千々山村自然教室

唐鞠 作
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 もし前世というものがあるなら、私はどんな功徳を積んだのだろう?
 夢にも描けない贅沢な光景が、目の前で繰り広げられている。それこそ、まばたきするのも惜しいほどに。

 とてつもないバストの持ち主による、至近距離生着替えショー。それが3人同時進行なんて!
 逆に困るわ。眼福はそんなに一気食いできない!

(ああ……目が3つあればいいのに)
 いや、3つでも足りないか。6つ要る。各対象を両目で見なくては立体感がつかめない。今鑑賞しているのは、まさにその“立体的迫力”こそ重要だから。
 一瞬一瞬があまりにも貴重で、見逃さないためなら、いっそ阿修羅かケルベロスにでもなりたかった。



 視界の右側では、はるちゃんが何の躊躇もなくTシャツを脱いでいる。

 下半身はすでに下着一枚。金魚の絵柄がかわいい女児用ショーツだ。
 裾をまくるため腕を交差させれば、りっぱな谷間が一層深まる。胸にプリントされたキャラの顔がぐにゃりと歪んだ。
 そのまま、ばんざいするようにTシャツを脱ぐと、日焼け跡も鮮やかな上半身が露わになる。ぷるるんと弾む双丘は、7歳に到底見合わない豊かさだった。

(胸だけじゃなく、身長とかも……全体的に発育良好ね)
 早生まれの小2にしては、もとより大きめの体格。それを差し引いても、Cカップの果実はひときわ不釣り合いに見えてしまう。

(いいえ、『果実』じゃなかった)
 あれは『つぼみ』。未来への可能性をぎっしり詰め込んだ、幼い蕾に過ぎない。大輪の花を咲かせるのは、これからなのだ。
 ぽちっと可愛らしい乳輪も然り。現在未発達なことが、逆に測り知れぬ成長余地を物語る。

 その“未来”を示唆しているのが、実の母親・みねこさんだ。

 私から見て正面で、あじさい柄のサマーワンピースを脱ごうとしている。
 その表情は、娘と対照的に恥じらいを浮かべていた。「私にできることなら何でも!」と威勢よく申し出たものの、幾許かの羞恥心は残るらしい。
 それを察していながら、視線を逸らせない自分が情けない。

「…………」
 頬をぽっと赤らめ、くるりと背を向けるみねこさん。同時に、巨大な乳房も「ぶぅん」と振り子運動した。

(ああ……なんだか申し訳ありません)
 私は内心侘びながらも、これまでになく高揚していた。平らな胸に触れれば、奥の鼓動が激しく伝わるだろう。
 気のせいか、視界がスローモーションに見える。ボクサーがアドレナリンの大量分泌によって体感する、アレかもしれない。「ゾーンに入った」的な?

 ワンピースの裾をまくり上げるみねこさん。
 背後から見ていると、まずはセクシーなひかがみ(膝の後ろのくぼみ)が目に入る。
 上半身&お尻の重みを日夜支える膝関節。その負担はどれほどだろうか? 意味もなく指でなぞりたい危うさを感じる。

 続いて、むっちりグラマラスなふとももが現れる。
 私のウエスト(55センチ)より太そうな白い柔肉は、濃密なフェロモンに蒸されていた。扇情的な芳香がフワッと漂い、同性でさえ目まいがしそうな肉感に、思わず唾を呑む。
 たまらず視線は“舌”と化し、舐めるようなまなざしを向けてしまった。
 不可抗力。いやらしい意図なんて無いのに……。あのすべすべの肌へ、視線を這わせずにはいられない!

 次に見えたのは下着。装飾のほとんどない、白のフルバックショーツだ。ふくよかな丸みを帯びたヒップは、コットンの布地越しに柔らかな感触を伝えている。
 1メートルを余裕で上回る、すばらしい安産型。おそらく下着によって多少ヒップアップ補整がかかっているが、脱いでもそんなに垂れないだろう。
 32歳という年齢を考えたら、じゅうぶん張りに満ちた魅力的なお尻だ。

 そして
(ええっ! もう!?)

