その間、ラスプーチンの財宝は封印されたままである。
(ああ、パイズリはもう当分いいわ)不二子もさすがに少し後悔していた。
 ――だが、永遠に続くかと思えるほど長かった膨乳も、ここに来てようやく落ち着いてきたようだ。胸にこもっていた熱もひいてきた感じだし、膨乳ペースも日に数センチといったところまで落ち着いてきた。
(けど――まだ残っている…)そうなっても自分では、胸の中にあのラスプーチン3世から吸い取った精エネルギーがまだ完全には消えずに残っているのを感じていた。(これじゃ、また育っちゃうかも…)
 本当ならば、活動再開は完全に胸が落ち着いてからにしたかった。しかしもう時間がない。明日には次の仕事のためにルパンと1月半ぶりにおち合う事になっているのだ。あのルパンに対していきなりノーブラで臨むなんて、そんな危険なことは何としても避けたい。今日のうちになんとかしてブラだけでも調達しとかないと――。

 不二子が車を降りたその目の前に、お目当ての店はあった。ろくに看板さえ出ていない地味な店構えだったが、あまり一般には知られてはいないものの、知る人ぞ知るオーダーメイド専門の高級ランジェリーショップだった。どんな注文にも応じられる腕のいい職人が揃っていて、不二子は以前からいきつけにしていた。
「いらっしゃいませ」
 不二子が店内に入っていくと、店員がさっそく挨拶し、何も言わずに奥へと案内する。もはや顔パスであった。
 奥からから店長が出てくる。
「峰様、いつもありがとうございます。今日は何を…」
「ブラジャーを作って欲しいの。大至急ね」
「かしこまりました。ではさっそく採寸しますので、こちらへどうぞ」
 VIP用の特別室に通され、不二子のお気に入りの職員が出てきた。
「ごぶさたしております」ここへ来るのは約1月半ぶりになる。1月もの間サイズがほとんど変わらなかったからだが、1週間前の出来事以降、不二子のバストは再び急成長を始めていた。
 職員はその胸を一瞥した。「それでは採寸させていただきますので、おめしものを――」最後まで言わせず、不二子はタンクトップの裾をつかむと、一気に引き上げようとした。
 しかし胸のところで服が引っかかってなかなか持ち上がらない。しばらく胸をひきずるように苦闘したが、やっとのことで肩まで服を引き上げることができた。それとともに内側からとてつもなく発育したバストがたっぷんと音をたててまろび出てくる。「おお…」今まで事務的に手を進めてきた職員が、思わず驚きの声をもらしてしまう。それほど、不二子のバストは見事の一言につきた。
 無理もない。最近の不二子の胸の成長っぷりをよく知っているこの職人さえ、今回の成長は飛びぬけたものだったのだから。そう、この1週間の間に不二子のバストサイズはさらに50センチ以上も上乗せされていた。
 細身の不二子の身体から落っこちないのが不思議なぐらいに盛大に盛り上がったその胸は、巨大なゼリーのようにしばらくの間ふにふにとやわらかく揺れ動き続けた。店員は食い入るようにその動きが静まるまでじっと見つめ続けてしまった。
「それでは、失礼します」
 不二子の胸がようやく落ち着きを取り戻したのを見計らい、職員は自分の仕事を思い出したかのごとくメジャーを取り出した。そしてまず不二子の乳房の下にメジャーを巻く。
「アンダーバスト、66センチ」
 そこは以前と全く変わっていなかった。不二子もいちいちいいのに、と思う。しかしそういうわけにもいかないのだろう。次に、職員は不二子のバストの頂点にメジャーをまわした。慎重この上ない手つきだったが、その指先が緊張で細かく震えているのが見て取れる。そのわずかな震えにも反応してその乳房はぷるぷると大きく揺れ動いてしまうため、なかなか手が定まらない。不二子も察して、しばらく息を止めて待った。
 ふと、職員の持つメジャーが乳房の先から外れかけ、そのまま不二子の乳首をなすった。
(あ…!)
 その途端、不二子の胸に電流が走り、自分の意思と関係なくピクッと体が動く。巻かれていたメジャーをはじき飛ばしてバストが上下に大きくたわんだ。
「どうしました?」
「いや、なんでもないわ。ごめんなさい」
 不審がって覗き込んだ職員の目を制しながら、不二子は冷や汗が出るのを感じていた。
(あぶない――ラスプーチンの"気"がまだだいぶ胸に残っているわ。おっぱいが張りつめてすごい敏感になっちゃってる――。まずいわ)
 職員は再び、一層慎重に不二子の乳房にメジャーを回した。手が止まる。
「トップバスト、352センチ」
 メジャーが不二子の胸からはらりと落ちる。ほっと緊張の糸が切れ、職員も不二子も同時に深く息をついた。
(やっぱりきのうよりまた大きくなっている)
 自分でひとり測ったのだから多少の誤差はあろう。しかしその差は誤差の範疇を大きく超えていた。やはりまだラスプーチンの精は消えていない。胸の中に残り、今もなお不二子のバストを成長させ続けているのだ。
「それで、デザインはどのようなものにしましょうか」
 一通り計測し終わると、職員は次の質問をした。
「シンプルなものでいいわ」不二子はきっぱりと言った。「ただ、この胸をしっかり包み込んでくれるものであれば」
 派手なイメージがあるが、不二子が普段身につけるものは意外にもシンプルなものがほとんどだった。パーティ用のドレスなどでは一部華美なものがあったとはいえ、基本は機能性最優先、体にぴったりとして動きやすいものが好きだった。考えてみれば泥棒としては実際それは当たり前のことかもしれないが、意外と知られていない。
「それで納期は――」
「大至急よ。本当なら今日にでもほしいぐらいなの。最大限――明日の朝10時までにお願い」
「わかりました。では明日10時にお越しください。必ず仕上げてご覧に入れます」
「あ、それから――」不二子はこれを忘れちゃ大変とばかりに急いでつけ加えた。「サイズは、今日測ったものより5センチ大きくして欲しいの。できる?」
 店員は怪訝そうな顔をした。「はあ…まあ可能ではありますが、どうして…」
「お願いよ。でないと――」不二子は言いかけて口をつぐんだ。「とにかくできるんならいいわ。それでお願いね」

