千々山村自然教室

唐鞠 作
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密かに憧れている“木こりのおにいさん”に想いを込めたスイーツを届けた、その帰り道。
大きな胸の奥でまだ治まらないときめきを感じながら、少女は自転車をこいでいた。

143cmの身長とアンバランスなのは、豊かに弾むHカップだけではない。この歳にしてウエストもきゅっとくびれており、胸囲との落差を一層強調している。
53cmの細い腰に着けたウエストポーチの中で、携帯が鳴った。
(家からだ)
交通ルールを守る良い子の彼女は、きちんと自転車を止めてから電話に出る。

「もしもし。あ、お父さん……うそっ? 注文入ったの? しかも村人じゃなく観光客!?」
驚きと共に顔をほころばせる少女。思いがけない朗報らしい。

「うん……うん。冷凍庫に作り置きあるけど……特別な器があるの。そのお客さん待ってもらって! 私が接客する!」
早口で一気に喋る。貴重なチャンスを逃すまいと焦っているようだ。

「3分以内に帰るから。何としても足止めしてて! お願いっ!」
ピッ
切った携帯をポーチに突っ込み、小瀧めいかは全力でペダルをこぎ始める。


〜〜〜〜〜〜〜〜


涼の音を いづこに聞けり 野点傘

ふふ、一句詠めてしまったわ。
大きな日除けの和傘が、竹の長椅子に濃い影を落としている。
そこで一休みするアタシは、不意にチリンと涼やかな音を聞いたの。
「風鈴はどこ?」と見上げてみても、傘に遮られて軒先は確認できない。
いいえ、もしかしてあれは風鈴じゃなく、これから運ばれてくる氷菓の器が鳴ったのかもね。

(う〜ん楽しみだわ。一体どんな味かしら?)

この風流な雰囲気。まるで時代劇に出てくる峠の茶店みたいでしょ?
でも、あくまで本業はお豆腐屋さんなのよ。村の小さな商店街にある、小瀧豆腐店。

(知られざるご当地スイーツって、つい食べたくなるのよねぇ)

老舗の看板を掲げていながら新しい事にもチャレンジする姿勢、好感が持てるわ。
炎天下を歩いた体に、きっと沁み渡る美味しさよぉ『笹パウダー入り豆腐ジェラート』。ああ楽しみ♥

重たい胸をよいしょと持ち上げ、谷間にかいた汗を拭く。
ところで、ゆうは今頃どうしてるかな? 自然教室楽しんでるかしら?
予定では午後に梁漁だったから、そろそろ水着になってる頃ね。

(いやあ、まさかよりによってあの水着を持って行くとは……)
あの子の事だから、事情を知らずに軽い気持ちで選んだんでしょうけど。
そして、あえて説明しなかったアタシも確信犯だけど。

(ま、何事も経験よね)
アタシの娘のくせに、おっぱいに反比例して肝っ玉小さいんだから。大胆な水着の一つでも着て、あの子も度胸をつけたらいいのよ。

と、そこへ一台の軽トラが止まったわ。

助手席から降りてきた女性を見て、ちょっと驚いたの。
(あらっ? スマートな美人さん)
この村では、会う人会う人みーんな凄いバストの持ち主だったに。その人だけ胸のふくらみが全く無かったの。中にはあんなスリムな人もいるのね。

一方、運転席から降りてきたのは作業服姿の若い男性。二人とも歳は20代前半くらいかしら?

「加藤さん、このお豆腐屋さんですか?」
「そ、そうです。豆腐や湯葉などの大豆製品は村の名産品でしてね。ここも老舗なんですよー」
「村人が消費する分も、このお店で?」
「はい。村で他に豆腐屋はありませんから」

あら? やっぱり彼女、村の人間じゃないみたい。
加藤さんと呼ばれた男性は、ちょっとデレデレした様子で彼女に解説していたわ。

「なるほど……それは重要ね。大豆イソフラボンの含有量を測定しなければ……もしかしたら特殊なエストロゲン様活性を示すかも」
おや? 彼女、何だか科学っぽいことつぶやいてるわよ?

