超乳ハピネス!

盛眼瑠笛 作
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「んん……」


千秋はベッドの上でうつ伏せになりつつ呻っていた。当然、乳の上に乗っかっているという形でだが。

陰鬱そうに顔を歪め、ただただ体の負担を少しでも和らげようと力を抜いて横たわっている。


「大丈夫千秋ちゃん?今薬持ってきたから」


ユリアは心配そうに声をかけた。


「う〜ん……大丈夫じゃない…お腹痛い…」


「………やっぱり生理は慣れないわよね」


千秋は今、生理中だった。女の体になってしまったのだから、これも当然の運命と言えた。

女体化して最初の数カ月はなんともなかったが、女性としての性機能が働きだしたのか、ついに来てしまったのである。


「うう……痛い……ふう…はあ…ふう……」


薬を飲んだが、なかなか痛みは和らがない。

生理の苦しみは、男が金的を蹴られた時の痛みが1日中続くようなものと聞いたことがあったが、確かにそんな感じの鈍く深い痛みが体中に響いていた。

特に腹と頭の痛みは激しく、風邪をひいた時の苦しみを二回りほど悪化させたような気分の悪さだった。


「まだ生理って終わらないの…?1日だけじゃないの?もう嫌…痛いよ…」


男だったら一生味わうはずのないもの。まさか自分が体験するとは夢にも思っていなかった。

股間から血だまりが漏れた時は一瞬死を覚悟するほどの恐怖を覚え、怯えながらナプキンを着けたほどだった。


「4日から7日くらい続くのよ。女の先輩として助けてあげたいけど……今はなんとか乗り越えて、千秋ちゃん!」


涙目になって弱音を吐く千秋だが、ユリアはこれ以上は何もできない。初潮なのもあるのか千秋の生理は重く、薬も大して効いていない。

ならば、女の避けられない痛みを耐え抜かせなければと考えていた。


「千秋ちゃん、私の最初の生理は11歳の頃だったのだけど、いきなり血が出て怖かったわ…あれは確か急にトイレで……」


「う〜ん………」


そこで良かれと思って自身の体験談を聞かせようとするが、千秋にじっくり拝聴する余裕はなさそうだった。










「千秋さん!千秋さん!今日もしましょう!」


控え室に入るなりすでにペニスをスカートからはみ出させながらせがんでくる歩。だが、千秋は今日は生憎の様子だった。


「ごめん、歩君……今日はダメなの…」


「えっ……どうしてですか!?僕、何かしました……?」


この世の終わりのような顔をしながら、かすれたような声で尋ねる。


「その……今日は……あの日なの。女の子の日……」


「女の子………あっ」


歩も流石に察することができたようだった。


「た、大変ですね。僕は男なのでどんな辛さかはわかりませんけど……お大事にしてください」


「ありがとう歩君……」


千秋は崩れるような姿勢で座り込んでいる。体調がすぐれない中でグラビアの仕事を無理にこなしていたので疲労困憊なのである。

たとえ生理でも人気グラドルである千秋は急に休むことは難しい上に、苦しみで歪んだ顔を晒すわけにもいかないので無理に元気そうに振る舞ったのでなおさらであった。


「あの…よかったら、撫でてもいいですか?」


「えっ……撫でる!?」


千秋はきょとんとした。


「はい。確かその痛いのは、誰かに撫でてもらったら良くなるって聞いたことがあります」


千秋自身も男の時にそんなことを耳にしたことがあった。しかし具体的に体のどこを撫でるかまでは自分でも見当がつかない。


「じゃ、じゃあお願いしちゃおうかしら?」


「は、はい!!!」


歩は待ってましたとばかりに元気に返事をした。愛する人が滅入っているのを助けてあげられることが何よりも嬉しそうだった。


「で、でもおっぱいはやめてね……触ると痛いの……」


「は、はい……」


一瞬手を伸ばしかけていたが、慌てて胸から手を引っ込めた。


「では、頭から……」


千秋の黒光りする髪に手が触れる。一瞬鋭い軽い痛みが走ったが、すぐに収まった。

ユリアによる手入れ以外に髪を他人に触らせたことはなかった。ましてやこのようにじっくりと頭を触れられたこともない。


「千秋さんの髪……ふわふわですね。柔らかい……」


「……ありがとう」


「そ、それで!気分はどうですか?」


「うん…ちょっとだけ落ち着いたかな?」


匂いだけなら度々嗅いでいたが、こうして直に手に触れたことはあまりなかった。

まるで母親が子供にするように、優しく丁寧に頭をなぞっていく。


「歩君……ふう」


「ん?どうかしました?大丈夫ですか?」


「大丈夫……ちょっと、気が抜けちゃって……」


千秋はまどろみはじめていた。歩に頭を撫でられたことで安心しきってしまっていたからだった。