 次の日、10時の開店と同時に不二子は店に現れた。
「できてる?」
 これだけで話は通じた。奥の部屋に通された不二子の前に、さっそく注文の品が差し出された。
「ありがとう。さっそく試着したいんだけど」
「あ、でも…」職員は口を挟んだ。「ご注文通り、これは5センチ大きくしてあるんですが」
「いいのよ、それで」不二子は店員の前で一気に胸をはだけた。
(あら…?)職員は不二子の胸を見て何か違和感を感じた。きのうよりも一層充実して、大きく張りつめてるように見えたのだ。
 不二子はブラジャーを手に取ると、手伝おうとする職員を手で制して、その超乳をカップの中に丁寧にフィッティングし始めた。職員はその様子を不思議そうに見つめていた。作っている間は本当に信じられないような大きさに感じられてしょうがなかったブラだが、こうしてみるとすっぽりと乳房がその超特大カップの中に収まっていく。
(やっぱりこれでぴったりだわ)
 自分のバストをカップに収めきり、手を背中にまわしてホックを止めるうちに不二子は自分の予想が当たったことを確信した。カップに余裕はほとんどない。一晩の間にまた数センチ大きくなっているのは確実だっだ。5センチぐらいの誤差はすぐに埋まってしまいそうだ。
(本当にラスプーチンのやつ、とんでもない贈り物をしてくれたわね。あれっきりの財宝じゃとても割に合わないわ)とはいえ不二子はブラジャーの出来自体には満足していた。きのう測ったサイズ通りに作られていたら、おそらくもうこの時点で小さくなってしまっていただろう。

「毎度ありがとうございます」
 出来上がったばかりのブラジャーを身につけたまま、不二子は店から出ようとした。その時、最後の挨拶をした男性店員に何か違和感を覚えた。もともとこの店の性格上、男性はほとんどいなかったし、その店員も初めて見る顔だった。なのにその風貌や声に何かひっかかるものを感じたのだ。知らないはずなのに、どこかで会ったことのあるような…。
 まじまじとその店員を見つめると、その店員はにっこりと笑った。
「ルパン――」見破っておきながら自分でびっくりしてしまった。「何してんの、こんなところで」
「わー、やっぱりわかっちゃったかぁ」店員は変装を取って見せた。中から見慣れたモンキー面が現れる。「いやーふ〜じこちゃんの目はやっぱりごまかせないな。お久しぶり」
 まだ驚きの色が顔から消えない不二子を目の前に、ルパンはしゃべり続けた。
「この店が不二子ちゃん御用達ってことは先刻調べがついてたのよ。で、きのう不二子ちゃんが来たって聞いちゃったもんでね、こりゃまた現れるなってんでもぐりこんでたって訳。おかげさんで思わぬ収穫があったけどね。不二子ちゃんの最新バストサイズ。へっへっヘっ」
「もう、いやぁねぇ」
「しかしまぁ、357センチとはね」ルパンは不二子のはちきれんばかりの胸元を舐めるように眺めまわしていた。

