千々山村自然教室

唐鞠 作
Copyright 2018 by Karamari All rights reserved.

マイクロバスにはすでに2組の親子が乗っていました。ナッちゃんの推理通り、前日から一泊していた参加者です。
その一人、宮方あまねちゃんは東京から来た6年生。わたくしの隣に移動してくれて、同じ学年同士すぐに仲良くなりました。

「へえ、ルミちゃんお父さんと来たんだ。でも今は一緒じゃないの?」
「ええ。お父様は別の用事があるそうで。旅館で合流するまでは別行動ですの」
「自立を尊重してくれるいいお父さんだね。うちのママも見習ってほしいよ」

振り返ると、後ろの座席に残してきたあまねちゃんのお母様がこちらを心配そうに見守っていました。

「私に構わず観光してくれて良かったのにさ。どうしてもついて来るって言うんだよ。心配性なんだから」
母親のいないわたくしに今の言葉はチクッと刺さりましたが、そこで感情的になるほどコドモではありません。
「まあそう言わないで。お母様は大切になさってくださいな」

どうやらあまねちゃん、ボブカットに銀縁眼鏡の似合う優等生風な見た目に反し、束縛を嫌うプチ反抗期のようですわね。
きっと都会の窮屈な生活に疲れて、自然教室へ羽を伸ばしに来たのでしょう。

それにしても、あまねちゃんも小6にしてはご立派なムネの持ち主。
先ほどチラッと見たお母様と比べても、すでに追い抜いてるようですわ。
とはいえせいぜいDカップ程度。140cm台の身長には十分な存在感ですが、脅威に感じる程ではないでしょう。
むしろ驚いたのは……

「ところで、あまねちゃんと一緒に乗ってきたあちらのお姉さんは?」
小声で尋ねたわたくしに、あまねちゃんも小声で答えてくれました。
「ああ、新戸さん?3年生だって。私も驚いたよ。すっごくスタイルいいよね」

後部座席に母親と一緒に座っているのは、新戸いつきさん。
座っていてもわかる長身は170cmに達しているかも。わたくしよりずっと背の高い、スラッとしたモデル体型です。
猫背気味に隠れているのではっきりとはわかりませんが、バストは90cm以上……サイズでならわたくしを超えているかも?
ウエストのくびれ、ヒップの丸みも完全に大人のそれですわ。
しかし顔立ちはとても幼く、うつむき気味で気弱な印象。
さっき青梅さんに話しかけられても、あいさつ以上の会話が弾んでいない様子でした。
中3といえば最年長なのに、オドオド人見知りしているようでは頼りないですわね。

「でもさ、新戸さんほどじゃないけどルミちゃんも背高いよね。脚長くてうらやましーい」
「そっ!そうかしら?」

え?褒めるところそっち?
いつもバストの方を意識してたから、不意を突かれて素で照れちゃいましたわ。

「私もせめて150にはなりたいな」
「わたくし達まだ小学生ですもの。あまねちゃんもこれからぐんと伸びますわよ」

ですが「うらやましい」と言えば……前方の席で繰り広げられている光景がまさにそれ。

「うはー!重てー!けど、すっごいやわらかーい!」
仁科さんの巨大おっぱいを持ち上げてご満悦のナッちゃん。

(契約履行、早っ!)
「あとでね」とは言ってたけど、もう触らせてくれるなんて。
(どんだけサービスいいんですの仁科さん!)

「手首折れそうー!弾力もバツグンですね。重さどれくらいあるんですか?」
「うーん、ちゃんと量ったことないけど……少なくとも片方4kgはあるかなぁ」

合わせて8kg以上!?2リットルペットボトル4本分って……とんでもない重量ですわ!
しかも今、ナッちゃんの小さな手のひらが持ち上げているのは、あくまでブラ越し。リフトアップされた状態のおっぱいですからね。
あれがもしノーブラなら、支えを失った乳肉の巨塊がどさっとフリーフォールで襲いかかる!その暴力的なグラビティは到底支えきれないでしょう。

「すっげー!やっぱり子どもの頃から大きかったんですか?」
「そんなことないよ。まあ確かに大きい方だったけど、もっと大きい子はいたし。後輩に追い抜かれたりもしたよ」

