「夢のような話」だけど聞いて下さい

カンソウ人 作
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亜里沙が目覚めたのは、6時40分だった。
身体が重く感じられて、すぐにベッドから起き上がる気持ちになれなかった。
意識がはっきりしてくると共に、少しずつ夜中に起きた事を想い出してきた。
自分の身体が重く感じられたのではなく、重くなっているはずだ、と言う事に気が付いた。
 
亜里沙が心配していたのは、香里奈が書いてくれたメモの数値よりも成長して、朝にはどれぐらいになっているかという事だった。
心配と言うよりも、楽しみと言った方が良いだろう。
 
 
それまでの亜里沙は、本当に小柄であった。
高校一年生で身長142センチ・体重は29キロだったし、74−63−78のサイズでは小学生にしか見えない。
小学生にだって、もっとバストが成長していて、大人と見間違うような『セクシー少女』だって、日本のどこかにはいるのだ。
そんな子は、あとできっとグラヴィアアイドルとしてデビューするのであろう。
 
「小学校の5年生のときには、もうDカップもありました。」
とか、
「初めてブラジャーを付けた時には、Eカップでした。」
とか、
「おっぱいは大きいし、背も高いので電車に子ども料金で乗ると、駅員さんに注意されました。」
とか、デビュー後に言ったりするのだ。
 
そんなこと聞くのは、亜里沙は大嫌いだった。
 
 
実を言うと、亜里沙にブラジャーは必要ではないからだ。
高校1年生なのに、である。
「乳首に何か張っておけば良いのよ。」
この時ばかりは、亜里沙らしくない荒々しさである。
 
 
 
急激な成長を一晩でしたのだが、亜里沙は『まるで奇跡』のような事を切望していたのではなかった。
その時は、それなりに嬉しかっただろうが、今は驚きの感情しか残っていない。
起こり得ない事が、前触れ無く起こったのであるから、当然の事であろう。
バストアップの研究を相当していたことからも、亜里沙が成長を願っていた事が分かる。
 
成長が急過ぎた事に尽きる。
 
 
昨日の晩に、香里奈を2度も起こした事も思い出して、亜里沙は良くなかったと反省をした。
だったら、どうしたら良いのかは、少し考えたぐらいでは代案は難しかった。
一度目はワザとでは無かったけれど、二度目は確信犯で、でも仕方が無いという事が亜里沙の出した結論だった。
 
文字通り望んでいても起こりそうもない、奇跡が起こったことを改めて亜里沙は感じた。
亜里沙が興奮していたことが、妹を二度目に起こした理由だったと作者は思う。
 
普段とは違って興奮してしまった事に気が付くような冷静さは、この朝の亜里沙にはまだ無かった。
本気と言うのは、持続性が有り安定したモノでなければ、本物ではないのだ。
 
 
30分程度の間に成長した時の身体感覚は、憶えているが、寝ている間の成長に関しては記憶が無いのだ。
どちらかと言うと、そちらの方が肝心な事であるように、誰にもそう思われたが・・・・・・・。
憶えている身体感覚が、苦痛を伴わなかったと言って、寝ている間もそうとは限らないと普通は思う。
今の亜里沙には、そんな論理的な思考は無い。
 
急激な成長には、大変な苦痛を伴っていた。
亜里沙の姿を見た香里奈には、一目瞭然であった。
 
亜里沙が尋ねないので、香里奈はその事を伝えてはいなかった。
 
「亜里沙姉ちゃん、どうしたの。
大丈夫なの。」
と言いながら、顔の表情を覗き込むような事はしなかった。
 
あの凄い成長があったのだから、それなりに苦痛があったのだ、と言う思い込みが香里奈にはある。
質問が無いなら、こちらから答える必要はなかろう、と思うのは自然であろう。
 
 
亜里沙は、ああでもないこうでもないと考えているが、簡単に結論の出るような問題ではない。
確かに、亜里沙は自分のあらゆる感覚を総動員して、さまざまな方面から考えているのは確かである。
しかし、自分の考えの及ばない話だと思う方が良いのではなかろうか。
少なくとも、結論が出るのは早い。
 
 
 
 
(タオルケットを掛けて寝たのに、誰かに脱がしてしまったのか、タオルケットはベッドから落ちていたよ。
嘘じゃないかなあ、今真っ裸なのだ。
寝床を離れて立ち上がった時の感覚から言うと、背の高さはクラスでまん中ぐらいかな。
 
