ミルクジャンキー その1

かなぶん 作
Copyright 2002 by Kanabun All rights reserved.

私は利佳子、里見利佳子。現在15歳の中学3年生!!
そんな私の身に起こった、ある変化についてお話します。
あれは、三ヶ月前のある日でした・・・・

利佳子は、いつもの通学路を歩いて自宅まで帰っていた。手には学校の校章の付いたカバンを持って、流行の曲を口ずさみながら、通いなれたその道を機嫌よく歩いて行く。
何のことは無い、どこにでもいる普通の少女だ。
身長は平均よりも少し低く、多少童顔ではあったがそれほど幼く見えるわけでもない。ただ、悩みと言えば胸のサイズ位だろうか。
クラスの女子をバストサイズ順に並ばせてみれば、利佳子は5番以内に入ってしまう。もちろん、小さい方からだ。
そもそも、ブラジャーを着け始めたのすらここ最近の事であり、店で売っている一番小さなサイズでも少し余ってしまうほどのまっ平らだった。
その事について触れられると、さすがに少し嫌がりはするが、最近では気にしていない、もしくは開き直っているとも言える。そんな少女だった。
時折聞こえるカラスの鳴き声と、もう大分暑くなって、肌に張り付く制服の違和感を感じながら、その家まで後数十メートルになった時、利佳子はその足を止め、しまったという顔で後ろを振り向いた。

「ノートを先生に渡したままだった!!」

その事に気が付くと、上機嫌だった様子が一変し、慌ててもと来た道を引き返す。大して遠くも無いが、それでも学校までの道を戻るのは一苦労だった。
利佳子が学校に到着し、先生に提出していたノートを返して貰うと、その目の前は薄っすらとした月明かりに照らされるだけの、紫がかった空が広がっていた。その中を、多少不気味に思いながらもゆっくりと歩いてかえる利佳子。だが、本人も気が付かないうちに、いつも通っている道ではなく、できるだけ明るい、商店の立ち並ぶ通りを選んでしまっていた。
そして、利佳子は自分の家への道を、多少遠回りではあったが歩き続けていた。しかし、ふと、ある一軒の店の前でその足が止まった。

「こんな店、あったっけ?」

目の前の看板には、英語の筆記体の様に曲がりくねった文字が並び、見方によれば不気味だが、見方を変えれば神秘的な概観に、ついフラフラと吸い寄せられていた。

「いらっしゃいませ」

急にその扉が開き、中から声が掛かる。その現象に戸惑いつつも、好奇心が先にたち、その店の中に一歩を踏み出してしまっていた。
その店の中には、真っ黒な布が吊るされ、いくつもの星や月、太陽を象った飾りが吊るされている。そして、その奥に座っている一人の女性。
彼女を例えるならば、実体のある幽霊、または、存在しない存在だったろう。
そこにいる、確かに目に捉えているが、その目を疑いそうになるほどの存在感のなさと、こんな場所にいても不気味さも感じさせ無い、印象の無さが特徴であった。

「あの・・・・ここって何の店なんですか?」

思わず入ってきてしまってから、思い出した様にそう尋ねた。もしも変な店ならばもう手遅れかもしれない、そんな事が頭を巡る。

「薬局・・・・それが一番近い名称です」

「薬局?」

彼女の知っている薬局は、こんな外観や内装をしてなかったし、そもそも目に付く場所には薬が全く無い。その為に不思議に思い、当たりを見回すが、やはり薬はどこにも無く、占いの館と言われた方がしっくりくる。

「あなたはどんな薬が御所望ですか?」

「いえ・・・そんな・・・つい入ってきてしまっただけで・・・・」

慌てて手を振り、その店を後にしようとする。

「この店に入ってきた人間は、誰もが何かしらの悩みを抱えています。もっとも、その悩みの種類はたった一つだけ、たった一つのその悩みを抱えた人間だけがこの店を訪れる事が出来る」

