国土は春。
桜前線展開中な満開の桜の枝で気の早いホトトギスが鳴く。
ホー法華経。
帝立総合統合学園。体育館。今そこは天国(ヘヴン)であり極楽浄土であり聖地であり約束の地であり千年王国と化していた。
身体測定が現在進行形で行われていた。
ここで実は対象は全員野郎でしたなんてことになったら目も当てられないが、大丈夫。作者だってそんなの書きたくな……書きたく……な……書
――ムキムキ「兄貴、また胸板厚くなったんじゃねえですかい?」ムキムキ「おう、分かるか? ヨシキ、次のW肉体杯は……最後の大会は負けるわけにはいかんのじゃ。……(ポージング)この上腕二等筋にかけて、奴だけには」ムキムキ「兄貴…………(キュン)」ムキムキ――
モウゲンカイデス(吐血)。
やらなきゃよかったと猛省するのは後回しにして話を進めたい。
ポニーテールからロング、縦ロールに巨大リボンにメイドカチューシャ(!?)までよりどりみどりな状態で新入生から在校生まで。――後輩から先輩までの範囲の女生徒たちが体操服(紺ブルマ)着用でそこにひしめきあっていた。マーベラス。
さらに胸囲を測る関係で全員ノーブラである。ブラボー、おおブラボー。
その中の一角。胸囲を測る順番待ちの列のところに2人の少女がいた。上履きの色から二人とも高等部の一年生と分かる。
夕張 めろん。緑の髪。頭身低めのまるまっちい体。ひっぱればどこまでも伸びそうなほっぺた。ちょうちんブルマの方が似合いそうな体型。
夕張 みかん。髪の色はオレンジ。黄金比じみて均整のとれた頭身高めの身体。細い線の輪郭は、クールビューティという言葉が似合いそう。ブルマが不釣合いに見えるほどに成熟した犯罪もどきの体型。体操服に縫い付けられた名札は内側から弾けそうなほど張っている。
見た目が対照的な二人は姉妹だった。めろんが姉だ。嘘じゃないってば。
二人は胸も対照的だった。手には中等部から使っている測定カード。みかんの胸の成長記録は93→98→103と続いている。それに対してめろんの測定カードは記入する面を抱くようにかかえ、よく見えない。しかし、ひいき目で70センチ前半に見える。
「姉さん……大丈夫?」
みかんが口を開く。めろんは測定カードを持つ手に力をこめた。
「うん、だいじょぶだいじょぶ…………多分」
かたい声。 「姉さん……」 みかんはめろんの顔を見るが、後は無言。視線を前に戻す。
この会話の意味するものは?
列は進んで行く。
「ハイ、次ー」
めろんの前、みかんに順番が回ってきた。
体操服の前を鎖骨のあたりまでめくりあげるみかん。服のすそが乳首をこすり、乳房全体が大きく波打つ。
着やせして見えるタイプ。見た目のボリュームがさらに増した。きれ長のへそと、へそのすぐ上までせまる均整のとれた乳房があらわになる。寝てもその形はくずれずにそびえるのだろう。巻き尺を持った保健委員は特注品っていう言葉をなぜか連想した。
委員が、目の高さをみかんの胸にあわせ巻き尺を回そうとする。
みかんの胸は前に大きく突出している。みかんの背中に手を回すと、委員の鼻先にみかんの乳房が据えられる格好になった。委員の二の腕は、みかんの胸の側面を寄せていた。柔らかい。
委員の吐息がみかんの素肌を舐める。一定の間隔で与えられる刺激。
みかんのほほに朱がさしだしたのは気のせいではないだろう。
巻き尺の端を持った委員の手が前へ向かう。両端がかみ合った。3ケタ。口に出す。
「………………107」
1070ミリ。1,07メートル。特大。爆。弩。
あちらこちらでポツポツ聞こえる舌打ち。みかんは無表情ながらに頬をわずかに染め体操服をおろす。
続いてめろんの順番がやってきた。上からへちょ。ぽん。ぱふ。なめろんの体型である。
めろんの前に測ったのは1070ミリのみかんである。
よけい貧弱に見えた。
あちらこちらでポツポツと聞こえるフフン。
みかんと比較されているという雰囲気に負け、赤面付属で体操服をめくりあげるめろん。おずおず。