170センチ台と言う高さでは絶対にない。
床に脚を付けた時の感覚が、思ったよりもかなり早く足が付くという感じだから、だけど慎重に着地したので大きな音はたてていない。
160センチよりは高いだろう。
 
体重の事を考えるは嫌だ。
 
 
 
ヒップまで110センチ以上で、太股の太さは相当な迫力だ。
 
『巨乳巨尻』と言って友だちに見せたら、もっと大きいって言うだろう。
『爆乳爆尻』だ。
脚だって、それに釣り合うほどの太さだ。
 
 
 
嘘を言わないといけないかなあ。
体重の事だけは。
映画研究会の連中に。
 
70キロこえたなんて本当の事でも言えないよ。
うまく嘘をつくのも、難しくて突っ込まれそうだ。
 
 
 
あいつらときたら言う事に遠慮が無いし、先輩はもっときつい事を言う。
夏休みだから、ゴールデンウィークに来ていた、大学生の先輩たちもいるかも知れない。
忘れていた。
 
今までは、映画研究会の配役の時は話題にならなかった事も、それはそれで淋しい事だったけれど。
このスタイルとプロポーションだったら、役がもらえるかもしれない。
このバストとヒップならば、話の本筋でも良いから、不必要な役がもらえるかも知れない。)
 
 
 
 
亜里沙の妄想は留まる所を知らなかった。
 
実は、お腹が相当減っていたのだった。
それでも、心は迷っても行き所は無く、その辺を野犬のようにうろうろと回っていて、結論というものにいきつかない。
台所に行く決心が出来ないで、心は滞っていて、終わりなく妄想が続くのである。
 
 
まだ妄想は続いていた。
 
 
 
 
(9月の身体測定では、測定結果に驚いて、だれも本当だと信じてくれないだろうな。
バストやヒップの大きさに驚いて、女の子の中でも歓声がキャーキャー上がるだろう。
それだけでも、結構恥ずかしい。
 
隠したってどこからか話が漏れ、男子にも本当の事が分かってしまうだろう。
 
 
内科検診なんて言うのも有る。
みんなの前で胸をはだけて上半身裸なんて、どんな風に思われるのか?
お医者さんだって、130センチ近くに成長したバストなんか見たことのある医者は、いないだろうな。
 
私はその頃にはそんなバストになっているよ。
 
 
クラスの山田さんのおっぱいも大きいけれど、あんな肥満体形では普通の男の子たちは騒がないよ。
噂では、103センチだと聞いているけど、アンダーも大きいからDカップしか無いのだって。
居ないと思うけれど、映画研究会で話していると、あんな体形が好きな男の子もいる。
 
あいつだよ。
2年生の高橋だよ。
 
「バスト103センチのデブが好きな男の人っているのだよ。」
 
他人事みたいな言い方だったから、本人かも知れないね。
高校生のくせに、大学生の先輩から聞いていて、そんなことも知っているのだろうね。
 
女の子のサイズは知っていても、言わないのが周りの女の子への配慮だよ。
嬉しそうに言っちゃってさ。
研究会に所属している、太っていてバストの大きな女の子が好きなら、自分で告白するのが一番。
本人同士が良いのなら、誰も口を挟めない事だよ。
周りの女の子に話したら、それも無理になるよ。
 
 
漫画雑誌のグラヴィアに載っている女の子たちで、バストが95センチ近くある体型の子がクラスにいたら、男の子は騒ぐよね。
 
考え方が逆かなあ。
クラスや学年で騒がれる子が、グラヴィアアイドルとしてデビュー出来る。
そう考えた方が良い。
 
 
『杉原杏璃』みたいな、感じだったらどうだろうね。
細めでバストがあって、あれだけ美人だとバラエティー番組だって放っておかない。
 
あの可愛さはまさに反則。
いきなり、レッドカードだよ。
女の敵は女。
 
男の子から言うと、見所がはっきりしているから、テレビ向きだよね。
 
 
『花井美里』みたいに小柄で爆乳だったら・・・・・・。
高い確率で、雑用係から主役に抜擢、配役変更されるだろう。
オタッキーで『ゴズロリ』が似合うから、万人受けはしないだろうと思う。
あの身長でスマート、胸だけデカイ。
顔は、整っているけれども、愛嬌が足りない感じだよ。
愛嬌があれば、トップアイドルだったと思う。
 
