「では、本当にプロフィール通り250kgもあるんでしょうか?ではどうぞ!」
「は…はい!」
千秋は巨大なハカリの上に黒いビキニに包まれた胸を乗せる。ハカリはユリアの研究所から持ってきたものだ。
「お…おお!目盛がどんどん…」
両腕に抱えられた超乳が、地面にめり込まんとばかりに測り皿にゆっくりと重みをかけていく。
そして、じわじわと進んだ目盛が止まる。
「これは……二百……なんと!277kg!なんと公式の250kgよりも重い277kgです!!!」
周りの芸能人や観客がおおーとどよめき声をあげる。
「すごいですねー!こんな重たい胸本当に支えてるんですか!?」
「は、はい……ほら、ちゃんと持ち上げられますよ」
下から両腕で片乳一個ずつを持ち上げると、はたまた歓声が起こる。見事過ぎて感動的だったのか拍手まで湧き起こってくるほどだ。
「え、てことは体重も270kg以上なんですか?」
「そ…!それは秘密です!」
愛想笑いながらも千秋は慌ててお茶を濁した。
「お疲れ様ー!これテレビに流れちゃうのよ!びっくりだわ!」
「ありがとうユリアさん。でも、みんなの前でおっぱい測るなんて…」
千秋は恥ずかしそうに顔を赤らめながらペットボトルのスポーツドリンクを飲み干す。
先ほどまで千秋は、とあるテレビ番組の収録に参加していた。今は控室で休んでいるところだった。
千秋の超乳っぷりはグラビア界のみならず、世間一般でも有名になりつつあった。何しろ200cm以上の胸など外国人でも滅多にない特大サイズなのだから無理もない。
深夜のグラドル特集の他、今回のような、ワンコーナーだけだが地上波のゴールデン番組にも出演できるようになったのだ。
「かわいい上にこんなおっぱいしているんだもの!ほっとくわけないわ!」
「はいはい、ダメだから!」
千秋はどさくさに紛れて胸を揉もうとしたユリアを、乳を当てて跳ね飛ばした。ユリアは大きくのけぞって壁に激突した。
「もう……ひどいんだから!」
言葉とは裏腹になぜか嬉しそうに笑うユリアだがいつも通りなので気にしてはなかった。
「それよりさ、ユリアさん。最近胸があんまり成長してない気がするの」
「ん…そう言えばそうだったわね」
現在のユリアの体は、身長184cmで上から264、72、112である。重さは先ほど言ったように277kg。また一段と大きくなってしまった。
だが、ここまで成長して以降数週間経つが、ほとんど数値は変わっていないのだ。
「もしかして、成長がようやく止まったのかもしれないわね」
「……よかった。このビキニこれ以上きつくなったらどうしようって思ってたし」
服もそうだったが、先ほどごまかしていた体重も気掛かりになっていたことだった。
実は、胸を除く千秋の体重は現在80kg弱で、胸と合わせると350kg以上である。
千秋自身は肥満とは無縁な体だが、身長が高く全体的に肉の付いたむちむちな体型をしている上、尻が大きいのでどうしても重くなってしまう。
その上とんでもない重量を誇る超乳の重さまで含めると相撲取り顔負けの体重になってしまう。仕方ないとはいえ正直千秋はこれ以上重くなるのは少し気に入らなかったのだ。
「男の時は気にしてなかったのに……頭の中も女の子になってるのかな?」
もちろん、本体の何倍も重い超乳をぶら下げても平気なのはますます発達している筋肉のおかげである。腹筋すら割れてない柔らかそうな見た目からは想像できないが。
ちなみに乳房を支えるクーパー靭帯も信じられないくらい頑強になっているとのことである。
「じゃあ、次は雑誌の収録よ!次が最後だからもう一息よ!」
「はーい」
千秋はおもむろに立ち上がると控室の扉へ向かう。しかし、
「………ごめんね、ユリアさん。もう通れるから」
実は入る時もそうだったのだが、横向きでも胸がつっかえて出辛かった。
「……今度はもう少し扉の広い控室頼んでおくわね」
「ユリアさんまだかなー」
千秋は、関係者専用ロビーで待機していた。ユリアが番組の今後の打ち合わせのために急に呼ばれたのだ。
人手不足とはいえ芸能には素人のユリアにマネージャーのようなことをさせてしまうのは気が引けた。
