今は、202X年の6月である。
巨乳アイドルのバストの大きさは、年々向上するために2008年頃では、EやFでは誰も驚かない。芸能プロダクションが必要とするバストの大きな女の子をエージェントが探し求めようとしても、供給が追いつかなかった。スカウトしようにもそんな巨乳の女の子は存在しないのである。それに伴い、グラヴィアに整形巨乳美女で溢れ始めたのは、2010年前後だったように思う。ところが、巨乳のアイドルのグラビアが、漫画雑誌や週刊誌からいっせいに姿を消し始めたのである。確か2020年では無かっただろうか。
年頃の男の子たちの好みは、いつの日もスタイルやプロポーションの良い女の子であることに変わりはない筈である。
202X年の事であるから、平成の時代よりも美容整形の敷居は低くなっていたのは間違いなかろう。技術水準が上がり、手術の単価も下がったのであるが、日本中の町々がプロポーションの良い女性で溢れている訳ではない。着衣巨乳の画像を検索しても、同じ画像が幾つもの異なるサイトから登場するのである。
この物語は、新幹線が走り始めて20年以上になる、南国K県I市での出来事なのである。
比較的市街地にある、小学校の出来事であった。
I市立南小学校の養護教諭の徳丸智子は、保健室にあるパソコンに身体計測の結果を打ちこみ終わった。冷めてしまったコーヒーを洗面台に捨てた。再びカップに温かいコーヒーを入れて、パソコンのある座席に戻ったが、画面には身体測定の結果が出ていた。智子は、5年生3クラスの女子児童48名の平均体重・身長が、全国平均や県平均を上回っている事に気付いた。前後の学年の男女には、驚くような結果はどこにもなかった。全国平均と比べて少しだけ劣っていたのは、毎年の身体計測を終わっての感想である。
しかし、残念と言えば良いのか、変化が起こってから1年以上遅れていたのである。この事から、智子を責めるのは間違っていて、学校で胸囲を測定しない事になって、もう20年近いのである。南小学校では、5月と11月に身体計測を行ない、数値が出るのは、計測が終わってから少し遅れる。
「校長先生、今年の5年生なんか変だよ。平均体重がいつもの年よりも、数kg重いのです。全国平均をかなり上回っているのです。平均の数kgって言えば、相当急激な成長をしたことになります。彼女たちを見ていて気付く事はないですか。」
智子は校長室へ出向き、こう言ったのである。
南小学校の校長は女性で、原口と言う名前である。
「徳丸先生、そう言えば・・・。5年生の子どもたちの中には、胸の発育が良い児童が多いような気がしませんか?
ちなみに、5年生の平均胸囲は67.8cmだって、下着メーカーが発表していましたよ。
例えば、5年2組の蔵野なんて、それよりも相当大きいのではないでしょうか。気付きませんでしたか。それから、中元も。
あんな小学生というか、大人でもあんなスタイルでプロポーションの人は、天文館を歩いていても見当たりません。身長も160cm以上あるように見えます。
プール授業が始まる前に、胸の大きな子どものバストを測ってみたら、どうでしょうか?全員測る訳にも行きません。大騒ぎになる前にね、私はなぜかあまり良くない胸騒ぎがするのよ。それから、よく彼女たちの気持ちを、聞き取ってください。」
校長は、智子にそう指示を出した。
「バストが大きいのは、蔵野の他には・・・。さっそく、明日から昼休みに保健室に呼び出します。」
智子はそう答えた。
自宅に帰ってから、智子は5年生の女子48人のことを、思い出すことにした。
夕食を終え、智子はパソコンに向かい、昨年4月に撮った4年生の時点のクラス写真を調べてみた。智子は、学校全体の写真の係をしていたので、家のパソコンに写真が入っていても不思議ではない。4年生の画像を拡大して、女子児童の胸を見てみると、すでに数人の胸は膨らみつつあることが分かった。それは毎年の事と言っても良いような気がするほど、常識的な写真である。きっと、ブラジャーを着け始めたくらいで、将来は爆乳に成長するかもしれないが、現時点ではBカップぐらいに見えた。
それから、今年の写真を見比べてみたのである。まずは、話が出た蔵野であるが、写真で見る限りではそれ程のバストには見えなかった。校長が、大人でもいないと言うほどの事はないように見える。そう思いながら、智子は内科検診や眼科検診の時の事を思いだしたのであった。
そして、次の日の昼休みに呼び出す児童6名をピックアップしたのである。その時には、智子はある種の驚きを隠す事が出来ずに、なかなか寝付けなかったのである。ピックアップしたのは全て、5年2組の児童だったからである。しかも、4年3組だったことも。
次の日、6人の児童を保健室に呼び出した。朝のホームルームでクラスの担任の城島が連絡した時の、男子児童の騒ぎは相当であった。
「おっぱいの大きな子が保健室に呼ばれる。全員、去年の4年3組だ。」
「去年の4年3組は、巨乳クラスだもの。女子全員BカップかCカップなの。」
その後で、女子児童も騒ぎ出したのである。
「徳丸先生、何か気付いたのかしらね。私たちも知りたい、あの秘密の事。」
児童たちは、教師たちよりもずっと早く、何かを嗅ぎつけていたようであった。