け、謙遜ですわよね?さすがに。

「ナッちゃんだって十分大っきいじゃない?」
「うん、80cmのEカップ。4年生だけどカップでなら学校一番になったよ。今年から」

わたくしの目測は大体当たりでした。
しかしナッちゃん80でEとは……アンダー60ですか。ジュニアブラだから対応できる細さですわね。
けどまあ普通そうでしょう。Eカップもあれば天下取れますわよね。普通の学校なら。

「早ーい。でもナッちゃん、ブラしてないみたいだけど大丈夫?」
「んー、きゅーくつだから好きじゃないんだ。おかーさんと駅で別れたら列車の中で脱いじゃったよ。あははっ☆」
「えっ!列車の中で!?」
「だいじょーぶ。Tシャツ着たまま脱いだから」

まったく、ナッちゃんたら人目を気にしないにも程がありますわ。豪胆を通り越して一歩間違えれば変態ですわよ。

「……いいなぁ」
(!?)
無意識に心の声が出てしまったのかと思いましたが、今のつぶやきはわたくしではありません。隣で一連のやりとりを見届けていた、あまねちゃんです。
「!」
つぶやきを漏らしてしまった事に気付いたあまねちゃんは、振り向いたわたくしを見てかぁっと頬を赤らめました。
(……かわいい)

ええ、わかります。わかります。
小6でDカップを有していても、やはり自分より大きなバストには憧れますわよね。
正直わたくしだって、仁科さんの胸は触ってみたいですもの。



そうして車に揺られること20分。バスは目的地に到着しました。
自然教室の会場は、川原のすぐそばに建つ木造校舎。4年前に小学校の隣へ移転した旧・千々山中学校です。
雑草がまばらに生えた校庭の片隅には、フェンスの錆びた小さなテニスコートも残っていました。
今では林業基地として使われていて、山で採ってきたスギやヒノキをここで加工しているそうです。

午前9時。予定通り開会のあいさつが行われました。
わたくし達を迎えてくれたのは、このイベントの企画者である村の教育長さん。
千々山中学の元校長で、定年後だそうですが60台にはとても見えない、パワフルなおばあさんです。
「皆さん、おはようございます」

「「「「「おはようございまーす」」」」」

「遠い所までよく来てくれましたね。私は千々山村教育委員会の椎原ユキヨです。
今日は観光課との協力で、はじめて村の外からお客様を招いて自然教室を開きました。
千々山が誇る美しい自然の中で、ありのままの自分を解放しましょう!
そして遊びを通じて、仲間と共に生きていく自信を育んでください。
体も心も全力で、思いっっっきり!楽しんでくださいね!」

よくある校長先生の話みたいに長々としていない、1分で済む簡単なあいさつでした。
しかしその短時間でさえも、わたくしは先生の言葉に集中できなかったのです。
理由?それはもうお察しの通りですわ。

椎原先生の隣には、自然教室に参加する地元の小中学生が並んでいます。
右に男子3人、左に女子2人。わたくし達、外からの参加者とちょうど向かい合わせになる形で。
男子について特筆することはありません。ごく普通の外見で、せいぜい「日焼けしてるなあ」程度の印象でしたから。
問題は女子です。さっきからこの2人に視線を強力に惹きつけられ、少しも目が離せないのです。

今、その一人が前へ出てこう言いました。
「はじめまして。私は千々山中学校2年の竹上ななえです。今日は村の小中学生のリーダーを務めるので、よろしくお願いします。これから一人ずつ自己紹介します」

ハキハキとしたよく通る声に、いかにもリーダーシップを感じます。中学では生徒会か学級委員を務めているのでしょうか。
しゃきっと伸ばした背筋から身長はわたくしと同程度、160cm手前くらいだとわかります。
女性らしい顔立ちの中にも確乎とした凛々しさを垣間見ることができ、不ぞろいに撥ねたショートカットが与えるのはスポーティーな印象。そこにフレームの眼鏡をかけることで、一転して文化系にも見えました。

そして視線を落とせば……待ち受けるのは大迫力のふくらみ。
急激な盛り上がりに圧し広げられた白い半袖体操着は、天にのしかかる巨大な入道雲のようでした。
袖がブカブカなのはバストに合わせて大きなサイズを着ているからでしょう。身長に合わせると裾が足りず、おへそが見えてしまうことは容易に想像できます。
(すっ……ごい)

