タイトル未定

第1話「週末の放課後」

長月あきひろ 作
Copyright 2002 by Akihiro Nagatuki all rights reserved.

「ねーねー、アイちゃん!明日の日曜日遊びに行っていい〜?」
 冷たいウーロン茶の入ったドリンクのストローを唇にもっていき、彼女はちょっとすすった。
彼女の名前は浅間 悠(あさま ゆう)。良くも悪くも大親友のクラスメートです。
「うん、いーよ。何時ごろぉ?」
 私は口からミルクたっぷりのアイスコーヒーを離して即答した。
悠ちゃんはおもむろに鞄から手帳を取りだしてペラペラとめくりはじめた。
ふんふんっ♪〜とても、嬉しそうな顔で…
「ちょっと待ってね〜♪」

 土曜日の授業はあってないようなものですよね。
次の日が休みと言うこともあってダルみがちです。
放課後…所属しているダンス部で軽い運動をしたあと、
近所のファーストフード店で雑談するのが私たちの毎週の日課でした。
夕方にはまだ早い土曜日。今日もお店は学生のたまり場になってた。

「そーだなぁ。朝からじゃダメ?丸1日…暇なんだぁ。」
「別に良いよ。お父さんもゴルフだし、お母さんしかいないから」
 私も明日はどこ行く予定もないしね。
「そ、じゃあ明日、朝から遊びに行くよぉ。」
「良いけど、どーしたの?そんなに早く来て…」
「ちょっとねぇ、パールちゃんに用があるんだ〜」

 パールに用事〜?…あっ、なんとなくわかった…
「それにさぁ、夏休みもうすぐだから、水着も欲しいから一緒に見に行こうかと思って。
受験もあるけどさぁ、家と塾の往復じゃあ死んじゃうっていうのっ!」
 そう言うと悠ちゃんはウーロン茶を飲み干して、カップを両手で握りながら潰した。

 そっかぁ。もうそんな時期だもんね。
ついこの前は、3年生になったばっかだと思ったのに…もう7月…
私も欲しいなぁ〜なにしろ去年より…サイズがねぇ。

「ところでさぁ、前々から聞こうかと思ったんだけど…」
 急に目がマジになって話題をひっくり返してきた。
「パールちゃん達とは最初どこで出会ったの?」
「え、パールとカイル君のこと…?」

 うんうん。と悠ちゃんはサラダバーガーの紙をむきながらうなずいた。
「うーーーんーーーんーー…」
「覚えてないの?」
 うーーーん…眉をひそめて手を組む私に半ば呆れ顔を見せる悠ちゃん。
正直、覚えてない…かな…。でも小学生頃なのは確かなんだけど。
「いいよねぇ、あたしもあんな妖精さん欲しいなぁ。」
「カイル君?うん、かわいいよ。恥ずかしがり屋で甘えん坊なところがまた…」
「違うわよ。パールちゃんだよ。すごいよねぇ、あのおっぱい。」

 まぁ、確かに。あの胸はすごい…すごすぎるけど、そんなに良いのかなぁ。
私はカイル君の方が好きだけどなぁ。もうカタコトな言葉も可愛くて。あ〜

「あたしの家にも妖精さんって居ないのかなぁ。私も飼いたいなぁ。」
 そう言えば、私は普通に暮らしているから不思議に思わないけど、世間一般では凄いことだよね。
特にパールの場合は普通じゃないから、あまり知られないようにしているんです。
だって、カイル君なら人形で誤魔化せるけど、あんな胸に身体がついたような人形…絶対怪しまれるからね。
結局は悠ちゃんにはバレちゃったんですけど。