「ターゲットを変更する?」
 結局そのまま2人はルパンのアジトへと足を運び、仕事の話に移った。そしてルパンの口から最初に飛び出したのは、意外にも事前に話していた宝石展から狙いを変えるという一言だった。あらかじめ予告状を出してわざと厳重な警備をさせ、それを突破するのを生きがいとしているようなルパンにとってはかなり珍しいことだ。
「それで何なの?今回のお宝って」
「不二子、お前、ラスプーチン3世って知ってるよな」
 驚いた。今日またその名前が出てくるとは――。悟られまいと顔に出さないよう必死だった。
「なんとよく聞けよ、あの伝説の怪盗が、今ここ日本に来ているそうなんだよ。しかも自分が盗んだ財宝をすべて持ち込んでな。――ん、何か知ってるの?」
 不二子はしまった!と思った。あの晩の事をルパンに知られる訳にはいかない。
「ううん、驚いているのよ。まさかあのラスプーチンが日本へ…」
「それでな、せっかく持ってきてくれたんだ。いい機会だからあの老いぼれの財宝をそっくりいただいちまおうってのが今回の計画よ」
「そんなぁ…」不二子は思わずルパンに突っかかった。
「ん?どうしてそんなにムキになるんだい、不二子ちゃん」
「だってあれは――」
 その途端顔がカーッと熱くなってきた。これを説明するとなると、ラスプーチンとの事に触れないわけはいかない。彼の超巨根をこの胸にはさみこんだなんて――それをルパンに知られたくない、という思いが急激に不二子の胸に湧きあがってきた。
「ん?どうした不二子。顔赤いぜ」
「な、なんでもないわよ。それより――いつ、やるの?」例の屋敷はまだあの時のまま放置されている。できれば時間稼ぎしてもう少し後始末をしておきたかった。
「善は急げだ。今晩でどうだ――」不二子の思惑も知らず、ルパンは話を先に進めようとした。
「ちょっと待ってよ、その…銭形の動きだって気になるし――」
「あ、それなんだけっどもさぁ、妙な噂が立ってんのよ。あのとっつぁんが腑抜けになってぜーんぜん役に立たなくなってるっていうさぁ」
 不二子の顔が再びサッと変わった。そうだ、銭形警部もこの前、不二子が手にかけたばっかりだった。ラスプーチンのおかげで危うく忘れかけていたが、意外に手ごわくてつい思いっきり――。
「まさかと思ってこっちも本腰になって調べてみたんだけどさぁ、次元からの情報によると、これがなんとホントらしんだよなあ。ま、そうなったらなったで張り合いがないけど、仕事としてはやりやすくなりそうだぜ…」
(そう、銭形警部も…)考え込んでしまった不二子を尻目にルパンは滔々と詳細な計画を語り始めた――。

 その夜、不二子は部屋でひとり着替えはじめていた。ルパンとの約束の時間は近い。服を脱ぎ、下着姿になった不二子は、ブラジャーにちょっと違和感を感じ、露出した胸を見つめた。
(たった半日だけなのに…)
 不二子は、自分のバストがブラジャーを押し出すほどにみっちりと張り出してきていることに気づかずにはいられなかった。今朝方初めてつけた時にはちょうどぴったりって感触だったのに、もう隅々までおっぱいがぎっしりと詰め込まれて乳肉がはみ出しそうになっている。
(やっぱり…また育っちゃった。もう…だめかもしれない、このブラ――)
 一週間ぶりにつけたブラだったのに、もうお別れか――。短かったわね。不二子はいとおしげにブラジャーを胸の上からなでた。しかし生地がもう悲鳴を上げんばかりにひき攣れている。仕方ない。背中に手を回すと、上からひとつ、ひとつ、ホックを外していった。外すためにストラップを少し引っ張るのにも苦労するほど余裕がなくなっていた。
 ブラジャーが不二子の足元にはらりと落ちる。中から、見るからに今朝方より幾分重量感を増して張りつめた2つの乳房が現れた。ぐぐぐっと一層突き出して明らかにひとまわりほど大きくなって――。ラスプーチンが残した精はまだ完全には消え去っていない。今もまだ、着実にその精に反応して乳房がなお発育を続けている事が、不二子には痛いほど感じ取れた。
(こんな状態で――ルパンと対決できるのかしら…)
 続いていつもの黒レザーのスーツを取り出し、ショーツ一枚の素肌の上にじかにそれを着込んでいく。それが潜入する時の彼女のいつもの格好だった。
 このスーツも新調したばかりだが、いささか心配になってきた。
(胸、入るかな)
 まず両足と両腕を通し、最後に前方に縦に連なるジッパーを引き上げていく。ジーッとかすかな音が部屋の中に響きわたる。ウエストのあたりからジッパーは大きく盛り上がった胸に引きずられて大きく前へとせり出し、それに合わせて腕も大きく伸びていった。
(あ……)
 届かない――。今まではなんとか精一杯伸ばせば胸の先まで届いていた腕が、今では途中でどんなに伸ばしても指先からこぼれ落ちてしまい、上まで到底届きそうにない。。ジッパーはまだ胸のかなり下のほうにあり、まだまだバストを隠すところまで至ってなかった。こんな状態ではちょっと動いただけで胸がスーツからあふれ出てしまう。なんとかもう少し――と懸命に腕を伸ばしてもがくが、腕の間で乳房がまるで別の生き物のようにプニプニとはじけまわり、腕を押し返しまくって、何度やっても1度手からこぼれたジッパーに届くことはなかった。
(どうしよう――)
 もちろん部屋には自分しかいず、誰かにジッパーを上げてもらうことなどできない。もしいたとしても、こんな格好を誰かに見られるのはごめんだった。
(そうだ!)
 ふと思いついて、壁に細めの釘を胸の高さに合わせて軽く打ちつける。数センチを残して釘が固定された事を確かめると、胸を持ち上げてジッパーの金具の穴に釘を引っ掛けようとした。しかしおっぱいの下、自分からは見えない所にあるのでなかなか上手くいかない。それでも何度か手で位置を確認しつつ挑戦するうちに、どうにかうまく引っ掛けることができた。
(ようし…)
 そのまま胸を下に移動して少しづつジッパーを引き上げていく。しかしそれとともにおっぱいがまわりから締めつけられるようにぎゅうぎゅうに詰っていった。
(わ、やっぱりきつい…)
 なんとかできる限りジッパーを上げていく。どうにか胸の頂点を超え、戻り始める所までいったが、そこまででとうとう1ミリも動かなくなってしまった。どうやら上から手を伸ばせば届きそうな所までは来たのだが、もうどうにも革がぱんぱんにつっ張り切っていて、今にも破けてしまいそうだ。
(まあ、これでいいか)
 鏡で見ると、まだまだ上がりきってなくって谷間が丸見えだが、もうキツキツでこれ以上無理をしたら逆に壊れてしまいそうな危なっかしさがあった。
(とりあえず隠れてるし、いいよね、これで)不二子は無理矢理自分を納得させようとうなずいた。

