全日本ビッグバスト選手権 その18

カゼリ 作
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「きたー!出番だよっ、ありすちゃん!」
「うん……行ってきます」
やれやれといった様子で、ありすは重い腰を上げる。実際、物理的に重いわけだが。
(あ〜あ、正直めんどくさ)
ため息混じりに無表情のまま、プールへ向かって歩き出した。
後ろ姿を見送る寅美がゴクリとつばを飲む。
「いやはや……すっごいなぁ」
何せあれだけ莫大なおっぱいを小学生そのままの華奢な身体に実らせているのだ。
背中の、いや、二の腕の外側へあり得ない量の乳肉をはみ出させている。
「よしっ!ルームメイトの初陣に、いっちょ歌ってやりますか」

<赤組からは埼玉代表・星宮ありす!
 まだ9歳の小学4年生ながら、ご覧くださいこのボディ!
 身長131cm。スリーサイズは126・47・66!
 あと5cmで身長越えというウルトラ・アンビリーバブル・アンバランスな“U”カップは、もはや非現実的な存在感ッ!
 しかぁーも!胸が膨らみ出したのは去年の暮れ。わずか半年足らずでこの大きさですっ!
 現在、成長は落ち着いているようですが、小学校卒業までにZカップオーバーは確実でしょう。
 フリルを飾ったピンクのビキニは、ファンシーなデザインに相反して、なんという広大な布面積!
 それでも包みきれないおっぱいが一歩ごとにたっぷんたっぷん波打っていますっ!>

熱狂的な臼井のアナウンス。また、それに交じって聞こえてくるのは
「せーいしゅんのはきー、うーるわーしくー!」
寅美が送る応援歌。もちろん『六甲おろし』である。

だが、当のありすは表情ひとつ変えない。
(寅美さん、なにやってんのよ……はずかしい)

「お、向こうにもタイガースファンがおったんか。敵にしとくんは惜しいなぁ」
白組応援席で大阪代表の芽衣が反応した。

<お人形のように整ったポーカーフェイスも、ミステリアスな魅力!
 お母さんの星宮アリサさんは元女優で、ありすちゃんも尊敬して芸能界入りを目指したとか。
 がんばれありすちゃん!Uカップ小学生のデビューを、世間は待ち焦がれているぞー!>

「くすっ」
今大会初めてありすが笑った。が、それは皮肉交じりの冷笑だった。
(思わず吹き出しちゃったわ。私がママを尊敬?……書類になんてデタラメを書いてくれたのかしら!)
すぐに無表情へと戻る。
(そうよ……あの人にわかるはずないものね……私の心なんて)

「アリス!?」
赤組応援席でその名に反応する者がいた。
あの春が、初めて真剣な表情で目をぱっちり見開いたのである!
「うわァッ!?」
こっそり春のおっぱいに触ろうとしていたももが、あわてて手を引っ込める。
(び、びっくりしたぁー)
突然の開眼に驚き、左胸に手を当てるもも。もっとも、Pカップに阻まれ動悸は伝わってこないのだが。
「あー……あのアリスじゃなかった……名前がおんなじだけ……なの」
初めて聞く春の声。見た目にたがわず甘い色気を含んだロリータボイスだった。
そしてトロンとまぶたが重くなり…
「ふゎぁ〜……むにゃむにゃ」
あくびと共に再び、うたたねモードに戻ってしまった。
(な、なんなの?この子)
卯月春。彼女にはまだ謎が多い。

<対する白組からは、茨城代表・三矢部光!
 17歳の高校3年生です。
 身長169cm。スリーサイズは103・50・77!
 理系科目が得意で、学校でも常に成績トップ。
 眼鏡の似合う、クールなインテリ系女子高生です!
 理工系の大学で研究職を志すという優等生の彼女が、なぜ今アイドルになろうと思ったのか?
 そこは謎ですが、スラリとシャープに引き締まったボディはアイドルの資格十分でしょう!
 スカイブルーの競泳水着にぎっしり詰まったLカップバストが、ポリゴンのように前方へ大きく張り出しています!
 それもさることながら、注目すべきは身体のライン!
 スラリと長い美脚が描く、イルカのように美しい流線型!
 超スリムなウエストからスマートなヒップにかけての曲線も、見逃すなっ!
 7.5頭身のスレンダーボディこそ彼女の武器だーっ!>

