1 いつもの夜
僕は大学から帰ると机の上にあるパソコンの電源を入れた。鞄を置いて上着を脱ぎ、部屋の洗濯物が溜まっているところに靴下を投げる。そこでちょうどパソコンのログイン画面になるから、パスワードを打ち込んで、デスクトップが立ち上がる間に冷蔵庫からコーヒー牛乳を取り出して、タンブラーに注いだら、それを持って机に座る。
メールチェックをした後はいくつかのサイトを見る。ニュースサイトやnanaちゃんねると呼ばれる巨大掲示板群の中にあるフェチシズムに関するスレッドを巡回。大体この後は『超乳戯画』を開くことが多い。お絵描き掲示板、アップロード掲示板、小説ライブラリー…………と1時間半くらい閲覧したところで僕はブックマークを開く。僕は"Booby Trap"の文字をクリックした。
目の前で女性モデルが躍っている。ただし、ディスプレイの中でだけど……。名前はユイ。細い身体には釣り合わないとても大きな乳房が上、下、左、右に揺れる。衣装はヨガスタイルだろうか。ゆったりとした白いハーフパンツに、おそらくサイズは特注のピンクのノースリーブを合わせている。ただ、このノースリーブに関して言うと服を着ているというよりは、乳房をかろうじて隠しているという感じでしかない。先の部分は裾の下からはみ出てしまっている。
ディスプレイの中で彼女はラジオ体操のような体操をしている。身体を前に屈ませると、乳首が床のマットを擦り、身体を後ろに反らすと、服の中で乳房は動き、身体の左右へと垂れ下がってしまう。乳首は丸見えだ。次は跳躍。彼女が跳ねるのに合わせて、大きな双球は上に、下に、激しくリズミカルに揺れる。乳房はじっとりと汗ばんでいた。
カットはかわり、彼女は床に直接座り、めいっぱい腕を伸ばし、折りたたんだ脚の上に乗った乳房の先を弄んでいる。さっきまで着ていた服は脱いでいた。おそらく、というか十中八九、このサイトのモデルの持つ巨大な乳房は特殊メイクだ。こんな胸、実際にはありえない。だけど、ユイは作り物の乳首を触っていても、本物の乳首を触っているように見える。本当に感じているような表情をするのだ。ユイが自分の乳首をつまんだり、ねじったり、ひっぱったりしているうちに、彼女は段々とろんとした表情になってきた。僕はまばたきをしばらくしていなかったみたいで、目の端から涙が出ていた。
彼女は乳首を弄るのを止めない。動画にはBGMが流れていて、彼女の声は聞こえないが、喘いでいるのは明らかにわかる。彼女が感じているのが表情からわかる。逆にこれだけの表情をしておいて、演技なんだとすればまいったと言うしかない。ユイの視線の焦点はもう、どこにも合っていないようだった。
喘ぎがどんどん大きくなる。乳首を弄る手の動きも激しくなる。そこで僕は気付いた。もともと大きいはずの乳房がさっきよりも大きくなっていることに。少しずつ膨らんでいたのだろうか、乳房を載せている脚がすっかり隠れてしまっていた。すると、両方の乳首からミルクが噴き出した。このサイトのモデルは絶頂に達すると乳首からミルクが出てしまう。これも現実にはありえないのだが、構わない。ユイのミルクはすごい勢いで出ており、周りの壁や床を汚してしまっている。ミルクが出ている間も、ずっと乳首を弄ぶ。快感を抑えられないのだ。カメラのレンズにもミルクの飛沫が飛び、動画はフェード・アウト。
僕はそれを観ながら”ひとり遊び”に耽るのだった。
2 Booby Trap
Booby Trapとは日本のアダルトサイトのことだ。このサイトに出てくるモデルは全員超乳で、しかも実写。海外にも同じようなサイトはあるけれど、僕は日本人のモデルが掲載されているこのサイトがお気に入りだ。
モデルは5人いる。こういう業界にはいろいろなニーズがあるものなのだな、と常々思う。むちむちした体つきのアカネ。胸の大きさに負けないくらいの存在感のある乳首を持つヒトミ。ハーフのような顔立ちをしたミカ。華奢な身体には不釣合いな乳房を持ったナミ。そして僕が好きなモデルのユイだ。