 早くも、あまりに早くも“裏乳”が見え始めたのだ。まだ腰のくびれが見え始めたばかりだというのに!
 実りに実った乳房を包む、特大のフルカップ。ほぼウエストの高さで、左右へ10センチ以上はみ出している。
 カップの下端にやや遅れ、サイドベルトが見え始めた。高さは第1腰椎――といかないまでも、第11〜12胸椎あたりだろうか? これだけ巨大なら、一般より低くなるのも仕方ないだろう。
 ホックの数は7個。もはやコルセットに近い、純白のブラジャーだ。

 サザンカに『富士の峰』という品種があるのを思い出す。
 名前だけじゃない。千重咲の白い花が、まさしくあのブラのイメージと一致したのだ。
 正面から確認したいという衝動に駆られ、私はちょっと腰を浮かせてしまった。

(すっ、すごい!)

 二の腕に「ぐぐっ……」とつっかえながら露出した乳房が、「だぽぉんっ!」と波打つ。
 しかし、ブラのホールド性能は確かなようで、中身がこぼれ落ちることはなかった。
 つくづく凄いのは、それを背後から観察できてしまうこと。見えているあの塊は、氷山の一角に過ぎない。
 さすがはアルファベットの終点。空想の存在だったZカップを目の当たりにしているのだという、感慨に震える。

 その間にも、左視野ではモンティ先生がブラウスを脱いでいた。

 ぷち……ぷち……とボタンを外すたび、むく……むく……と増していく隆起。
 ホワイトロリータの清楚感は、さながら西洋人形。白磁(ビスク)の肌、無垢な顔立ちに、縦ロールの栗色髪は、昭和の少女漫画のよう。
 だけど、胸だけはまるで平成の美少女アニメ。えげつないほど肥大化している。
 非現実的なまでのアンバランス。こんな幼い容姿で、みねこさんと同い年というのが本当に信じられない。
※[生まれ月の関係で、8月現在、れもんの方が歳上ですらある]

 その若々しさは、いたいけな顔立ちや小柄な背丈だけではない。
 バストもだ。フリルの飾られたパステルイエローのブラ。そこからあふれんばかりに、つややかでプリプリの柔肉がひしめいている。

 ぷるんっ

 フロントホックが外され、おもむろに開放された乳房。振動が収束する様子を見て、私は改めて驚く。
(少しも垂れてない!)

 アラサーらしからぬ、発育期さながらの張り。きめ細かなもち肌に、ツンと上向きな乳頭は、まぎれもなく“少女”のものだった。
 小ぶりなサイズならばあり得る話。しかしそれを115センチで実現するなんて!
 可憐と妖艶、アンビバレントな魅力を併せもつ美乳は、見る者を幻惑してやまない。

(……ファンタスティック)
 なんて美しい。乳房が描く円やかなカーブに、見とれずにはいられない。
 きっと人間は、曲線の中に美を見出すものなのだろう。さっき西洋人形の喩えを出したけれど、西洋の数学者たちが曲線を研究してきたことにも、共感できる気がした。



 三者三様に魅力的なビッグバストを前に、目をキョロキョロ動かす私。
 その様子を、リョーコ先輩はニヤニヤ笑いながら観察している。
(だって仕方ないじゃない! 全員から一瞬たりとも目を離したくないんだもの!)

 ヒトの視野角はせいぜい200度。私は今初めて、この狭さを嘆いている。3人同時に見るためなら、いっそウサギかシマウマにでもなりたかった。
※[興奮のあまり忘れているが、草食動物は立体視が得意でない]

 そういえば、モンティ先生で思い出したけど、『モンティ・ホール・クイズ』という確率論の問題がある。
 たしか、「3択の中から1つを除外する」というものだが――

・はつらつとした健康美がまぶしい、Cカップ7歳児
・アンバランスの魅惑を極めた、Pカップ英語教師
・驚異的グラマラスですべてを圧倒する、Zカップ人妻

(選べるかぁーーー!!! 除外なんてとんでもない! どの選択肢も惜しすぎるわ!)
 ああ、私は何にキレているんだろう。



 脳内でひとり漫才している間に、おっぱいトークが始まっている。

「わー、先生のおっぱい、白くてまん丸。さきっぽもピンクでできれーい」
「うふふ〜Thanks.ありがと、はるちゃん」
 賞賛の中に「大きくて」は含まれない。母親を思えばそれも納得か。

「わたし、えいごのじかんたのしみです。はやく5ねんせいになりたいなー」
※[平成29年度当時、英語必修は小5から]

 そう。彼女の場合、あの容姿で教師というのがまたすごい。村外の中学生なら、まず間違いなく授業に集中できない。
 あの身長では黒板の上の方まで届かないだろう。板書するとき、胸で黒板をこすってしまうんじゃないだろうか。

