「夢のような話」だけど聞いて下さい

カンソウ人 作
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いつもは6時前には起きてくる亜里沙が起きてこないのだけれど、今朝はどうかしたのだろう。
 
お腹が空いたと言って、あの子が朝ごはんからたくさん食べてくれるのは、嬉しい事なのだ。
娘の亜里沙を私が生んだ時は、3045グラムだったのだから、小さいとは言えない体格だった。
赤ん坊に向かって、体格なんて言う言葉を使うのは何か変化感じがするけれども。
 
亜里沙ったら、朝ごはんからたくさん食べるのに、身体と言えば高校生と言うのに、身長は140センチしかないのよね。
吉本新喜劇の池野めだかさんよりも、まだ小さいのよ。
 
あの子は140センチって言うと、142センチですって怒るのだったね。
その2センチが、気持ちの上では大きいのだろうけれど、変わらないよ。
140センチも142センチも。
それよりも、胸も尻も貧弱で、しかも寸胴でくびれ無しなのときているのだから。
てっとり早く言うと、幼児体型でお腹も少し出ているのだね。
腹筋をしっかりと鍛えたら、小柄でも何とかしまって見えるのにね。
あれじゃあ、少し可愛いい高校生でも当分は彼氏なんて出来なさそうね。
 
 
勉強は良くするみたいで、成績は良くて難関県立高校に合格したのだけれど。
香里奈はそこまでは行かないかもしれない。
 
亜里沙はあの食欲なのに、食べた栄養はどこに行っているやら・・・・・・。
痩せちゃあいないけれどチビ助だからね、痩せの大食いって言う言葉がやけにピッタリする子だよ。
 
親なのだから、もっと慾目で見てやらないといけないね。
だれかに悪口言われるなんて事になって、感情的にならなければ、無理な気がする。
全くね。
 
母親の口から本人には、とても言えないね。
 
 
 
「ああ。
香里奈おはよう。今朝はやけに早いね。どうしたのだい。」
 
「おはよう。
お母さん、慌てていたけれど、独り言でも言っていたの?
 
それはそうとね。
昨日の晩のことだけど、亜里沙姉ちゃん大変だったのよ。
短時間にあんなことになるのだったら、『変身』と言う方が良いかもね。
詳しく説明してなんて言われてもネタが無くて困るから、話すのは止めるわ。
 
寝ているタオルケットなんて剥がして、お姉ちゃんの身体をしっかり眺めてごらんよ。
 
説明するのは、その後にするから。」
 
 
 
娘の香里奈に『変身』や『身体をしっかり眺めて』なんて言われ方をしたのは初めてのことだった。
それで、こっちは胸がドキドキして興奮しているのだけれどね。
この年になっても、教師のサガで好奇心が強いのかね。
 
香里奈からメモを握らされて、駆け足で亜里沙のベッドの所へと向かっていた。
 
タオルケットを引き剥がすと、汗は掻いていたけれども、とってもない肉体がそこにはあったね。
あんなのは見た事が無いね。
とっても美しかったというしかなかったよ。
 
女子高校生の裸を見て、この私が興奮するなんて思わなかったよ。
この子が娘だと言う事も忘れるほどの美しさだった。
輝いていたね。
香里奈がまるっきり変な事を言っている訳でもない事がわかった。
 
我が家にとんでも無い生き物が現れたことで、これからどんな事が起こるのだろうか。
若い人と違って、私ぐらいの歳になると正確には分からなくても、何かが起こるという直感だけは有るのだ。
これまでの人生でも、色んな事が有ったのは確かなことだから。
 
それにしても、不思議な事が昨晩起こったのだね。
 
本人にも、理屈では説明の出来ない事だったのだろうね。
嬉しい事と言うか、それも驚きで亜里沙にとってはどうしようもないだろうということは理解しとかなくてはね。
けれど、私なら寝つけない程の出来事だ。
あの子はかなり鈍いのかなあ。
 
親の慾眼で見てやらないと、いけないねえ。
だから、亜里沙は良い意味で鈍感と言うか、だから耐えられる事も有るってことだよ。
 
 
 
肌はさすが、10代の美しさ、色んな誉め方が出来るような気がする。
私も中学の国語教師の端くれだからさ、比喩も含めて色々と語彙を使って表現できなければ、恥ずかしいよ。
頭の中を駆け巡る言葉は、誰に見せるものでも無いから平気だけれどね。
 
肌の衰えは、眼鼻立ちが派手な人ほど、余計に目立つような気がするね。
女優さんとか時間もお金も有るから、そんなになる人はいないだろうけれども
 
特に、歳を取っていく度にね。
 
大学時代の友だちでもそんな感じがするけれど、大学を卒業するころって肌の美しさだけは曲がり角を曲がっているよ。
やっぱり高校か中学の時のクラスメイトで考えた方が・・・・・・。
何人か頭に浮かべると、やっぱりそんな気がするよ。
 
思い出すのにも、苦労するなんて頭が錆びついているのかね。
 
沢口靖子に似た顔つきのあの子と多岐川裕美に似たあの子だよ。
そうそう中学校のアルバムに目立っていた村田さん、それから児玉さんだったかな。
中学時代の友だちで、今どこで働いているのかクラス会の時なんて言っていたかは、詳しく憶えていない。
 
