超乳ハピネス!

盛眼瑠笛 作
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「あーあ…これからどうしようか」


そんなことを呟きながら夜の街中を歩いているのは、柳瀬千秋(やなせ ちあき)。16歳で高校1年、だった少年である。

彼は今、行くあてもなく街をさ迷っていた。家出してしまったのである。

千秋は幼い頃に両親が離婚してしまい、母親に引き取られた。だが女手ひとつでは生活が一向によくならないこともあり彼の母親は疲れ果て千秋に辛く当たるなどしていた。

そんな最悪の家庭環境に耐えかね、学費が払えず高校を早々に中退してしまったのを機会に家を飛び出してしまったのである。


「はあ…でもあんなとこへ戻るよりはマシかな」


千秋は路地裏に座り込んだ。家から離れようと一心不乱に走っていたこともありずいぶん疲れてしまっていたのだ。腹の虫もなっている。


「……このまま、俺死ぬのかな」


千秋には、もう家を飛び出した以上他に身寄りはない。父親の居場所もわからないし親戚のあてすら全くない。

このままでは冗談ではなく本当に野垂れ死にそうだった。


「終わったな、俺の人生……短かったなあ」


寂しい虚ろな目をしながら空を見上げ黄昏ていた。他にやることもなく数十分もそうしていた時、


「ねえ、あなたどうしたの?」


千秋は、もしかしたら自分のことかと思い振り向くと、そこにはかなり背の高い、白衣を着た女がいた。


「俺のこと?」


女は茶髪のセミロングで、癖っ毛の目立つ少々清潔感に欠けた感じだったが美人だった。赤い眼鏡も似合っている。


「もしかして、あなた帰る場所とかない感じ?」


妙な聞き方だったが確かにそうとしか言えないので、はいと言うと、


「じゃあさ、よかったら私のとこに来ない?」










千秋は目の前に出されたパンやら缶詰、弁当をがっつくように食べていた。


「あむあむ…!うまい…ありがとうお姉さん。死ぬかと思ったよ」


咀嚼も止めないまま礼を言うと、女はテーブルの向かい側で微笑みつつ頷いていた。


「どういたしまして…まあお姉さんもいいけど、私は科学者の小池ユリアって言うの。ユリアとでも呼んでね」


路地裏の暗がりではわかり辛かったが、まだ若く妙齢そうだった。せいぜい20代後半といったところだが、薄汚れた白衣と乱れた髪型のせいでそれ以上に見えなくもない。


背丈は中肉中背である千秋より一回り大きく、180cmくらいありそうだ。


「でも、どうして俺を助けてくれたの?」


「その前に説明するわ。ここはね、私の研究室なの」


千秋がユリアの車に乗せられ向かったところは、街から外れた郊外にある建物だった。見た感じはそれほど大きな施設ではなかったが、地下もあるので面積はかなり広く、中も綺麗に掃除されていた。

どうやら彼女はここでとある研究をしているらしい。


「そこでね千秋君。今日からここで暮らしてもらっても構わないんだけど、その代わりひとつお願いがあるの」


「お願い?助けてくれたんだから何でも協力するよ」


千秋は、ユリアには既に自分の境遇について話していた。それでも赤の他人である自分を匿ってくれることに対しては感謝していたし、そのためならどんなことも厭わないつもりだった。



「私のね、実験に協力して欲しいの」


「実験って?」


「まあ、主に投薬かしらね」


それくらいならお安い御用だ、と千秋は思った。

さっきまで野垂れ死ぬ運命だった自分には、もう失うものは何もない。実験体くらい怖くはなかった。


「まあ、死んだり怪我したりするような実験はやらないと思うし安心して。後は、家の用事とかもやってもらうと思うけどいいわよね?一応この研究所、私の家でもあるのよ」


やります、任せて下さいと、千秋は二つ返事で快諾した。少なくとも貧しい上に母親にきつくいびられる前の環境に比べたら天国も同然とまで考えていた。



「よかった!じゃあ早速、今から始めてもいいかしら?」



早いな、とは思ったが特に気分が悪いわけでもなかったのでそのまま実験に協力することにした。










「じゃあまずは、この薬を飲んでちょうだい。」


渡されたのはコップに入った白い液体だった。少々不安だったが飲んでみると薄いヨーグルトのような味しかせず拍子抜けしてしまった。

飲み干した直後に気分はどう?と聞かれたが特になんともなかった。


「では、ちょっと注射もさせてもらうわね」


腕に消毒液をかけ、注射針を刺す。液体を注入する時間は長めだったもののそれほど痛みもなかった。


「はい、おしまい!お疲れ様。後は朝まで安静にしててね」


予想以上に早く終わった。時間にして5分もかかっていない。

何はともあれ安静にするように言われたのでもう寝ることにした。


「こんなベッドしかなくて悪いけど、ゆっくり休んでね!」


地下に行くとかなり大きなベッドがあった。ふっかふかとまでは言えないが、千秋一人で寝るには十分過ぎるほどであった。


「あ、悪いけど、寝巻はつけないで寝てもらってもいい?実験のためだから!」


地下の寝室は暖房がきいている上、毛布も暖かいのでパンツ一枚で寝ても問題なかった。千秋は言われた通りにした。


「じゃあ、今日はありがとうね!おやすみー」


こちらこそと返しながら、出ていくユリアを見送った。疲れていたのか、すぐに眠ってしまった。

ただ眠りに落ちる最中、妙に胸がむず痒く、火照っていると感じたがすぐ収まったので気にもしなかった。










「お…やった!実験大成功ね!」


目を覚ますと、目の前にユリアが声を挙げ喜んでいた。昨日の実験がうまくいったらしかった。

千秋は、ここはどこだと一瞬思ったが、すぐに昨日のことを思い出した。


「そうだ、シャワー浴びて来たら?昨日体洗えてなかったし」


そういえばそうだったと、寝ぼけた頭のままユリアに案内されるままに歩き出した。妙に体が重く、疲れていたにしても変だなと思いながら。


「はい、ここがシャワールームよ。遠慮なく使ってね」


寝室と同じく地下にあるシャワールームに入る前に、近くにある洗面台の鏡を見た。すると、


「え……だ、誰?」


千秋は、鏡を見て思わず息が止まった。

そこには、巨大な胸を持った謎の女が映っていたのである。