「志木沢さん、やはりここでも?」
「ええ。ぜひサンプルをいただきましょう」

あらあら“サンプル”だなんて。アタシは心の中で苦笑する。
(せっかくこんな素敵なお豆腐屋さんに来ておいて、風流じゃないわねえ)


〜〜〜〜〜〜〜〜


さて……どう説明したものかしら?

教室のすみっこで着替えを終え、「おまたせ〜」とラップタオルを外した青梅さん。
水着姿を一目見て、わたくしは瞬時に「ヤバい!」と判断しました。
皆の視線が集まる前に、身を挺して盾となり、
「青梅さーん? ちょーっとお話いいかしら?」
と強引に彼女の腕をつかみ、廊下に連れ出し、そのまま勢い余って壁ドンして現在に至ります。

「とっ……突然どうしたのルミちゃん? びっくりしたよ」

いや、びっくりしたのはこっちですわ。
何なの? 青梅さんの腕の感触! きめ細かい肌のモチモチ感! まるで手のひらが「幸福そのもの」をつかんだように感じましたわよ?

(腕でこんなに気持ちいいなら、おっぱいはもっと……)
一周回って心臓に悪いほどの心地よさ。想像するとつい呼吸を荒げ、ふくらみを見つめてしまいます。

(あ〜違う違う! 本題はそれじゃなくて!)

俺様系彼氏がキスを迫るような距離感に、頬を紅潮させる青梅さん。
どうか誤解しないで。わたくしにそんなつもりはありません。どうしても一言、こっそり“警告”すべきことがあったのです。

「青梅さん、その水着……」
「う、うん。古い型だけど一応スクール水着だよ」
確かに、一応ね。現代っ子のわたくし達には馴染みのない、いわゆる「旧スク」ですわね。

「わたしだけかと思ったけど、ルミちゃんも一緒で安心したよ」
(あ、安心!?)
こんなデンジャラス衣装を着ておいて?

「ちなみに、どちらで購入なさったの?」
「ネット通販だよ。去年、学校のスクール水着が入らなくて困ってたんだけどね。自称“IT系主婦”のおかあさんがグラマーサイズの通販サイトを見つけて、買ってくれたんだ」
(やはり……)

「ルミちゃんのもそうでしょ? 胸のあたりが広い特別製だよね?」
「ええ。わたくしのはオーダーメイドですの」
「へー、いいなあ」
「それより、とても大事なことをお伝えします」
「?」
「青梅さんが今着ているそれ……正確には水着じゃありませんの」

「……え?」
全く意味がわからないという風に、ぽかんとする青梅さん。
「どうして? 紺色じゃないけど、どう見てもスクール水着でしょ? ほら、名札も付いてるし」
その名札、おそらく転売防止用でしょうね。

「青梅さん……『白いスク水』なんてのは、フィクションの世界にしか存在しませんの!」

そう。今の青梅さんの格好は、白の旧型スクール水着。
スク水愛好家からも時に「邪道」と揶揄されながら、それでも一定層に確かな需要を築いてきたフェチコスです!
素朴なスクール水着と清純な白、2つ組み合わせたらかえってエロスが増し増しという。まるで、マイナスとマイナスをかけたらプラスになるみたいなマジック!(……いや、よく考えたらそもそもマイナスじゃないか)

しかしその存在は幻想。実際の教育現場で採用された例を、わたくしは知りません。

「じゃ、じゃあわたしが着てるコレは!?」
「本来の用途は水泳じゃありません。スポーツ用品ではなく……その……アダルトグッズに分類される商品ですわ」
「あ、あだると? それって、え、え、えっちな事に使う道具ってコト?」
小声の質問に、わたくしは首を縦に振ります。
「ええ。それもかなりマニアックな、ね……おそらく青梅さんのお母様は、成人指定のいかがわしいサイトから通販したのかと」

「ひゃ、ひゃあわわわわ……!!!」
頭から湯気を上げたように赤面する青梅さん。羞恥に取り乱し、確認するように自分の身体を触ります。その度にぺちぺちとおもちを叩くような幸せな音が鳴りました。