ユイの顔は童顔で、髪も短いため、ルックスは幼く見える。しかし、身体も幼いわけではない。身長はプロフィール上では165cmと低いわけでもないし、体つきも華奢でもむっちりとしているわけでもない。この微妙な感じが僕にはたまらない。乳房は彼女の膝に届くほど大きい。5人のモデルの中で一番の大きさだ。童顔が好きで、胸は大きければ大きいほどいいという僕の好みにぴったり合っているのがユイだった。
今までイラストや小説でフェチシズムを満たしていた僕にとって、このBooby Trapはまさに待ち焦がれていたものだった。しかし、このサイトはフィクション、作り物だ。巨大な乳房は特殊メイクだろうし、ミルクが噴き出すのもモデルの後ろから見えないように乳首へとチューブが繋がっていて、スタッフが操作しているのだろう。そんなことはわかってる! わかってはいるけれど、好きなのだ。わかっていても、熱くなってしまうのだからしかたがない。自分の超乳好きには抗えないと、つくづく思ってしまう。
3 思いもよらなかった
ある日、僕はアルバイトを終えて帰宅した。僕は4階建てのビルの、2階にあるカフェでアルバイトをしている。1階にはどんなテナントが入っているのか知らなかったが、3階にはソフトウェア会社、4階はデザイン会社のオフィスがある。僕の働くカフェは2つの会社で社員に多く利用してもらっていて、まあまあ繁盛している。ちなみにバイト先で僕の性癖を知る奴はいない。絶対に言えない。
部屋に帰ると、いつものルーティンでパソコンの前に座る。僕はネットサーフィンを始めた。いつも見るサイトのnanaちゃんねるの中にはフェチ板というのがある。あらゆるフェチに関するスレッドが乱立している。僕には理解しがたい性癖もあるものだと、いつも感心してしまう。まあ、超乳フェチも十分に理解しがたいとは思うが……。その中の巡回するスレッドのひとつにBooby Trapについてのものがある。そこである書き込みを見つけて僕は目を疑った。
Booby Trapの撮影が僕の住む街の、ある貸しスタジオで行われているというものだった。最初はまさかと思ったが、後に続く書き込みが信憑性を高める。例えばモデルのナミに似た女性を市内で見かけたとか、同じ建物の3階にオフィスを構える企業の社員が1階にあるスタジオで撮影しているのを見たことがあるとか、中には便乗した嘘の書き込みも多くあったかもしれないけれど、証拠となるような書き込みが多く寄せられていた。僕は誰に見られているわけでもないが、動揺を隠したかった。心臓が内側から胸を叩く。手足がしびれるような、冷えるような感覚を感じる。本当か? 確信が欲しい。
別のブラウザを立ちあげて、働いているビルを調べてみた。4階建て。4階と3階はオフィス。2階はカフェ。1階は…………貸しスタジオ。
なぜ今まで気付かなかったのだろう。Booby Trapのモデルが僕の働くカフェに来ていた可能性だってあるのに。いや、気付くはずがない。大体、この街に、しかも僕が働いているカフェの下で撮影をしているだなんて想像すらしていなかった。これは、行くしかない。偽物だとしても、あの超乳を間近で見たい。見なければならない!
次の日は土曜で大学は休み。アルバイトもあるかと思ったが、それもちょうど休みだった。昨夜は今日のことを想像してあまり寝られなかった。そのせいで予定していたよりも遅く起きてしまった。遠足の前日の小学生みたいだと恥ずかしくなった。ぐずぐずしていられない。目が覚めると僕は急いで準備を済ませ、家を出た。
4 スタジオへ
僕の家から例のビルまでは歩いて20分。思いのほか早く着きそうだ。時間は上の店で潰すことができる。まずは1階に行ってみよう。今日、撮影に来てるとは限らない。確認する方法はある。貸しスタジオはどこの誰が使っているのか表に掲示する場合が多い。それを見れば確実だ。
結局15分くらいで着いてしまった。綺麗に磨かれた自動ドアが開き中に入る。いつもなら奥の階段を上がり、アルバイト先に行くのだが、今日は1階で確かめることがある。
人が2人か3人通れるくらいの幅の廊下には3つのドアがある。ひとつは貸しスタジオの入り口。そのドアの向かいと隣にあるふたつはおそらく控え室か何かだろう。僕は貸しスタジオの入り口を見ると、午前は……フラダンス教室。そうか……いや大丈夫、午前が駄目でも午後がある。午後は……Booby Trap。よしっ。どうやら撮影は午後から終日まで行われるみたいだった。