「ふむ……スロットに委ねたとはいえ、面白い組み合わせになるものだな」
VIP席から双眼鏡で観戦するスポンサー・大蔵金之助。
「さっきは男勝りのおてんば同士、そして今回はツンとすましたクールビューティー同士とはな」
自分の望み通り。水着をかけて戦う乙女たちの光景を真剣な眼差しで見つめている。
しかし同時に、老いた瞳の奥には憂いにも似た憧憬を秘めていた。
よく見れば、大蔵は膝の上に一冊の本を乗せている。
かなり古くボロボロだが、それは絵本だった。タイトルは…

     『せかいでいちばんおおきなおっぱい』

しおりを挟んだページを開く。
描かれていたのは、色とりどりのドレスに豊かな胸を包み込んだ女性たち。
各国から招かれ、お城の舞踏会に集まったお姫様だった。
その数、48人。
「48人のおひめさま……この中に『お前』はいるのだね」
絵本をパタンと閉じ、しばし眼をつぶる大蔵。
(私も老いた。『王子様』なんて歳じゃないことはわかっているさ。だが……必ず見つけてみせるよ)
その後動いた唇は、誰かの名前をつぶやいたようだった。

中堅戦。土俵上で両選手が対峙する。
向かい合えば38cmの身長差は歴然。加えて互いのバストの違いも一目瞭然となる。

光のバストは、競泳水着のせいもあろうが、前方へ15cmほどまっすぐ突出したロケット型。
その美しさを引き立てるのは「光と影」である。
南国の陽光を浴びる、鮮やかなブルーのナイロン素材。
圧倒的弾力によってパンパンに張りつめた胸部に、白くまぶしい光沢が映っている。
その下にできた日陰の暗さは、高低差がいかに急激かを物語る。
青・白・黒の3色が演出する、壮麗にして溌剌とした健康美だった。

対してありすは、どちらかと言えば下垂型。
「ぴちぴち」よりは「たぷたぷ」。この幼さにしては珍しい、軟乳の持ち主だ。
だが決して垂れ乳ではない。重力には十分抵抗し、横から見た胸の厚みは20cm以上ある。
肌は小学生特有の張りを備えているものの、乳房はさすがに自重を支えきれないのか、やや下を向き、へそを越えて脚の付け根まで届こうとしている。
9歳という年齢にあるまじき、背徳的なアンバランスの美だった。

「よろしくね。ありすちゃん」
光の声は、冷水のようにさわやかで透き通っていた。
「はい。おねがいします」
一礼の間に、ありすは光の表情を読み取る。
ここからしばらくは、彼女の視点で進めよう。
……

あの笑顔は、ウソね。
たぶん本心では……恐ろしいものに立ち向かう勇気をふりしぼってる。
ふん、おあいにくさま……もう慣れっこよ。バケモノみたいに見られるのは。

<では両者とも、見合って見合って〜>

さて、さっさと終わらせよ。
簡単ね。バレないように、わざと負ければいいんだから。自然に転んで、自然にプールに落ちるだけ。
そもそも、アイドルになんてなりたくないし。
私をデビューさせたいママの思い通りになるのは、イヤ気がさすわ。
やたらテンションの高い寅美さんにつきあうのも、いいかげん疲れちゃった。
一足先につまらない日常へ戻るから、あとはアイドルになりたい人たちで楽しくやってちょうだい。
……まあ、でも
たった1週間だったけど、ふり返ってみると……楽しかった、かな?