「3年後かー。その頃にはきっと、はるちゃんのおっぱいもぐーんと成長してるわね」
「そうね。今だってかなりのものよ」
 堤さんが、はるちゃんの胸を背後からプルンと掬う。

「Cカップでしょ? スポーツブラを着けてもいい頃じゃないかしら」
「そうですねえ。私も頃合いかと思っていました」
 隣で母親も同意する。

「えー、わたしまだ2ねんせいだし、ちょっとはずかしい」
 赤面するはるちゃん(かわいい!)に、
「そんなことないわよ」
 と、リョーコ先輩。

「みんなだいたいCくらいからブラを着け始めるわ。早い子なら、1年生から着けてる子もいるし」
※[兎野やよい(N)や十津川みお(K)など極端な例外を、遼子はあえて伏せた]

「That's right.そうよぉはるちゃん。あなたのママがfirst braを買ったのも、小2のときだったのよ」
「えっ、ホント? おかあさん」
「そ……そうだったかしら?」
「やぁだ、忘れたの? ほら、『かしの』がrenewal openした日」
「あ! 思い出した。偶然れもんと会って、一緒にジュニアブラを選んだんだっけ」
「そうそう。わたしがBなのに、みねこはいきなりFだったのよね〜」

(エフ!?)
 衝撃の事実。低学年で初ブラがFカップなんて! さすがみねこさん。幼少期から驚くべき肉体だったようだ。

「すごーい! おかあさん、わたしとおんなじ2年生でFもあったんだ」
「もちろんクラスで一番だったわ。翌年にはHカップで、6年生にも匹敵する存在に上りつめたわね」
「ちょっとぉ〜、れもん、娘に何教えてんのよぉ」
 ああ……みねこさん、困り顔もいちいち色っぽいです。

「ウフフ♥ だって事実じゃない。3人組の中じゃ常にダントツで、わたしとこずえを足しても届かないくらいだったもの」
「まあまあ、思い出話は後でじっくりと。まずは着替えを済ませましょ」
 堤さんが場を収めた。

 ああ、ちょっと惜しい。
(もう少しの間、裸の胸を観察したかった……)
 なんて口には出せないけれど。

 3人は大きな白い布を広げ、各々の乳房を包む。初めて着るはるちゃんは、堤さんに手伝ってもらっていた。
(なるほど。あの布は『前掛け』か)
 首の後ろで紐を結ぶ。布をふんわりかぶせた状態でも、盛り上がりはしっかりと見てとれた。

 そうか! この上から、胸部の空いたスク水本体を着るのね。
 確かにそれなら、巨大なバストにも対応できる。フリーサイズと言うだけあるわ。

「つつみさん、こうですか?」
「そうそう。布の余りをおっぱいの下にはさむのがコツよ」

 あの〜、私それできないんですけど? シャーペンの芯1本すらはさめないんですけど? AAAカップは「フリーサイズ」の対象外ですか?

「よくできました。じゃあ次は本体を着ましょう。試着だからパンツの上からね」
「はーい」
 膝の治療跡に触れないよう注意しながら、はるちゃんは本体を穿く。
 華奢な胴体をくぐらせ、前掛けの端を本体背部のボタンで固定。
 あとは肩紐をかけて――装着完了。

(うわあ……)
 果たして完成図は予想どおり。ぱっくり空いた胸部から、白いふくらみ――いわゆる「乳袋」がドーンと飛び出ている状態になった。

 こうして強調されると、はるちゃんのCカップもさらにボリュームアップして見える。が、
「あはは。わたしまだ小っちゃ〜い」
 当人はそう思ってないらしい。自分のふくらみをフニフニ揉みながら、照れ笑いしている。

 無理もないか。比較対象が強大すぎる。隣に並ぶアダルト組の乳袋は、比べものにならない存在感だ。
 前方への突出が段違い。特にみねこさんは、横幅が広すぎて腕をも隠している。

『ふところに 包める愛の 巨きさよ 富士白雪の 峰が如くに』

 不意にそんな短歌が浮かぶほど、私は感動していた。



「うう〜、やっぱり32にもなってスクール水着なんて恥ずかしいわ……」
 いえ、心配要らないと思います。まずスクール水着に見えないので。

「むふ〜♥ みねこのスク水姿、十何年ぶりに見ちゃった。school days(学生時代)に比べて、いかに成長したかat a glance(一目瞭然)ね!」
 モンティ先生、興奮すると横文字多くなる人?

