「Dream Eater」

爆乳のページ120万記念小説
安東熱志 作
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 どうして、こんなとこにいるんだろう。
 どうして、一人で、動物園にいるんだろう。
 どうして、たった一人で、彼との思い出がある動物園にいるんだろう。

 中二にもなったんだから、彼氏ぐらい作らなきゃ。
 そう思って、それだけじゃないけど、クラスでいちばんかっこいいあの人に告白した。
 「ありがとう」って言われて、最初の日曜日がデートで、食べ放題のピザを食べて、船が沈む映画を見て、市内の城址公園に行った。
 公園を歩いているだけだと、なにも会話することがなくて、私は好きなマンガの話、こういうデートするマンガの話とかしてみたけど、彼は読んでなくて、しょうがないから黙ったまま歩いていると、ほんとはちょっと退屈だったけど、でも、もしかしたら、このままキスぐらいするのかなって、どっかで期待してた。そのマンガも、そうだったし。
 公園の隣にある、小さな動物園に気づいて、そこに入ろうって言い出したのは、それはたしかに、私の方だ。なんであんなこと言っちゃったんだろう。言わなくても、同じだったかもしれないけど。
 サルとか、クマとか、クジャクとか、そのぐらいしかいない小さな動物園で、だけど私は、ここに来るのが初めてだったから、けっこう楽しくて、隠れてるキツネの檻の前で、早く出てこないかなんて、ずっと彼を待たせたりしてた。
 そのうち日が暮れてきて、帰ろうかと思って、また公園を歩いているとき、急に彼に、抱き寄せられた。そして、キスをした。すごく緊張していたと思う。キスをしながら、彼の手が私の胸に触れてきて、それでもっと緊張した。
 だけど、それだけで、彼はすぐに私から離れた。それだけでおしまい。
 駅まで帰る道で、彼がぽつんと言った。
 「君って、あんがい子供っぽいんだね」
 それっきりだった。今日、月曜日、学校で顔を合わせても、彼は、目をそらせた。話しかけようとしても、だめだった。私は、もう授業には出る気がしなくて、学校の外に出て、気がついたらこの動物園にいる。
 子供っぽいのかな、私。
 ピザの食べ放題で喜んでたからかな。映画はふつうだったと思うけどな。マンガの話がよくなかったのかな。動物園に行きたがったからかな。キスのときに緊張しすぎたのかな。それとも、やっぱり。
 胸が、小さいからかなあ。
 中二になってからブラをつけはじめたけど、AAでも余るっていうのは、やっぱり子供っぽくて、だめなのかなあ。男の子って、みんな、大きなおっぱいが好きなのかなあ。
 それとも、彼が特別に、大人っぽい女の人が好きなのかな。たとえば、あの人みたいな。
 平日の、昼過ぎの動物園で、一人で歩いている綺麗な女の人。お姉さん。二十歳、二十五歳ぐらいかな。すごく美人。背が高くて、脚も細くて長い。どんな人なんだろう。それより、胸が大きいなあ。セーターがぐんと盛り上がって、歩くとぽわんぼわんって揺れている。
 いいなあ。
 あんな人なら、男の子に振られるなんてこと、ないんだろうな。
 《うらやましいのかい》
 誰かの声がした。私は、あたりを見回した。誰もいない。動物園の中には、私と、その女の人しかいないけど、いまの声は男の人の声だった。
 《あんな胸になってみたいのかい》
 背中の方から聞こえる。振り向いてみると、そこは黒い、二メートルぐらいある大きな動物の檻だった。こんなの、見たことない。昨日はいなかったような気がする。案内の札には[獏]と書いてあった。なんて読むんだろう。
 その動物は、私の目を見ながら、また言った。
