千々山村自然教室

唐鞠 作
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突然聞こえた声に、二人ともピタリと動きを止める。
おしゃべりに夢中で気付かなかったけど、いつの間にかすぐ横にもう一人女の子が来ていたんだ。
(勢いに任せすぎたね。反省、反省)

「よっ、アズサじゃーん☆」
今までのやりとりを笑ってごまかし、チホくんは何事もなかったかのように対応する。

「こんにちは。そちらのお姉さんは?」
くりんとした可愛い瞳をボクに向ける女の子。彼女も村の小学生かな? チホくんとは対照的に、まじめで品行方正な印象だ。

「あ、紹介するね。こちらはセイルさん。外国人観光客だよ」
「はじめまして。シンガポールから来ました」
ボクがあいさつすると、彼女も上品なお辞儀で返してくれた。
「な、Nice to meet you. My name is Azusa Yamaguchi. うぇ、Welcome to our village.」
たどたどしい教科書英語であいさつするあずさくん。

それを見てチホくんがどっと笑う。
「おいおいアズサ、ここぞとばかりに英語かよー。セイルさん日本語ペラペラだぜ?」
「い、いいじゃん! こんな時でなきゃ使わないんだから」
からかわれて赤面するあずさくん。積極的に英語で話そうとするなんて、勉強熱心な子なのかな?

「そっか。チホは今日、自然教室だったね。私は去年済ませた」
「今年からゲストの小中学生呼ぶんだぜ。それが驚きでさー。みんな、ウチの村人に負けないくらいムネでっけーの☆」
「えっ! 本当かい?」
ボクはドッキリに立ち会わなかったから見ていないけど。

「小3や小4もいたけど、アズサより大きかったぜー?」
「わ、私くらいが普通だもん」
ぷーっとふくれて胸に手を当てるあずさくん。
いやいや「普通」って……キミだってDかEはありそうだぞ。

「チホやかえでが大きすぎなんだよー」
「そうなのかい?」
「んー、まーそっスね。去年までカエデの一人勝ちだったけど、6年になってからアタシが追い越したカンジかな」
「もっとも私たちの学年、男女5人ずつしかいませんけどね」
なるほど。やはり過疎の村なんだなあ。

「セイルさんだって今Qカップってことは、小学生の頃からデカかったっしょ?」
「いや。ボクは成長始まったの13歳だから。それから2年で一気にQまでいった」
「「すっごーい!」」
う〜ん、我ながら凄い急成長だと思うけど。千々山村民に驚かれるなんて光栄な事かな?

「そうそう。もうすぐカエデがゲスト参加者を連れてここに来るんだ。どんなおっぱいか気になるだろ? アズサも見てけよ」
「いいよ。別に気になりません。どうせ私は小さいですよーだ」
プイとそっぽを向くあずさくん。
おいおい、小学生としては十分なバストを持っていながら、そのセリフはないだろう?
※(2年後、山口あずさは100cmのKカップにまで成長し、ボニータVitaの下着モデルを務めることになる)

「これから私、郷土資料館行くの」
「は? しりょーかん?」
「もう! 社会の授業で見学に行ったでしょ?」
「あ、マサトん家の寺か」
「正確にはその隣ね。まあ、住職さんが管理されてるからお寺の一部みたいになってるけど」
「あんな古道具ばっかあるトコに、何の用だよ?」
「もちろん自由研究よ。夏休みの宿題」

その一言に、チホくんの顔がサーッと青ざめていく。
「あら〜、どうしたのチホ? さてはまだ何も考えてないんでしょ〜?」
そこをイジワルな笑みで責めるあずさくん。

「やっべ……どーしよ……すっかり忘れてた」
図星だったようだ。
「まあ夏休みもあとちょっとだけど、がんばることね。じゃーねー☆」

「ちょっとまって!」
バイバイと手を振って去ろうとするあずさくんを、ボクは呼び止める。

「なんですか? セイルさん」
「郷土資料館には過去の記録がたくさんあるのかい?」
「はい、それがメインですね。古文書とか、出土品とか、古〜い白黒写真とか」

「じゃあ、『×××××の××』もあるかな?」

「あっ、それ聞いたことあります。なんかお寺の宝物らしいけど、住職さんに頼めば見せてくれると思いますよ」
ああ、今日はなんて運が良い! あの石が見つかったばかりか、最重要な手がかりの所へ案内してもらえるなんて!