午後までカフェで時間を潰すことにした。しかし、ただ何もせずにいたのでは怪しまれるし、僕自身時間がもたない。そう思って、勉強道具を持ってきていた。我ながら用意周到。たまには大学生らしいこともしなくちゃな。時間まで勉強して過ごそうと思っていた矢先に、突然睡魔に襲われた。昨日の夜更しのせいか。午後一番で下の階で待ち伏せしなければいけないのに……だめだ……眠い…………。
僕は起きた。何してたんだっけ。あ。慌てて時計を見た。もう昼の2時を過ぎている。まずい! 慌てて下の階に降りると、ちょうどスタジオのドアが開いた。
出てきたのは今までパソコンのディスプレイで何度も何度も観ていた、Booby Trapのナミだった。間違いない、ナミだ。華奢な身体にあの胸。間違いない。上半身の衣類は着ていないし、乳首の周りはじっとりと濡れている。ミルクを噴射したのだろうか。早く見たい。偽物でも構わない。あの乳房を。目の前であのおっぱいを、見たい。都合の良いことにスタッフはスタジオの向かい側にある控え室へ入っていた。
本当にどきどきしていた。こんなに緊張するのは初めてかもしれない。脚ががくがく震えている。頭がふらふらする。おぼつかない足取りで少しずつ控え室へと近づく。ナミのいる部屋のドアをノックする。いや、しようとしたが空振りしてしまった。慎重になりすぎた。握りこぶしに汗がしたたる。もう一度ノックする。しかし、2回叩いたつもりが、1回目のノックはほとんど音が鳴らず、1回分の音しか響かなかった。
「どうぞー」
僕はゆっくりドアを開ける。そこにはナミがいた。椅子に座って脚を組んでいる。上半身をほとんど覆うようにある乳房は、組んだ足の両側に分かれて下がっていた。その上に黒々とした長い髪が乗っている。顔立ちは整っており、すごく大人っぽい。ナミはびっくりしたような、不審そうな目で僕を見る。
「君、誰?なんだか見たことあるなー」
「あ、はい、僕は、あのー、Booby Trapのファンでして、はい。それであのー、ナミさんに、あのー、お会いできないかと思いました」
僕は怪しい者だと思われないように必死で言葉を繋いでいったが、十分怪しい。
「あ、そうなんだ。入っていいよ、多分」
案外、簡単に控え室に入れてしまった。もちろん、スタッフにばれてはいけないのだろうけれど。
「君、どうして私たちが撮影してるって知ってたの?」
「実は僕、ここの上でアルバイトしてまして、まさかと思って、今日待ってたんです」
僕の話す内容は全くの支離滅裂だが、ナミはあまり人の話をきちんと聞いてはいないようだった。
「そうだったんだー。ここの上ってカフェだよね? どうりで君のこと見たことあると思ったよ。私、上のお店に結構お邪魔してるよー」
ナミは僕の顔をまじまじと見て、微笑んだ。どれだけ僕は鈍いのだろうか。どうして今まで気づかなかったんだろう。悔しい。
「それで君は私に会ってみて、どうしたかったのかな?」
核心。ここは正直に言おう。
「実はその大きな胸を直接見てみたいとずっと思っていまして……、それで今日来たんです」
「そっか。うんうん。いいよ、今は休憩中だし、次まで時間もあるから。君みたいに熱心なファンも初めてだから、いっぱい見てっていいぞ!」
「本当ですか? ありがとうございます」
それを聞いて僕は嬉しいような、泣きたいような変な気持ちになった。身体が熱い。熱を持った血液が体内を走る。
ナミは組んだ脚を解き、立ち上がった。その勢いで乳房が揺れる。ちょうど下のところで左右の乳房がぶつかり合った。
「じゃあ私は……こうすればいいかな?」
大きな乳房を持ち上げて、僕に向かってゆさゆさと揺らす。悪戯するような表情で僕を誘う。じっと見ていた。動くことができない。見ていることしかできない。この時間が僕にはとても長い時間に感じられた。
「もう5分もじっ……と見てるけど、見てるだけでいいの?」
ナミは僕の顔を覗きこんで、ささやいた。僕には30分にも1時間にも感じられた時間はそんなに長くなかったらしい。
「僕は見てるだけで幸せですけど……」