「ルパン、お待たせ」
 落ち合う場所に遅れてやってきた不二子を一目見るなり、ルパンは目を丸くした。その視線はひたすら不二子の胸に向けられている。痛いほどの鋭さだった。
 無理もない、さっきまではなるべく胸元が隠れるような格好をしていたのに今はバストラインが丸見えになっている。しかも1月あまり前にルパンが見た時と比べても五割増ぐらいに大きくなっているのだ。重量感でいったらほとんど倍増している。
(ひと月ちょっと見なかっただけで、こんなにおっきくなってるだなんて…)
 ルパン自身、予想をはるかに上回る成長ぶりに驚いていた。(不二子のやつ、ますますパワーアップしてやがる)

 仕事そのものは簡単だった。なにせ主のいなくなった屋敷で、不二子自身が封印した財宝を見つけ出すだけなのだから。ルパンもあまりにあっさりと事が運びすぎたので拍子抜けして、却って裏があるのではと不安になっている風だった。しかしこの仕事にこれ以上何も裏はない。何事もなく成功して、すべての財宝を一旦ルパンのアジトへと運び込んだ。さすがルパン、やることにそつがない。しかし――このままでは、自分がラスプーチン本人から譲り受けたはずの財宝が、すべてルパンのものになってしまう。それは絶対に許せなかった。
「待ってルパン、このお宝全部、あなたに渡す訳にはいかないわ」
 考えるよりも先に、不二子の口が動いていた。