ゲスト参加者達のバストも気になるけど、ここはお願いするしかないだろう。
「あずさくん、お願いだ。ボクも一緒に連れてってほしい」
「?……はい。いいですけど」
きょとんとした顔に疑問符を浮かべながらも、案内を引き受けてくれた。

「ありがとう! 千々山の小学生はみんな親切だね」
両手であずさくんの手を取り、感謝を込めて握手する。上下に揺すった腕に合わせ、発育途上のふくらみがプルプルと弾んだ。

「セイルさんまで。あんな地味〜なトコに何の用っスかー?」
ふて腐れた声のチホくん。都会に憧れるキミには、歴史を紐解くロマンがまだわからないかな?
「“本物”と見比べるのさ。キミたちが見つけてくれた石をね」


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農村風景を描いた作品で有名なバルビゾン派の画家、ジャン=フランソワ・ミレー。
代表作は『種をまく人』、『晩鐘』、『落穂拾い』など。最後のが最も有名だろうか。
自宅のリビングにその複製画(レプリカ)が飾られたとき、当時14歳の私は言い表せない共感を覚えた。
名前の響きが同じ「ミレイ」だという、そんな子どもっぽい理由ではないだろう。

今になってわかる。
私はミレーの絵に登場する農婦たちに、自分と共通の“ねがい”を見出していたのだ。
すなわち豊穣への願い。豊かな実りを祈る、ひたむきなを憧れを。

それを自覚したとき、思わず胸に触れてみた。
(……ない)

少女の頃から一向に発育しない私の胸。中学の頃からAAカップのブラを満たすことができないほど平らで、大学4年生となった今もそれは変わらない。
発育不良というわけではない。身長は169cmと成人女性の平均を上回っているし、筋力の衰えも生理不順もない。少しやせ型なことを除けばいたって健康体だ。
それでも、乳房だけはいつまで経っても膨らむ気配を見せない。
母も叔母もごく平均的なバストだから遺伝とも思えない。11歳年下の従妹にも、おそらく追い越されてしまっただろう。

同級生に取り残されていく中、私はいつも疑問だった。
(どうして私の胸だけ発育しないんだろう……?)
きっと何か原因があるはず。そう思い込んだ時、私の興味は自然と医学に向いていた。
医療機器メーカーの営業部長である父は、私が医学部を志していると聞くと喜び、応援してくれた。

そして始まったストイックな日々に、豊かな胸など不要だった。
“彼女”のように天才ではない私は、ただただ勉強に打ち込み努力を重ねる。
刻苦勉励の日々はコンプレックスを幾分か忘れさせてくれた。
だけど、リビングの複製画を見るたびに思い出してしまうのだ。
医学を志した初心。「胸を大きくしたい」という不純な動機を。

今年の初夏、千々山村の噂を聞きつけた私は、居ても立ってもいられず旅行の計画を立てた。
平均バストMカップ以上。メートル超えは当然で、カップサイズがアルファベット後半に突入することも珍しくないという、奇跡の村。
乳房の発達をテーマに研究論文を書くにあたって、これ以上の実地調査(フィールドワーク)はない。
そのためなら他学部より短い夏休みを惜しみなく費やそう。
他学部の男子学生、中山昇一に接近し、就職活動も兼ねた彼の帰郷に同行する承諾を得た。

××県の山深い千々山駅に降り立ち、まず五感に飛び込んできたのは美しい自然だった。
光も、風も、土も、木々も……天然の全てが心地良い癒しに満ちていて、「ここには不自然なものなどありませんよ」と、オールナチュラルを訴えてきた。

だけど、騙されるものか。
不自然な現象には必ず不自然な原因がある。
人体の異常な発達には、ホルモンバランスなど何らかの内分泌系が関わっているはずだ。あるいは、特殊な養分やミネラルを摂取し続けた結果かもしれない。
原因は水? 農作物? 家畜? はたまた未知のキノコや山菜?

奇跡を疑い、科学のメスで暴こうとする“冒涜者”。
そんな私だから……
(温かいもてなしが逆に心苦しい。こんな小さな胸にだって、痛む良心はあるの)

助手席から景色を眺めつつ、そんな事を考えていたら、思わず口に出してしまった。

「……加藤さん」
「なっ、なんでしょうか?」
「私の胸、どう思いますか?」
「!!!?」

キイイーーーッ!!!