 
見所がはっきりするので、映画研究会の映画も作り易い女優役が出来るのは、やっぱり可愛くてどこにでもいそうな雰囲気だよ。
 
もしそうならば、私だって主役になれたら良いのに。
性格がやっぱり理屈っぽくなくて、明るいのが好まれるのは間違いない。
分かっているのだけれど、私の考え方って理屈っぽいのも湿っぽいのも、直すのは大変なのよ。
誰からも騒がれたいなあと、こっそり思うけれども、身体が成長して変わっても性格は成長しないで多分以前のままだよ。
 
何かきっかけよ。
 
 
立ちあがって見ると・・・・・・。
蛍光灯を点灯するあの紐が、完全に鼻に当たっているだけでは、身長何センチかは想像出来ない。
それが悔しい。
 
変だよ。
 
夜中のあの二時の段階でも、足元が見えない程の突き出しバストだったのだけれど、今の状態はと言えば・・・・・・。
足元は全く見えないどころか、あごのすぐ下は胸だったのよ。
しつこいけれど、昨晩な出来事は夢で無い事は間違いない。
 
成長の原因は何なのだろうかなあ。
まさかあの夢が・・・・・・。
そんな馬鹿な。
でも気になるから、後で忘れないようにノートに書いておこうと思う。
大切な事のような気がするけれど、こういう直感は大抵当たっているものなのよ。
 
期末テストの後、バストアップについて研究しまくりで、夏休み以後は努力しまくりで、今や私に聞いて状態よ。
お金を使わないバストアップは得意分野よ。
そのせい、そのせい。
 
私の趣味は、ヨーガとウェイトトレーニングとエアロビクスなの。
おっぱいが大きくなる土台は出来ているのだけれど、肝心の建物が無かった。
 
ヨーガが良かったのだと思う。
ヨーガを続けて中年になってからますます豊満に、しかもブラジャーから乳肉が縊れていてなんて夢見ているの。
でも、ヨーガをするだけでよかったら、世の中爆乳だらけになるけれども、そうはならないよね。
 
こんなこと考えていたら、一日終わってしまう。
 
 
まずお母さんに、今の状態を報告しないといけないけれど、質問されても、どれが効いたって答えようがないのには困る。
今の自分の状態を、把握だけはしておかないと、言われてその都度驚いていたのでは駄目ね。
突っ込まれ放しになって、私の心は穴だらけで、動揺しまくりになるよ。
 
おっぱいとお尻とウエストぐらいは、自分でしっかりと触って、自分のボディーイメージを持っておかないとね。
歩くだけで、こけまくりじゃあ、話にならないよ。
 
こけそうな感じがあることは、足元が見えないから認めないと、その先の事が考えられなくなる。
認めたくない事を突っ張るのは、幼稚な考えだね。
 
まず自分で自分の身体を何度も触って、イメージを明確に持つことが大切だよね。
昨晩感じたボディーイメージでは役に立たない事だけは、間違いなさそう。 
自分の爆乳爆尻って、触ったらどんな感じがするのだろう。
120−55−110で身長は170センチかなあ。
 
そう思うだけでも、とっても楽しみだ)
 
 
 
 
亜里沙は、自分の胸に両手の掌を当てた。
しかし、どうも自分の思った胸のまるみほどの、胸では無い。
お尻だって、ここまでは尻肉が有ったはずだと思ったのに、肉の量が足りないのである。
爆乳爆尻どころか、これでは巨乳巨尻とも呼ぶ事は出来ない。
 
昨日までの、74−63−78では無いけれど、Cカップぐらいは有るような気が亜里沙はしたのだが。
 
 
それは亜里沙の希望が強くて、現状が認識できないでいるのだろう。
 
裸で寝る必要は、無かったような気がした。
それでも、成長であって、昨日過ごしたような身体では無かった。
それは亜里沙も分かっているのだが、心理的には非常にがっかりしていた。
 
どうしてあの爆乳爆尻がしぼんでしまったのだろうか。
何度もその疑問が頭の中に浮かんだ。
 
しぼんだと言っても、皮膚の大きさはそのままで、中身が減ったのとは違うので、皺くちゃのバストでは無い。
そんなことは分かっていても、亜里沙は泣きだしそうな様子である。
 
大きくなったのも不思議であるが、あの爆乳爆尻がどうしてしぼんでしまったのだろうか。
その疑問はどうしても頭から離れない。
さっきまでの、元気はどこへ行ったのだろうかと思うほど、落胆していたのである。
 