 《おまえの夢を叶えてやろう》
 「ほんとに?」
 思わず、返事をしてしまった。変なの。この動物がしゃべったなんて、そんなことあるわけないのに。
 《ただし、あとで代償はもらうよ》
 「いいよ。ほんとに、叶えてくれるなら」
 《ではまず、わたしの言うとおりにしなさい》
 そのあとに聞かされた内容は、とても奇妙なものだったけど、私はそのとおりにした。
 目の前にいる、あの綺麗な女の人に近づいていく。その人は立ち止まって、私を見つめた。挨拶したほうがいいのかな、とも思ったけど、それも変だっていう気がして、私はなにも言わずに、女の人の胸に顔を埋めた。
 柔らかい。まず最初に、そう思った。ほわほわして、顔を埋めるとそれにつれてへこんで、それなのにぐいと押し戻してくるぐらい弾力がある。そして、やっぱりとても巨(おお)きい。谷間に私の顔全体が隠れてしまう。セーターを着てブラジャーをつけているのにこうなんだから、直接見たら、どんなサイズなんだろう。
 じっとしてそんなことを考えていたら、お姉さんは、「じゃあ、直接見る?」と言った。顔は見えないはずなのに、なぜか微笑んでいることはわかった。
 私はうれしくなって、いったんお姉さんから離れ、サーモンピンクのセーターをめくり上げた。ライトピンクの、シンプルな形のブラをしている。
 「恥ずかしいでしょ。このサイズだと、こんなデザインしかないのよ」
 優しい口調で説明しながら、その人は自分からブラを外してくれた。
 「ううん、とっても素敵です。いくつあるんですか」
 「ふつうに言えば、65のI、かな。輸入ものだから規格が違うんだけど」
 同じアンダー65なのに、わたしはAAで、この人はIで、すごい差があるんだな。そう思うと、またちょっと悲しくなった。
 「トップバストが96だから、ほんとはこれでもちょっときつい、のよね」
 そう言って、お姉さんは、ブラを外しおわり、胸を突き出すようにした。私の顔ぐらいありそうな、ぷるんとした塊が二つ、目の前にある。前に出っ張っているのもそうだけど、横にたっぷりボリュームがあって、だけどそれはデブって感じじゃなくて、幅があるのはおっぱいの部分だけで、胸そのものの幅はほっそりしてて、その幅からおっぱいがはみだしてるぐらい。だらんとはした感じはなくて、元気よく張りつめているのに、やっぱりすごく柔らかそうに見える。
 その先っぽは、直径3センチぐらいが、ブラと同じ色のライトピンクに染まっている。そしてその中心だけ、小指の先ぐらいにぽつんと出っぱって、セーターと同じ色のサーモンピンクをしている。
 巨きなおっぱいが、こんなに綺麗なものだなんて、思ってなかった。男の子がこういうのを好きなわけが、わかるような気がした。こんなのが自分の胸にずっとついていたら、いったい、どんな感じがするんだろう。じゃまじゃないのかな。
 「さ。いつまでも見てないで、することがあるんでしょ」
 お姉さんに言われて、ぼんやりしていた私は我に返った。
 「けっこう寒いんだ、こうしてると。早く済ませてね」
 「ごめんなさい」
 私は謝って、すぐにまた、その人の胸に顔を近づけた。右か左か、一瞬迷ってから、心臓に近い左の乳首に唇を触れさせる。
 「あんっ」
 お姉さんが、声を出した、ような気がした。なんだか、うれしいときの声。
 ちょっとだけ、勇気を出した。悪いことをしてるわけじゃないけど、いままでした覚えがないことだから。
 ちゅうっ、って音がした。私がお姉さんの乳首を強く吸うと、それだけ強く音がした。それでも私は、どんどん吸った。吸うたびに、なにか甘いような、温かいようなものが、口の中に溢れて喉を通っていく。それは本当になにかが、たとえばミルクみたいなものが溢れてるんじゃなくて、きっと目には見えないものだったんだろうけど。