突然の問いかけに驚いた加藤さんが、急ブレーキを踏む。
もちろん今のは私が悪い。普段なら絶対にありえない、痴女みたいなセリフを漏らしてしまった。

「ししし、失礼しましたっ!」
加藤さんは一旦ミニワゴンを路肩に停車させる。

その横を、小学生くらいの女の子が自転車で追い抜いて行った。通り過ぎる瞬間、怪訝な表情でこちらを見る。
ああ、やっぱり大きい。Cカップくらいかしら? それに比べて……

「私の胸、小さいでしょう?」
「あっ、あ、ままっ、わわ、っま……」

決してこちらを見ず、金魚のように口をパクパクさせる加藤さん。顔を真っ赤にして、しどろもどろの答えすら紡げない様子。
さっきまでチラチラ見ていたくせに。シートベルトすら浮かせそうな平たい胸を。

私もどうかしてるわ。旅の恥はかき捨てと言うけれど、こんなはしたない話題を自分から振るなんて。
でもなぜか……後ろめたくて、白状してしまいたかったの。

「もうお気づきでしょうから、ぶっちゃけますね。私の研究は、なぜ千々山村の女性は胸が大きいのか? その原因を科学的に突き止めることです」
「…………」
「農作物などを集めているのも、特殊な成分が含まれていないか分析するためです」
「…………」
「フフッ、可笑しいですよね? 私、胸が大きくなりたくてこの村へ来たんです」
自嘲の笑みを投げかけると、

「しっ、志木沢さんはっ!」
「!」
意外にも、加藤さんは真剣な表情で返してきた。突然の大きな声に驚いてしまう。

「ど、どんなムネでも、そのままでも……じゅうぶんっ、す、す、素敵ですよっ!」

しばしの沈黙。
蝉の声しか聞こえなくなった車内で、自分自身の心情を探る……
不覚にも、ときめいてしまったかもしれない。慰めじゃないことはわかる。不器用な彼の言葉は疑いようもなく本心だった。

でも違うの。ごめんね。私は決して異性の目を惹きたいわけじゃない。
あなたのやさしさを受け入れるのは、決して私が望むソリューションにはならないの。

「……ありがとう。加藤さんって、やさしい人ですね」
情けないことに月並みなお礼しか返せなかった。だけど、
「よぉーし! こうなったら俺、志木沢さんの研究にとことん協力しますよっ!」
照れ隠しなのか、加藤さんは威勢よく宣言してくれた。

「じゃあまず、うってつけの人を紹介しましょう」
「えっ?」
「畑作仲間でね。都会からUターンしてきた女性です。今は実家でキャベツ作ってるんですが……彼女、村でもかなり胸が大きい方なんですよ。いや、見たらホントびっくりすると思いますよ」

女性の胸のことを話すなんて、普段なら幻滅しているだろう。
だけど加藤さんは今、私の悩みに寄り添い、協力してくれている。その思いだけは真っすぐ伝わってきた。

「どうです? 千々山高原キャベツはちょっと名の知れた特産品だ。そのサンプルをいただくついでに、いろいろインタビューできるんじゃないですか?」
クスッと小さく笑ってから、私は答える。
「ぜひお願いするわ」

加藤さんは頼もしい表情で頷くと、再びアクセルを踏み出した。


〜〜〜〜〜〜〜〜


川原に向かう間、わたくしは考えていました。

先頭を歩くかえでちゃん。未成熟なおしりを観察すると、下半身にはスク水が無理なくフィットしています。
ナッちゃんみたく、胸に合わせたオーバーサイズを着ているようには見えません。身長140cmに向けた正規品でしょう。
しかし、白装束姿のときに見たかえでちゃんのバストはIカップ……少なくとも、あまねちゃんと同じ位あったはず。

ではなぜ今、かえでちゃんは平気でスク水を着ているのでしょうか?
身長がより小柄な分、胸周りのキツさはあまねちゃん以上のはずなのに。

ついさっきも、「スク水事情に悩まされとるのはどこも同じじゃの」と本人が言っていました。
この村でも、着用に何らかの困難が伴っているという事。体操着の下は一体どうなってるの?

(小玉スイカほどもある半球を収納するなんて、どんな妖術を使ったのかしら?)
いやいや! いくら雰囲気が妖怪っぽいからって、それじゃナッちゃんと同レベルの発想ですわ。
現実的に考えましょう。
(もしかして村の学校では、すごく伸縮性のよい特殊素材のスク水を採用しているとか?)