 
 
いつものように、自分の服を着ることにした。
少し成長しているのである。
ブラジャーは少し合っていなかった事は間違いが無い。
 
Aカップのブラジャーに、Bカップの胸は合わないだろうが、それはお店の人が売りつけようとして言うセールストークである。
着用は可能だ。
夜に亜里沙が感じた、とても無理な感じでは無い。
 
お尻も肉付きが良くなっていたので、ショーツは張り詰めたようになっていた。
少しだが、確実に。
ティーシャツもジーンズも着ることが出来たのである。
亜里沙は何となく安心する事が出来たようだった。
 
 
それで、いつものように台所へと行くことにしたのである。
 
 
 
 
「お姉ちゃんどうしたの。
昨日の晩の爆乳爆尻はどこへ行ったの。」
 
香里奈の質問は自分の思いの上塗りで、亜里沙にとってはきついものであった。
 
「亜里沙、私もベッドに一緒に上がって、背中から触ろうとしたけれど・・・・・・。
爆尻に爆乳で、とってもきれいだったし、乳首にまで手が届かなくて驚いたの。
自分でもどうなったのか分からないのだろうから、質問しても亜里沙が困るだけだろうね。
まあ、とにかく朝ごはんを食べて、それから話を聞こうよ。」
 
さすがに母の方が、察しが良い。
それにしてもなぜなのか、亜里沙は不思議な感じもした。
 
 
朝ご飯にしては、卓上にたくさんのおかずが並んでいるのにも、亜里沙は少し驚いたようである。
 
「お母さん、朝から凄いご馳走ね。
 
私の好きな、野菜サラダに鶏肉の塩焼き。
サバの塩焼き、豆腐と若布の味噌汁。
グラタンにとんかつ。
麻婆豆腐にいかの刺身まで。
それも、この量は晩ご飯よりも多いじゃない。」
 
「亜里沙がたくさん食べるだろうと思って、朝から近くのスーパーで材料を調達してきたのだよ。
朝から照り焼きは、辛いだろう。」
「でも、とんかつもあって、結構な脂っこさだよ。」
「ピカタにすれば良かったかしらね。
そら、顔を洗って歯を磨いて、それからゆっくりたっぷり食べなさいね。」
 
 
亜里沙も少しは落ち着いたようである。
香里奈も、亜里沙の登場を待っていたようで、朝ご飯が始まったのである。
 
変な質問は、亜里沙の気分を損なうかもしれないから、黙って食べ始めたのである。
それにしても、亜里沙はよく食べる。
痩せの大食いといっても、凄過ぎるのではないだろうか。
普段の家族の食事量よりも多い量が、亜里沙の胃袋に収まったのである。
母が予想したよりも量が多くて、納豆やソーセージも冷蔵庫から出して来て、食べたのである。
 
 
時間にして1時間は経っただろうか、朝の連ドラが終わっても食べ続けていたのである。
香里奈は、食べ終わってさっさと用意をして、中学校へ3時間の補習授業を受けに行ってしまった。
帰ってくるのは、11時過ぎである。
 
 
亜里沙の映画研究会は、いつも昼からの活動であるし、この日は夜に予備校で英語と数学の授業があるのだ。
午前中は、母と二人の時間である。
 
 
「亜里沙、辛いかもしれないけれども、話させてもらうよ。
 
あの爆乳と爆尻がどこへ行ったかなんて、お前が知るはずも無く、お前が聞きたいぐらいだろうね。
でも、だいぶ大きくなったようだよ。
ブラジャーのサイズが合っていないし、ティーシャツも小さくなっているよ。」
 
「お母さん、慰めてくれなくても良いよ。」
 
「お母さんが、お前の身体測定をしてあげるよ。
こんな事は、保育所に行っていた頃以来無い事だよ。
裸になってごらん。」
 
 
亜里沙は言われるままに、メジャーを持ってきて服を脱いで裸になったのだ。
「まずは、身長を測るから、柱に背中を付けて気を付けの姿勢を取ってごらん。
150センチのメジャーで十分だよ。
145センチだよ。
3センチも伸びているじゃないの。」
 