「さあっ! モデルが揃ったところで、とくとご覧あれ〜」
「ヒュウ♪」
 堤さんとリョーコ先輩が、テンション上げ上げで紹介する。(何このノリ?)

「こちらが『D式スイムウェア』。バストの大きな児童・生徒のみに与えられる、フリーサイズ仕様よ。本体とブレストバッグを別々にすることで、Zカップにも対応可能なの」

 ふむふむ、あの白い前掛けは『ブレストバッグ』と言うのね。直訳で『乳袋』。そのまんまですか。

「なーんて得意気に言っちゃったけど。実はこのデザイン、最初に考えたのはウチの開発部じゃないのよ」
「?」
「今から22年前、ある小学生のアイディアを商品化したものなの」

「うふふ〜。何をかくそう、その小学生とは、わたしたちなので〜す☆」
 ピースサインを送るモンティ先生が、もう片方の手をみねこさんの肩に回す。(実際は身長が足りなくて届いていない)

「え!……そうだったんですか?」
「この水着、先生とおかあさんが『はつめい』したのー?」
 はるちゃんも初耳だったらしい。興味津々な様子。

「じ、じつはそうなの」
 キュートに照れ笑いしながら、みねこさんは肯定する。
「小学4年の夏休み、私とれもんとこずえでね。3人合同の自由研究として作ったのが、初まりだったの」

「Because,なぜかというとね……」
「れ、れもん!」
 イタズラな笑みを浮かべたモンティ先生は、みねこさんの制止も構わず暴露する。

「みねこったら、小4の夏に100センチJカップまで成長しちゃって。スク水に入らなくて困ってたのよ〜。そ・こ・で、親友のピンチを救うため、『フリーサイズのスク水を作ろう』って考えたワケ」
 巨大マシュマロごと胸を反らすモンティ先生。ロリータな愛嬌たっぷりの彼女は、ドヤ顔さえあどけない。

「へー! そうだったんだぁ。おかあさんすごーい!」
 水着改造より、『小4でJカップ』の方が偉業とみなされている。(私も同意)

「もうっ、恥ずかしいから言わないでほしかったのに」
「うふふ〜♥ いいじゃない。ミレイさんの研究に協力するんでしょ? As it is(ありのまま)に真実を伝えなきゃ」
 あれ? 私また羞恥プレイのダシにされてる? ※[第27話参照]

「そ、そうだったわね。ミレイさん、たしかにれもんの言うとおりです。これを作った目的は、私の急成長に対応するためでした」
「はい……」
 いや、いきなり神妙に告白されましても。

「なるほど。そんな制作秘話があったとは。この水着は友情の産物でしたか」
「主にわたしが設計して、こずえが制作。みねこはモデルとして着心地をレビューする担当だったわよね?」
「それだと私、ろくに働いてないみたいじゃない。ちゃんと材料集めや作るのも手伝いました!」

「その、こずえさんという方は?」
「幼なじみです」
「彼女、昔から手先が器用でね。今は、地元産のquartz(水晶)を使ったおみやげ品を作ってるのよ」
「おかあさんたちは、子どものころからずーっと仲よし3人ぐみなんだよ」

「当時、私はまだ村にいませんでしたが……」
 堤さんが語り出す。
「D式水着は、その年の発表会で銀賞を受賞。教育委員会は『かしの』開発部に商品化を提案したそうです。それから一部改良を加え、みねこさんたちが5年生のとき、製品版が完成しました」

「思い出すわあ。新しい水着で自然教室に行ったこと」
「ああ〜、魚釣りとかしたっけ。最高に楽しかったわねぇ」
※[そこで撮られた記念写真こそ、青梅アイコが郷土資料館で見たものである]

「す、すごいですね。学校が採用するとは。優れた作品だという証明ですね」
 私は表面上そう言いつつ、内心はツッコミの嵐だった。

(教育現場にこんな水着があっていいの!?)
 スクール水着とは、授業で用いるに相応しい意匠であるべきでしょう?