体積だけ見れば青梅さんのLカップと同程度かもしれません。
しかし、竹上さんはそれほどふくよかではないためアンダーが細く、見た目のインパクトは青梅さんを断然上回っていました。
(Mカップ……は確実にありますわね)

より大きく見えたのは、うっすら透けて見えるブラの仕事もあったでしょう。
巨大なバストをしっかりと包み込み、持ち上げ、力強く前方に張り出させていました。

そしてその隣にいる、おそらく最年少の女子。
「……小学3年生、泉さやです」

囁くような声は、不思議と心地良い響きを耳に残しました。
一言で表すなら神秘的。ロングの髪はサラサラのストレートで、神々しいまでに整った顔立ち。真夏だというのにとても白い肌をしています。
眠そうにぽわんと半目を開けた表情が、なんとも可愛らしくミステリアス。
わたくしも自身の魅力を妖精に喩えたことがありましたが、今思い返すと恥ずかしくなります。妖精なんて喩えは、まさにこの美少女に用いるべきかと!
淡く発光するオーラに包まれ、背中に半透明の羽根が見えても違和感ありません!

身長はナッちゃんよりもさらに低い130cm台。
儚さすら思わせる華奢な体躯に、ぽこんと突出した形の良いふくらみは、おそらくノーブラ。
もしかしたら、アンダーが細すぎて市販のブラでは対応できないレアケース?
しかしノーブラでも全く問題ないほどのツンとした張りは、小3ならではの未成熟さを感じさせました。
ここまで細身だとバスト70cm台でもEカップなんてことがあり得るから、目測は当てになりません。
(でも、体積だけ比べてもナッちゃんより少し大きく見える……ということはF?)

フェアリーの「F」。とはいえ、胸以外があれだけ小さければ実質H〜Iカップくらいに見えます。
(わずか小3にしてFカップ……)
わたくしとしたことが、「日本一バストの大きい小学生」という栄冠を、思わずひざまずいて献上しかけていることに気付きました。

(いけないわルミ!敗北を認めるには早い!)
だってサイズ上はまだわたくしが上。91cmのGカップをそう簡単に破らせるものですか!

……とまあ、わたくしの中でそんな葛藤があったものですから。
続く男子3人の自己紹介を上の空で聞き流してしまったのも、仕方ない事でしょう?
小5が2人と中1が1人、って事くらいしか把握できませんでした。

「このほかにもう5人、後から合流します。今は川原で午後の梁漁の準備をしています」
最後に竹上さんが付け加えました。

今度はわたくし達が自己紹介する番です。
「中学2年生の青梅ゆうです」
「4年生の三森なつでーす!ナツって呼んでください」
「越出馬ルミ。6年生ですわ」
「同じく小6の宮方あまねです」
「あ……あらと、いつきです。さんねんせいです」
「「「「「よろしくおねがいしまーす」」」」」
こうして、わたくし達5人は拍手で迎えられました。

続いて登場したのは、この場で最大のRカップバストの持ち主、仁科さん。
「さて、みなさーん?お昼のバーベキューはちょっと遅めになるけど、朝ごはんはちゃんと食べて来たかなー?」

「「「「「はーい」」」」」

「よろしい!では今日一日がんばるために、まず朝の体操から始めましょう」
仁科さんは地元の小中学生と一緒に、わたくし達の向かいに並びました。体操のお手本を示す、いわゆる体育委員の立ち位置です。

(ま、まさか仁科さん……やるつもりですの!?)
ラジオ体操を!?
あの胸で!?
ちょっと待って!あそこまで巨大だといくつか不可能な動きとか出てくるんじゃ?
自然教室始まって早々、いきなりのスペクタクルショー開幕!
戸惑うわたくしをよそに音楽は鳴り出しました。

そこからはまさに、ファンタスティックな光景の連続でした。
ネイビーのポロシャツの下で重々しく波打ち、ぷるんぷるんたわんたわんと縦横無尽に踊る、8kg超のやわらか凶器!
あんなのにぶつかったら、それこそ天体衝突!メテオインパクトですわ!

