タイトル未定

-序章-

長月あきひろ 作
Copyright 2002 by Akihiro Nagatuki all rights reserved.

「えっと、96cmね!」
「おぉー〜」
保健室でちょっとしたざわめきが起こった。
…いや、なんかみんなの目の前だと恥ずかしい。

「さすが、アメリカンハーフは体型が違うわね」
「そ、そうかなぁ…」
私の名前は神城(かみしろ)アイルです。
見た目で分かるかもしれませんが、純日本人ではありません。
もちろん、この金髪も染めてません、母親譲りです。

「先生よりも胸大きいもんね、学年でも一番だね」
「いや、先生…気にしてませんから」
そうだよ、気にしてませんよ。
むしろ私が気にしているのは別なのだ。

今日は学校の身体測定の日なんです。
私は3年生だから、もう中学で身体測定なんてないよね。

「アイちゃん測定表見せて〜」
クラスメイトの中でも特に大親友の悠ちゃんは私に寄ってきた。
測定表には1年生の時からの身体測定が記録してあった。
私は彼女にその紙を差し出した。
「あたしも見せたげるっ」
私も悠ちゃんから彼女の紙を受け取った。

「すごぃ、アイちゃん。去年よりもバスト8cmも大きくなってるじゃん!全然勝てないなぁー。」
まるで、テストの点数のようにサイズを比べていた。
比べるのは勝手だけど、あまり大声で言わないでくれ。

「あれ?」
「ん、なに?」
「アイちゃん、背が変わってないね。」
グサッ!!分かってはいるが、言われるとショック。
私が気にしているのは胸よりも身長なんです。
「大丈夫、だいじょうぶっ!あたしだって今年は背が2cmしか伸びなかったし。ほら、ここ!ね〜」
「私は2cm低くなった…うぅ」
「あ、はぁ…」
能天気な悠ちゃんもさすがに言葉を失ったご様子。ほんと、ショックなんだよ。
「でもおっぱいも大きくなってるんだから、まだまだ成長期だよ。あたしら
アイちゃんなら、そのうち胸みたいにグーンって!!」
それが、そうもいかないんだよね。たぶん…
あるコトがキッカケで………

………………………

「ただいま!!」
自分の部屋に入るなり、ベッドに倒れ込んだ。
え?自分の部屋に入って挨拶するのはおかしい?…おかしくないよ。
「オカエリ…サイ」
ほらね、待ってる人が居るから。まぁ、人じゃないんだけど。
彼は見た目どおりの小人君です。私は妖精さんって思ってるけど。
「カイルくん、パールどこ行ったの?」
彼…カイルくんは、ちょこんと顔を出してこっちに飛んできた。
ほんと、可愛いんです。お人形さんみたいにちっちゃくて。って、私もチビだけど。
「パール、寝テル」

………
「ちょっと聞いてよ〜今日ね、身体測定したんだけど…」
私は今日一日のコトをちょこちょこ愚痴をこぼしながら、カイルくんに報告するのが日課だった。
カイルくんは人間の言葉を話すのが得意じゃないみたいだけど、話はわかるみたいで、私の話を興味津々でいつも聞いてくれる。
枕元にいる彼に私は今日の不満をぶちまけた。

「あ、お帰り〜!よいしょっと」
もう一人の妖精さんが私の前に現れた。彼女の名前はパール。
自分で「大魔法使い」と言ってる変わった子です。
パールもカイルくんと同じ小さな小人だと思うんだけど…
胸がめちゃくちゃに大きいんです。普通の人間の胸くらいに。
信じてもらえないかもしれないけど、胸に体がくっついてる感じなんです。
私も夢かと思ったけど、目の前にこうやって妖精さんが居るのだから、不思議じゃないよね。

「どう、どう?アイルもおっぱい大きくなってたでしょ!」
「最悪!!」
「えっー」
パールは私の満足な答えに期待してたみたいだが、私は不満全開だった。
確かに、大きくはなったよ。それに昔は憧れてたんだ、大きい胸に。
ただ、その代償は大きすぎた。
「身長が縮んだのよ、2cmよ、2cm!!」
「そんなこと言われても…おっぱいを大きくする魔法だモン!」
「だからって、他の成長を全部胸にまわしただけじゃない!!」
パールの魔法は十分に凄いことだとはわかっても、私は納得いかなかった。
こんなことなら…と後悔したことも何度もあった。

「で、魔法は取り消せないの?」
「絶対に取り消せないよ!だって、わたし大魔法使いだモン
簡単に解けないよ…」
彼女の無邪気な性格に腹を立てることはあるが、今日はその気もおきなかった。
彼女に当たったって戻るわけじゃなさそうだし、魔法を頼んだの私だし…
「ご、ごめん…」
普段からあやまったりしない彼女が素直にあやまってきた。
「い、いいよ」
私はパールの頭を人差し指と中指で撫でながら言った。

「それに、今のままでもちょっと満足してるんだ。
お母さんみたいにモデルまでいかないけど、ちょっと自慢しちゃった。」
私のお母さんは元々モデルさんをやってて、私のお母さんなのかと思うくらいに長身で胸も大きいんです。
別にモデルとか、やりたいとは思わないけど、写真とか見せてもらったら「いいなぁ」って思ったことあるんです。
まるで、自分の母親とは思えないと…なんか不思議です。身近にいるのに。

「私、チビだけどカイルくんやパールよりは全然大きいモンね。あ、別に悪口じゃないよ…」
「うん、でもおっぱいは私も負けないよ〜」
そう言いながら、パールは自分の胸を持ち上げた。ちょっと重そう〜
立ちあがると、彼女の胸は膝くらいまで隠しちゃう程大きい。
座っちゃうと床に着いちゃうくらいですから。

「大丈夫だよ、アイル」
「?」
「アイルも、わたしみたいに、超でっかいおっぱいになるよ!
なんせ、大魔法だから!わたしより大きくなると良いね。」

…ち、ちょっと待って。わたしみたいにって、そんなに大きくなるの!?
彼女はカイルくんと一緒にちょこんと座った。確実に胸が体の半分ほど埋め尽くして更には布団まで着いてる。
私はその姿を自分に置き換えた。とてもじゃないけど、外にも出られないし、服も合わない…
「や、やっぱり、魔法消して。お願い!!」
私はパールに悲願したけど、彼女には変わらない答えしか返ってこなかった。
今日はかなり絶望の一日を感じました。

続く