詩を朗読するような口調で投げかけられる言葉に、しばし我を忘れてしまった利佳子は、いつの間にか目の前に突き出されていた瓶を見て静かに驚きの声を上げた。

「この薬をあなたに、きっとその心の中の願望を叶えてくれます」

中には鮮やかな紫色の液体、その毒々しい色合いにも怯まず、何かに憑かれた様子で利佳子はその薬瓶を口にあて、そのどろりとした液体を一気に飲み干した。

「ううっ!! 苦い・・・」

あまりの苦さに吐き出しそうになるが、何とかそれを堪える。

「これで、あなたの望は叶えられます」

その言葉から逃げるように、ふらりと利佳子はその店を後にした。
しばらく歩いて、もと来た道を振り向けば、見知った道であり、あの怪しい店の位置は全く思い出すことが出来なかった。
あの特徴の無い店員の容姿と共に。

次の日、利佳子は昨日の事などすっかりと忘れ、登校の用意を済ませていた。
目の前にはこんがりと焼けたトーストが一枚、それと色とりどりのサラダが並べられ、バターの箱とジャムの瓶が置かれている。そして、グラスに入った牛乳。それらを急いで食べると、無情にも歩みを止めない時計に急かされ、家を飛び出した。
その日の朝食は、少しいつもと違っていた味がした。

学校、それも受験を控えた中学三年の授業が瞬く間に消化されていく。休憩時間のおしゃべり以外は退屈以外のなんでもない授業を受けさせられ、若干の居眠りを交えつつ、給食の時間となった。
配膳係が微妙な割合で注ぎ分け、それを受け取った生徒が自分の席で隣近所と話を始める。
先生の合図と共に「いただきます」を言うのは、ここ11年の間、学校がある日は必ず繰り返されていた事だった。
その日のメニューはコッペパンとシチュー、そしてボイルされたキャベツに鳥のから揚げだった。
見慣れたメニューだったが、利佳子は食事中、なんだか気分が悪かった。
食事を続けると次第に息が苦しくなり、その違和感を無視して最後に牛乳を飲み干すと、今まで以上の圧迫感がその身を襲った。

「どうしたの、顔、真っ青だよ?」

隣の席の友達が、心配して声をかけてくる。

「うん、大丈夫だよ、ちょっと、体調を崩したみたい」

「保健室、連れて行こうか?」

「いいよ、自分でいけるから」

そうして席を立った利佳子は、そのまま保健室へと向かった。
だが、その間中ずっと、今まで感じた事のない圧迫感に苦しみ続け、やっと保健室にたどり着いた時はもう倒れそうだった。

「あらら、どうしたの?」

保健室の前で蹲っている利佳子を発見した保険の先生は、そのまま彼女を保健室に入れた。
髪の長い、同性でもうっとりするような美人の先生で、今年、非常勤で入ってきたらしいが、生憎健康だった利佳子は保健室を利用する事は無く、あまり詳しい事は知らなかった。

「ええと、給食の時に・・・何だか気分が悪くなって・・・」

「給食? 食あたりかしら・・・まあいいわ、苦しいんだったら制服のボタンを外して、そうした方が楽でしょう?」

「はい・・・」

「大丈夫、カーテンで仕切って見えないようにするから、ちょっと御免ね」

先生はそう言って、体温計等を持ってベッドに近寄ってきた。
近くで見ると、さすがに大人の人だけ合って、全く胸の無い利佳子には羨ましい程のスタイルの良さだ。

「あら? 原因は多分これね」

利佳子を一目見た先生は、そのまま利佳子の制服の間から見える、そのブラジャーを指差した。

「とてもきつそうじゃない、こんなにサイズの違うのを着けてたら苦しくなって当然よ」

そう言って、そのブラのホックを外す。

「え? そんな・・・・」

それを見て、利佳子は驚いた。
自分の悲しい位にまっ平らな胸が、ある程度の大きさを持っている。おおよそB〜Cカップ位はあるだろうが、それが今までのブラの中に納まっていたのだった。

「成長期なんだから、恥ずかしがらないでちゃんと自分にあった大きさのを親に買ってもらいなさいね」

「でも、今日の朝までは・・・・・・」

「気付かない内に少しずつ大きくなっていたのかな? 今まできつくなかった?」

「今までは、これで丁度でしたけど・・・・・」

「不思議ね、今朝から急に育ったのかしら?」

利佳子と話すうちに、先生も次第に不思議そうになっていく。

「まあ、それはどうでもいいとして、このまま授業を受けさせるのも可哀想だし・・・今日は体調不良って理由で放課後までここで寝ててもいいわよ?」

「でも、授業を・・・」

「じゃあ、そんな格好で授業を受けるつもりなの?」

その利佳子の格好は、ブラジャーによる拘束から解き放たれた胸が強調され、ちょっとした呼吸の際にもはっきりと分かるし、薄い夏服の生地は、ノーブラで過ごすにはあまりにも危険すぎた。