 だって、喉を通ったその甘くて温かいものは、ふつうみたいに胃袋に落ちていくんじゃなくて、私の胸のあたりで止まっているのが感じられたから。
 吸い続けて、呼吸がよくできなくて、苦しくなってきたころ、口の中になにも入ってこなくなった。お姉さんの乳首を、もういちど、ちゅうって吸ってみたけど、それはただ、たとえば小指の先を柔らかくしたものを吸っているのと、同じような感触がするだけだった。
 私は、ちょっと残念な気分で、ゆっくりと口を離して、お姉さんの顔を見上げた。お姉さんは、さっきと同じように、やっぱり微笑んでいた。
 だけど、顔はさっきと同じだったけど、違うところがあった。お姉さんの胸は、あんなに立派だったおっぱいは、いまはもうすっかり、小さくなっている。私より小さいぐらいだ。というより、子供みたいにぺったんこになっている。どういうわけか、吸った方の左側だけじゃなくて、右側も同じようにぺたんこだ。
 「終わった?」
 「はい。ごめんなさい」
 思わず、私は謝ってしまった。
 「謝ることはないのよ。あなたの『夢』のため、なんでしょ」
 微笑みを残したまま、お姉さんはセーターを着直し、その胸のところが余ってしまったセーター姿で、動物園から出ていった。
 真っ昼間の動物園で、綺麗なお姉さんと、中学生の女の子が、なにやってたんだろう。誰かに見られてなかったかな。そう思って、ちょっと恥ずかしくなった。全身が、ちょっと熱くなった。
 ううん。全身じゃない。胸のところが、特に熱くなってきた。胸の奥じゃなくて、表面が熱い。おっぱいのあたりが熱い。
 ふいにまた、呼吸が苦しくなってきた。肋骨をしめつけられているみたい。ブラだ。私のブラジャーが、AAのブラジャーが、急にきつくなってきたんだ。ブラジャーの下、というより、その周囲が、むにっとした感触で、動いたような気がした。
 あわてて、自分の胸を見る。小さなブラジャーの形だけ残して、そのまわりが太ってきている。
 ブラジャーのきつさが限界になった、と思った瞬間、背中のホックがはじけたのがわかった。そのとたん、制服の胸が、ぐいっ、と、というより、ぽんっ、という感じで、盛り上がった。
 そのままさらに、私の胸は巨きくなっていく。制服の、ベストの前ボタンまではじけそうだ。ブラウスのボタンは、もう取れかかっているかもしれない。
 服が全部はじけてしまうのを覚悟したところで、ようやく、ふくらむのが止まったのがわかった。さっきまで、あんなに感じていた熱さが、消えた。
 さっきの、お姉さんぐらい。私の胸が、おっぱいが、あのお姉さんぐらいにまで巨きくなっている。ううん、もっとかもしれない。お姉さんの胸に、もともとの、ちょっとはあった私の胸のサイズを足したぐらいあるのかもしれない。
 ふと、振り返ってみると、さっきの[獏]はまだ、私の方を見ていた。
 《それでいい。さあ、次のことだ》
 私はうなずいて、歩きはじめた。とりあえず、家に帰ろう。このままじゃ、困る。とにかく、服を着替えてこないと。

 ブラをしていないせいだろうけど、歩くたんびに、ゆさゆさ揺れる。けっこう、うっとうしい。それに、重い荷物をふたつ、くっつけているみたいで、疲れるし、どうしても背中が前屈みになる。
 巨乳になるって、こういうことだったのか。私は、いままで知らなかったことをはじめて知って、とても得をしたような気分になった。周りの人に注目されているのも、すごく気分がいい。
 男の人はみんな、たぶん女の人もみんな、巨きなおっぱいって、好きなんだな。だから私は、ちょっと疲れるけど、がんばって胸を張って歩いた。あんまり胸を張りすぎると、制服がほんとに破れてしまうから、気をつけながらだけど。