(あー、これ本当に知らなかったやつですわ)
2年も先輩のくせになんてウブな。見た目どおり純粋無垢でしたのね。

でもね。正直、似合うか似合わないかで言えば……断っ然!似合っているんです。
すべすべの柔肌の上にぴっちりフィットして、むっちむちの肉感を一層際立たせています。
安らぎを思わせるふくよかな魅力は、ちょっと眉の太い和風の顔立ちと絶妙にマッチ。
加えてサラサラの黒髪も、水着の白と対照的でより映えています。
まるで、お正月に福を授けてくれるおもちの神様のような、すっごく縁起の良いイメージですわ。
もし弥生時代にタイムスリップしたら、豊穣の女神として祀られてしまうかもしれません。

「……で、でも大丈夫じゃないかな? ほら、水着の機能さえ果たせばいいんだもん。きっとバレないよ。皆がルミちゃんみたいにアダルトグッズに詳しいわけじゃないし」
あ、さりげに失礼な事言いましたわね?

「透けますわよ」
「え?」
あーもう、遠回しな言い方はやめです。
「エッチを目的に作られたその白スクは、パッドが入ってません。よって水に濡れるとスッケスケで、バストのトップもくっきり丸わかり! 透け乳首バッチコイの仕様ですわよ! いいのっ!?」
半ば脅すように凄みを効かせて、わたくしは警告しました。

「えっ? えええ〜〜〜!?」
いよいよ頭を抱え困惑する青梅さん。本気で今まで気付かなかったなら、相当な天然ですわね。

「ね、ねえ……実はわたし、ちくび引っ込んでるんだけど、それでも目立つかな?」
「立体的に浮き上がるのではなく、光学的に透けるって意味ですわ」
「うそぉ〜? それ困る……大っきいのがバレちゃう」
(大きいんだ……)
「さきっぽの色、薄めなんだけど……それでもダメかな?」
「さやちゃんだけなら隠し通せるでしょうね」

なんでわたくし、こんな状況で青梅さんの乳輪情報を取得していますの?

「うう〜、おかあさん、娘の水着を何てトコで買ったのぉ……」
「青梅さん、お母様を責めるのは筋違いではなくて?」
常識的に考えれば、ここまで豊満なおっぱいが入るスク水なんて市販されてなくて当然でしょうに。

今着ている“アダルト用”を見ても、たぶんHカップ程度まで入るよう拡張された仕様です。
しかし当然、青梅さんのLカップにはまだまだ小さい様子。やっとギリギリ収まってる感じで、襟ぐりでは谷間のお肉がムチっと双丘を作っています。

(竹上さんの方が僅差で大きいと思っていましたが……こうして見ると、青梅さんの方が迫力ありますわね)
ちょっとふくよかな青梅さんはアンダー75cmくらいあります。すなわち、カップのワイヤー径も大きいという事。
前方への突出は竹上さんのロケットおっぱいに及びませんが、底面積が広い分、純粋な体積では勝っていましたのね。
おそらくサイズは竹上さん110cmに対し、青梅さんはもう2〜3cm上回る、ってとこかしら?

「あれ? ちょっと待って。その白スク、去年買ったってことは、まさか中1のプール授業にも着てたんですの?」
「ううん。学校には紺色のを持ってったよ」
紺色あるんかーい!

「処分品で安かったんだって。紺と白のセットが1着分の値段で買えたって、おかあさん得意気に言ってた」
「だったらなんで今日に限って白を?」
完全に自己責任じゃないですの!

「だって一度は着ないともったいないし……たぶん、来年には着れなくなっちゃうから」
ははーんなるほど。青梅さんのおっぱいは中2の現在も発育真っ盛り。Lカップでは飽き足らずグングン膨張を続けているワケですか。いやいや、うらやましい限りで。

だからって、つまらない嫉妬で先輩を見殺しにするわたくしではありません。
そもそも、ここまで天然ドジっ娘だと妬む気も起こりませんもの。

「……どうぞ。使ってください」
わたくしはそう言って、どら焼きの皮にも似た白い物体を差し出します。
「これで隠せば透けは防げますわ」
「ほんと? い、いいの?」
「ええ。わたくしが持っていても、よこしまな誘惑に苦しむだけですから」
「???」

こうして、手に余っていたパッドは先輩のピンチを救うために役立ちました。

ヨシミさん、やはりあなたは我が家が誇る優秀な家政婦よ。
でもこんな状況まで予想していたとしたら、予知能力者か何かですの?