『肌理が細かくて、つるつる』なんて良く言うけれど、今のあの子の肌はその言い方が良く合うような気がする。
 
誰だって熟女になれば多少は贅肉が付くけれど、余ったお肉もでも若いグラビアアイドルやAV女優の肌は違うのよ。
熟女でバストやヒップに肉が付いていって、色気が出るたぐいの人たちがいる。
だけど、ああなるには、10代の後半頃から努力が必要なの。
いつも違う人とお付き合いするような人生の勉強をしなければなれないのよ。
 
元々の素材も問題なのよ。
私の美貌では無理だと決めたの。
分厚い化粧も似合う人も有れば、私のように国文学を頑張って大学院を途中で辞めて、教育者なんていう道も有る。
けれどね。
 
 
 
肌に張りが有ると言うのは簡単な事だけれど、若さにはそれだけで値打ちが有るのよ。
 
それにしても、亜里沙の裸の美しい事と言ったらありゃしないよ。
自分の若い時と比べるべくも無いけれど、友だちやクラスメイトを思い浮かべても誰もこれほどではなかったね。
今も昔も、日本人の女の子でこんな子はいないね。
 
何、嘘でしょう、このバスト。
どうしても信じることが出来ないわ。
我が子なのよ。
私の中にこんな素粒子が含まれていたなんて、文士生物学の知識ではどうしようもない。
 
私にも、まだ気が付かないでいた、道がこれから広がるのかもしれない。
 
 
眼の前に、極上の美しい身体が横たわっていて、しかも本物なのよ。
 
香里奈の書いてくれたメモには、(身長156 B118 W55 H111)と書いてあるけれど、そんなものじゃないわ。
その数字だって嘘みたいな数字だけれど、測らなくてもそんなモノじゃないって分るよ。
あまりにもスケールが凄過ぎて、どれぐらいの数字か想像する事も許してくれない身体だよ。
 
極上の乳。
極上の尻。
くびれたウエストに、そこから広がる骨板の雄大さ。
太くて白い脚。
 
こんな肉体美を想像した事も無かったよ。
西洋の文学作品を私は読み間違えて来たのではないかなあ。
 
「DH.ロレンス」のチャタレー夫人の恋人なんか、あそこで描かれた裸の女性は、私が思い描いていたのとは違うのだ。
 
亜里沙の食欲の凄さ。
今まで、無駄に沢山食べていたのでは無くて、こんな所を目指していたのかも知れない。
まるで、一度に結果が出てきたみたいだね。
 
この子を見ていると、涙が少しずつ出てくるのは、どうしてかね。
私が、捨てていた何かだけれど、言葉には出来ない。
 
 
 
私も裸になって、この子の横に並んでみたいよ。
 
背中の方から。
 
近付いてみる。
 
 
本当に、デカイ尻だね。
厚みがこんなに有るのだね。
 
肉付きが凄いよ。
 
私とは幅から違う。
こうやって、傍で比べなければ分からなかった。
 
脚が長いね。
 
おっぱいが大きくて、手を伸ばしても乳首に届かないじゃないの。
この子の背中に、私のお腹をくっつけなければ、手を回しても届かないよ。
えっ。
どうやっても届かないなんて。
 
 
肉の塊が美しいというだけで、老若男女見る人の感情を普段とはちがう別物に変えてしまう。
それは色んな出来事を引き起こす。
 
上手く言えないけれども、私には手に負えない。
出来事で終われば良いけれど事件にならなければ良いのだけれど。
 
この子ったら。
凄い肉体を手に入れてしまったのね。
この肉体から発せられるメッセージは強烈よ。
 
内側も成長してくれないと、生きるのが辛くなる。
 
凄過ぎて、記号みたいに男性から思われないように。
フェチの対象にだけされると辛いけれど、自分の全てを愛する事を忘れないで欲しい。
生き様が個性的であること。
10代のうちに出来ると良いのよ。
 
今までの亜里沙の肉体と比べてどっちが良いか考えれば、あの美しい肉体の方が愛しやすいのは確かね。
人はどんな時も素直と限らないけれども。
 
 
 
いつまでも、こうしていられない。
亜里沙も起きそうな感じがするし、ラジオの英語も鳴り続けているから。
そろそろ服を着て、台所に戻らなければならないよ。
 
起きてきたら、あまり質問なんかしないで、美味しい物を沢山食べさせなければいけないね。
最近は近くのスーパーでも、朝早くから開店しているから助かるね。
買い物、買い物と。
栄養が足りないに決まっている。
 
香里奈も変に思うかもしれないしね。
早く、亜里沙が起きてくれて、亜里沙が自分の意識を語ってくれないと、お話が面白くないよ。
 
母は、これから自転車で買い物に行きますからね。
新鮮な野菜や果物、肉を買ってきますから、待っていてね。
 
食事が済んだら、亜里沙に合う服を少しだけ買わないとね。
うちの学校の体育のあの先生なら、既製品が無くて困っているから、参考意見が聴けるだろうね。
投てきの選手、特に砲丸投げなんてしていた人らしく、筋肉の上に贅肉が付いたような体型だから。
多分そうだろうね。
お下がりがもらえたら、実の所嬉しいなあ。
 
普段からそんな話まで人前でしていたような気がする。
そんなあっけらかんとした人よ。
夏休みの内に、亜里沙も会った方が良い人になるかもね。
人の輪って、これからのあの子にとって大切よ。
 
ぼやぼやしていたらだめ。
急いで何か、食べさせなきゃ。