<はっけよーい、のこった!>

「いくよっ、ありすちゃん!小さいからって手加減しないわよ!」
「え…!?」

ぽむゅんっ!

「きゃあっ!」
バシャアアアアアン!

<?……あ、えーっと……しょ、勝負あり!
 勝者は埼玉代表・星宮ありす!赤組2連勝ですっ!>

……なに?勝っちゃったの、私?

<いやー、まさに一瞬の出来事!
 光選手、胸を張って突進しましたが、ありす選手のおっぱいにはね返されてしまいました。
 そのままよろめいてプールに転落。中堅戦はスピード決着でしたー!>

そんなハズない!
私は立ってただけ。何もせず、ただ体当たりを受け止めただけ。
今、浮島に戻ってきた光さんが拾ったメガネをかけ直して、私と握手している。
「えへへ。残念、負けちゃったわ」
(……ウソ)
「やっぱり私より9カップも大きいと相当な重さなのね。ビクともしなかったわ。それどころか、すっごい弾力ではね返されちゃった。ぽよよ〜ん!って」
(しらじらしい!)
私が言うのも何だけど、この人アイドル向いてないわ。作り笑いが不自然だもの。

「あら〜…あっけなかったですねぇ〜…」
「しょーがないですよコトコ先パイ。あれだけの質量差ですもん」

やっぱり誰も気づいてない!
光さんは、わざと負けたってこと!

あのときぶつかった衝撃は、8kg以上ある私のおっぱいが全部吸収した。
そこから先は光さんの演技。
はね返されたように見せたのも、よろめいてプールに落ちたのも、すべて演技!
演技で私はだませない!
そもそもおかしかったのは、開始直後のセリフ。
「手加減しないわよ」っていうのがウソだとわかって、私は一瞬とまどった。
その隙を突いて光さんは負けた……わざと負けようとしてた私より、早く!

「……どういうことですか?」
思わず声に出してしまった。
「ん?何のことかな〜、うふふ」
でも、光さんはあくまでシラを切る。お姉さん的な上から目線で。
自分の半分程度しか生きてないガキが見破れるはずない、とでも思ってるのかしら。
「もういいです。ありがとうございました」
だったらあえて聞かないわ。もともと他人を詮索するのは好きじゃないもの。
どうせ、私には関係ないことよ。

茨城代表
三矢部 光(みやべ・ひかる)
17歳
身長 169cm
バスト 105cm(Lカップ)
ウエスト 50cm
ヒップ 77cm
支給水着 スカイブルーの競泳水着
特徴 眼鏡の似合うクールな優等生。胸以外は非常にスレンダー。

私はプールサイドを歩いて応援席へ帰る。
(あ〜あ、生き残っちゃった……)
でも、ママがいない分こっちの生活のほうが気が楽かもね。
せっかくだからもうちょっとだけ、羽を伸ばさせてもらうわ。
(寅美さん、ウザいくらいに私の勝ちを喜んでくれるんだろうなぁ)
いけない……ちょっと笑っちゃった。

……
場面は変わって、どこかに隠された秘密の空間。(10話参照)
照明の落とされた部屋では、大画面の液晶モニターが唯一の光源となっている。
3人の女性がそれで試合を観戦していた。
「ふうん……おもしろいコが出場してるわね」
声の主は、「お嬢様」と呼ばれ2人の従者にかしずかれていた謎の女性。
優雅に足を組み10m超のバストに座っている。背もたれまで全てが自分の乳房だ。
このような体勢を作るには、まずわきの下から乳房を後ろに回し、背後にできた谷間に自ら埋もれるかたちとなる。
常人には想像することすら難しい、まさにモンスターの領域。
そんなバストを包む衣など存在しないのだろう。ゆえに上半身はヌード。
下半身には、豪奢でクラシックな貴族風のスカートを着用していた。