「じゃあ、お言葉に甘えさせて貰います」

「担任の先生には体調不良と伝えておくわ、それじゃあ、退屈でしょうけどしばらく横になってて」

「はい・・・」

そうして、放課後までずっと、利佳子は自分の体に起きた異変について悩みながら過ごした。

「利佳子、大丈夫!?」

そう言って放課後に保健室を訪れたのは、利佳子の親友の明美と智子だった。二人は授業が全部終ってから急いで来たらしく、チャイムの余韻がまだ残っている時に保健室の扉が開いた。

「うん、大丈夫よ・・・」

「良かった、体調を崩したって聞いたから急いで来たのよ」

「ありがとう、心配してくれて」

「そんなの、当然じゃない」

そんな会話が繰り返される中で、静かだった智子が何かを見つけたように利佳子に近寄る。

「な、何?」

親友のその行動の意味が分からず、うろたえる利佳子。その利佳子に向かっておもむろに腕を伸ばすと、智子は利佳子の胸を触っていた。

「なななななな!!」

驚いて叫び声もまともに出ない利佳子に向かって、智子は薄っすらと笑を浮かべて言った。

「利佳子、やっと胸大きくなったじゃん」

その声に、びっくりした様子で利佳子の胸に手を伸ばす明美。

「ほんとだ・・・・おっきい」

ふにふにと、何となくその胸を揉んでみる。

「ちょっ、やめ・・・・!!」

慌てて胸を庇う利佳子だが、明美はそのまま名残惜しそうにしている。

「利佳子の裏切り者・・・・」

「って、あのねえ!!」

と、クラスでも1,2を争う胸なしの明美が恨めしそうに呟く。

「人の胸を揉んでおいて、一体何を言ってるのよ・・・」

「明美は羨ましいんだよねえ、胸が全く無いから」

「そういう智子はいいよね、胸あってさ」

明美の言うとおり、智子は中学生にしては立派なスタイルをしている。さっき利佳子が羨ましいと思っていた保険の先生とどっちが大きいか比べてみたい位に。

「もしかして、給食の時間に気分が悪くなったのって・・・・・」

「う・・・!!」

思わず言葉に詰まる利佳子。

「やっぱりか、心配して損した・・・・・」

結局、その態度で完璧にばれてしまったのだが、結局、利佳子の胸についてしばらく冷やかした二人は、それぞれに帰っていった。

「なんだか、落ち着かないなあ・・・・」

下校途中、いつもとは違った感じにそわそわとしてしまい、どうも落ち着かない。それは、今まで意識しなかった部分の重さや、何にも縛られないそれが布と擦れあう刺激からなのだろうし、それを人に見られてると思う気恥ずかしさからだった。
思えば、何で智子は恥ずかしくないのだろうと思う。彼女の胸は同世代の女子から飛びぬけていて、何度も羨ましく思えたが、多少なりともそれに近づいた今では逆に、あれだけ堂々と振舞えている事の方が不思議になる。
結局、家に着くと安心して、いつもの2倍以上疲れた気分になった。
そうすると、何だか喉が渇く、外はそれなりに暑く、快晴の中家まで歩いていたからかもしれないが、無性に冷たい飲み物が欲しい。
冷蔵庫を開ければ、まだ麦茶を作っている季節でもなく、ジュースは全て飲みつくしていて、入っているのは毎朝飲んでいる」牛乳ぐらいだった。他には何も見当たらず、仕方なくその牛乳をグラスに注いで口を付ける。飲みなれた味が口の中に広がり、そのまま喉を鳴らして胃の中に落ちていった。