「ありがとうルミちゃん! 本当に助かったよー」
パッドを装着した青梅さんが笑顔でお礼を言います。
「ど……どういたしまして」
しかしこれ、本当に助かったって言えるのかしら?

ただでさえパンパンなところにニップレスとして差し込んだパッド。その形はLカップの広大な半球面にくっきり浮いて、かなり目立ちます。
言わば「ここが乳輪よ♥」と公表しているに等しく……見方によっては、その盛り上がり自体が大きな乳輪にも見え……端的に申し上げて、実にいやらしいですわ。

まあ、重要なのは生の乳輪が透けないことですし。本人が良ければそれでOKってことで。(わたくし、無責任かしら?)

「おーおー、やはりスク水事情に悩まされとるのは、どこも同じじゃの♥」
「「!」」
そこへ突然現れたのはかえでちゃん。
すでに白装束から着替え、水着の上に半袖体操着の状態です。(さっきのチホちゃんと同じく)
わたくし達のやりとりをどこから聞いていたのでしょう? 不敵に浮かべた笑みから察するしかありません。

「あっ、かえでさーん。着替え終わったよっ」
そこへナッちゃんをはじめ、皆も教室から出てきます。

「ならば行こうかの。川原はすぐそこじゃ。チホが待っとるぞ」
そう。着替える必要のなかったチホちゃんは先に川原へ向かい、カツラを返却しに行っています。

ところで、かえでちゃんがなぜドッキリ終了後もこんな喋り方をしているのかと言うと……

チホ「カエデ、おめーアタシの胸揉みすぎた罰ゲームとして、今日一日その口調な」
かえで「やれやれ仕方ないのう。付き合ってやるわい」

ってやりとりがあったからです。
即OKしているあたり、本人も楽しんでるフシがあるみたい。(しかも今はチホちゃんがいないのに、律儀に実行してるなんて)

「かえでさん、その喋り方かっこいー」
「そうかい? 照れるのぅ」
こういうの、“のじゃロリ”って言うのかしら? ニッチな嗜好を攻めてきますね。
まあ、かえでちゃん古風な外見が妖怪っぽいので似合ってるんですけどね。

「本当は妖怪じゃないのー? だったらナツが退治しちゃうぞ☆」
そしてまた指をわきわき動かすナッちゃん。どんだけおっぱい揉みたいんですの?

ところでさっき「古風」と言いましたが、それはおかっぱの髪形や顔立ちのせいだけではありません。

ここでチホちゃんを思い出してください。彼女は2回りほど大きな体操着を着ていたため、裾の高さがちょうど股に来ていました。(股下0cmスカート状態)
一方、かえでちゃんの体操着はチホちゃんほどオーバーサイズではありません。それを身長の割に大きな胸が押し上げると……さて、どうなるでしょうか?

そう。体操着の裾は股よりも上、腰の高さに来ます。その下に紺のスク水を着ているとなれば……

おわかりですね? アレです。時代を超え語り継がれるフェチシズム衣装……90年代に絶滅したと言われる女性用体操着“ブルマー”に見えるのです!

もちろんわたくしもブルマーの現物を目にしたことはありません。(漫画で知りました)
でも実際こうして、かわいい生のおしりを包んだ状態を見ると
(うう……言いようのない劣情がムラムラと沸き立ってきますわね♥)

とにかく、今のかえでちゃんはブルマーを穿いているように見え、そのレトロな魅力が彼女自身の雰囲気と合致していたのです。
時代を知る者が見れば、ノスタルジックなエロスを想起させたのではないでしょうか。
まあ、それを21世紀生まれのわたくしが熱弁するのもおかしな話ですが……



「川原にはとがった石もあるからね。普通のサンダルじゃ危ないわ」
校舎を出るとき、仁科さんが履物を用意してくれました。
「はい、川遊び用のクロックス。流されないようベルトが付いてるのよ。消毒済みだから好きなの履いてね」
カラフルな樹脂製のサンダル。履くのは初めてで、何だかおかしな感触でした。

「あと、日射病も怖いからねー。帽子をかぶって行きましょう。無い人は貸してあげるわ」
にこやかな笑顔でてきぱきとした対応。さすがは観光課の職員です。
(仁科さん、童顔でのんびりした印象だけど、仕事上はきっと有能ですのね)