 ようやく家に帰り着いて、すごくほっとした。もう、心配しなくていいんだと思って、おもいっきり胸を張ってみた。ぽちん、と、ついに制服のベストの前ボタンがはじけた。
 鏡の前に立ってみると、見慣れない自分の姿が映った。いつもの、ただちょっと上気した顔の下に、いつもと違うかたちに変形した制服がある。第二と第三ボタンが取れて、胸の谷間が直接見えていて、はじけてたるんだ小さなブラが引っかかってる。すごく、えっちっぽいかっこうだ。
 お母さんは、まだ仕事から帰ってきていなかった。私はとりあえず制服の上着を脱いで、ノーブラのまま、Tシャツとセーターを出してきて着た。どっちも、胸のところがすぐに伸びてしまって、もう普通のひとには着られないだろう。
 タンスから服を出して、胸のところに引っかかるのを押さえながら着ただけで、ますます疲れてしまった。ものすごく眠い。まだ夕方にもなっていないけれど、つい、ベッドに倒れ込んだ。新しい私のおっぱいが、クッションみたいに支えてくれた。

 しばらく、うとうとしてから、私はまた、外出した。駅前の、にぎやかな街に向かう。とっておきのブーツを履いて、スカートもミニに履き替えて、真っ白なセーターの胸がたっぷり揺れている。自分でも、すごくかっこいいと思う。駅前にたくさんいる人たちも、みんな、私のことを見ている。
 その中の一人と、目が合った。大学生ぐらいの女の人で、さっきのお姉さんほどじゃないけど、やっぱり巨きな胸をしている。背が低くて、ぽっちゃりした体型で、それだけ、胸も巨きそうに思えるんだろうか。でも、ほんとに巨きいと思う。
 私と目が合うと、その人は、ふらふらとこっちに歩み寄ってきた。
 「あの、いいですか」
 私がお願いすると、その人は、うん、とうなずいて、服の前をはだけた。おっぱいが、ぽわんとふくらんでいる。ちょっと、ブラジャーのサイズが合ってないみたいで、ハーフカップのブラの上に、お肉がはみだしている。
 そのブラを、あわてていた私が、ホックも外さずにずりあげると、真っ白なおっぱいが、ぽろんとこぼれ出してきた。チョコレートみたいな色の、大きな乳首だけが、つんと膨らんでいる。
 さっきと同じように、左の乳首に吸いついた。相手の背が低いので、姿勢が苦しかったけど、がんばって吸う。ふにふにと柔らかいおっぱいを、手で支えて持ち上げながら、吸う。口の中が、それだけでいっぱいになるかと思うぐらい、乳首が大きい。それに、吸いごたえがある、っていうのか、口の中においしい食べものを詰め込んだときみたいな、満足感がある。その乳首を、ぐいぐい吸っていくと、やっぱり甘い、温かい味がして、それが私の胸にたまっていく。
 こんどは、おっぱいを吸っているうちにもう、私の胸がふくらんでいくのを感じた。かがむような姿勢でいるから、どんどん重くなっていくのがわかる。
 吸い終わって、そのまま頭を下げてお礼をすると、やっぱり胸がぺたんこになってしまった女の人は、なんとなくうなずいて、そのかっこうのまま、ふらふらと駅の方へ歩いていった。
 そのころにはもう、私の回りは、人でいっぱいだった。みんな、女の人だ。駅前にいた女の人が、全員集まってきているみたいだ。
 みんな、私のために集まってくれたんだ。
 そう思うと、胸の奥の方が、いっぱいになった。
 それ以上に、私のおっぱいは、ぱんぱんになっていた。二人分、最初からの私の分を入れると三人分のお肉が、まぁるく、かっこよく、ふくらんでいる。もう、Tシャツやセーターも苦しいぐらいだ。
 思いきって、服を脱いでしまった。もう、うまく手を回せないし、脱ぐときにどうしようもなく胸に引っかかるのを、周囲の人が助けてくれた。それが、とてもうれしかった。