そんな事をあれこれ考えていたら、ものの数分で川原に到着していました。

「おーいチホー、待たせたのー」
かえでちゃんが川原で待つチホちゃんに手を振ります。
「おーう……」
でも、岩に座ったまま手を振り返す彼女は、どこか元気がなさそうでした。

「あのお姉さんはどこじゃ? ちゃんと返せたか?」
「あー……カツラは返して、お礼も言ったよ。そのあとアズサが通りがかってさ。おねーさんと一緒に行っちゃった」
チホちゃんがそう言って指差した先、道の向こうへ小さく消えていく2つの人影が見えました。

※(この時、越出馬ルミはバストサイズで勝てる同学年の女子をみすみす見送ったことになる。もしも山口あずさに出会えていれば、傷ついたプライドを少しは回復できたかもしれない)

「あずさが?」
「うん。郷土資料館まで案内するんだってさー……」
「なんじゃい、テンション低いのぅ。ほれ、いつものバカっぽいチホはどうした?」
親友を心配するかえでちゃん。口が悪いのも友情の裏返しでしょう。

「……やっべぇよ〜、アタシ自由研究すっかり忘れてた。何も考えてねーよー」
ああ、意外性がなさすぎて脱力しましたわ。チホちゃん、いかにも夏休みの宿題を貯めそうなキャラですもの。

「かっかっか! なーんじゃそんな事かい。ワシはとっくに終わっとるぞ」
「ちくしょーいつの間に! ほとんど毎日アタシと遊んでたのに、何研究したんだよぉ?」
あー、この2人本当に仲が良いですのね。さすがはおっぱい揉み合う仲。

「何言っとる? 午前中に見せたではないか」
「へっ?」
「仕方ないのぉ……もういっぺん見るか?」
妖艶な笑みを浮かべ、かえでちゃんは体操着の裾に指をかけます。

ぷるんっ!

体操着の下から現れたのは、若々しい弾力に満ちた小6のバスト。
それは本来収まるはずもないスク水から、谷間や下乳をはみ出させていました。

さて今のわたくしの実況、違和感を覚えませんでしたか?
「スク水から 下乳が はみ出す」
ユークリッド幾何学では想像し得ない不可思議な現象。その答えこそ……

「ほぉれ、とくと見ぃ♥ これがワシの自由研究よ」

改造スク水です!
胸の中央から脇腹にかけて、アルファベットの「Y」を逆にした形で水着をカット。その裂け目を手芸用アクリル紐でゆるく縫い合わせ、ネット状に編んでいました。

こうして拡張された胸部に、かえでちゃんのバストは収まっていたのです。
露出した谷間と下乳には黒いアクリル紐がやんわり食い込み、重量感をアピール。
ひし形の網目ひとつひとつから、みずみずしい乳肉がぷっくり盛り上がっている光景は、とんでもなく煽情的でした。

「かっけえーーー!!! かえでさんその水着、忍者みたいだねっ☆」

あっ! それです! ナッちゃんの表現は言い得て妙。
斜め格子状に編まれた黒い紐は、忍者の鎖かたびらをイメージさせました。和風ロリータのかえでちゃんに、くのいちコスとの相性は言わずもがな。

そしてあのカスタマイズ、危うさはそれだけではありません。
いいですか? 下乳をネットに逃がすということは……乳房が垂れていないからこそ可能なのです。乳輪の位置が下向きになってしまった大人では、あのデザインを着ることはできません。
すなわち、乳輪がツンと上向きな成長期の女児のためだけに、あの水着は作られたということ。
着ている事自体が“若さ”の証明。重量に負けない張りと、更なる成長性を物語っているのです!

「ええじゃろ? 改造してもスク水には違いないからの。校則違反にならんというワケよ。くっくっく☆」

してやったりの顔で勝ち誇るかえでちゃん。
ルールの網目をくぐるために、おっぱいを網目に食い込ませるなんて! こんな脱法行為、誰が予想するでしょうか?
しかも学用品をハサミで切るという背徳感が、さらに興奮を上乗せしています。

「「その手があったか……!」」

思いがけず、わたくしとチホちゃんのリアクションがハモってしまいました。
けれど、その意味は全く違うでしょう。
わたくしは「乳房を収める方法として」、チホちゃんは「自由研究のテーマとして」です。