「……みんなこっち見てるな。当たり前か」
千秋は超乳な上、今はビキニ姿。既に芸能関係者には名は知れてはいるが、生で目にしたら振り向かないわけがない。
あり得ないほどのサイズの超乳に全体的にほどよく脂肪の付いた外国人のようなグラマラスな体型。そして日本人特有の黒髪とあどけない顔。
千秋の人気の秘密は、これらの相反するような要素が奇跡的に組み合わさっていることなのかもしれない。
うっかり自分を見てくる人と目が合わないように遠くを見ていると、それは突然現れた。
「柳瀬千秋!久しくね!ここであったが百年目よ!」
えっと思い声がする方を振り向いた。
「……あの、どなたですか?」
その人物は千秋の真正面、しかもわずか50cmほどの距離にいたため、胸に遮られ姿が見えなかった。
「………ふ〜ん。そのばかでかい乳のおかげで見えないっていうの?文字通り私なんて眼中にないのね!」
声の感じからただならぬ雰囲気を感じたが思い出せなかった。仕方なく近くのソファーに腰かけ視界を確保するとようやく記憶が蘇った。
「ええと……篠崎ユキさん?」
「そうよ!!!よくも忘れていたわね!」
篠崎ユキ。千秋が初めて撮影した時に鉢合わせたクイーンズプロダクションのアイドルだ。どうやら同じスタジオだったらしく前と同じ白いビキニを着ている。
102cmのバストを誇る「今をときめく奇跡の爆乳グラドル」なのだが、千秋に比べると貧乳に見えてしまう数字ではある。
「ね、ねえ……あなたまたでかくなってない?」
「は、はい…少し」
あの時会った時は、身長177cmの221、67、99。今は184cmの264、72、112なので少なくとも二回りは大きくなってることになる。
「そう言えば256cmだったわね……どうせそれ豊胸なんでしょ!偽乳じゃないならそれしかあり得ないわ!短期間でそんな大きくなるわけないでしょ!」
なるわけないわけではなく、本当に大きくなったのである。あまりの剣幕に、急成長遺伝子のせい云々と話そうかなと思ってしまった。
しかも公式プロフィールはまだ更新していないので256cmすら古い小さめの数値となってしまっている。
「あんたのせいでねえ……私の仕事さっぱりなのよ!グラビアも最近みんなあんたのばっかりで全然オファー来なくなったし!どうしてくれんのよ!!!」
恨み言を言いながら迫ってくる。目には涙を浮かべており、茶髪のポニーテールまでわなわな震えていた。
「悔しい……悔しい!なんであんたみたいな新人にみんな取られるのよ!私だってグラビアアイドルになるために苦労したのに!!!」
周りに人が集まり始めるが誰も助けに来ない。
「あんたなんか……あんたなんか………!」
千秋はまた胸を揉まれる、と思い目をつぶった。その時、
「やめて下さい。何をやっているんですか」
誰?と思って横を振り向くと、そこに立っていたのは見覚えのある人物だった。
「あ……細川歩(ほそかわ あゆむ)!?」
篠崎ユキはあわてて千秋から離れた。
細川歩とは、ここ最近千秋とは別方向で人気のアイドルである。千秋も女体化前から名前だけはよく知っていてテレビでもしばしば見ていた。
年齢は14歳。ショートボブの赤みのかった髪と150cmという小柄さが特徴で、デビューから間もなく巷で人気となった、いわば正統派アイドルである。
なので当然千秋みたいに水着のグラビアなどは出しておらず、今の服装もピンク色のフリルを基調としたアイドル衣装である。
「千秋さん困っているじゃないですか。まずは落ち着いてください」
穏やかだが、毅然とした態度で篠崎ユキを諭す。
「な…何よ!あなたには関係ないでしょ!ほっといてよ!」
篠崎ユキは気まずいながらも震え声で反駁するが、
「関係なくないですよ。私も千秋さんと同じハピネス所属なんですから。ほっとけません」
すかさず返す歩。そう、見覚えがあるというのは単にテレビで知っていただけではない。千秋と歩は同じ事務所のアイドルなのだ。
実は先ほど千秋が出演していた番組にもレギュラーで出ており、先ほどまで同じスタジオで収録していたのだ。