本音だ。いや、触れられたらとは思う。けれど、触れればそれが作り物だということがリアルに感じられてしまうだろうし、できれば我慢していたい。
「いいよ?触っても。わざわざ来てくれたんだしさ」
「じゃあ……」
僕はその言葉に甘えることにした。震え、汗ばむ手でナミの乳房を僕は撫でる。偽物だということを強く意識していたからか、自分のハードルが下がっていたみたいだ。思ったよりも本物の人間の肌のような質感。続いて乳首も触る。ナミの反応はない。そりゃそうか……。僕は一応聞いてみることにした。
「これって本物……ですか?」
ナミはにやりとして、
「本物だよ」
「へぇっ?!」
「と言いたいところだけど……作り物。男の子の夢を壊してごめんね。これはシリコンでできたリアルなおっぱいなんだよ。本物みたいでしょ?」
「はい、わかってはいましたけど……」
少しショックだった。予想の範囲内だけれど、それが確信になるとやっぱりショックだった。でも見るだけであれば、何の問題もない。僕、ポジティブ。
「もう少しだけ見ていてもいいですか?」
「もうすぐ次の撮影が始まっちゃうから、あと5分くらいかなー。それでもいい?」
もちろん。僕はナミの身体をまじまじと凝視した。今は僕だけのためにBooby Trapのナミが動いている。この状況だけで、僕は満足だった。帰った後で脳内再生できるようにじっくりと見た。
僕は最後に一応聞いてみることにした。
「あのー、今日はあのー、他のモデルさんは来ないんですか? 例えばユイさんとか」
「あ、ユイちゃん? ユイちゃんは今日の夕方からじゃないかな。そうだね……5時くらい。待ってれば会えるんじゃない? ユイちゃんのおっぱいは特別だからねー」
「はい、一番大きいですもんね!」
「君もおっぱい好きだねー。まあ、ユイちゃんのおっぱいはそれだけじゃないみたいだけどね」
ユイが来る。ユイに会えるかもしれない。これは大変なことになった。ユイに会える。
僕はナミの控え室を出て、とりあえず2階のカフェへ戻った。
5 ユイ
僕は夕方が待ち切れなかった。何度も時計を見た。それを何十回と繰り返したところで、5時になった。僕は下に向かおうとテーブルの上を片付けていると、入り口から見覚えのある顔が入ってきた。しかし思い出せない。なぜかこっちに向かってくる。頭はフル回転して、今向かってくる女性が誰か考えている。誰だったっけ。すると、その女性は隣に座った。
「お疲れ様、勉強ははかどったのかな?」
「えーと……」
「あれ? わかんない?」
「あ」
わかった。ナミだ。私服だからわからなかった。トップスはパーカー、ボトムスはカラータイツに膝上15cmくらいのチェックのミニスカート。結構可愛い。あの大きな胸は……ない。いや、ないわけではない。あんなに大きなおっぱいをさっき見たから、僕が麻痺しているだけだ。爆乳と言えるくらいの容量は十分にある。パーカーの中でその胸は主張し、胸元のスマイルマークのプリントが伸びて楕円になっている。
「ユイちゃん、来てるよ。これから撮影だから終わった後、そう、大体7時くらいかな。それくらいに控え室に行ってみるといいと思うよ」
ナミはわざわざ教えに来てくれたみたいだ。
「わざわざありがとうございます」
「いえいえ、がんばって。またお店に遊びにくるからその時はよろしくねー」
それだけ言うとナミはそそくさと店を出ていってしまった。7時か……まだ少し時間があるな。もう少し勉強することにしよう。
7時になった。広げた教科書とノート、筆箱の中身を片付ける。普段は全くしない勉強を今日はずっとしていた。きっと来週に控える中間テストはばっちりだと思う。急いで鞄の中に一式をしまい、カフェのみんなに挨拶してから店を出る。
僕は階段を降りた。撮影は終わったのだろうか。それともまだ終わっていないのか。ここで待ってみようか。廊下をうろうろしていると、スタジオのドアに小窓がついていることに気づいた。こっそりとそこから中の様子を見てみることにした。
中はまさに撮影中であった。手前にはカメラがあり、その向こうにユイがいる。ユイは乳首をいじっている最中であった。演技とはいえ、相変わらず悩ましげな表情をする。ずっと見ていたいが、小窓から覗かれているのがばれれば元も子もない。とりあえず隠れて、撮影が終わるのを待つことにした。