「もう一杯、いいよね・・・」

まだのどの渇きが残っていて、残りの牛乳をグラスに注ぐ。かなり飲まれていたそれは、その二杯目で空になり、その二杯目はすぐに利佳子の胃の中に消えて行った。

「もう無いの? じゃ、いっか」

空になった牛乳パックを洗って干しつつ、部屋に戻ってCDをかける。勉強をする時はいつもかけているお気に入りの歌手の歌だ。その心地よいリズムにつられ、シャーペンを持つ指が自然にリズムを取っている。しばらくそうした時間を過ごしていると、無性に喉が渇いてきた。
足が冷蔵庫に向かい、既に何も無い事は確認済みのその中を改める。
当然中には何も入っておらず、あったのはしおれた野菜と冷凍された肉だけ、それを見た利佳子は、財布を手に近くのコンビにへと向かっていた。

「あ、新しいジュースだ・・・・」

新製品のジュースを見つけ、それを籠に入れる。後はいくつかのお菓子を入れて、ふと見つけた新譜のCDも奮発して買った。

「そうだ、牛乳を切らしてたんだ」

慌てて牛乳パックを手に取り、いつも飲んでいる牛乳を2パック、籠に入れた。

「お会計、2412円になります」

会計を済ませ、足早に家に帰ると、その購入したCDをかけて、買ったばかりのジュースを口に含む。
炭酸の泡が口内を刺激し、柑橘系の香りの中々悪くない味だったが、今ひとつの気がして蓋を閉めた。
そして、同じく買ったばかりのお菓子を手に取り、その袋をあけて軽くつまむ。その塩の味にまた喉が渇き、ジュースを飲もうかと思ったがあまり飲む気になれなかった。
それで利佳子は冷蔵庫を開け、二つ並んだ牛乳パックの片方を取り出し、それをさっき使って洗ったばかりのグラスに注いで、立て続けに三杯飲んだ。
いつもよりもそれが美味しく感じられ、残った半分ほどの中身を全部、一気に飲みつくしてしまった。
それで満足した利佳子は、なぜだかいつもよりも重い足取りで自分の部屋へと向かった。
しばらく後、親が帰ってきて、夕食の時間になった。
いつも使っている自分の席に着いて、そのまま並べられる食事を眺める。ありふれたメニューだったし、既に牛乳をかなり飲んでいる利佳子にはきつかったが、それでも何とか食べ切て、言われるままに風呂に向かった。
脱衣所で部屋着のシャツを脱ぎ去り、スカートも脱いで、裸になった利佳子は風呂場に向かった。そこは温めの湯が張られた湯船があって、視界を真っ白に染め上げている。一歩踏み出し、その湯船から湯を掬って体にかける。そうして温まった体が冷めないうちに、スポンジを持って体を洗い始めた。
その異変に気が付いたのは胸を洗う時だった。保健室で見たときより、確実に大きくなっている。既に、智子と並んでも大した差は無くなっていた。昨日まで似たり寄ったりだった明美となら、天と地ほどの差が開いたであろう。
動揺した利佳子は、そのまま体を素早く洗うと、忘れてしまおうとばかりに湯船に飛び込んだ。小さな水しぶきが上がり、それが収まった時には、目の前小さな肌色の島が二つ、ぷかりと浮かんでいた。
それが何なのかを認識すると、利佳子の動揺はさらに大きくなっていた。何しろ、昨日まで溜息を吐いていた部分が、違う意味で溜息を吐かなければならなくなっていたのだから。
結局、風呂から上がると窮屈なパジャマに着替えて、タオルとバスタオルを一枚ずつ拝借して部屋に戻った。
部屋に戻ると、風呂上りなせいか無性に喉が渇く。部屋にはコンビニで買ったジュースの残りがあるが、それに手を付ける気分にはならず、冷蔵庫の中を再び調べる。
中には当然だが牛乳しかなく、耐えられない喉の乾きに負けてそのパックを持って部屋に入る。部屋には今日買ったCDのサビが流れ、さっき読もうと思って広げた雑誌が目に入る。
その雑誌を眺めつつ、パックの口を開いた利佳子は、それに直接口を付けて飲んだ。
今日はこれで何杯飲んだのだろうか? 少なくとも2リットル以上は飲んでいる。そして、その胸も丁度牛乳パック2本半位の重さになっていた。
しばらくそうしていたら、慣れない重さにいつも以上の疲れを感じ、ベッドに横になる。
胸が体を押し潰す圧迫感にまともに寝れず、何度も寝返りを打ち、そのまま眠れぬ夜が明けた。

利佳子の只今のバストサイズ:109cm

続く