思えば、母親にこうして撫でてもらったのはもう何年ないだろう、と昔のことにも思いを馳せ始めていた。


「次は……背中しますね」


「……うん、お願い」


歩は千秋の背後に回り込むと、背中をまじまじと見つめた。

今や身長は190cmを超えている千秋だが、やはり女なのかその背は思いのほか狭く見えた。生理で気が滅入っているのもそれに拍車をかけた。


「いきますよ、千秋さん……」


歩はゆっくりと、背骨に沿うように手のひらをそっと上下に下す。


「んっ………!!!!」


千秋は、肩を震わせた。痛みがあったわけではない。


「す、すべすべですね……肌綺麗です……」


「さ、触っちゃ……んん………」


背中に触れられた刺激は、くすぐったさの混じった快感として、千秋の脳に伝わった。

生理の痛みもそれに紛らわされるかのように薄らいでいく。


「んん……!いい……歩君、優しい……!」


もちろん、普段乳を刺激される快感に比べたら遥かに弱いが、そもそも快感の種類が違った。

乳の快感を喜ぶ震えるようなもの、とするなら、今感じているのは揺りかごの中にいるかのような柔らかな安心感だった。


「千秋さん……」


「あ、歩君……」


歩の顔が首越しに迫ってきた。背中にぴったりとくっついてきたのである。

千秋の顔に頬を擦り付けるようにし、脇腹に近い部分を引き続き撫でている。

同時に背中に触れた半勃ちのペニスが、いい具合に温めてくれる。


「生理、辛いと思いますけど、僕はすっと千秋さんと一緒にいます。」


「や…あんっ」


歩の小ぶりな唇が触れる。


「何にもできないかもしれませんけど……僕、千秋さんが好きですから……」


「…………!!!!」


千秋の頭の中で、何かが緩やかに解けた。もやもやと絡まっていた糸くずのようなものが。


「……んぐっ……ありがとう、歩君……ぐすっ、私も、わたしも……歩君、好き……だから…ふっ…うっ……もう少し一緒に、いて……?」


「千秋さん………」


千秋は今の今まで流したことのない涙を目に浮かべていた。女体化してから一切流したことのない、男の頃から数えても5年は見ていないものだった。

それに洗い流されるように、生理の痛みも今は消えていた。










「すー…すー……はああん……やっぱりパンツいい匂い……」


千秋はベッドの上で静かに悶えていた。手にしているのは女物のパンツである。

だが自分のものではない。歩のパンツである。


「やっぱり……オスの刺激的な匂いが……はああ…お腹気持ちいい……」


実は先ほど撫でてもらった別れ際に、千秋の方から譲ってもらうよう頼んだのだ。


「もう、行っちゃうの……?」


「ごめんなさい千秋さん……できれば1日中一緒にいたいんですけど……仕事ですみません」


「いいの……でもその代わり………その……歩君?この間下着あげたわよね?」


「はい……すごく気持ちよかったです。それで…?」


「あ……歩君のパンツ……ちょうだい!」


「え…僕の、ですか……!?」


こうしてその場で歩のパンツを譲り受けたのである。おかげで歩はノーパンで次の現場に出るはめになってしまったが。


「ふう……こびりついた精液の匂いも……たまらない………嗅いでる間はだいぶ痛いのもマシになるし……歩君ったら……最高……好きよ」


事実、歩のパンツを嗅いでいる間は生理の痛みも和らいでいた。どうしてかは不明だったが、今朝飲んだ薬よりは良さそうだった。


「んんっ……ん……おっぱいも……喜んでる………」


歩の匂いに脊髄反射的に反応したのか、超乳の先端から母乳が断続的に出てくる。胸の痛みもかなり引いたようだった。


「千秋ちゃ……あっ!何してるの!?」


「あっ……ユリアさん!!!」


急にユリアが部屋に入ってきた。

歩のパンツを嗅いでいるなんて知れたらまずいと思い、咄嗟にパンツを谷間に隠した。


「そ、その……何もしてないわよ」


「何言ってるの!ミルク漏れてるじゃない!」


「ミルク………あ、ほんとだ」


どうやら漏れ出していた母乳の方が気になっているようだった。


「また妙な現象が起きたわね……生理中に母乳が勝手に出るなんて……」


「そ、そうね………」


内心では、ユリアに間違った研究成果を与えてしまいそうなことを詫びていた。


「まあ、でもおかしくはないかもね!」


「ど、どうして?」


妙に納得した様子を訝しがると、


「だって、生理っていうのは子供を作る能力を発達させる生理現象なのよ!いつでも妊娠できるように女性としての機能を整えているの。母乳が出るのもそのひとつかもね!」


子供……妊娠……その単語に反応するように、腹の底から鼓動が鳴った。

そういえば女になってからどれくらい経つのだろう、とふと思い出していた。