「でも、昨日の晩に測った時には、156センチだったから、今朝はもっと高くなっていると思ったの。
夜に喜んだから、何かの罰が下ったのかもしれない。
 
東京の大学に行っている麗子おねえちゃんが、夢に出てきたのよ。
『亜里沙ったら、喜び過ぎてはしゃいじゃいけないのに。
 
そこまでは出来ないの。
私の力じゃどうしようもないね。』
 
と言ってどこかへ行ってしまったの。
憶えているのはそこだけなの。」
 
 
 
「あれ、そうかい。
私の夢にも出て来たよ。
 
『お母さん、亜里沙の事よろしくお願いします。』
と言うだけで、どこかへ行ってしまったのだけど。
不思議ね。
まあ、気にし過ぎても良くないよ。」
本当に夢みたいな事ばかりである。
 
 
姉と言っても長女の麗子は、亜里沙よりも歳が8つも上なのである。
実を言うと、麗子の父親は亡くなっていて、父違いの姉なのである。
亜里沙と香里奈の父親は、存命中であるが、物語の必然が無いからまだ登場しない(かもしれない)。
 
 
大学と亜里沙は思っているが、大学院の修士課程で学んでいるのである。
文学部で日本文学を学んでいると思ったら、修士ではユング派の心理療法を学んでいると思ったら、今は夢の研究をしている。
 
亜里沙からしたら、ぶっ飛んでいる姉なのだ。
身長は高くて美人、おまけにスタイル抜群なのだ。
学生時代は、キャバクラから水商売をアルバイトにして、アイドルからレースクイーンと、結婚はしなかったけれど忙しく変貌したのだった。
掴みどころのない姉であるが、毎年のように盆と正月に実家に帰ってきて、何かしら影響を亜里沙に与えて行くのである。
映画研究会に入ったのも、姉の影響が合った事は間違いが無い。
亜里沙がヨーガとウェイトトレーニングとエアロビクスをするようになったのは、この姉の影響である。
 
「成績の上がらない陸上の長距離を走るのも良いけれど、もっと身体作りになる事をしたらどうなの。」
とクリスマスに麗子から言われたのである。
中学2年生の年末までは、普通に学校の部活動をしていたのに、正月からはスポーツクラブへ出かけるようになったのである。
だからと言って身長が高くなったりはしなかったのだけれど、かえって学校の授業の長距離で早くなっていたのだった。
中3の5月のスポーツテストでは、小柄な亜里沙がと誰もが驚くような数値を叩きだしたのであった。
だからと言って、それまでの亜里沙があまりにも、体力的にひ弱だったと言うことでもあるのだ。
 
握力右18キロ・左20キロ、上体起こし16回、長座体前屈36センチ、反復横とび32点、1000メートル走5分18秒、50メートル走8秒7、立ち幅跳び145センチ、ハンドボール投げ14メートル。
たった、4か月かそこらであったが、亜里沙への姉からの影響は強かったのである。
誰も亜里沙がそんなに体力が有るとは思わなかったのである。
 
しかしそれから一年たち、高校1年生でのスポーツテストでの亜里沙の出した数値は、本当に驚くべきものであった。
測定ミスかそれとも何かの間違いかと、誰もが思った。
握力右73キロ・左70キロ、上体起こし38回、長座体前屈68センチ、反復横とび68点、1000メートル走3分36秒、50メートル走6秒5、立ち幅跳び296センチ、ハンドボール投げ68メートル。
小柄な身体のどこに、これほどのパワーが秘められていたのであろうか。
特に、筋力の凄さは説明のつかないモノであった。
握力ならば測定ミスと思うかもしれないが、ハンドボールが70メートル近く飛ぶ光景は、測定ミスというより悪夢のようであった。
 
教師たちは、10年近く前になるが、彼女の姉の麗子の姿と重ねたのであった。
運動でも学力でも、麗子の発揮した力は異常なほどであったらしい。
 
だが亜里沙にも、相当な素質があったのである。
特に、女子重量挙げクラブの顧問の教師は、熱心に亜里沙に運動クラブへの勧誘を行なったのである。
残念な事に、彼女には興味が無かったのである。
もし競技生活に入っていれば、インターハイで良い成績を収めているのは確実である。
 
 
 
亜里沙の身体の中には、何か爆発しそうなものを抱えているのだ。
ただ、その爆発が何時かわからないという、不安定な状態であったのである。
 
 
街中の予備校へ通うことも、姉からのアドバイスであった。
難関の県立朝日山高校へ進学しようと計画した事から始まり、それを実現した事も姉の影響下にあった。
今回のバストアップについて、情報を集められるだけ集めた事も、影響なのである。
 