「とにかく、明日パールちゃんにお願いね。じゃ、行こう!」
「え、えぇ?何を…って、待ってよぉ」
 彼女はサラダバーガーを食べちゃうとサッサッとゴミをまとめた。
ちょ、ちょっと待って。私まだ食べ終わってないよ〜早すぎ!!
「悠ちゃん食べるの早すぎだよぉ。」
「そんなことないよ、アイちゃんがいっぱい頼み過ぎなの。ビッグサイズなんて頼むからよ。」
「だって…背がさぁ…私、チビだし…」
 よく育つには[よく食べて、よく運動して、よく寝る]…私のお母さんから教えてもらった。
実は私のお母さん。昔はモデルもやってたんです、とても背か高くて、スタイルも良いんです。
こんなチビ娘がいるのに。

「そんなことしてるから、おっぱいばっか大きくなるんだよぉ。ほらぁ…」
「おっぱい、おっぱいって言わないでよぉ。恥ずかしいなぁ〜」
 ホント、恥ずかしいです。周りの席でも笑ってるし、見れるし。
私はもともとハーフだし、髪の色も生まれつきの金髪、人に見られると言うことは慣れっこだった。
最近は胸も大きくなってジロジロ見られる事も多くなったけど、見られること自体はあんまり気にしない。
でも、口に出されたりすると、ちょっとね…

「良いなぁ、あたしもテーブルにおっぱいを乗っけてみたい〜」
 私の耳元で、悠は悪戯っぽく私につぶやきながら、
テーブルの上の私の胸を上から手でさわるようにたたいた。
(もぉ、悠ちゃんのいじわるぅ…)
半分そう思いながらも、悠のことを横目にして私も悪戯っぽく…
「あー、悠ちゃんは軽くて良いわねぇ、えへ。」
 …つぶやいちゃった。
………店でなにしてんだろうね。

「じゃあ、明日ね。おやすみぃ」
 二人はお店を出て私の自宅前で別れた。すでに周りは結構暗くなっていました。
悠ちゃんの家はもうちょっと先だ。彼女は自転車をこぎながら、手を振って帰って行った。

「ただいまぁ〜」
 腕時計で時間を気にして、私は玄関を開けた。お父さん帰ってないよね〜
「おかえり。遅かったわね、パパはまだよ。」
「あは、セーフ!」
「セーフじゃないでしょ。夕食は…あら…食べすぎたみたいね。」
 帰ってきて私を見るなり、お母さんは答えた。
な、なんでそこまでわかるのだろう…変わらない気がするけど。
と、私はお腹周りを気にした。
「そんだけ食べたら、運動しないと太っちゃうわよ。」
「わかってるよ。部屋で体操するから…」
 今でもアメリカンモデル並に変わらない体型の一児の母。
その人が言うのだから、ちょっとリアル過ぎて恐い…
ただでさえ、チビなんだからせめて太りたくはない。
「明日、朝から悠ちゃんが遊びに来るの、お願いね。」
「あらそう。楽しみね。」
階段を上りながら私はお母さんに言った。お母さんは笑いながら台所に戻っていった。
私は部屋に戻るなり着替えて、部活でやってる柔軟体操をはじめた。

「おいっ!アイルは帰ってきたか?」
「ええ、部活が忙しいみたいで…もう3年でしょ。引退も近いみたいだから…」
「だけど、遅すぎるだろう。何かあったら…」
「あの子は大人しく見えても真剣なのよ。部屋でも練習してるから邪魔しちゃダメよ。」
 私はその日、お父さんが早く帰ってきていたことは知らなかった…

「でねぇ〜明日は水着買いに行くの。楽しみだなぁ。でも受験あるから海に行けるかなぁ、ねぇ。」
足の裏の筋を伸ばしながら、ベットの上に居るカイル君に今日の出来事ついでに明日の事も話した。
相変わらず、素直に聞いてくれるカイル君がもう可愛い〜
 一通りの柔軟体操を多めに3セット終わり立ち上がった。今日は疲れたなぁ…
その瞬間、急に軽いめまいに近い睡魔が私を襲った。
私は気づかないうちにベットに転がった…どうやら次の日まで…寝てしまったようです。
あー、せっかく楽しみにしてたテレビ番組が…

続く