[2] 彼女のペースで
私は、少しあわてていた。
コーヒー代を払い、コンビニの買い物といつもの取材道具を持って店から飛び出た。
あの子を追いかけよう。
ストーカー的興味では無くて、追い掛けなければならないと感じたのだった。
速足で歩いているように見えなくても、彼女の歩みは早かった。
走って追いついたのは、私鉄の駅に入ってからであった。
私は、落ち着いた振りをして、彼女に声を掛けた。
「済みません。
怪しいものではありませんから、お話を聞かせて下さい。」
名刺も添えたのである。
近くから見ると、身体つきだけでなく美貌も相当なものだった。
彼女は、小学生らしからぬ、落ち着きを見せて対応を見せたのである。
「ああ。
喫茶店から写真を撮っていた人やね。」
私は見つかる筈が無いと思っていたが、どうして分かったのか不思議でならなかった。
「どうしてそれが分かるのかい。」
と、質問してしまったのが、彼女には可笑しかったらしい。
「ハハハハ。
普通は、隠すんとちゃうかなあ。
兄さん正直や。
私に声を掛ける人は、あの席から写真を撮るねん。
質問は何しても良いけど、相手してくれる覚悟あるの?
さあ、刺激的な質問の1つ目は。」
発言も小学生らしくない。
「こんな所で話をするのもどうかと思うので、どこかこの辺りで落ち着くところは無い。」
地理感の無い私は、彼女にたずねた。
「あのな。
うちのバッグ大きいやろ。
電車通学の子が多いから、かばんは自由やねん。
ランドセルは、始業式の日に捨てたった。
ハハハハ。
私服に着替えるから、兄のような顔しといてや。」
と強引に、手を引っ張って行く。
平日のすいた大型電気店に私を連れ込んで、女子トイレの前で待たせること10分。
出てきた彼女は、とても小学生には見えない。
高校生や大学生はおろか、20歳代の半ば過ぎって感じだ。
着ていたブラウスは同じだったかもしれないが、グレーのブレザーとタイトスカートを身にまとうと、一瞬OLに見える。
巨大の胸はブレザーを押し上げていて、身体に合っているとは思えない。
まあ、何を着ても服が余計だろうね。
こんなタイトスカートは、既製品にはない。
デカイ尻に引きしまったウエスト。
「どこ見てるの!
うちの学校、温水プールあるから水着姿も見せれるよ。
今日、体育あってん。
市営プールそこにあるやんか。」
先制攻撃だが、言葉よりも先にボディーに頭がくらくらする。
「きれいな身体しているね。
服着ていてもわかるよ。」
思わず言ってしまった。
「セクハラ。
マイナスポイント。
アハハハ。
褒めても、何にもでーへんで。
嬉しくもなんともないから。」
大声で笑われてしまった。
「さあ、兄ちゃん。ホテルに行こ。
この辺にいっぱいあるやろ。
この格好なら、入っても怒られへんわ。
小学校の制服は無茶や。
兄ちゃんの服装も、ちゃんとしてるし。
背広かて高もんやろ。」
「吊り下げのビジネススーツとは違うのが、どうして分かるの?」
「そりゃ、うちのお爺ちゃん、職人やから。
ええか。
ラヴホテルはいややで。
『シティーホテル』でないと。
インタビューは、そんなとこで、するんや。」