 
 
 
母は、バストとヒップ、最後にウエストを測ったのである。
そして亜里沙に結果を告げた。
 
「身長145センチかねえ。
上から、77−55−81だよ。
香里奈に見せてもらったメモの数字程の事は無い。
118−55−111っていうのは、どうした物なのだろうね。
でもこの数字よりも、亜里沙の体力の方がもの凄い数字だよ。」
「あれと比べるとねえ。」
「でも、3センチ一晩で身長が高くなっただけでも、相当の成長。
それはそうと、ウエストは、凄い細さだよ。
しかも、ウエストだけは、メモと同じだよ。
どうしたものかねえ。
 
メモの話しはもうやめる事にしようよ。」
 
 
 
亜里沙は、夏休みの宿題をするつもりで部屋に戻って、机の前に座ったのである。
夏休みと言っても、朝日山高校のことである。
一週間のテスト休みが終わると、来週からは午前中4時間の補習があって、クラブ活動は午後に時間が確保されている。
この間に教師たちは、成績処理や評価をして、会議や研修をこなしているのである。
教師にとっては少しも休みではない。
殆どの生徒は、何らかのクラブに所属していて、映画研究会という名前ではあっても、実質文化クラブなのである。
運営は非常に民主的である。
毎年のように高校生の作品展に出品しているし、秋の文化祭には上映会を行うのである。
そして、入場料を少しだけ取って、生徒会から分けられた部費と、毎月会員から集める会費で一年間の活動費にするのだ。
毎年3〜4本の作品を作り出しているのである。
一本は大作で、全員が力を合わせるが、あと2〜3本は自主製作のような作品である。
しかし、賞を取るのは大抵こちらで、大作は娯楽作品なので身内の高校生で受けて、大人の審査員には何の事か分からない。
高校生の作る映画は、昔ならば8ミリであったが、今はビデオ作品が中心で編集もきめ細やかである。
 
 
映画研究会の事を考えながら、辞書と教科書を出して勉強を始めたのであるが、お腹がいっぱいで眠たいのだ。
つい机の前で、寝入ってしまった。
夢に出てきたのは、姉の麗子である。
 
「亜里沙ちゃん。
御免ね、お盆に帰れないのは、研究が忙しいからなの。
あなたの夢の中に出ているのも、研究なの。
 
昨日の晩は、本当にびっくりしたでしょうね。
本気にならなければ、うまくいかない事って良くあるのよ。
憶えていてね。
 
驚いていちゃ本当に駄目よ。
良い事ならば、認めるのよ。
 
それと、この間夢に出たときの事を忘れているでしょう。
きっと、大切な事を忘れているのよ。
 
思い出しなさい。
思い出しなさい。
・・・・・・。」
 
 
姉は華やかな服装をしているのが、いつもの事である。
あんな風に私もなれたらなと、いつも思うのである。
あの、もの凄いプロポーションとスタイル。
身長は187センチある。
女子バレーボールの全日本クラスの選手の平均よりも高いのである。
 
そして、肩幅と腰幅が広い。
歩くと大きなバストが、ゆさゆさ揺れるのだ。
ロングスカート着ていても、大きく盛り上がったお尻が左右別々な動きをするのが、布の上からでも分かる。
あんなに大きなバストとヒップが、締まったウエストを挟んでいる姿は、見たことが無い。
家でシャワーを浴びている時の姿は、誰も見た事が無いだろう。
家族でも、見せてもらえるのは、亜里沙だけである。
香里奈には、まだ早いのよとだけ言われている。
 
 
 
横から見ると、胸や尻は突き出していて棚のようになっている。
亜里沙と一緒にシャワーをしていた時にこう言ったのである。
 
「私のお尻ってウエストから真っすぐに盛り上がっているでしょう。
おっぱいも肩甲骨が隠れるほどの盛り上がり方なの。
おまけに張りがあるから、垂れないのよ。
 
外人のモデルと一緒に仕事をしている時に言われたわ。
黒人の女の子でも、ここまで盛り上がったお尻をしている人は、いないのだって。
もちろん整形なんかしていないわ。
 
『東洋人で、そんなお尻をしているのは変だわ。
ウエストからの盛り上がり方は、まるでバフィー・ザ・ボディーじゃないの。
整形しているのではないの。』
一緒にアルバイトしていた黒人のモデルの子が言うのよ。
 