いろいろドタバタしましたが、いよいよわたくし達一行は梁漁に向かいます。


〜〜〜〜〜〜〜〜


「おねえさーん、あざっしたー! コレお返ししまーす」
よく日焼けした天真爛漫な少女から、銀髪のカツラを返却される。

「お役に立てたなら嬉しいよ。ドッキリはうまくいったみたいだね」
「え? どーしてわかるんスか?」
「ここからも聞こえたよ。『きゃあー』って甲高い悲鳴が」
「なーる。いつきちゃん、ガタイに見合ったでっけー声だったからなあ」
少女は思い出しながら頷く。

「あ、いつきちゃんてのは悲鳴を上げたゲストの子でね。小3なのにすっげーデカイんスよ! 170はあるかなあ」
「バストが!?」
「アハハまっさか〜☆ もちろん身長っスよ」
「あっ……そ、そうだよね」
とっさに訊いてしまったけど、さすがにありえないか。
そもそも小3って言ってたしな。身長170cmも十分驚きに値するけど。

「バスト170なんてさすがに村でも見たこと無いっスよ〜」
「いやあ、ここに来てから胸の大きさに驚かされっぱなしでね。いつの間にかスケールが狂っちゃったよ」
「え〜? そう言うおねーさんも相当大きいじゃないっスか。珍しいって程じゃないけど、村の平均よりは上っスよ。ちなみにおいくつですか?」

尋ねられたのは年齢? バスト? これだから日本語は難しい。ボクは両方答えることにした。
「17歳だよ。バストはQカップ」
「おお〜! じゃあこれからまだまだ大きくなりますねっ♥」
「どうかなあ? ボクの胸、今は成長が止まってるから」
「休眠期っしょ? よくありますって〜」
「ちなみにQカップになったのは15歳の頃」
「うっわー! それならこの村でもレアだわぁ。村の中学で一番デカい先輩もそんくらいっスよ」
少女はそう言い、ボクの胸をまじまじと見つめる。

「ん?……えええーーーっ!?」
いきなり驚かれてしまった。

「おねーさん、このTシャツ! 変わった柄かと思ったら……桜木ミリアのサインじゃないっスか!?」
「え? そうだけど。もしかしてキミもファン?」
「イエスッ! アタシも今一番注目してんスよー! いやー、横に引き伸ばされてて、最初わかんなかったわ。すっげー!」
なんて奇遇。こんな田舎の小学生が同好の友だったなんて。

「よく知ってるね。彼女、グラビアモデルとしてはまだ新人だよ?」
「うん。でもミリアちゃんはこれから絶対ブレイクするって予感してますっ! あっという間にテレビ出演バンバン増えますよ」
「ボクもそう思う。彼女は数年以内に、レギュラー番組をいくつも抱えるほどビッグになるだろう……ムネも大きいしね」
「大っきいですもんね!」
「バスト93cmという公称をどう思う?」
「ありゃ〜逆サバっしょ。実際は1mありますって〜☆」
※(実際、桜木ミリアのバストは100cmある。1年後、彼女は人気タレントとしてTVクルーを連れて千々山村を訪れることになる)

「このサイン、書いてもらったのは昨日なんだ」
「あ! もしかして、池袋で開かれたファースト写真集発売記念サイン会っスか!?」
そんなイベントまで把握しているとは。この子もかなり熱心なファンだな。

「うらやましー。アタシも行けるモンなら行きたかったよー!」
いや、キミみたいなとんでもないボディの小学生が行くのは危険だぞ? ボクも行列に並んだ時、周囲の男性からかなりの視線を向けられたからね。

「池袋では他にもいろいろ買い物したよ。このカツラもそうなんだ」
さっきの銀髪のカツラを掲げて見せる。本当はこれ、オプションでキツネの耳も取り付け可能なのだ。
「日本のコスプレ衣装はクオリティ高いねえ。ボクの国でもオタクカルチャーは割と盛んだけど」
「ええっ!? おねーさん日本人じゃなかったの?」
「ん? そうだけど」
なるほど、同じアジア系じゃ見た目で分からないか。