 ルパンの口元がニヤリと笑う。待ってました、とでも言いたげな顔つきだった。
「そう来たか不二子ちゃん。俺だってまさかこれだけのお宝全部無条件であげるほど甘くはないよ〜」
 いつにない強気さを見せるルパンに不二子もちょっとたじろいだ。(ああんもう、今回はなんとかしてパイズリは避けようと思ってたのにぃ〜)しかし自分がまいてしまった種だ。今さらひっこめる訳にもいかない。
「それじゃいつものように勝負だ不二子。まさか逃げやしないよな」
(ああ、やっぱり…!?)不二子はとまどっていた。そりゃ確かにルパンと仕事をする以上こうなることは予想していた。しかし胸にはまだラスプーチンの精エネルギーがだいぶ残っているし…。今回だけはどうにか――たとえお宝を失っても――そういう事態は避けたいと内心思っていたのだ。
 かといって、このお宝だけはどうしてもあきらめる訳にはいかない。あれだけの思いをして、せっかく手に入れたラスプーチンの財宝、ルパンにひとかけらたりとも横取りされたくなかった。しかし、そのためには――避けられそうもない。
 ルパンを見た。もう既に服を脱いでベッドの上に横たわり、自慢の逸物をはちきれんばかりにビンビンにそそり立たせている。
(こんな状態で、はたして勝てるんだろうか――)
 不二子は不安になってスーツの上からそっと自分の胸をまさぐってみた。気のせいか、ラスプーチンの精エネルギーの存在ははあまり感じられなかった。
 そしてルパンのそそり立った逸物を見る。あの化け物じみたラスプーチンのに比べれば、ルパンのだってさほど大きくは感じられい。
(いつも勝ってるんだものね)不二子の心が揺らいだ。(そうよ。わたしが今まで1度だって負けたことがあって?いつものように、ルパンをこの胸で思いっきりいかせてあげればいいのよ。そうすればラスプーチンのお宝はわたしもの…)不二子は心を決めた。
(いいわルパン。勝負してあげる)
 気持ちが固まり、その顔に頬笑みが浮かぶ。そうと決まれば、と不二子はさっそくルパンを挑発しにかかった。
 ルパンの目の前にその超乳をぐっと突き出して見せて、わずかに振り動かして見せた。
「ねぇルパン、お願い。このジッパー、下ろしてくれない?勝負したいのはやまやまなんだけど、わたしのおっぱい、大きくなりすぎちゃって自分じゃ手が届かないの」
 ルパンの両目が不二子のバストでいっぱいになる。急激に色めきたってきた。
「も〜ちろんさぁ、不〜二子ちゃ〜ん。でもさぁ、それじゃどうやってこれ締めたの?まさか誰かにやってもらったんじゃあ…」
「うふっ。ひ・み・つ。想像してみて」
 まさか自分の部屋での苦闘を明かす訳にもいかない。意味深な笑顔を浮かべると、さらにぐぐっと胸をルパンの顔にぶつからんばかりに突き出してみせた。ルパンの手がジッパーに伸びかかる――しかし、その手が結局ジッパーに触れることはなかった。
 その瞬間、今までかろうじてその胸を抑えこんでいたジッパーが遂に限界を突破し、ボンと音を立てて吹っ飛んだのだ。中から、押し込められ続けていたバストが、さらに大きさを増してあふれ出してくる。
「きゃっ」不二子は驚いてもう到底自分でも抱え込めない大きさになっている胸を抱え込もうとした。その時、はっと気がついた。
(さっきより、また大きくなってる…)
 その様子を見て、ルパンの目の色が変わった。逸物も、一層ぐぐっとせり上がってきたようだ。
 その様子にいつも以上に強力なパワーを感じて不二子は一瞬たじろいだ。
 ルパンもその目の前にまろび出た不二子のバストを見て改めて驚いていた。ひと月あまり前に会った時より、その大きさも迫力もほとんど倍増しているように感じたのだ。
(なんてこった…)
 それだけではない。あらわになった胸からは、そこからあふれ出してくるフェロモンも以前とは比べ物にならないほど濃密になっている。ルパンは股間のものが自分でも制御できないほど堅く大きくなっていくのを感じていた。

(どうしよう…。まだ落ち着かないわ)
 やはりラスプーチンの精はまだ残っている、ということを今さらながら実感した。性的な雰囲気に興奮したのか、胸はさっきとは比べ物にならないぐらい張りつめている。この上ルパンの精エネルギーを取り込んだら、どうなってしまうのだろう。
 しかしもう後に引くことはできない。覚悟を決めると、不二子は両腕をいっぱいに伸ばしてどうにか自分の胸を下からかかえ上げると、さも余裕ありげに頬笑んでみせた。
(あせっちゃだめ。相手を呑みこんでやるの)不二子は猛り狂って自分から向かってきそうなルパンを制して、その目の前でバストをこれ見よがしにゆったりとゆさぶってみせた。
「あわてないで、ルパン。このおっぱい、これからたっっぷりと味あわせてあげるから」