――板だった。まな板か洗濯かはどうでもいい。とにかく板である。小ぶりで形のいい膨らみ。桃色の突起は上を向いている。
めろんは思う。
うゥ〜。だからみかんちゃんのあとはヤなんだよ〜。
思ってしまう。その感情を。
はずかしいよぉ。
その時、膨らみ始めた。めろんの、胸が。
気付いたみかん。めろんに駆け寄り、なだめる。
「……姉さん、落ち着いて」
クールビューティに見えるわずかな焦り。
めろんは見る。めろんの胸の膨らみを。めろんの顔といい勝負の大きさだった。
「ウァ――――ン!!」
めろんの胸の膨らむ速度が上がった。そう。夕張 めろんは『恥ずかしくなると胸が大きくなる体質の女の娘』だったのだった馬鹿ですいません。
こうしている間にもめろんの胸は更に大きくなってゆく。今はみかんと同等の大きさだが、小柄なぶんめろんの方が大きく見える。集まりだす視線に恥ずかしさは増し胸は大きくなり、大きくなる胸に視線が集まる。何かが循環していた。こうなると卵が先かニワトリが先か分からない。
お願い…………見ないでよぉ。
本人の意思と無関係に(関係あるのは感情)膨らんでいくめろんの胸。涙目で腕を十字にクロスさせて膨らみ続ける胸を押さえようとするが、胸が膨らむのはとまらず腕へのめり込みがキツくなってゆく。いまや片方の胸だけで上半身の大きさをこえており、正面から見ると腰が胸で見えなくなっている。
メジャー最大値=2m<めろんの胸囲になり、ついに前で腕をクロスさせることが出来なくなった。押さえがなくなった胸は下に流れ、膝まで達した。
ついに床に胸が着く。それでもなお膨乳は止まらない。首筋までまくられた体操服の下から、めろんの全身の体積に数倍する量の乳房が露出している様子は夢かと思えた。
そして爆発が起きた。質量と体積の爆発である。数秒でめろんの背丈より胸の方が高くそびえ立つ。それぞれの膨らみは10トントラックよりも大きくなっていた。
めろんのわきの下に挟んでいた測定カードがこぼれ落ちた。書き込む面が表になって床に落ちる。胸囲 80m(推定)→98m(推定)→121m(推定)。
ケタが違った。
めろんの胸はさらに大きくなってゆく。縦横高さと三次元な方向に。バレーコート二つを持つ体育館の三分の二はめろんの胸で埋まっている。上に胸が乗った体重計の針が臨界を指す。身長を測る器具が胸に押されて体育館の隅へ移動してゆく。
バスケットゴールはすでに胸に呑みこまれていた。バレーのネットを張る柱はめろんの胸に根元まで突き刺さっている。体育館の窓ガラスを、肌が白くなるほど胸が圧迫している。
めろんの胸の上では事情をよく分かっていない女生徒大勢が右往左往していた。
バランスを保って立つことの出来ないめろんの胸の上では、あちこちで女生徒がくんずほぐれつでイモ洗い状態だ。
みかんも上にいた。もう天井の梁は手を伸ばせば届きそうで、下の視界は一面肌色。
みかんを中心に地面(めろんの胸)が凹んでいた。これほどの大きさだというのに赤ん坊のようにきめの細かい肌だった。
「姉さん…………」
立つことが出来ない。めろんの胸に手をついて体勢を整える。みかんの胸がめろんの胸に接地した。当社比千倍は少なくとも大きいめろんの胸に。柔肉と柔肉がこすれ合う。
「「ウン……」」
さらに大きく、巨きく。
とうとうめろんの胸が体育館の端から端までを制圧した。すでに直径数mになった乳首が対面の壁に圧しつけられる。
体育館という器に収まりきらなくなっているのは明らかだった。
視点を外に移そう。総合統合学園の体育館。バックには桜。窓ガラスはカーテンとは異質の質感を持つ肌色の塊に圧されている。外壁に亀裂が入り、内側から弾けとんだ。
中から現れたのは肌色の、山。なぜかその上では女生徒たちが登頂を達成させていた。呆然と下界を見下ろしている。
めろんは気絶していた。もう胸は大きくならないようだ。2時間後、胸が縮み始めるまで膨大な質量を持つその塊を撤去することも出来ず、ワイドショーで全国中継されることになってしまうのだった。
ホー法華経。