「いいですか編集長、これは願ってもない起死回生のチャンスです!」
「う、うん」
「廃刊の危機にあって大蔵様から合同企画のもちかけを頂いたこと。まさにこれは天啓とも呼ぶべき幸運!」
「で、でも渚ちゃん……やっぱり私も出場しなきゃダメ?」
「当然です!編集長自らが出場なさることが、我が社の絶大なイメージアップ効果を生むのです!うまくいけば、賞金もまるまる回収できますしね」
ここはビッグメロン編集部。
オフィスで話しているのは編集長の佐藤さとみと、副編集長の塩原渚。
バルーンの「ウスとキネ」に対立する、「サトウとシオ」コンビである。
山梨県出身の佐藤さとみはまだ19歳。少々どんくさいところがあり大学受験にも失敗した彼女は、編集部でアルバイトしていた。
それがこの春、一躍編集長の座に抜擢されたのは、ひとえに社長の娘というコネである。
そんな「お飾り編集長」のさとみをサポートするのが副編集長、塩原渚。
インテリメガネにタイトスカートの似合うクールビューティーで、見るからにキャリアウーマンだ。
売上のためなら手段を選ばないやり手で、実際のところ編集業務は彼女が管掌している。
「はぅ〜……渚ちゃんが出ればいいのに。私、背ちっちゃいし自信ないな〜」
「何をおっしゃいますか。そりゃ私もGカップありますけど……あの選手たちに交じれば慎ましやかもいいとこです!」
ちょっと拗ねたように胸元を撫でる渚は25歳。そもそも年齢制限に引っかかる。
「しかし編集長なら!」
そう言っておもむろに、渚はすらりと伸ばした指先で、高く盛り上がったさとみの胸の先端に触れる。
「ぁんッ!」
「あの娘たちに対抗できます」
ブラウスの上から敏感な部位を刺激され、慌てて胸を手で押さえるさとみ。
小学生並みの体格に、到底釣り合いの取れない巨大さ。今も小さな手のひらでは押さえきれていない。
見た目同様、いつまでも変わらない張りと弾力を誇るバストは、これまでに何度ブラウスのボタンを飛ばしたことだろうか。
そもそも、自分の手元がほとんど隠れてしまうのにデスクワークに就いているという、この非効率。
やはり、この胸を活かしての仕事が求められているのだ。今までドジだった自分が、初めてビッグメロンの売上に貢献できるチャンスなのだ。
「そうだね、わかった……渚ちゃん、私がんばるよ!」
選手として、そして編集長として。
山梨代表
佐藤さとみ(さとう・さとみ)
19歳
身長 148cm
バスト 115cm(Qカップ)
ウエスト 53cm
ヒップ 81cm
支給水着 英字プリントのセパレート
特徴 月刊ビッグメロン編集長、小学生並みに小柄な体格、ドジ
一方こちらは木根。3日前のこと。
「ふ〜、疲れた疲れた」
今日も水着作りのハードワークを終えて、ようやくアパートの自室に戻ってきた。
今まで女の子との出会いもろくにないまま、上京生活は3年目になる。
しかし思いがけず、この企画で木根は多くの魅力的な女の子たちと仕事をすることになった。
今まで地味だった人生に、一大イベントが起こりそうな予感がしていた。
(編集長が言ってた特別ボーナスってのも楽しみだしな〜)
空きっ腹にレトルトカレーでも作ろうかと思った時、携帯が鳴る。
「もしもし?」
「ひさしぶり!あたしよあたし」
「アタシアタシ詐欺か!?」
「こらぁ!かわいい妹の声忘れんなって!」
「冗談だよ、フユカだろ?」
電話の主は仙台の実家からかけてきた妹、芙由花だった。木根とは5歳違いで現在は17歳。高2のはず。
「いきなり本題に入らせてもらうね。あたしも兄貴んとこの雑誌でやってる選手権に出場したいの」
「ははあ、1000万に目がくらんだな?お前、昔からがめついからな〜」
「失礼な!……た、確かに賞金は欲しいけどさ」
編集部に身内がいれば、ひいき目に見てもらえると思ったのだろうか。
「大体、いくらお前の胸がでかいっつっても、エントリーされてる選手と比べたら」
「ふふ、ご心配なく。兄貴が上京してからもあたしの胸はぐんぐん成長してますから!今やKカップ」
「K、ねぇ〜……」
「あ!何よそのため息交じりは!?」
無理もない。Rカップの秋原先生とは比べるべくもないし、最年少の磯村みおだって7歳にしてLカップなのだから。
世間一般にKカップと言えば十分な巨乳だが、この選手陣の中では見劣りしてしまう。
とはいえ、ちょうど宮城県からの応募では最高がIカップ。芙由花を代表にしても良いのだが……
「やっぱやめとけって。そんな程度じゃ到底太刀打ちできない世界だから。プライド砕かれるぞ?」
「い〜や、そこまで言われたらあたしも引き下がれないね、女として!」
「ま……そこまで言うならいいか。編集長にも頼んで通してみるよ」
「イェー!サンキュー!水着くれるんだったら可愛いやつよろしくね、兄貴!」
(あいつ、思い知るだろうなぁ……全国レベルの差ってやつを)
宮城代表
木根芙由花(きね・ふゆか)
17歳
身長 167cm
バスト 105cm(Kカップ)
ウエスト 57cm
ヒップ 85cm
支給水着 青のチューブトップ
特徴 木根の妹、カップサイズは今回最小だが強気で明るい性格
5月某日。とある南の島の、とあるリゾートホテル。(最重要機密)
大蔵財閥の力により貸切られたこの会場、及び一帯のビーチが彼女たちの戦場である。
今、ホテルのプールサイドで開幕式が行われようとしていた。
日本全国から集まった巨乳自慢の娘たち。そのバストは合計すればこの50mプールをもたやすく超えてしまう。
(ア、アハハ……ま、まさかあたしが一番小さいなんて)
芙由花には、兄から事前に回してもらった選手の情報があったが、さすがに本物を目の前にしてショックを隠しきれない。
しばらくはただ呆然と、たわわな果実の森をさまよい歩く。
女としても、この地上の楽園では視線のやり場に困った。
(今にも水に入りたくてうずうずしてるあの子……7歳で最年少の磯村みおちゃんね)
ちまっとした幼児体型から、ドン!と大迫力で突出しているバスト。そのアンバランスさはもはや生命の奇跡すら感じさせる。
(あんな小さい子にも1カップ負けてるのかぁ……あたし)
いけない。兄に言われたとおりプライドを砕かれそうだ。
しかしそこは持ち前のポジティブ思考で、すぐに気を取り直す。
(ううん、がんばるのよ芙由花!ネガティブ禁止!誰かと気軽な会話でもして、友達つくっとこっと!)
(ひゃあ……みんなすごい大っきな胸してるだなぁ)
秋田代表、俵深雪もまた、不安そうな表情で辺りをキョロキョロ見回していた。
(あの水着に白衣着たお姉さんすごい……ええっ?あっちの金髪の人はもっと!……うわー!あの子なんて、もう今にも溢れそう!)
富山代表、鈴木理冴子のSカップ。
長崎代表、美朱蘭野崎のTカップ。
さらには青森代表、木村麻衣子のVカップを目の当たりにし、深雪は大きな胸の下で興奮を抑えられなかった。
(う〜、オラより大きい人なんてカナちゃんぐれえだと思ってたのに……緊張してきたなぁ)
そのとき、人込みの中に懐かしい顔を見たような気がした。
「あれ?」
今一瞬、顔だけ見えたのは、もしやかつての親友
「……カナちゃん?」