『何が変なの。』
と言うと、笑いながら触ったり揉んだりするのよ。
 
『その大きさで、しかもその形なんて信じられない。
もの凄いお尻ね。
あなたの宝物よ。
余程鍛えて筋肉を付けているのね。』
 
褒めたみたいな言い方だけれど、嫌みよね。
分かるでしょう。
 
その後でさ。
 
『まさか、そのバストまで本物じゃないよね。
どうやって手術するのか、教えてね。
まるで、クローエ・ベブリエーじゃないの。』
 
『だったらどうするの。
触って見る。
手術の痕なんか、どこにも無いわ』
と答えたの。
 
そうしたら、私のブラジャーを外して、何度も調べるの。
 
『何かの間違いだ。
こんな胸があるはずが無い。
 
あまりにも、不公平だ。
いくらトレーニングしたって、そんな身体にはなれない。
バストもヒップ完璧よ。
大きさも形も。
 
それが、こんなモデル体型にくっ付いているなんて。』
と言って怒るの。
 
『自然にしていてそんな身体なんて。
そんな身体だったら、フェイクにしようとは、誰だって考えないだろう。
私もそうだけれど。』
最後には諦めたのよね。
 
あなたならば、競争を勝ち抜いてスーパーモデルになれるとも言われたの。」
 
 
 
 
見た感じは叶姉妹の美香さんみたいな感じに、亜里沙には思える。
でもあの美しさは凶暴性を奥深くに秘めている恭子さんの方かもしれないと、亜里沙は思うのである。
 
姉にスリーサイズを尋ねても、本当の事は言わないだろう。
適当な事を言って、最後には嘘を言われるのが亜里沙との関係である。
今のところは、122−68−114という風に教えてもらっている。
 
昨日の夜は、姉にかなり近付いたと思って喜んで、亜里沙は舞い上がっていたのである。
 
 
実家に帰って来た時に見る、あの大きなブラジャーはこの辺には売っていないだろう。
何カップと言うのか聞いた時に、オーダーだから分からないわ、って答えてくれたのだ。
去年の正月に帰って来た時には、私にこんな事を言ってくれたのを思い出した。
 
「亜里沙ちゃん。
まだ何事にも、本気を出していないでしょうね。
 
亜里沙は、これからもっと成長をする予定なのよ。
きっと、私どころのプロポーションじゃないと思うの。
 
困ったら、私に言ってね。
今は、電子メールでやり取りできるでしょう。
・・・・・・。」
 
思い出さなければならないのは、そんな事かもしれないけれど、まだ何かあるかも。
 
 
どうやって夢に出るのか、亜里沙には分からないが、不自然な事をして見た夢か自分で見た夢かは、判断が付かなかった。
 
 
 
亜里沙は適当に宿題をすまして、制服を着て家を出た。
少し合っていないような気もするが、たいしたことでは無かった。
朝日山高校の食堂で、目玉焼き定食と天ぷらうどんを食べて、研究会の部室に行った。
 
映画研究会では、亜里沙の体力測定をビデオに撮ろうと言う、そんな意見も出てきて本当に驚いた。
演じるのではなくて、ドキュメンタリーであるから、主役という言葉は当てはまらないだろう。
今日の所は話だけ聞いておいた。
 
亜里沙の映画作りの役は、色々と運搬するのと雑用をするのと、小道具を作る事らしい。
小道具係は、集まって小道具を作り始めたのである。
 
 
 
 
いつものように雑談そして、街中まで出て予備校で、70分の授業を2コマ受けたのである。
予備校から歩いてすぐの所に、スポーツクラブがあり亜里沙はそこでは人気者だ。
凄いアスリートである事は、インストラクターの人は皆知っていて、亜里沙の注文には応えようとしてくれる。
エアロビクスとウェイトトレーニングをして、シャワーを浴びて制服に着替える。
男性インストラクターの中には、亜里沙に空手を教えようと熱心な人もいるが、そんな時間は無いと断っている。
運動をしながらも、頭の中にはさっき教えてもらった英語と数学が、頭の中を映像のように流れて行くのが快いのだ。
 