「ねえ?“貧乳A”」
「……わたくし、でしょうか?」
「あんたに決まってるでしょ。人間だった頃の名前も忘れちゃったの?おっぱいだけじゃなく脳まで小さいのかしら」
「もうしわけございません。お嬢様」
これだけ侮辱されても、貧乳Aと呼ばれた従者は無表情のまま。
もはや、人としての尊厳をあきらめているかのようだ。
「あっゴメンねー。そういえばあんたたちを区別して呼んだことなかったっけ。いっつも“貧乳”で済ましていたもんね。キャハハ★」
無配慮どころではない。純粋でドス黒い悪意は、そのまま彼女の本質を表している。
「以後あんたを貧乳A、あんたを貧乳Bと呼んで区別するわ。嬉しいでしょ?名前がもらえて」
「仰せのとおりに……」
「光栄デス、お嬢サマ」
2人には服従しか許されない。あらゆる希望は何年も前から握りつぶされているのだから。

Bと呼ばれた従者の返答は少し不自然な発音だった。青い瞳、褐色の肌、彫りの深い顔立ちを見ても日本人ではなさそうだ。
逆にAは一目で日本人とわかる、素朴な容姿をしている。
2人とも、年齢は20台前半といったところか。
着ているのは侍女のドレス。現代人がコスプレ衣装として知るメイド服より、やや慎ましやかな印象である。
F〜Gカップ程の豊乳が布地をこんもりと押し上げる様子は、独特の妖艶さを十分に感じさせた。
が、やはり。自らの乳房に鎮座し、その高みから睥睨するほどの“怪物”とは、くらべものにならない。

「で、あらためて貧乳A」
「はい」
「あのコ、あんたの妹でしょ?」
「!」
言い当てられ、Aは戦慄する。
モニターに映っているのは、今敗退したばかりの光。
麗しく成長した妹の面影を確認すると、Aは観念したように目をつぶった。そして…
「はい……確かに、三矢部光は……私の妹です」
胸を引き裂くような痛みに耐えながら、答える。

案の定。それを聞いたお嬢様は長いまつ毛の目を弓形に細め、嗜虐的な笑みを浮かべる。
まるで、新しいおもちゃを手にした幼子のように。
「キャハハ★すごいわ!泣かせるじゃない。行方不明の姉を追ってここまでたどり着くなんて!」
「……ッ!」
Aの中で数年ぶりに再燃した怒り。くやしさに奥歯を噛みしめるが、
「なんて美しい姉妹愛なのかしら!ステキすぎて反吐がでちゃうわ!」
「……」
狂悦の主に逆らうことなどできない。Bもまた、無感情な瞳でその様子を見届けるのみ。

「いいわ貧乳A。再会のチャンスをあげる。あの子の胸はあんたが吸いなさい」
「!!!」
「あんな微量のおっぱい、見逃してあげてもいいけどー。たかだかLカップの貧乳を浅ましく奪い合う姉妹を見てみたいのよ!キャハハハ★」
「あ……あ、ぁ……」
とっくに全ての希望は捨てていたはずなのに。Aは更なる絶望を強いられる。
この悪魔は、故郷に残してきた妹までも生贄に捧げろというのか!
「……ありがとうございます」
それでも、逆らうことはできない。
「いいこと?くれぐれも変な気を起こすんじゃないわよ。あんたたち貧乳は、敗者の乳を集めてくればいいの。私のためにね」
絶対的支配。おそらく乳房の重みで身動きすらできないお嬢様に、2人が隷属する理由とは何だろうか?

「とりあえず『儀式』は滞りなく進んでいるようね。あの男のおかげで」
お嬢様の言葉に合わせ、Bがリモコンでピッと画面を切り替える。
映し出されたのはVIP席のスポンサー。
「フフッ★たった1冊の絵本で、まんまとこちらの思惑通りに動いてくれたわ。男ってほんとーーーに、バカ」
老紳士の純心をあざ笑う彼女こそ、物語の黒幕。
「せいぜい利用させてもらうわよ。祭司に選ばれたことを光栄に思いなさい。大蔵金之助」