リレー小説「BBWアイドル製造ダンジョン」

かるぼん 作
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「はあ……ほんと最悪」

 どこかの世界、人気の無い洞窟。
 ぶよぶよとした肌色の塊、ミノリは独り言ちた。

 食欲に任せて貪り尽くしたのは自分が悪い。けれど、あれは本当に自分の意思だっただろうか。
 あるいはあの部屋に宿る何らかが、自分を動かしたのではなかろうか。彼女は疑問に思うも、既に過ぎた事は戻らない。
 それでも、あのピザは頭が蕩けてしまうくらいに美味しかったのは幻想や夢ではなかったはずだ。付いた肉がその証拠なのだから。
「それに……この身体も案外悪くないかも」
 彼女が洞窟に放り込まれるまでの半生を例えるなら、妖精のおばあさんに出会わない灰被り姫のようなものだ。
 そんな、奴隷のようにこき使われながら、ろくな栄養も与えられない枯れ枝のような自分の身体が、ぶくぶくと太っていくのは存外に愉快な事に思えたのだ。
 生涯で一番のご馳走とも言えたピザは食べ尽くした。けれども、奥に進めばまた何か美味しいものがあるかもしれない。そんな思いが彼女の重い体を洞窟の奥へ奥へと推し進めていった。

 唐突に、開かれた扉が現れる。とても大きな木の扉は、物語に出てくる王城の物のようにも思えたが同時に、肥大化した彼女が労せずに通り抜けられるピッタリの大きさでもあった。
「ああ――なんて素敵」
 ため息がこぼれ、下腹部が熱くなるほどの多幸感。目に映るのは先ほどの部屋とは比較にならないご馳走の山々。
 パンやステーキ。色とりどりの見たことも無いスープ。パスタに絡まっているあのオレンジ色のソースは何だろうか。
 ああ、柱のように高くそびえるケーキは継母が娘の誕生日に買っていたものを百個重ねたって届きやしないだろう。
 身長の何倍も高い天井には幾つものシャンデリアが輝き、絢爛豪華な輝きは彼女の喜びを投影しているかのようだ。
「何てこと。本当に、本当にお城みたい。私、シンデレラになったのかしら」
「違いない。確かに君が理想の存在になる為に、私が呼び出したのだから」思わぬ返事が奥から聞こた。が、姿は確認できない。
「どなたですか」
「今は……そうだな、“声”とでも名乗ろう。まだ君は、姿を見せるに値しない」再び返事が聞こえたが、その声は中性的で、性別や年齢は判別できなかった。
「どうして私なのですか。私には母が遺した名前以外、何もありません」
「君は自分を『奴隷のよう』と思ったろう。簡単なことだ。私は奴隷を買ったのだ。一度やってみたかったのだ」姿無き声は残酷な言葉と裏腹にどこか愉快気で、仲の良い友人をからかっているようですらあった。
 ぐぅと、胃袋が鳴った。じゅんと、子宮がうずいた。
「酷いです。酷い。私、今までこんなの無かったのに。どうにかなっちゃったみたい」何に対する抗議だったか、ミノリ自身わからなかった。目が潤み、頬が熱を持つのを感じた。
「だろうな。魔法で性欲と食欲とをぐちゃぐちゃに繋げてそれらのスイッチが入りっぱなしになるように、壊しておいたのだから」声は事もなげに言った。
 飢えて飢えてしょうがなかった彼女は、未発達で色事とは無縁で、性交渉などしたことが無い。
 なれば暴食と色欲、堕ちるのは一瞬。
「それならもう我慢できないのも……あはっ! しかたないですね!」
 喜色満面。狂気すら浮かべた瞳が映す肉、スープ、魚、甘味、果物、酒、パン。他にも色々あったが全部まとめて飛び込むように食いついた。
 飢えを満たしつつ未知の快感に溺れる行為は、おおよその獣よりも獣じみていた。
 次々と食べ物を収める胃袋はどんどんと膨らみ、子宮は活発に脳へと信号を送り、悦楽はより淫靡な肉体への成長を促し続ける。
 ぎゅるぎゅると血液が全身を巡り、運ばれる栄養が全身の細胞を活性化させて食事という名の自慰は更に苛烈さを極めた。
 成長は大量の贅肉を消費し、四肢は夏の植物がするようにわぁっと、背丈を伸ばしてはち切れんばかりの肉を備えた。
 乳房が風船のように急激に膨らみだし、むくむくと大きくなるとあっという間にお化けカボチャを二つ抱えたような格好になり、急な重心の変化に思わずつんのめった。
「きゃあ!?」そのままケーキでできた柱に顔から突っ込む。
「ああ――ほんと最高っ!」口を開けるだけでケーキが胃袋目掛けて殺到する。ミノリは大きく息を吸うように、それを呑み込んでいく。
「ははは、流石にこれは荒唐無稽。まるで、ケーキの柱と女が融合しているようではないか」声の主は想像を超えた激しい食事に思わず笑いが漏れた。

 そうして、王宮で行われるパーティーで振る舞われるような大量の食べ物をミノリは一人で吸収しきった。
「はぁ、はぁ。これが『逝っちゃう♥』って事なんですね――」ぱたりと、果てるように眠りに堕ちる。
 成人男性よりもわずかに高い程度の長身からすらりと伸びる手。艶やかな黒髪は滑らかで、今は汗で濡れ背中にべったりと貼り付いている。
 きゅっと締まったウエストは抱きしめれば折れてしまいそうだが、それよりも太くムチムチとした脚が肩幅より大きくせり出した臀部と共に全身を支えていた。

 そうして何より、特筆すべきはその乳である。ケーキの柱との融合によるカロリーのほぼ全てを脂肪と乳腺の発達に費やした結果、彼女の乳房は生涯、鏡無しに自分の乳首を見られないほどに大きくなった。
 白くやわらかな乳肉は、まるでスポンジのような柔らかさで、これほど急激な成長を遂げたにもかかわらず、肌は生クリームのようにきめ細やかで傷一つ無かった。
 ミノリは今夢の中だ。彼女の眠るベッド、それは彼女自身の超々乳に他ならなかった。
「やれやれ、欲望という欲望を詰め込んで、夢魔のように妖艶な肉体になり果てたくせに、無垢な少女のような寝顔だな」
 姿無き声は苦笑する。
「ここはどこかの世界。人気の無い洞窟。そして、『脂肪増加の部屋』。ふふふ、己の欲を平らげた君には理想――アイドルになってもらうとしよう」

次回、
1,アイドルとして鮮烈デビュー
2,もっともっと肉体改造。ダンジョンの深く奥へ
3,理性は壊れた。狂ったように食べ続ける
4,その時、不思議なことが起こった(超展開用選択肢)