(落ち着いて、落ち着くのよ不二子。見てごらんなさい。ラスプーチンのあの化け物じみたのに比べれば、可愛いもんじゃない)
 ルパンは一秒だって我慢できない風に鼻息荒く今か今かとおっぱいの到来を待ちかまえている。不二子はひとつ深呼吸すると、胸の谷間にルパンのものをぱくりとくわえ込んだ。
「お、おおっ」
 途端にルパンが軽いうめき声を上げる。(そうよ、わたしのおっぱいだっておかげで一層パワーアップしてるんだから。負けることなんかないわ)不二子は自分に言い聞かせるように心の中でつぶやいた。
 しかしその時、胸の間で、ルパンの逸物が活路を開くように蠢いた。その途端、不二子の胸に電撃が走る。
(う…)それは今まで感じたことのない快感だった。(なに、今の…。わたしの胸、すごい敏感になってる)
 さらにルパンのものが胸の谷間で苦しげにのたうちまわる。感じやすくなっている不二子の過敏な所を、その動きが執拗に攻めたてた。
(や、やめてルパン…。今、そんなことされたら…わたし)
 しかしここでそんな弱音を吐く訳にはいかない。漫然と余裕の笑みをとりつくろいながら、ルパンに宣戦布告した。
「さあ、いくわよ、ルパン」
 両腕をしっかりと下からあてがい、以前よりもはるかに重量感を増した乳房を使ってルパンの逸物を揉みしごきはじめる。しかしその時、さらなる衝撃が不二子を襲った。
(な、なにこれ…)
 ルパンの精をすべて搾り取らんとばかりに始めたのは確かだ。しかしそこから受けた精エネルギーは、今までとは比べ物にならないほど濃密だった。しかもラスプーチンに勝るとも劣らないほど大量に――。
(や、やめて――)不二子の頭に危機感が走った。今、こんなものを吸い込んだら大変なことになる。
 しかし、やはり不二子の胸は、その意思と関係なくその濃密かつ大量の精エネルギーを一滴余さず吸収し始めた。そして胸の中にはまだラスプーチンの精エネルギーがたっぷりと残っている。2つのエネルギーが胸の中でせめぎあい、化学反応を起こすようにスパークした。
(ああっ、おっぱいが…)胸の中で、さらに一層増殖し始めたのが分かった。
 今度こそ張り裂けちゃう――。そう思った時、ルパンの逸物の先から、どろりと濃いものが噴き出してきた。
 ルパンがたまらず漏らしたのだ。不二子はほっとしてルパンから離れた。いつもなら1回戦ぐらいではまったく問題のない不二子だったが、この時は違った。あまりの衝撃に息を荒げ、顔にも余裕がなかった。無理もない。今もなお、吸収した2人分のエネルギーが胸の中で渦巻き、ひょっとしてびくんびくんと脈打っているのが外からでも分かるのではないかと思うぐらい内側で暴れまくっているのだ。

「やー、くっそう…。やっぱり我慢できなかったかぁ。この1ヶ月間、1滴も漏らさず鍛え続けてきたんだけどなぁ…」
 これには不二子の方が驚いた。
「ルパン、まさか…。あなた、このひと月以上の間、禁欲してたの?」
 信じられない。あのどうしようもないスケベ男が、ひと月間も女断ちしてるなんて…。
「なに言ってるの。不二子ちゃんにはじめてにパイズリされて以来、他の女の子になんか全然目もくれてないよ。ホントだよ。それだけの価値が不二子ちゃんのおっぱいにはあるって」
「ど、どうだか…」こんな時にいきなりそんな事を言われて、不二子はちょっと顔に血が昇った。思いもよらず嬉しかったのだ。(なんで…?)自分の気持ちが整理できない。それにルパンの女癖を知っているからこそ、みだりに信用し切れなかった。でも、ひょっとして…。あれだけ頻繁に、不二子に精を根こそぎ吸い取られ続けてきたのだ。考えてみると、ルパンといえども他の女の子に手を出す余裕は、実際のところないのかもしれない。ルパンに会うのはひと月半ぶりのこと。このひと月あまり、ひたすらじっくりと精を蓄え続けていたとしたら――。あの絶倫なルパンのことだ。先ほどの濃密なエネルギーも――あるかもしれない。

「さあ、じゃ、2回戦行ってみようか。まだまだ終わりにする気はないぜ、不二子」
 むしろ今日はルパンの方に余裕が感じられた。1ヶ月半にわたって溜めこまれた精エネルギーはまだまだたっぷり残っているぜ、とでも言いたげな様子だ。
 やばいわ…。不二子は初めて危機を感じた。1回戦はどうにか勝つことができたが、これをこのまま続けていったら――。わたしのおっぱい、いつまで持つかわからない。手を伸ばし、そっと胸をさすってみる。
(うっ!)嵐のような快感が、胸全体を突き抜けた。やっぱり――おっぱい全体がさっきと比べ物のないほど鋭敏になっている。この状態でパイズリしたら――ルパンをイかせるどころか、こっちの方が胸だけでイっちゃいそう…。
 それにしても驚くべきはルパンの方だ。禁欲してたというが、それだけであんなになるものだろうか。先ほどの感触では、あの世紀の性豪ラスプーチンに勝るとも劣らなかった。
(いったいどう言うことなの――。それじゃあ、ラスプーチン3世が一生かかってたくわえてきたものを、ルパンはたったひと月半の禁欲で同じだけのものが溜まったとでも言うの――!?)
 不二子はあきれたようにルパンのなおもそそり立った逸物を見つめた。
(でも――考えてみれば、わたしのおっぱいはそのほとんどがルパンから吸いとってきたものだし…。
ルパン――あなたって人は…)
 不二子は初めて、ルパンという男の底知れない凄みを感じていた。