その隣では推定Mカップをダイナミックに揺らし、健康的な肢体を惜しげもなく見せつける竹上さん。
小動物のようにぴょこぴょこ動くさやちゃんも、本当にかっわいい〜☆

ここまでくると、たかが体操の一動作すらドラマでしたわね。
最後の深呼吸でさえも、大きな胸がさらに膨らむように錯覚しました。
ああ……終わってしまうのが本当に名残惜しい、夢のような3分半でしたわ。
ケチってないでラジオ体操第二までやりなさいよ!と、正直思いました。

でもね。仁科さん、体操が終わった後、少しもブラのズレを直す様子がないんです。
それは竹上さんも同じこと。けっこう激しい動きをしたのに、体操の前と全く変わらずピシッとしています。
あれだけ大容量のおっぱいをホールドし続けるなんて、よほど高性能なブラなのかしら?
(それはさておき最高の目の保養、ありがとうございました)



体操を終えて、わたくし達が向かったのは技術工作室。午前中のイベント『巣箱作り』の会場です。
ホコリや木くずでかゆくならないかと心配でしたが、実際は風通しも良く、きれいに整っていました。
ここでは村の小中学生とペアになって、村特産のスギ材を使った巣箱を作ります。
配られる木板は1人1枚。2枚分を組み合わせて1個の巣箱を作る計算です。

わたくしとペアになったのは、進太くんという小柄な小5男子でした。
(ひそかに狙ってたさやちゃんは、あまねちゃんに取られちゃいましたわ。残念)

「いゃっほーぃ!ラッキー!一番大っきいおねえさんとだー」
ナッちゃんは竹上さんとペアになれて大喜び。本当におっぱい大好きですわね、あの子。

まあ旅の恥は何とかって言いますし、ちょっと可愛がってあげようかしら?

「進太くんね、よろしく。図工って得意?」
「けっこー得意っす。ルミさんは?」
「得意に見えるかしら?」
「いやー、いかにもお嬢様って感じなんで。そうは見えねっす」
「OK!その期待、裏切ってさし上げますわ」

木板に図面どおり正確な線を引き、手際よくのこぎりで切断。巣箱のパーツをどんどん切り分けていきます。

「うわあ、ルミちゃん上手!」
「ほんとだー!お嬢様なのにこういうの得意なんだね」
のこぎり使いに手こずっているあまねちゃんとナッちゃんも来て、賞賛してくれました。

「『なのに』は無いでしょう?ナッちゃん。全国のお嬢様を代表してわたくしが偏見を正しましたわよ」
フフン。こう見えて、勉強も実技もこなせる万能タイプのお嬢様ですのよ。(……歌だけは苦手ですけど)

「さあ、どんどんいきましょう!」
この村に来てから立て続けにわたくしより大きなバストに出会い、自信喪失してたところですの。
(だから進太くん、あなたの反応でちょっと自信回復させてもらいますわよ。ウフフ)

それは思いつきのちょっとしたイタズラ。
のこぎりを構え前かがみになったわたくしは、進太くんに向けて胸元をチラリと覗かせました。
さらに脇を閉めGカップの谷間を強調して、のこぎりを引き始めます。

ぷるんぷるんぷるんぷるん!!

往復運動によって激しく揺れるわたくしのバスト!弾力と重量感をこれでもかと見せつけます。
いかがかしら?甘美なバイブレーション。巻き込まれ注意ですわよ!
懸命に腕を動かしながら、チラッと進太くんの反応を確認しました。

「……」
彼はこちらを見ていません。集中して作業を続けていました。

(えええええ!?)
ちょっとちょっと少年!セクシーなおねえさんがサービス中ですわよ!
こんなチャンス棒に振る?見逃していいんですのっ?
(はっ!さてはわたくしより大きな竹上さんや青梅さんのムネを鑑賞中ですわね?このエロガキ!)

いいえ、そんなことはありませんでした。
彼の目線は誰の胸にも向くことはなく、いたって真面目に木工に取り組んでいます。

(え?え?小5男子ってそんなんだったかしら?)
女の子のカラダ、それも極上の小6フルーティボディに興味ないのかしら?