「だ……だからって!あなたが関わっていい問題じゃないでしょ!これはね…グラビアアイドルとしての……!!!」
「…………!」
「あ…歩ちゃん」
歩は黙って千秋の方へ駆け寄り、肩に手を乗せた。そして、
「…………!!!」
そのまま無言で篠崎ユキを睨み続けた。
「な…なによぉ!」
顔立ち自体は幼いが、今は険しい表情をしており目力も強い。
静かだが、重い圧力。これだけ見ると14歳の少女とは思えない。
「………じゃ、邪魔したわね!それじゃあ!」
篠崎ユキは耐え切れなくなったのか、踵を返して逃げるように立ち去った。後は彼女の、マネージャーどこーという声がこだまするだけだった。
「行ったみたいです……」
歩のこわばった顔が元に戻った。
「………ふう、怖かった」
千秋は安堵した。あのまままた胸を揉まれでもしたら前みたいな大惨事になりかねない。
「ふふ…ありがとう歩ちゃん。助かったわ」
振り向いて笑顔で礼を言おうとすると、
「いえ……ではお疲れ様」
「あ、ちょっと……!」
ロクに顔も見ずにそそくさと行ってしまった。休憩中でまだ収録があるのか急いでスタジオの方へ消えていった。
「歩ちゃん……」
テレビやスタジオでは愛くるしい表情と可愛らしい声で元気の良い様子を見せるのだが、今の歩は終始伏し目がちで声のトーンも低く、暗そうな印象だった。
疲れていたのかもしれないが、どうにも千秋は歩に他人行儀な態度を取られている気がしてならなかった。
先ほどの収録の時も、
「本当に大きいですね……本物なんですか?」
「はい…間違いなく天然のおっぱいです!」
司会者の質問に無難に答えていると、
「ほお…じゃあ確かめてみましょう!歩ちゃん、どう?触ってみます?」
「………い、いいえ!わ、私は遠慮しておきます〜大き過ぎてちょっと怖い!」
冗談っぽく返していたが、あの時一瞬本当に怯えたような表情をしていたような気がする。やっぱりこの巨大な胸が怖くて近寄りがたいのだろうか。
もしかしたら、歩の愛くるしさは表の顔で実は裏には隠された本性があるのかもしれない、とまで邪推してしまう。だが恩人に対して失礼なことを考えるな、と反省した。
「助けてくれたのは嬉しいけど……なんだかねえ」
「ふ〜ん。で、もしかしてその歩ちゃんに嫌われてるかもしれないの?」
「うん、でも嫌われてるかどうかは……あん!」
ユリアと千秋はシャワールームにいた。千秋の体の検査のためだ。
「嫌われてたら……助けてくれないんじゃ……はあっやあん!」
千秋の胸は、触手に絡まれていた。乳首には既に搾乳機が取り付けられている。
胸と体の成長が止まり始めたということで、一度体の状態を検査しようということになったのだ。
何しろ最近は千秋もアイドル活動で忙しくなり、検査に取れる時間も少ないのだ。
「じゃあやっぱり、同じ事務所仲間として最低限の義理を果たしただけってとこかしら。とすれば千秋ちゃんの言う通りおっぱい怖いのかしらねえ」
「だとしたら……ちょっと悲し……あっ来る……おっぱい来る……」
触手は既に搾り出すような動きに入っている。
「ひゃあああ!!!!ミルクでる!ミルク!いやあ!あああああん!!!」
絶頂が訪れ、噴乳が始まった。搾乳機が母乳を吸い取るが、吸い取り先は壁ではなくユリアの近くにあるタンクだ。
「はいはい。たっぷり出しましょうねー」
検査の一環として、母乳は一定量採取され成分を調べることなった。また、当分1回ごとに出す母乳量も測量される。
ちなみにオナニーの際には母乳は壁を通じて排水溝へと捨てられている。千秋はそれを知った時は残念がったが、全て貯めててはキリがないとユリアに諭され納得した。
「それにしても……歩ちゃんたら篠崎ユキを目だけ追っ払ったんだっけ?見た目によらず案外強いのかもね。まあでも……」
改めて千秋の胸をまじまじと見つめる。
「とてつもなく重くて大きい上にミルクまで出る………怖くて当然かもね」
ユリアは、270kg以上の超乳を豪快に揺らしながら至福の表情で喘ぐ、身長184cmの巨大女を見ながら呟くのだった。
「はあ……はあん!私のミルクぅ……誰か……あん、やあん!!!飲んで、くれないかな………」