 2回戦が始まった。不二子の顔にはもう余裕がない。胸いっぱいに襲いかかる快感と、自分でも制御できない膨乳に耐えるのに必死だった。やればやるほど、ルパンの逸物からは底なしのように精力があふれ出してくる。不二子はその柔肌を突き破らんばかりにふくらみつづける乳房の痛みに耐えるのがやっとだった。そんなになっても、不二子のバストはそんなことお構いなしに、ルパンの精をなおもありったけ吸い尽くしてしまう。
 それでも不二子は勝ち続けた。もうだめ、という間一髪の所でルパンがたまらず果ててしまうことにより、薄氷を踏む思いの勝利を続けていたのだ。

 勝負は実に7回戦にまで及んだ。ここまでどうにか不二子が勝ちを収め続けていたが、勝ったはずの不二子の方がどう見ても追いつめられていた。ますます息を荒げながら、ビンビンに張りつめたおっぱいを抱えきれずに、ただ気力だけで立っている。
(も、もう…だめ。これ以上やったら――本当におっぱいが破裂しちゃう…。ううん、その前にイっ――ちゃう)
 ちらりとルパンを見た。負けたはずなのに、ルパンのものはまだまだ余裕綽々といった風にそそり立っている。いつもならこれだけ搾り取ればもう腰が立たないほど消耗しきっているはずなのに、今回は違った。
(もう…ルパンの意地悪。分かってるんでしょ、わたしがもう限界だっていうのは。なのに…まだやろうっていうの?)
 しかし実はルパン自身、自分で自分が抑えられないほどの性的衝動につき動かされていたのだ。不二子と一緒にいるといつもそうなってしまうのだが、彼女の体から絶えず湧き出るように発散されている何かに、なんというか男の奥底に潜む根源的な本能を呼び起こされてしまうのだ。その"何か"――フェロモンと言っていいだろう――は、彼女が胸をあらわにするとひときわ強く漂いだす。そして胸が大きくなるにつれてその強さはますます烈しさを増していくような気がしてならなかった。
 ルパンも、先ほど、目の前で不二子の胸のジッパーがはじけ飛ぶまではある程度冷静さを保っていた。しかしはじけ飛んだジッパーの内側から、信じられないほど巨大な超乳があふれ出した途端、頭のネジがぽんと飛んだ気がして、お宝も何もかも忘れて不二子の胸に立ち向かうことしか考えられなくなってしまっていた。
 結局のところ、男達の精力をその最後の一滴まで搾り取らせているのは不二子自身のフェロモンの力に他ならなかったのだが、しかし余裕のない不二子にそこまで考える余裕はなかった。

 ぎらぎらと目を血走らせてさらに対戦を望むルパンを見ているうちに、不二子はふっと腹が座った。
(そう…、どうしてもやろうっていうのね)痛いぐらいに張りつめた胸を揺らしながら、不二子はルパンを見据えた。(わたしを誰だと思ってるの?峰不二子よ。わたしは誰にも負けないんだから。こうなったら、たとえ胸が張り裂けようと、ルパン、あなたの精力、一滴残らず搾り取ってあげるんだから。もう2度と立ち上がれないぐらいにね)
 その時、なんだか不二子は自分に新たな力が宿ったような気がした。相変わらず胸ははちきれんばかりに膨らみきっていたが、なんだかまだまだルパンの精をさらに取り込めそうな気がしたのだ。
 不二子のまわりの空気がにわかに変わった。ルパンにもその違いを感じ取ったようで、じっと不二子を見かえした。(不二子もいよいよ本気を出すってか。でも今日の俺はいつもと違うぜ。ぜんぜん負ける気がしねぇ。やってやるぜ)
 不二子はルパンの逸物をはさみ込む、いや、その巨大になったおっぱい全体を使って、ルパンの下半身全体をもすっぽり包みこんでしまった。
(これぞ、ここまでおっぱいが大きくなったからこそできる技。名づけて不二子スペシャルよ。ルパン、覚悟なさい。ラスプーチンのお宝も、あなたの底なしの精力も、ぜーんぶ吸い取ってあげるんだから)