 服を脱いで、裸の上半身が現れると、みんなが、おおっ、と、どよめいた。拍手する人までいた。もう、自分の頭より巨きな肉の集まりが二つ、私の胸にくっついて、ぶら下がっている。幅はもう、体の脇にくっつけた腕よりもはみ出すぐらい、高さもそれぐらい、自分で先っぽが見えるか見えないかぐらいあって、まんまるな形をしている。
 次に、私に向けて自分の胸を差し出したのは、買いもの帰りらしい、おばさんだった。おばさんといっても、まだ三十歳ぐらいで、幼稚園ぐらいの子供の手を引いている。さすがに子供がいるだけあって、ちょっとくたびれたようなおっぱいだ。だけど、やっぱり、綺麗だと思った。女の人のおっぱいって、どうしてみんな、綺麗に見えるんだろう。
 自分の胸が間につっかえて、おばさんのおっぱいを吸うのが苦しかったけど、なんとかがんばった。そうしているあいだじゅう、おぱさんの子供は、とても不思議そうに、私のおっぱいを見つめていた。
 そうやって、何人かのおばさんやお姉さんのおっぱいを吸っているうちに、私は、疲れ果ててしまった。吸うことには疲れていないけれど、胸が重くて、重くて、自分の体重ぐらいあるんじゃないかと思うぐらいになってきている。もう、立っていられない。思わず、がっくりと膝をつくと、もう1メートル以上にふくらんでいるおっぱいの下が、地面にぺったりとついた。
 そうやって楽になったので、私はまた、次々に差し出されるみんなのおっぱいを吸っていった。おばさんもいる。OLらしい若い女の人もいる。女子高生の人もたくさんいる。柔らかいおっぱい、つんと張ったおっぱい、あまり大きくなくて硬い感じのおっぱい。おばあさんぐらいの人まで、たるんで垂れ下がったおっぱいを吸わせてくれた。みんな違った味がして、でも、おいしい。
 特に、何人かいた、お腹に赤ちゃんのいる女の人、赤ちゃんを産んだばかりの女の人のおっぱいは、おいしかった。巨きくふくらんでいて、やわらかくて、吸いごこちがよくて、いい匂いがする。なかには、本物のミルクが出てきて、胸だけじゃなくて私の胃袋まで温かくしてくれる人もいた。
 小学生ぐらいの女の子や、さっきの幼稚園の子や、赤ちゃんまで、とにかく女の子もみんな、ほんのちっちゃな、あるいは、まるっきりぺったんこなおっぱいまで吸わせてくれた。そうやってふくらむのは、もちろんほんのちょっとだけど、それでも確実に、私のおっぱいはふくらんでいく。
 そう。吸うたびに、私のおっぱいはふくらんでいった。どこまで巨きくなっていくのか、ときどきふっと不安になったけど、でも、また目の前に現れるおっぱいを吸っているうちに、そんなことは忘れてしまう。
 吸っているうちに、どんどん、頭がぼーっとしてくる。自分がなにをしているのか、どんな場所にいるのか、どんなかっこうをしているのか、わざわざ思い出さないと、もう思い出せない。なんでこんなことになったのか、きっかけはなんだったのか、それももう、どうでもいいという気分になってくる。どうでもいい。ただ、たくさんのおっぱいを味わって、自分のおっぱいがふくらんでいく歓びを感じる以外は。だって、いまは、こんなに、気持ちいいんだから。
 もう、身動きができない。自分の体より巨きくなって、駅前にたくさん停めてある自動車より巨きくなって、もう、バスぐらいに巨きくなっているのかもしれない。自分ではもう、全部は見えない。ただ、ふくらむたびになにかに触れたり引っかかったりするから、ああ、あのへんまで行っているのかな、と思うだけだ。
 そうやっているうちに、ようやく、女の人、女の子、その場にいた女性ぜんぶのおっぱいを吸い終わった。私は、大きなため息をついた。何人ぐらいいたんだろう。百人か、二百人か、それとももっといたのかもしれない。