そう。最も恐るべきは、あれを自由研究として提出しようとしていること!
つまり……



<以下、わたくしの妄想>

夏休み明けの9月初旬、千々山小の6年生教室では自由研究の発表会が行われています。
「次、奥野かえでさん」
「はいっ」
順番が回ってきたかえでちゃんは、てるてる坊主のようなラップタオル姿で皆の前に立ちました。

小学生の水準をかけ離れたふくらみは、その状態でもすでに著しく隆起しています。
実測はIカップでも、140cmの身長と対比すればJ以上のインパクトはあるでしょう。

「私は胸が大きいので、学校指定の水着がきつくていつも困っていました。そこで、胸の大きい人でも着られるように改造してみました」
あくまで研究発表としてハキハキ話すかえでちゃん。集まる視線に恥じらうどころか、イタズラを楽しむ小悪魔の笑みを浮かべています。

「それではご覧ください」
プチッとボタンの外れる音がして、惜しげもなくタオルを脱ぎ捨てる!



やめてぇえええ!!! 義務教育の現場でなんてコトを! 諸々のいやらしい要素が積み重なり、エロの数え役満ですわっ!

「かえでちゃんっ!」
竹上さんの声に、ハッと現実に引き戻されました。
そうですよね。さすがにこの悪ふざけは上級生として注意すべきですよね。

「すばらしい! 見事な工夫だわ。デザインも素敵」
ほめるんかーい!!!
今わたくし、心の中で盛大なスライディングズッコケをかましましたわよ!

「竹上さん、確かによくできてるけど……学校的にああいうのアリなんですか?」
おおっ、さすがあまねちゃんは常識人。

「え? 逆にどうしてナシだと思うの? かえでちゃんは一つもルールを破ってないよ?」
「はい……それはたしかに」
「公共のルールを遵守しながら、いかに不自由を解消していくか? こういう“問題解決力”を生活の中で養うことは大切じゃないかしら?」

ええごもっとも。一から十までおっしゃる通りですわ。
(でもどこか、どこか常識がズレてるのよぉ竹上さーん!)

さやちゃんもじーっと改造水着を観察しています。
「とても、さんこうになる……」
ええそうでしょう。胸以外が小さいという点では、この中で最もサイズに困りそうな体型ですもんね。

「あのう、やっぱりこの村も授業ではスクール水着着んとアカンのですか?」
いつきちゃんの質問に、竹上さんは
「うん。中学からは私の着ているセパレートタイプが解禁されるけどね」

ええっ? 竹上さんのアレ、スクール水着でしたの?
言われてみれば確かに紺色ですし……
あ! よく見たら胸に「2年 竹上」と名札が付いています。バストに対してあまりに小さいからワンポイントかと思いましたわ。
あれじゃ盛り上がりが急すぎて、正面からは読み取りづらいでしょう。地面に対する名札の傾きが45度をきっていそうです。

「中学にもなればほぼ全員成長期を迎えるから。1年で10cm以上成長する子も珍しくないし、上だけ買い換えられるよう配慮されたの」
「はぁ……そうなんですか」
いまいち共感できない様子のいつきちゃん。
無理もないでしょう。彼女の場合バストだけでなく、身長も含め急成長してきたんですから。

「トップスを分離させればサイズも幅広く展開できるからね。地元の縫製所でバスト110cmまで既製品を作っているのよ」
は? 今明らかに中学生向けと思えない数値が聞こえんたんですけど。

「うわー! さすが中学生ですね。見て見てー、ナツが日陰に入れそう☆」
竹上さんの足下にしゃがみこんで、Mカップバストを見上げるナッちゃん。
って! あまりしゃがむと大事なところが見えてしまいますわよ。下半身ブカブカなんだから!

「ったくよー、中学からじゃ遅すぎだよな。小学校でもセパレート解禁してほしいぜ。なー、サヤ?」
「うん。わたしも……ひとごとじゃない」
「確かにね。小学生でも発育の早い子はいるし。学校も柔軟に対応すべきだわ」
同意する竹上さん。
「そうそう。おっぱいが柔軟に対応すんのも限度があるっつーの」
うまいこと言いながらチホちゃんは体操着を脱いで、最後に水着姿となります。

「ほら〜、アタシなんてこんなぎゅうぎゅうに詰め込んでんだぜ?」

(こ、これは!?)
一見ごく一般的なスクール水着。しかし、どこか違和感があります。

胸元でひしめく圧倒的質量は、ナイロンの光沢も艶やかに布地をぴっちり張り詰めていました。
さすが「Iカップがきつい」と言うだけのサイズ。圧縮された現状ですら、今のわたくしに匹敵しそうです。