 この『D式』はブレストバッグが鎖骨あたりまで覆うので、谷間を万全に隠している。
 うん?……まあ……たしかに、そこは評価できるわね。

※[ミレイの見解は的外れである。千々山村民にとっては、谷間を隠すなどどうでもいい。本当の目的は、乳房の重みを首と両肩に分散させること]

 紺色と肌色はネガポジの関係。補色ゆえに、互いを引き立て合うカラーリングだ。
 そこにアクセントとして加えた「白」はよく目立つ。セックスアピールを清潔感で上書きするのに、一役買っている。

 そもそも「体育」の目的とは、文字通り、健やかな身体の成育。
 特に水泳は呼吸が重要な全身運動だし、肺を圧迫するのは望ましくない。胸部の開放は、いたって適切な処置と言える。

 ……あれ? これってすごく“健全”なのでは?
 教育的に見て文句のつけどころがない。
 ウソでしょ!? こんなに「けしからん」イメージなのに!



「ところでミレイさん、実際にモデルを見て、“D”が何を意味するか分かりましたか?」
「はい?」
 堤さんがワクワクした様子で訊いてきた。そういえばさっきも、そんな謎かけをほのめかしていたような。

「え、えーと……」
 興奮冷めやらぬ頭を思考に切り替える。
 出題してきたということは、手がかりは揃っているはず。

 @水着そのもののデザイン。
 A「ディー」じゃなく「デー」。つまり、ドイツ語であること。

 なんだろう? シンプルに考えて、何かのイニシャル?
 たとえばDで始まるドイツの地名――デュッセルドルフとか、ドレスデン? その地方にはこういう水着があるのかしら? 聞いたことないけど。

「う〜ん……むずかしいですね。ちょっと思い付きません」
「フフフ、じゃーもひとつだけヒントあげましょうか」
 あ、リョーコ先輩が助け舟をくれるみたい。

「ミレイちゃん、ハタチ過ぎたオトナよね? ビールとか飲む?」
「いいえ、学生の身分なので。飲酒の習慣はつけません」
「おやおやマジメなことで。私なんかビール大好きだから。一度は行ってみたいと憧れるのよねー」
「?」
「有名なあのイベント――『10月のお祭り』に」

「……あ」
 そこでようやく答えを閃く。たしかに今のは大ヒントだった。
「分かりました! Dとは、“Dirndl”(ディアンドル)の頭文字ですね」

「「「おおーーー!」」」
 先輩と堤さんとモンティ先生が、嬉しそうな顔で驚く。

「『10月のお祭り』でピンときました。
 ドイツの伝統行事『オクトーバーフェスト』。
 ビールを給仕する女性の服が、D式水着に似ているのを思い出したんです。
 エプロンドレスからブラウスの胸をはみ出させ、強調するデザイン……
 あれはたしか、『ディアンドル』という民族衣装でした」

「ご名答っ! 大正解よ」
「Excellent! さすが優秀ですね〜」
「ねー、いろいろ分かってくれるコなのよー♥ 私の後輩」
「「ぱちぱちぱちー」」
 3人につられて、富士岡母娘も拍手をくれた。
 ってみねこさん! 拍手するだけでおっぱい波打ってるじゃないですか!

「そ、それにしても……」
 称賛がくすぐったくて、私は話題を切り替えようとする。
「こちら、小中学生向けですよね? いくらなんでもZカップまで対応させる必要あるんですか?」

「いや、あるでしょ」
「あるわよね」
 きょとん顔を見合わせる、先輩と堤さん。

「記録上、Zに至った中学生はまだいないけど。今後現れないとも限らないし」
「一歩手前のYカップなら、中3で到達してた子いたわね」

「ワィ、わワわヮいわぃ、Yカップの中3!?」
 驚きのあまり、とんでもなく間抜けなリアクションをする私。
「「ぷぷっ」」
 よほど可笑しかったのだろう。吹き出してしまったモンティ先生とはるちゃんには、何の非もない。

「歴代D組でも屈指の存在だからねえ、なかむr」
「あっ、本名ダメ!」
「……Nさん」
 セーフ。先輩は危ういところでイニシャルに着地する。

「いやいやミレイちゃん、“彼女”に関しては伏せる意味ないわよ。ここにいるみんな知ってるって〜」
「そうね。あんなに大きいのは隠しようがないもの」
「ミス・ヤエコのことかしら?」
「バイオリンのおねえさん?」
「はる、あの楽器はチェロっていうのよ」

 あっ、本当だ。皆さんご存知の様子。

「もうバレバレだから言っちゃうけど、中村やえこさんは村でも一目置かれるバストの持ち主よ」
「数十年に一人レベルの逸材ね。なんせ彼女のために、Ver3.0が作られたくらいだもの」
 堤さんの発言で、はたと気付く。