しばらくしてドアの開く音が聞こえた。僕は階段の踊り場に隠れていた。はじめはスタッフと思われる声が聞こえた。意外にも女性のスタッフが多いようだ。ドアが一旦閉じる。もう一度開いた時にそっと見てみる。ユイだった。僕が待ち焦がれていたユイが本当に現れた。ナミを見た時もたまらない気持ちになったが、今回は違う。別格だ。焦る気持ちを抑え、僕は静かに階段を降りていった。が、脚を踏み外し、階段から転げ落ちて頭を打ってしまった。かなり痛かったが、血は出ていない。大丈夫、落ち着け。控え室に入る要領はさっきと同じ。ノックを2回。今度はきちんと2回鳴った。
「はい、どうぞ」
綺麗な落ち着いた声だった。
「しついれいしまし!」
噛んでしまった。ユイは不思議そうに僕を見つめる。
ユイは椅子に座っていた。ナミも同じように椅子に座り、大きな乳房の存在感を見せつけていたが、ユイはそれ以上だった。その透き通るように白く、巨大な双球は床についてしまいそうなほど成熟している。肌が白いためか乳房の表面には血管が透けて見えていた。特殊メイクにしてはよくできているものだと関心する。また成熟した身体とは対照的なベビーフェイス。顔だけを見れば、まだ中学生と言われても疑えない。髪の毛はショートヘア。少し茶色がかっているが、それはきっと肌の色からみても色素が薄いことが原因だろう。瞳も少しだけ茶色い気がする。
「どちら様ですか? 新しいスタッフの方ですか? えと……どうしよう……大丈夫ですか?」
僕はその迫力に圧倒され、彼女からしばらく目を離すことができなかった。僕の感覚全てがユイに向いていた。彼女の問いかけに遅れて気づき、視線を合わすとさっきよりもずっと不思議そうな顔で僕を見ていた。
「あ、すいません。僕はBooby Trapのファンというかユイさんのファンなんです。それで一度お会いしたかったんです。僕は5人いるBooby Trapのモデルの中でもユイさんが一番好きなんです。なんていうか……演技もすごく上手いと思うし、それになんといっても胸が他の4人よりも大きい。それが一番のお気に入りポイントです。あとは――」
「あ……えと、ありがとう…………ございます」
ユイはうつむいて言う。何かまずいことでも言ったかな。
「すいません、急にお邪魔してしまって、いきなりファンだとか言われて困ったかもしれないですけど……」
「えと、大丈夫です。ありがとうございます。嬉しいです」
ユイは屈託のない笑顔を僕に返してくれた。
「えと、ファンさんのお名前は?」
「僕は悠也っていいます。ユイさんはユイさん?」
「えと、あたしは唯一の唯です。」
名前は人を表すというけれど、その通りだ。その胸の存在感、というより唯の存在が世界で唯一無二のものように感じられる。唯は僕の思っていたよりも、ずっと柔らかく優しい雰囲気を持った女性だ。少し無茶なお願いでも、聞いてくれるかもしれない。僕は彼女に勇気を出して言った。
「もしよかったら唯さんの胸、触らせてもらえませんか?」
「えと、胸ですか? あたしのでよければ……どうぞ」
Booby Trapのモデルの超乳が特殊メイクだということはもう確実だ。だけど、ナミが言っていたように唯の胸は僕にとって特別だ。もう作り物だと割り切って記念に触っておこう。僕は白く大きな乳房にそっと触れた。
「んっ…」
作り物にしては触感がリアルだ。先ほど触っているから作り物の質感は知っているのだけど。材質が違うのかな。乳房の先にあるピンク色の乳首を軽くつまんでみる。
「ひゃっ……何、するんですか……」
おかしい。この胸が特殊メイクなら感じることはないはずなのに。
「この胸って本物……じゃないですよ……ね?」
唯は下を向き、頬を紅潮させ、
「えと…………本物……です……」
と言った。
まさか。超乳はやっぱり存在しないと、当たり前のことを一旦、頭で認めてしまっているから、今言われたことを改めて認める余裕が僕の頭にはなかった。
「ほん、本物?でも、ナミさんは偽物だって」
「あたしだけ……本物なんです。あたし以外の4人はメイクなんですけど、あたしだけ自分のおっぱいなんです」
