マイメイド

かなぶん 作
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祖父が他界して、広すぎる屋敷と広大な土地、一生かかっても使い切れない莫大な遺産が僕の物となった。両親は海外に行って仕事をしているから、日本には中々帰ってこない。それに、帰って来ても僕と話をする暇も無いほど忙しい人たちだ。
毎朝、今まで暮らしていたマンションの自室に比べても格段に広い寝室で、たった一人目を覚ます。両親が家にいなかったから、家事全般は苦手ではない。でも、さすがにこの家は1人では広すぎた。
僕が自由に使える金、それだけでも普通の中学生の持てる額とは桁がいくつ違うか分からないほどの、途方も無いそれ。誰かお手伝いさんを雇うのにも十分な額は当然あるだろう。
そう考えると、すぐに実行に移した。
紙にその旨を書き、給料などは後で決める事にして、壁に貼っておく。誰も来なくてもいいけど、少しは期待してみようと思っていた。
そして、その三日後・・・・・

第一話「メイド少女とご主人様と」

「あの〜・・・・・」

呼び鈴が鳴ったのと、それに続く声で、僕はリビングから玄関まで出て行った。
とにかく、それだけでもかなりの手間がかかるような、デザイン重視の複雑な構造の屋敷だったから、客を待たせてしまったんじゃないかと心配だったが、声の主は幸いにも機嫌を損ねてはいなかった。

「お待たせ・・・・えっと、何の・・・」

「あの、外の張り紙を見て来たんですけど」

ドアを開けて、僕は自分の目を疑った。
そこにいたのは僕より少し年上位の女の子、それも、超をつけても足りないくらいの美少女だ。でも、それだけで目を疑ったわけじゃない。僕が目を疑ったのは、彼女の胸元、厚いジャンパーの上からでもはっきりと分かる大きな胸だ。それは、コンビニでたまに見かける雑誌のグラビア、それですら見たことが無いほど大きくて、それでいて全体的には細身な印象だから余計強調されて見える。

「え、あ・・・ああ、お手伝いさんね・・・・ええと・・・君が?」

ついつい目がその胸を追いかけてしまいそうになる。でも、あんまりじろじろ見るのってマナー違反だと思うから、必死に目を反らそうとする。でも、それでも目に入ってしまうのはさすがとしか言えない。

「ええ、・・・・あ、それと、この娘も・・・ほら、兎伊」

「う・・・うん・・・お姉ちゃん」

お姉ちゃん?
という事は彼女の妹だろうか。そう思って玄関のドアの後ろに隠れるように立っているらしい、兎伊と呼ばれた少女を、身を乗り出して探してしまった。
でも、そんな事はするまでも無く、すぐに玄関のドアの後ろから、ピョンと、飛び跳ねるようにして小さな少女が現れた。

「うわ・・・・・・」

思わず溜息。でも、誰でもいい、他の人が僕と同じ状況に置かれたら、きっと無反応でいられるはずが無い、そういう自信はある。なぜなら、その兎伊という少女、多分歳は僕と同じくらいだろうけど、彼女はお姉さんと同じく凄い美少女で、その上・・・・お姉さんより・・・その・・・ちょっと・・というか・・・かなり・・・胸が大きかったからだ。
まだ朝の、寝起きに近い時間にこんな強烈な衝撃を受けて、僕の頭はオーバーヒートしそうだよ、本当に。

「と、とにかく、こんな所じゃ何だから・・・入ってきて」

声が少し上ずるのを自分でも恥ずかしく思いながら、高鳴る心臓を押さえてリビングへと二人を通した。

「えっと、二人ともこの家で働きたいの?」

面接っぽく、それでも二人の巨乳、というか、そんな言葉で表すのが馬鹿らしいような二人を前にして緊張しながら、どうしてこんな若い娘が働きたいなんて言い出したのかを聞こうとした。

「実は、私達家出してきたんです」

「へ!?」

「それで・・・・家には帰れないから・・・住み込みで働ける所を探してたんですぅ・・・」

姉の方、さっき自己紹介してもらって、風海猫伊(カザミ・ネイ)という名前だと分かったが、が簡潔に言い、妹がそれを補佐する、そんなコンビプレーで迫られた。しかも、妹の兎伊の方は薄っすらと目に涙を浮かべて、応接用のテーブルを乗り越えんばかりの勢いで迫ってくるもんだから、思わずソファから転げ落ちそうになってしまった。

「そ、そう・・・でも、ご両親が心配・・・・」

「あ、それは大丈夫よ、だって家は母さんが基本的に放任主義だから、何処で何をしてますって連絡さえ入れれば問題は無いのよ。まあ、父さんの方が何て言うか分からないけど、母さんがいる以上は大丈夫」

「は・・・はあ・・・じゃあ、何で家出なんかを・・・」

「親父が気に入らなかった、以上!!」

うるうるとした目でこちらを見つめてくる兎伊ちゃんも気になったが、そのおかげで注意がそれて、猫伊さんの方が一方的に喋っている。こういうのを羨ましいって思う人がいるのだろうかって思ったけど、これじゃどちらかというと僕が脅迫されてるみたいに見えるかもしれないな。

「でも、ほら・・・話し合いとか・・・」

「うう・・・・あんな人、お父さんじゃないですぅ・・・・」

何とか猫伊さんと話そうとしたけど、兎伊ちゃんに遮られてしまう。っていうか、目の前にある兎伊ちゃんのおっぱいで、僕からは猫伊さんがまったく見えないんですけど・・・。

「お父さんじゃないって・・・一体・・・」

「聞きたい?」

少し俯いて、声のトーンを落とした猫伊さんが、僕の横に寄ってきて、耳元で何か囁いてくる。ただ、その胸が当たっていて、何を言っているかに集中できなかった。

「・・・・・・で・・・・・な事を・・・と・・・・・」

うあ・・・顔が真っ赤になるのを自分でも抑えられなかった。何か、すごい事を聞いた様な気がする。でも、そんな僕の反応を見た兎伊ちゃんは、今まで以上に泣きそうな顔になってしまった。

「あ、ご、ごごご・・・・ごめんっ!! そんな、聞きたく・・・って・・あ・・いや・・その・・・何言ってるんだろ・・僕・・・」

「うっ・・・うっ・・・・」

ああ、何を言ってるか自分でもわかんない。
そんな事をやっているうちにも、兎伊ちゃんの目には大粒の涙が浮かんでくる。
マズイ、これはとってもマズイ。死んだおじいちゃんの口癖が、「女性を泣かす男は最低だ」って言うのがあって、それが正しいって叩き込まれてきた僕だけど、こんな時どうすればいいかなんて分かんないよ。

「は、働いて貰うよ・・・今日から・・・ね、それでいいでしょ?」

焦った末に口から出た言葉に自分でもびっくりしていると、それに二人は目を輝かせ、特に、さっきまで泣きそうだった兎伊ちゃんはそれまでと表情を劇的に変えて、思い切り抱きついてきた。
って、うわ、胸が!!

「うぶっ・・・・くるし・・・・・ぐ・・・もう・・だめ・・・・」

力一杯の抱擁を受け、僕は情けなく気を失ってしまったのだった。
でも、最後に一瞬、猫伊さんの唇の端に浮かんだ「してやったり」って感じの笑みが頭に残る。何だか、はめられたような気が少ししなくも無いよ、本当に。

続く