スポーツクラブの自動ドアを出ようとした時に、インストラクターの一人に声を掛けられたのである。
少し説明をするから、来て欲しいと言われて応接室に招かれたのである。
簡単に言うと、せっかくウェイトトレーニングをしていても、その後の過ごし方が問題だと言われたのである。
蛋白質を摂取する事とその後の休憩が必要で、あたふたと帰宅しようとするようでは、運動の値打ちが無いと言うのだった。
スポーツクラブの会員費は値引く事は考えていないが、接種する必要な量の蛋白質を会社の方で持つと言う事なのだ。
やはり、亜里沙の運動能力の高さが、何かしらスポーツクラブの会社を動かしたのは疑いが無かった。
 
新製品のモニターという名目で、その金額は出るのだけれど、新製品というかテスト中の物か詳しくは接種するときに教えてくれるそうだ。
簡単に言うと、休憩の1時間はゆったりと横になるらしいのだが、それもインストラクターが指導するということだった。
休憩の間音楽を聞いたり、英語会話の教材を聞いたりは、自分でミュージックプレイヤーを持参すれば問題は無いのだ。
 
良く分からないが、この日は言われるままに蛋白質を摂取し、休憩をして帰る事にしたのである。
休憩中は、いつも電車やバスに乗るときに聞いている、音楽を聞く事にすれば1時間も無駄な感じがしなかった。
明日からは、スポーツクラブでの休憩時間の為に、FM放送を録音しておこうかなあと考えたのである。
予備校での授業を録音しておいて、もう一度聞きなおすのもいいかな、とも考えたのだ。
 
 
亜里沙は、運動をして帰宅するまで空腹なのが、実は嫌なだけでスポーツクラブの話にのったのだった。
本当によく食べるのである。
いくらでも入るのである。
底なし沼のように。
 
 
大手のハンバーガーチェーンの店に寄るには、帰宅コースが長くなる事と、自分のこづかいが減るのが嫌なのだ。
それで、あのインストラクターの話が気に入ったのである。
 
一時間ほど帰宅が遅れることは、メールで家に知らせておいて指導されるままに、過ごしたのである。
亜里沙は、明日はお代わりしようかなあ、なんて呑気に考えていた。
 
 
 
大手の予備校チェーンの授業はとっても上手で、分かりやすいから予習復習も簡単である。
朝日山高校でも、授業の邪魔とは言わないが、積極的でない生徒もいる。
「あいつ、どうやって合格したのか不思議。
私なんか、必死の思いでようやく合格圏内に入ったのに。」
亜里沙はそう思うのだ。
授業中、亜里沙はひたすら真面目に集中している。
 
 
再び、スポーツクラブのドアを出て、その後は何も考えなくても、自動的に足が動いていくようなものである。
気が付くと、亜里沙は市内電車に吊皮を持って乗っている。
市内電車が、この街には残っている。
とっても便利でエコな乗り物である。
 
高校から街中へ出るのも、家から街中に出る時も利用するのだ。
高校から街中へは、バスの方が早いので仕方が無いが・・・・・・。
 
電車の音は心地よくて、冷房が利いていて乗っていて楽しいのだ。
 
そうして、亜里沙は帰宅したのである。
この日はいつもよりも1時間遅れであったが、それとていつもと変わりは無いのと等しかった。
朝とっても気持ちが落ち込んだ事は、忘れていた。
あの自分の身体に付いていた、爆乳と爆尻は、夢だったのかもしれないと亜里沙は思った。
それでも、帰宅後にバストアップのための体操やストレッチを行なうことは、忘れはしなかった。
昨夜の事はさて置き、『自分の望みは持ち続けねばならない』という信念があったからである。
 
それは、もちろん麗子の影響下である。
 
 
『爆乳爆尻になりたい』という気持ちは、昨日よりも強くなった事は間違いが無かった。
それも、相当に。
麗子の言う所の、『本気』なのかもしれない。
 
でも心配をかけまいと、やさしく言ったのである。
「昨日のことや今朝の事は、夢だったのじゃないかなあ。
お母さんも香里奈も、夢を見ていたのよ。
麗子姉さんが出てくるなんて、変な夢だったでしょう。」
 
そう言う娘を見て、母は安心したようである。
母も、やっぱり夢だったのだと思う事にしたのだ。
 
 
 
亜里沙が寝ようとした時には、妹の香里奈は昨夜の事は忘れて、もう寝ていた。
その姿を見て、夢だったのだと確信した。
どう考えても、常識的には、亜里沙があんな身体になるはずはなかったからである。
 
 
 
これらの事は、誤差は含みながらも、姉の麗子の計画の中の出来事であった。
全てそうなのである。
 
正確には、『姉を通しての』と言うべきであるが・・・・・・。