「じゃあ大きさを変えたりするのは? 空気を入れて膨らませたりしてるんじゃ」
「えと……大きさも自由に変えられるんです」
唯は恥ずかしさからか勢いよく椅子から立ち上がった。椅子が倒れる。そして自分の胸に手を添えた。
「えと、まず小さくしてみます」
「へ?」
僕は間抜けな声を出してしまった。
始めは何の変化もないように見えていた。が、数秒後、その巨大な乳房は急激に小さくなり始めた。小さくなる前は彼女の膝の位置まであった胸が段々と小さくなる。しぼむわけではない。きちんと張りは保ちながら、体積が胸部に吸いこまれていくようだ。そして、ついには乳房の膨らみがなくなってしまったのだ。胸にはピンク色の乳首が残るだけ。
「次は大きくしますね。どのくらい大きいのが好きですか?」
「……へぇっと……僕は、大き、ければ大きいほど……」
自分の顔を見ることはできないけれど、周りから見れば僕はしまらない顔をしていた、と思う。
「わかりました」
唯は僕に向かって微笑み、乳首を覆うように自分の手を胸の辺りに置いた。
「少し声出ちゃうんですけど、大丈夫なので、気にせず見ていてください。じゃあ……んぅっ……」
唯の手の中にある乳房は膨らみを取り戻し、そして急速に体積を増していった。
「んっ、あぁっ、あっ、ぁあっ、あっ」
控え室は、10畳くらいの床一面にカーペットが敷いてあって、鏡に化粧台、着替えをするための仕切りがあるだけ。部屋の大きさの割に余計なものはあまり置かれていない。そのせいで喘ぎ声が部屋中に響く。彼女は感じているのだろうか。乳房はどんどん成長する。腹、太股と隠される部分が増える。そうして見ているうちに、始めと同じ大きさの乳房が戻った。やはりたまらない。
「…っんぅ…………これでさっきと同じくらいっ……です……ここからさらに大きくしますから……あぁっ!」
唯の乳房はさらに膨らむ。乳首が床についてしまった。かと思うと成長しつづける乳房の体積に負け、すぐに乳首は隠れてしまった。乳房が成長するのは止まらない。
「だめっ、だめっ……ああぁっ」
身体からの長さも、乳房自体の膨らみもどんどん増す。僕は茫然としていた。唯から少し離れた場所にいる僕の方へ、侵食してくる生き物のようにも見えてくる。ついには唯の身体が自らの乳房の陰になるほど、膨らんでしまった。
「ゆぅっ……やさんっ……どうっ、ですかぁっ・……ゆぃのから、だぁっ……ゆいのおっ…………おっぱい……」
「きれいです……」
成長は止まった。唯の乳房、というよりは大きな乳房に唯がおまけとしてくっついている、という表現が正しいと思う。広い部屋の半分が唯の身体、主に巨大な乳房であるが。
「えと……、このままだと動けないので元の大きさに戻してもいいですか?」
大きな乳房の裏で唯が恥ずかしそうに言った。
6 唯と白昼夢
僕はさっきの光景が網膜に焼きついてしまっていたが、唯は胸の大きさを元に戻し、床に座りこみ、なんでもないように僕と会話を始めた。
「いつからそんなおっぱいになったんですか?」
「えと、胸が膨らみ始めたのが14歳の夏くらい。もっと前からブラジャーはつけてましたけど、ないようなものでしたから」
「でも、今はすごく大きいですよね……?」
「急激に大きくなり始めたのはそれからです。ひと月ごとにカップがひとつずつ上がっていくような感じで。その1年くらいは下着を買うのも一苦労でした。だって、中学生がするIカップのブラジャーなんてないんですよ」
「中学生で……Iカップ?!」
「はい……。その後、大きくなるペースは遅くなったんですけど、それ以上大きいサイズのブラなんか売ってないんですよ?」
唯は明るく当たり前のように話をするけど、僕にはまったく想像ができない世界だ。
「ある日、お風呂に入ってる時だったと思います。姿見で大きな胸を見ながら、こんな胸小さくなればいいのにって思って……その日はずっと湯舟に浸かりながら祈ってたんです。必死でしたから。でも、途中で諦めてお風呂上がっちゃったんですよ。小さくなるわけないって思って上がっちゃったんです。湯舟から出る時、少し身体が軽く感じたんですけど、それも気のせいに決まってるだろうし。でも、お風呂場から出る時、姿見を見てみたら胸が小さくなってるんですよ! 本当、夢って祈れば叶うんだなって思いました」