「ちょっと待ってください。先ほどこう仰ってませんでした? 『4年前に完成したVer3.0』って」
「ええ」(よく覚えてたわね)
「ということは、そんなに昔の話じゃない。……もしかしてまだ未成年?」

「たしか今、高2よ」
「この前商店街ですれ違ったけど、また一段とふくらんでたわねえ」
「うん! おかあさんと同じくらい大っきかったー」
「ミス・ヤエコの成長はskyrocketing(天井知らず)ねー♥」

「…………」
 驚愕した。みねこさんほどのサイズに達した女子高生が存在するなんて!
 しかもこの村には高校が無い。ってことは、Zカップを抱えて村外へ通学してるの!? 鉄道で!?

「まっ、彼女の話はシメに取っておくとして。今は、せっかくの飛び入り参加を優先すべきじゃない?」
「そ、そうでした」
 向き直った私は、またもや仰天する。

「!!!?」
 3人がおもむろに、ブレストバッグを外し始めたからだ。

(あ! いやあの、別に着たままでも……)
 言おうとしたけど、前回よろしく声に出せない。
 戸惑っている間に、「しゅるり」と妖しい衣擦れ音を立て、白い布が抜き取られた。

(うわあ! みねこさんの乳輪すごいっ! はるちゃんはあれを吸って育ったのね……)
 小鍋のふたほどもある楕円形で、艶めかしいローズピンク、乳首もかなりの大粒だ。
 一瞬頭をよぎった「くわえたい」衝動を、気合いで振り払う。

※[3人が乳袋を外したのは、当然、これからミレイの触診を受けると思ったからである。
  ただし、富士岡みねこにとっては、それ以上の理由があった。
  ……もし触診に“感じて”母乳を漏らしてしまったら、試着品を汚してしまう……
  そう。32歳人妻は、乳房がとても敏感なことを自覚していたのだ]

 本体部分だけが残り、今やただの『まるだし水着』になってしまった。
 教育的視点なんてどこへやら。ただのエッチなコスチュームに早変わりである。

 そして3人は、裸の乳房をタプンと掬い上げるように差し出してくれた。みねこさんに至っては、“腕で抱えるように”だ。

「ど、どうぞ……」
「Come on〜♥」
「ミレイさんなら、いっぱいさわっていいですよ♥」

(すごいっ!)
 なんというゴージャス待遇。女の私が体験するなんて皮肉だけど、ハーレムの王ってこんな気分かしら?

 堤さんは無言で「スッ」と、計測機器(メジャーとキッチンスケール)を差し出してくれた。
 先輩も無言で「トン」と、アルコールスプレーを置いてくれた。

(おふたりとも、なんて粋な心遣いを)
 感謝いたします。手指消毒し、いざ触診……!


/// Karte #5.Haru Fujioka ///
/// Karte #6.Mineko Fujioka ///
/// Karte #7.Lemon Ozaki ///


 いきなりメインディッシュにがっつくようで悪いけど、まずはみねこさんのサイズを確認させてもらう。
 しゅるしゅるとメジャーを引き出すたび、計測対象が本当にバストなのか疑いたくなる。

「ひゃ、ひゃくよんじゅうなな……てん、よん」
 アンダーは74.1。その差73.3センチで、まぎれもなくZカップだ。
 驚きの数値に、メジャーを持つ手ばかりか、声まで震えた。

 続いて重量の測定。
 キッチンスケールにカゴを置き、乳房を片方ずつ「どぷん!」と乗せてみる。その後、カゴの重さを差し引く――なんて、普通じゃ考えられない方法だ。

「右が7860グラム……左が7940グラム」
 合計15.8キロ!?
 なんというウエイト! 10キロまで量れるキッチンスケールだが、片方ずつでなければ限界オーバーだった。
 水で満タンの2リットルペットボトルを左右4本ずつぶら下げていると考えると、日々の苦労は想像を絶する。

 しかも本人によれば、
「よかったあ。ちょっとは夏ヤセしてたのね。16キロ切るなんて」
 とのこと。恐ろしいことに、冬場はさらに増すようだ。

「いやあ、それにしてもみねこさん、出産後も見事なスタイルを維持されてますね」
 堤さんの褒め言葉に対して、
「そ、そんなぁ。それを言うなら、れもんの方ですよ」
(え?)