一方、下半身を見てみると、ナッちゃんほどではないですが少し布余りな様子。
ウエストに至っては、布地との隙間に空気が入ってブカブカです。
あら? でも股間の位置は合っているから、縦方向にはフィットしていますわね? 緩いのはあくまで横方向だけ……

そこでようやく気付きました。
デザインこそ普通ですが、あのスク水は肥満体型……もといぽっちゃりさんのための、『ゆったりサイズ』だということを!
(これは実際に市販されています。ぽっちゃり小学生は巨乳小学生ほど珍しくないから、メーカーも需要を見込んでいるのです)

つまりチホちゃんのバストは、肥満体型用のサイズを着てもあんなにキツキツになるという“贅沢な悲劇”を物語っているのですわ!
そもそも、露出度と興奮は無からずしも正比例しません。本人にはつらいでしょうが、スク水にぎっしり詰め込まれたおっぱいは、ときに谷間や下乳よりセクシーに見えるのです!
加えて、自由奔放なギャルが素直に校則を守ってスク水を着ていることに、ほほえましいギャップ萌えを感じます♥

物量(おっぱい)と正攻法(正規スク水)でここまでの破壊力! かえでちゃんが魅せるフェティッシュなエロスにも決して引けをとりません。
さすがは小学生日本一……わたくしを負かせただけのことはありますわ!

「セパレートなら上下それぞれ合ったサイズが選べるのによー」
腰周りに余った布をつまみながら、チホちゃんは不満を漏らします。

「チホはまだええじゃろ。去年デブってたのが幸いして、水着が伸びとるんじゃからの」
「おいおいカエデちゃ〜ん、バストサイズで抜かれたからって、人の過去をほじくるのは見苦しいぜ〜?」
ライバルのからかいを挑発で返すチホちゃん。
どうやら以前はふくよかな体型だったようです。オーバーサイズな体操着や水着は、胸に合わせたからではなかったのですね。

「えーっ? チホさん昔太ってたんですか?」
「うむ。ついこの春までな。体重70kgはあろうかという、丸々した体型じゃったぞ」
「うっせーなカエデ! けど、今じゃそれも思い出よ。たった4か月でこの通り、ナイスプロポーションに生まれ変わったのさ☆」
目の高さに横倒しの∨サインを掲げポーズを決めるチホちゃん。
こうして見ると手足もスラッと引き締まっていて、わたくし同様のモデル体型ですわね。太っていた頃というのが想像できません。

「いいなあ。ダイエット成功したんだ。何かコツとかあるの?」
えっ、青梅さん痩せたいの? あなたはそのままで良いんですのよ? おもちの女神様♥

「いや、特に何もしてないっス。ちょうど成長期に入ったからかなー。おっぱいに全身の脂肪がかき集められるカンジでしたね」
うわあ、参考にならない事この上無いですわ。
ていうか千々山村民のDNAはどうなってますの? 何よりも最優先に、おっぱいに栄養が回されるなんて!

「くっくっく、ワシゃ知っとるぞ。チホがそうなったのは、憧れのナッシュが結婚するニュースを聞いて、ショックで寝込んだのが始まりだとな」
“ナッシュ”って若手俳優の夏目俊のことですわね。この春、年上の女優との結婚が騒がれたという。

「あーそうだよ悪ぃか!? 失恋は女を綺麗にしたんだよ。それにナッシュはもういーの。今アタシが一番推してるのは、桜木ミリアだからさ!」
「ふふっ、やっとハイテンションなチホに戻ったようじゃの」
「!」
「宿題のことはひとまず忘れるがよかろう。今は皆で魚捕りを楽しもうではないか」
童顔に合わない大人びた微笑みで、かえでちゃんはこの閑話を締めくくります。

なるほど、憎まれ口はチホちゃんを元気づけるためでしたか。友情を見せつけてくれますわね。
それを初めから信じていたかのように見届けていた仁科さんは、腕組みしてうんうんと頷いていました。
当然、組んだ腕に乗っかったおっぱいがすごい迫力! ひとつ頷くたび、あごの先が胸元の双丘に触れそうでした。

「よーし、じゃあ皆そろったところで、いよいよ川に入りましょーう!」
「「「「「「「「「おー☆」」」」」」」」」

つづく