いや、普通は祈っても叶わない夢の方が多いと思うけど。
「きっと唯さんが特別だったんですよ。その後、大きくするのもできるようになったんですね?」
「そうです。大きくする時は……少し……気持ちよくなっちゃうんですけど…………。でも、普段はこの大きさじゃなくって」
胸を持ち上げながら唯は言う。
「もっと小さくしてるんですけどね。だってブラジャーが買えないから。今はこの大きな胸も唯自身だって思って気に入ってますよ。だからTrapみたいなサイトで誰かに見てもらえるのは、嬉しいです。特にあなたみたいな熱い人に…………」
「僕……ですか? 僕なんて……ただのファンのひとりですよ」
唯は潤ませた瞳をこちらに向ける。吸い込まれてしまいそうだ。
「えと……あの、えと……もう一度触ってください」
「いいんですか? スタッフの人が来るかもしれないですけど」
「大丈夫、今はカメラとかの片づけで、しばらくは来ないですから」
「じゃ、じゃあ……」
僕は唯に近づく。男の僕の手にも収まらないほどの乳房に、前から触れる。すべすべとした、透き通るような白い肌。比喩ではなく、本当に乳房には静脈が透けて見えている。僕はおもわず舐めてしまった。
「ひゃっ! あ、あの……えと……揉んで……もらえませんかぁ……」
「あ、ごめんなさい! 思わず……」
僕は何かの生地をこねるように、巨大な乳房を揉む。重量感があるけれど、揉んだ感じはふわふわとしていて心地よい。ほどよい弾力がある。揉む度に僕の指は埋まり、乳房はゆっくりと形を変える。
「……きもち……きもちいぃいっ、もっと、もっとぉ……」
「こう……ですか……」
にゅっ、にゅぅっ――ぎゅうぅっっ――
揉まれてひしゃげられ、歪んだ乳房を眺めながら、僕は興奮していた。思わず、手に力が入る。何度も揉むには少し堪える大きさだ。
ぐにっ――ぐにっ、ぐにぃっ、ぐにぃっ――
「ん、んっ! んうぅっ! ……んぅ……ぃやぁっ…………」
「今までずっと唯さんのおっぱいを揉みたくて。この時をずっと妄想してきました。これが夢でした。大好きです、唯さん……」
「そ、そうっ……なんです、か……」
「……僕に任せてください。唯さんを絶対に気持ちよくしてあげますから……」
「……おねがい……しますぅっ……」
僕は唯に優しく囁いた後で、大きく変形した乳房から、僕は一旦手を離し唯の乳首を弄り始めた。まずは軽くつまむように、触る。
こりっ、こりり、こりっ――――
「あぁっ! いいぃ、いぃっ、きもちぃいぃっ」
唯は淫らに喘ぐ。
「唯さん、どこが気持ちいいんですか……?」
「ぇぇえ……ひゃぅ……あぉ……あの……ぁあっ……」
「ここですよ……ここぉ……」
乳首をさっきよりも強くひねる。
「ああぁあぁ! だめっ、だめぇっ! ちっ……ちぃ……ちく、び……です……」
「そう、正解。じゃあ唯さんにごほうび、あげます」
乳首に指を埋めさせていく。人差し指の先から根元まで全部埋まってしまった。
「えっ、えっ、何っ、いやぁっ!」
埋めたまま僕は指をぐりぐりと動かす。
「ひゃあぁっ! きもちいぃよぉ……だめ、だめ、もぉ……だめ……」
「じゃあ次、これはどうですか?」
乳首を強く、ねじり、ひっぱる。
「それっ……それ、きもちぃいぃ! やめて……ぁぁっ、だめ……おねがいっ……もっと……」
こりっ――ぎゅぅっ――――こりっ、こりっ――ぎゅうぅぅっ――
「ぁあぁああっ! もぉ……もう、が、まん……できないっ……な…なめ、て……くら……さい……」
「わかりました……」
僕は床に身体を横にして、唯の身体を下から見上げるような体勢になった。この体勢になると余計に、唯のおっぱいの大きさが良くわかる。ここから右の乳首を舐めることにした。片方の乳首は指で弄る。乳首を舐める、いやらしい音が部屋に響く。
ぴちゃっ――ぴちゅっ、ちゅっ――ぴちゃっっ――
「んぅぅっ、はぁっ、はぁっ、だめっ、だめっ、はぁっ、はぁっ」
れろっ――れろっっ――れりょっっ――れろっ――