「あ、スミマセンっ! おしゃべりに夢中で自己紹介も忘れてました。アタシ、桑畑チホっていいます」
「ボクは観光客のセイル。台湾系のシンガポール人だよ」
「言われてみれば、瞳の色もちょっとブラウンですね。アジアンビューティってカンジで憧れるなー♥」
「ふふふ、ありがとう」
ボクらは改めて握手を交わす。向き合ってみると身長はほぼ同じだった。

「しかしセイルさん、日本語すげー上手っスね」
「日本の文化が好きで勉強したんだ。でもやっぱり、女性の一人称は『ワタシ』がふさわしいのかな?」
「いやいや、ボクっ娘おねーさん、かっけーっス! どうぞそのままで」
日本語はほとんどアニメで覚えたからなあ。「ボク」呼び気に入ってるんだけど、不自然かは分からないや。

「いやー、外国人のお客はたまーにお見かけするけど、直接話すのは初めてで緊張しちゃうなー」
「外国人がこの村に来るのかい?」
「一応温泉ありますから。あと、ブラ買いに来る人っスね。ボニータは知る人ぞ知る名産品らしくて」

(ああ、ボニータか)
事前に調べた情報によると、千々山村の個人商店によるプライベートブランドの下着。特にブラジャーはKカップ以上を対象にした特別製で、性能は折り紙付きだという。
(ボクも一着仕立ててもらいたいな。旅の帰りにぜひ寄ってみよう)

「しかし、どーしてウチみたいな田舎に来てくれたんスか? アタシだったら最終日まで東京観光しちゃうなー」
「日本人のSkype友達と千々山温泉で合流するんだ」
「あ、もしかしてぇ〜♥ カレシっスかぁ?」
「いや、女性だよ。一足先に昨日この村に着いてるはずさ」
ニヤけたチホくんの勘繰りに、ボクは苦笑して答える。

「ボクより5歳も年上だけど、信頼し合えるパートナーなんだ。ボクらは同じテーマを別のアプローチから研究している」
「研究? セイルさんまだ17歳なんじゃ……ハイスクールっスよね?」
「いや。ボクはskip grade(飛び級)して、今、大学院生だけど」
「ひゃー! セイルさん天才少女だったんだ! どーりで、知的なフンイキがすると思いました」
驚かれてしまった。そういえば、日本では飛び級制度が一般的じゃなかったっけ。

「研究って、もしかしてさっきの石に関係するコト?」
「うん。本当にありがとう。キミたちが見つけてくれた4個のうち、3個はただの石英だったけど、残り1個がどうやら“当たり”だ」
「えっ、何? あれってそんな価値あるモンなの? まさか宝石っ?」
チホくんが目の色を変えて尋ねてくる。

「おっと、今さら返せないよ。その代わりこれをプレゼントしよう」
そう言ってボクは、昨日買ったばかりの写真集を差し出した。(安心したまえ。全年齢向けだ)

「うおーっ!? ミリアちゃんの写真集? こんな高価なモノ受け取れません!」
「遠慮しなくていいよ。実はボク2冊買ったんだ。複数購入した者には、2つ目のサインを好きな私物に書いてもらえるんでね。このTシャツにしてもらったワケさ」

昨日のサイン会の様子を思い出す。
そういえば、婚姻届にサインを求めてドン引きされたヤバいファンがいたなあ。

「うっわリッチな……でも、そういうコトじゃなくて!」
「?」

「アタシはミリアちゃんの正当なファンでいたいから! こづかい貯めて自分の金で買います。
村の本屋はショボいから入荷するかわかんないけど……注文して買います。
その1冊が布教用なら、もともとファンのアタシには不要です。
シンガポールに帰ったら、向こうの友だちにプレゼントしてください。
そうしてミリアちゃんの人気が国際的に広まった方が、アタシも嬉しいから!」

惜しむそぶりもなく、チホくんは笑顔で言い切った。
(……驚いた!)
彼女はただのミーハーじゃなかった。小学生にしてなんという心意気だろう。
軽佻浮薄なギャルっぽい見た目に反して、筋の通ったファン精神。正直心打たれた。

「すばらしいっ! チホくん、ボクは感動した!」
「じゃあ写真集の代わりにセイルさんのおっぱい揉んでもいいっスか?」
「いいとも。さあ来いっ!」
ボクは両腕を広げ彼女を受け入れる!

「なにやってんの? チホ」

つづく