 不二子は再び攻勢に転じた。巨大な乳房を縦横無尽に駆使して、まるでルパンの下半身全体を包み込んでそのありとあらゆる部位を絨毯爆撃のように刺激していった。
「ううっ…」ルパンは思わずうめいた。さっきとはまるで違う。まるで自分の身体の下半分が異次元世界にワープしてしまったかのようなまったく初めての感覚に取り込まれ、しびれて自由が利かなかった。そこにはただひたすら快楽だけがあった。
(こんなのって――アリか)
 ルパンは体の下半分がすっぽり快楽の渦に取り込まれたように身動きが取れない。一方不二子のバストは、新たな活力を得たようにぐいぐいとルパンの精を貪欲に呑み込んでいく。
 たまらずルパンの逸物の先から精液が噴き出す。しかし不二子はそれでもルパンを離そうとはしなかった。
(どうルパン、わたしのおっぱい、気持ちいいでしょう。もっともっと搾り取ってあげるからね)
 みちみちと音がするほどの勢いでバストがふくらんでいく。不二子は本当に自分のおっぱいが破けてしまうのではないかという不安に襲われつつ、そんなことはおかまいなしとばかりになおもルパンの逸物をしごき続けていった。
(わたしのおっぱいが限界にくるのが先か、ルパンが完全に果てるのが先か、これは真剣勝負よ!)
 不二子のおっぱいが張りつめれば張りつめるほど、より一層ルパンの逸物は強くしめつけられていく。ルパンはどうにもたまらず、間断なく逸物の先から白いものを噴き出し続けた。
(や、やめてくれ〜い不二子!死んじまうよ〜…)

 何分ぐらい続いただろう、ルパンの逸物の先からの噴射がにわかに止まった。遂にすべて出しつくしたらしい。あれほどそそり立っていた逸物が、今や力なく萎えていった。
(終わっ――た)
 不二子はさらに巨大に張りつめた胸から手を離すと、そっとルパンを開放した。勝った――のだろうか。不二子の胸は今やぐゎんぐゎんと大きく脈打つように痛いほど張りつめていた。勝利感はない。ただ「終わった」という事実だけがあった。

 顔だけを少し動かしてルパンを見る。しかしその顔は蒼白としていてピクリとも動かない。
(しまった、やりすぎた――)
 不二子の脳裏に、自分の胸の谷間でこと切れたラスプーチンの姿がまざまざと蘇ってきた。まさか、ルパンもなんて…。
「ルパン、死なないで、死んじゃいや」
 思わず声が出ていた。あわてて駆け寄ってルパンを抱えあげようと手を伸ばしたが、手よりはるか先に胸がルパンの顔を覆ってしまった。
「あぅっ!!」
 パンパンに張りつめたおっぱいが、2人の間に挟まれてひしゃげ、大きく変形してさらにはちきれんばかりに拡がる。自分の意思と関係なく反応してしまう。張り裂けそうな痛みとそれに倍する快感がない交ぜになった、強烈な感興が不二子の体中に駆け巡った。
 しかし不二子はそれすらも乗り越えて、必死になって胸をルパンの顔に押しつけた。その谷間にルパンの頭ごとすっぽりはまってしまい、張りつめたバストが両方から締めつける。
(ルパン、気がついて!ほら、あなたの大好きなおっぱいよ、おっきなおっきなおっぱいよ。お願い…目を、開けて!)
 不二子はその胸でルパンの顔を思いっきりうずめた。
 2人の動きが止まる。少しして、胸の下でルパンの顔がかすかに動き始めた。
「う、うぷ…くるひい…」
「ルパン――」不二子の顔の緊張がほどける。そしてすべての力を使い果たしたようにふらりとルパンから離れると、力なく壁に背中をつけた。
 そして苦しそうに息をつきながら、そっとルパンの顔を見下ろした。
 ルパンも首をすこし動かして不二子の方を向ける。その顔にはかすかな苦笑いが浮かんでいた。
「不二子…。すっげえよかったぜ。今までの何倍も。俺――今日はもう、だめだぁ…」
 それだけ言うと、コトンと頭を降ろし、ふたたび目を閉じた。不二子の耳におだやかな寝息が聞こえてきた。
(よかった…)
 不二子は自分でも意外なほどの安堵感を覚えた。

 今回の勝負、かろうじて不二子の勝ちとはいえ、実際は受けたダメージは不二子の方がはるかに大きかった。こうしてじっとしている今まさに、不二子の胸の中では、まだ残っていたラスプーチンの精と、たった今また大量の注ぎ込まれたルパンとの精が激しくぶつかり合い、すさまじい勢いで不二子の乳房を内部からどんどん発育させていった。今や巨大な砲弾を2つむりやりくっつけたようになった不二子のバストは、ぴーんとまっすぐ前に張り出したまま、さらにむくむくと目に見えるほどの速度で大きくなっていくように不二子には感じられた。そのあまりの激しさにとらわれて、もはや指一本動かせない。張りつめた乳房は空気の流れにさえ感じてしまうほど敏感になり、ちょっとでも動こうものならそれだけで胸が破裂してしまいそうなほどいっぱいいっぱいだった。
(いったい、今度はどれだけ大きくなっちゃうんだろう。もういい加減、パイズリは封印しなきゃ。でなきゃ、これ以上は――危険、だわ。自分で自分が抑えられなくなくなっちゃう――)
 静かに眠るルパンの顔色に安心しながら、不二子はじっとそんな事を考え続けていた。