「ひゃあぁっ! あぁっ……ひゃぁぅ……イッ……ちゃぅ……イッ、ちゃう……よぉ……おっぱ、いぃっ、だけでっ……イッちゃう…………」
乳首を口に含み、転がす。そして吸う。度重なる快感に、唯の乳首は勃起していた。
「舐めたからですか? 乳首がこんな……大きくなってる……」
「んうぅぅっ! もっとっ! もっとぉおぉっ! すってぇ……いやぁあ……はずかしぃ……すって……」
ちゅぅっ、ちゅっ――ちゅうぅっ――じゅっ――
「いやぁっ……もっとぉ……つよくしてぇ……」
ちゅばっ――ぢゅっ、ぢゅばっ――――ぢゅっ、ぢゅっ――
「んぅっ……で……でちゃぅ…でちゃぅよぉ……お乳が……でちゃう…………」
口の中に甘い液体が入ってきた。なんと乳首からミルクが出たのだ。指で愛撫していた反対側の乳首からも、我慢できずに漏れてしまっていたみたいだ。
「ミルクも……出るんですね……おいしい………」
「え……とぉ……気持ちよくなると……出ちゃうんです……」
「もっと吸ってもいいですか?」
「……はい……あたしのこと……犯してください」
ミルクを飲むために、乳首に強く吸いつく。すごく濃い。母乳もこんな味だったなのだろうか。
ちゅぅうっっ――――ちゅぅうっ、ちゅっ、ちゅぅぅ――――
「もっとぉ…もっとぉぉ…だめぇっ…もう…がまんできなぃぃ…あぁぁっ……」
ぢゅばっ、ぢゅっ、ぢゅぅぅ、ぢゅぅ、ぢゅぅぅぅ――
「だめっ、だめっ、ぁっ、イっちゃうっ、イッちゃうのっ、だめっ、だめぇっ、だめぇっ!」
僕も我慢が出来なくなってきた。両方の大きな球体を引き寄せ、乳首も両方口に含む。口の中で乳首を転がしながら、吸い上げる。
ぢゅぅぅぅっ、ぢゅうぅっ、ぢゅぅぅぅぅっ
「あぁっ、もぉっ、もぉっ、だめっ、だめっ、イクっ、イッちゃうっ、もっとぉ、もっとぉっ」
ぢゅばぁっ、ちゅぅぅっ、ちゅぅぅ、ぢゅぅぅっ
「だめぇぇぇっ! イクうぅぅうぅ! あぁぁあぁぁっ!」
その時、口の中にミルクが勢いよく噴き出して、あっという間に口から溢れ出てしまった。唯は焦点の合わない目で遠くを見ている。部屋中にミルクの匂いが充満する……。
「唯さん…おいしいです」
「気持ち……よかった……あなたの言葉通りでしたね…………」
「だって……唯さんのこと……好きです……から……」
僕は、甘い香りに、包まれながら、何故か、意識が、遠のいて、いった。
7 夢のあと
僕は何人の人に囲まれて目を覚ました。そこにはさっき僕と淫らに絡みあった、唯とBooby Trapのスタッフらしき人がいた。
「あれ?! ここは……」
「大丈夫か? 階段のところで人が倒れてるって、ユイちゃんがあんた見つけてさぁ。みんなでこの控え室に運んだんだよ」
僕は起き上がって周りを見た。さっきまでいた控え室と、ほとんど変わりはない。変わったところといえば、控え室の角に撮影で使われたであろう、偽物の乳房があることと、唯の胸が普通のサイズになっていることだった。
「夢、かぁ……そっかぁ……」
「あんた何言ってんだ?」
「いや、ごめんなさい。僕は大丈夫なんで、帰りますね……」
そうだ、そんな上手くいくわけがない。超乳が本当に実在するわけないんだ。夢にしてはリアルだったけど、夢とは往々にしてそういうものだ。そういうことにしてお
「すいませーん!」
振り返ると唯が走ってきた。
「どうかしました?」
「あの、これ落としてたみたいなんですけど」
「あ、ありがとうございます」
唯は僕に折りたたんだメモを渡した。きっと鞄の中にあったメモでも、落としてしまったんだろう。僕はそのメモを無造作にしまった。
「それじゃ」
唯は控え室へと戻っていった。
すっかり生気を抜かれてしまったようだ。夢……人の夢で……儚い。だめだだめだ。考えれば考えるほど、切なくなる。考えるのやめよう。僕はさっさと家に帰ることにした。
その夜、家で渡されたメモを思い出した。何が書いてあるメモだったんだろう。多分、終わった課題の内容とかが書いてあるんだろうけど。鞄の中を捜してみる。あった。4つ折りになったメモをひとつずつ開く。内容は……っと……。メモには携帯電話の番号とメールアドレス、それとメッセージが書いてあった。
――大丈夫、あのことは夢じゃないですよ。またあいましょうね♪
唯