「母親としては、れもんの方が3年も先輩だもの」
(ええーーーっ!?)
 驚きの声をギリギリで飲み込む。

「し、失礼。モンティ先生、お子さんいらっしゃったんですか?」
「Yes.小5の娘が一人いますぅ」
(ウソでしょお!?)

 衝撃の事実。胸以外はせいぜい高学年くらいの体型なのに、経産婦だったなんて!
 どんな娘さんだろう? 母親似なのか、バストはどれくらいか、すごく気になる……

※[本日(第9話)すでに尾崎しふぉんとニアミスしていることに、ミレイは気付く由もない]

 さて、気を取り直して。
 モンティ先生とはるちゃんの乳房重量も計測したところ、6020グラムと500グラムだった。

 Pカップで片房3キロは意外と軽い? と思ったが、アンダーが細いせいだろう。カップ数の印象ほど、実際のボリュームはないようだ。
 とはいえ体格が小柄だから、見た目の強烈なインパクトは変わりない。

 はるちゃんも、7歳にして500グラムは十分りっぱだ。成人女性の平均的サイズを、華奢な身体に実らせているのだから。
 若さのエネルギーがほとばしるような健康美。73センチのCカップはピチピチとした張りに満ち、この瞬間にも目ざましく成長している。

 【SONG】に遺伝は無関係のはずだが――母親との間に開く32倍の差を、これからグングン詰めていくのだろうか?
 将来のことは分からない。私はただ、はるちゃんの健やかな成長を心から願う。
 どうか、自分の胸に傷つくことがありませんように。

(『あの子』のような悲しい思いを、決してしませんように……)


   ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


 夕日を逆光に、少女がひとり泣いていた。

 もっとも、彼女を知らない者は、女性だと気付けないだろう。
 年は数えで18だが、6尺(約181センチ)を超える長身に、筋骨隆々の体躯。焼けた肌に、短い髪。胸の厚みはほぼ筋肉。質素な木綿の服からは、丸太のような太ももをのぞかせている。
 このように、外見はほとんど男性。精悍でたくましい青年そのもの。
 だが、澄んだ瞳の奥には、苦難に耐えてきた“強さ”だけでなく――女性的な“やさしさ”をも秘めている。

 地に膝を着け嗚咽する彼女は、凛々しい顔を熱い涙でぐしゃぐしゃにしていた。
「うっ……ううーッ!」

 ガッ!!!

 激情に任せ、岩のような拳を土に打ちつける。その下には大切な人が眠っているのだ。

 この手で埋葬したばかりの、最愛の妹が。

「ミイ……なんでじゃ……なんで、■■■なんてバカなまねを……」
 亡き妹を偲びながら、地に向けて問いかける。

 同時に、激しく後悔していた。
(おらがあんなことを教えなければ……)
 妹が命を犠牲にすることも、なかったかもしれない。

「和尚さんも……姉さも……ミイも……いなくなってしもうた」
 力なくつぶやいた彼女は、“こちら”を振り向き、痛切に訴える。

「なあ、トミさん……
 トミさんはどこにも行かんでくれ!
 おらをひとりにせんでくれえ!
 これ以上、家族を失うのはいやじゃあ……」

 それに応えて――“夢の中の自分”は、泣き顔を抱き止めた。
 子どものようにワアワアと泣きじゃくる彼女に、やさしく言い聞かせる。

「ああ、わしはどこにも行かん。お前と一緒に、この千々山にずっとおるよ」

 並みの男性よりずっと立派な体格。振るう豪腕で畑を拓き、農業を牽引してきた、『男まさり』の大女。
 そんな彼女が弱さを見せられる相手は――もう、自分しかいない。
 だから、その頭をやさしく撫でる。実の娘をあやすように。

「ミイのことは本当に残念じゃった。だが、■■はまだ分からん」
「ぐすっ……あ、あねさ、が?」
「あきらめるには早い。理七と一緒にどこかで生きとるやもしれん。いいや、きっと生きとる!」
 希望を捨ててはならないと、自分にも言い聞かせるような口ぶりだった。

「だからわしらは待とう。いつか■■が帰る日まで……この村を守りながら、な」
「…………」

 しばらくの間、沈黙が続いた。

 やがて二つの人影は立ち上がり、黙って墓を後にする。
 道端に咲くキキョウが、降りてくる夕闇に隠れ始めていた。

つづく