そうこうしているうちに、疲れてしまったのはわたくしの方でした。
「はぁ、はぁ……」
「大丈夫っすか〜?ルミさんいきなりトバしすぎですよ」
「ご、ごめん。ちょっと休憩」
「わかりました。じゃあその間にオレ、この細かい部分切っときますね」
「あ……うん、おねがい」

この子、わたくしの胸を見てない!?
チラリとも、ほんの一瞥もくれない!
それどころかまっすぐ目を見て話してくるなんて……こっちが恥ずかしくなっちゃう!

思えばわたくし、幼い頃からチラチラ胸を見られることには慣れていましたわ。
男子からも女子からも。大人からも子どもからも。
それゆえ、皮肉にも!目を合わせて話されることに慣れていなかったのです。
(……不覚ですわ)
小悪魔系女子って、思うほどカンタンじゃありませんでした。

ドキドキを悟られないように顔をそむけると、さやちゃんを見つけました。
(あら、さやちゃん。工作中は長い髪をポニテにまとめてるんですのね。かわいい☆)
図面を引き終えた板に、さらにエンピツで何か書き込んでいます。

「あれっ、さやちゃん何書いてるの?」
ペアのあまねちゃんもそれに気付き、尋ねました。
「うらかおもてを、書いてるの……切ると、わかんなくなっちゃうから」

木板にはあらかじめ片面にだけ天然由来の防腐剤が塗布されています。
ヒナが生活する内側はあえて生木のままで、外側だけが防腐処理面になるよう巣箱を組み立てるのです。(だから組み立て後の塗装も要りません)
けれど、板の裏表は微妙な色の違いでわかるはずでした。

「えー?ちょっと赤っぽい方が外側だよ」
「見ても……わかんない」
「???」

理解できないあまねちゃんを助けたのは、別の班から立ち上がった男子。中1の泉亮平さんでした。
「あっ宮方さんゴメンな。うちの妹、色がわかんねーんだ」

「「ええっ!?」」
これには、わたくしも驚き。
「生まれつきでさ。さやの目は白黒以外の区別がつかねんだ。こんぐらいの赤みじゃ見分けられない」
「そ、そうだったの!ごめんね、さやちゃん」
「ううん……きにしないで」

あっ、さやちゃんが微笑んだ。すっごいかわいい〜!
無表情な子かと思ってたけど、相手を気遣って笑顔を見せてくれるなんて。
色覚障がいを持ちながら健気にがんばってるんですのね……立派ですわ。

ギュイイイイイン!!!

感動しているわたくしの耳をつんざいたのは、電動ドリルの音。
「!!!」
その音に驚いたのか、さやちゃんはビクンッと両目をつぶり固まってしまいました。

「おいっ、テツロー!ドリル使うなら事前に言ってくれやー、さやがいるんだからよ」
「すんませんセンパイ!」
ドリルを使ったのは新戸さんとペアの小5男子、徹郎くんでした。

「おにいちゃん、わたし……  ……してくる」
「おう」
ちょっと聞き取れませんでしたが、さやちゃんはお兄さんに何か言い残して工作室を出て行ってしまいました。

「あのー悪いけど宮方さん、ドリルで穴開けるの、さやの分は俺がやっていいかな?」
「い、いいですけど。さやちゃん大丈夫ですか?」
「うん。アイツすぐに戻って来っから」

一方こちらは新戸さんと徹郎くん。ドリルで巣箱の穴を開ける作業に入っています。
「よしっ、オレの分終わりましたんで。どうぞ新戸さんも使ってください、ドリル」
「あ、あたし……ドリルこわいぃ……」
「はい?」
徹郎くんが呆気にとられたのもうなずけました。
まさかの光景。ここにいる誰よりも高い170cmの長身をびくびく震わせ、新戸さんは怯えていたのです。

「あのぅ……竹上さん、あたしもドリルこわいんで……テツローさんにやってもらってええですか?」
涙を浮かべて懇願する新戸さん。ここで初めて、彼女が関西の方言を喋っていることに気が付きました。

「さやちゃんが、やらんでええんやったら……あたしも……おねがいしますぅ」
「いやいや新戸さん、大丈夫っすよ。そんな危なくないですって」
「そうだよー。いちばん上級生なんだから、がんばんなきゃ!」
励ます徹郎くんに乗っかった、ナッちゃんの一言が決定打でした。

「あ、あたし……上級生やないもん」

(((えっ?)))

「さんねんせいやもん……さやちゃんと同じ……小学3年生やもん」

つづく