 吸わせてくれた女の人たちが、まだ私のまわりにいてくれていた。みんな普通の女の人のかっこうをしているのに、みんな胸がぺったんこで、なんだか面白い。面白い、とか言ったら失礼だな、みんな、私のためにそうなったんだから。
 視界の半分以上が、肌色になっている。自分のおっぱいでよく見えない周囲を見渡すと、その女の人たちの中に、あのお姉さんがいるのがわかった。最初に、私におっぱいを吸わせてくれた人だ。
 「おめでとう。よくがんばったわね」
 お姉さんが、言った。
 「ありがとう」
 そのお姉さんと、女の人たちみんなにと、どちらにでもなく、私はお礼を言った。
 「あなたの夢、叶った?」
 そう言われて、私はやっと、思い出した。これはもともと、私が夢見たことなんだって。
 視線を正面に向けると、他になにも見えなくなるぐらい、巨きくふくらんだおっぱいがある。ぱんぱんに張りつめた感覚、伝わってくる重さ、信じられないぐらいの存在だけど、私が少し身動きするとふるふるとかすかに震えることで、たしかに、自分の体の一部なんだって、私のおっぱいなんだってことがわかる。
 「はい」
 元気よく、私は返事した。お姉さんが、あの微笑みを返してくれる。
 「だけどね。まだ、ほんとうにぜんぶ叶ったわけじゃないの。ほら」
 お姉さんに促されて、一人の女の人が、人混みの前に進み出てきた。
 たしかに知っている顔なのに、なぜか思い出せない。
 その女の人は、上着を脱いで、動けない私の口元に、おっぱいを近づけてくれた。
 いままでと同じように、吸いはじめる。だけど、そのおっぱいを口に含んだ瞬間、私は気づいた。
 知っている。すごく、懐かしい気持ち。いままでのどのおっぱいより、甘くて、甘くて、ただこの味だけが、私を満たしてくれる。
 この感じを、私は知っていた。
 ああ。そうだ。この人は。
 私の、お母さんだ。
 「お母さん……」
 吸い終わって、つぶやいた私に向かって、お母さんがなにかを言いかけた。

 「――いるのぉ? 寝てるのぉ? ただいまぁ、お母さん、帰ったわよぉ」
 うとうとしていた私は、はっ、と、目を覚ました。仕事から帰ってきたお母さんが、自分の部屋にいる私を呼んでいたのだ。
 いつのまにか、本当に眠っていたんだ。
 じゃあ、あれは、夢だったのかな。
 そう思って、がっかりして、だけどどこから夢なのか、どうしても思い出せない。部屋でうとうとしたのは、動物園から戻ったあとで、だからあのお姉さんとのことがあったあとのはずなんだけど。
 「いるんなら、夕食の支度手伝ってよ。部屋にいるの?」
 「はぁい。いま行くぅ」
 返事をして、うつぶせに寝ていた柔らかいクッションから、身を起こそうとした。
 だけど、起き上がれない。まるで、クッションにわたしの体が張りついているみたい。
 八畳の部屋全体を埋め尽くしている、巨大なそのクッションが、自分のおっぱいなんだって気づくまで、すこし時間がかかった。
 《いい夢だったかい? 満足できたかな》
 また、あの[獏]の声が聞こえた。
 《じゃあ、約束だから。君のおいしい夢を食べさせてもらうよ》
 その文字を「バク」と読むことに、はじめて私は気がついた。
 たくさん、たくさんの女の人のおっぱいを吸った。とても気持ちがよかった。女の人たちも、みんな、うっとりした表情になっていた。
 だから私は、これからバクに吸われるのが、この巨きなおっぱいを吸われるのが、どんなに気持ちのいいことなのか、巨きければ巨きいだけ、吸われる気持ちよさも巨きいんだろうと思うと、わくわくしてきて、しかたなかった。