少女はスケッチブックの上に、一心にコインを走らせている。
一心に、まるでなにかに取り憑かれたかのように。
放課後の美術室、彼女はひとりきりでスケッチブックにコインを走らせている。
それは「ヴィーナスさま」と呼ばれる、近頃女子中学生の間で流行りだした遊びだった。
スケッチブックの上に書かれた五十音、その上にコインを滑らせてヴィーナスさまのご託宣を聞く、という
いわゆるコックリさんの一変種ではあったのだが、
この遊びの変わったところは色恋沙汰や性の悩みしか訊いても答えてもらえない、というところにあった。
それはヴィーナスさまが気まぐれな女神であるからとか、または下世話な動物霊だからであるとか、色々と囁かれてはいたのだが。
今、少女はそれをやっていた。
放課後の美術室、彼女のほかには誰もいない。
ひととおり質問を終えた後、彼女は意を決してヴィーナスさまにこう尋ねた。
「ヴィーナスさまヴィーナスさま、わたしはどうやったら、その……美人に、なれますか……?」
制服を恥ずかしさで震わせながらそうコインに尋ねる少女の姿は、一言で言うと、醜かった。
ニキビで荒れくすんだ肌、手入れの仕方を知らない眉、不恰好な眼鏡。
背は低く、だらしない体型、そのくせ胸はなく、手足は猪のようだった。
その表情もおどおどとし、瞳は自信のなさで濁っている。
そんな、クラスの人間がいじめることにすら気がひけるような少女だった。
そんな彼女だから友達も全くおらず、相談相手などいるはずもなく、だからこそ、こうして女の子のお遊びのようなものに手を出したのだが――
「……ダメかぁ」
コインは微動だにせず、彼女はため息をついた。
「他の質問には答えてくれたのに。やっぱり私じゃ不細工すぎて神様も答えようがないか、ははは……」
その不細工な顔をくしゃくしゃにして泣きそうになりながら彼女がのっそり立ち上がろうとすると、
「あれ?」
指が離れない。
コインから指が離れないのだ。
「えっ……?えっ、えっ、ちょっと!?」
そして、指が急速に動き始める。
それにつれて、周りをピンク色の靄が覆い始める。
「ちょっと、どういうことなのこれ!?やっ……」
−−シ・テ・ヤ・ロ・ウ−−
「ひんっ!!?」
ピンクの靄が彼女を覆うと、
ばきゅきゅっ、という音がして彼女の猪のような手足がぐんぐんと伸びてゆく。
指先はほっそりとし、見苦しく生えていた毛ははらはらと抜け落ち、色は抜けるように白くなってゆく。
「っあ!?あっ、あっ、あっ、ふぁっ……」
彼女が身体をよじると、変化は加速してゆく。
腰はくびれ、ガリガリだった身体にほどよい肉がついていく。
顔のパーツも整った配置になり、唇は厚くなっていく。
そして、全身の熱が胸と臀部にぐぃぃいぃんっと集まってゆき――
「ひゃ……はぁああああああああああんっ!!!!!」
みちっ、みちっと体内の脈動に合わせて、彼女の全身の脂肪が胸に集まり、双丘をかたちづくってゆく。
上半身の無駄な肉が全て胸に集まっていくため、肥満でAカップもなかった胸が、B、C、Dとムクムクと大きくなっていく。
満々と張り詰めたその旨の熱は、戸惑っていた彼女をも陶酔させてゆく。
「ふはぁ……すごぉい、すっっごく気持ちイイ〜♪」
尻にもむっちりとした肉がつき、ふとももまでぱつんぱつんになっている。
くびれもできてゆく……
最後に、ピンク色の靄は彼女の頭を覆い、彼女のなかの不安や怯えを取り去り、空っぽにしてゆく。
「ふぁああ〜♪なんだかとってもいい気分♪今まで悩んでこととかどーでもよくなっちゃった!
早くこのおっぱいをみんなに揉んでもらいたいなあ〜ふふっ」
彼女が大きく伸びをすると、できたばかりの巨乳がぷるるんっと揺れる。Jカップほどはあるだろうか。
ほんの数十分前まで肥満貧乳だったとは思えない変貌ぶりだった。
生まれ変わった彼女の顔は打って変わって自信に満ち、自らの肢体をはやく皆の前で見せたいという思いで疼いていた。
「ふふっ、これからとっても楽しくなりそぉ〜♪」