視線から逃れたら

ニュウセイ 作
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その1

※ この作品には、都合のいい感じにファンタジー要素が含まれています。

私はセレナ。この春中学生になったばかり。
けれど、中学生になって早々困ったことが起きている。
それは、少し前から遅めの成長期が始まった私の体。
「うぅ〜ん、また大きくなった気がする」
少し窮屈になってきたブラジャーを見てそう呟く。
そして鏡に自分の姿を映す。
そこには、胸が膨らんできている少女の姿があった。
腰回りの肉付きもよくなってきている。
それだけならいいのだが、問題は妙に色気も出てきていること。
気になったので母に確認してみると、どうも私には淫魔族の血が流れているらしい。
確かに母は、胸もおしりもかなり大きいのに全く垂れておらず、道行く人が目を離せなくなるほど魅力的なスタイルをしている。
また母は体型のわりに小食なのだが、それは淫魔族の特性の一つである「自分に向けられる性欲を栄養として取り込める」により、
必要な栄養の大半を補えるためであるらしい。
そして、淫魔族の血を引く人はより自分に性欲が向けられるようにするため、特に成長期に、いやらしい体つきに成長していくのだそうだ。
さらに、見られれば見られるほど、見た人の欲望が増すような体型になっていくとのこと。
それを聞いた私は絶望した。
なぜなら私は、とにかく人に見られるのが嫌だからだ。
小さい頃はただ見られてるだけなのでよかった。
でも成長するにつれ、視線の中に性的なものが混じってくるようになった。
そんなものに晒されて平然としているなんて無理!
そこで母に相談したところ、そういう淫魔族のための施設があると言われた。
そこは、外部と完全に隔離されるような作りになっていて、
内部から外部へは、姿だけでなく、においや声すらも届かないようになっているそうだ。
一度入ると、よほどのことがない限り5〜6年は出られないとのことだが、私はすぐにでも入りたいと熱望した。
その熱意に押されたのか、次の日にはそこに入ることができた。

施設は思いのほか広々としていた。
施設につくと、まず下着を含めて着替えるように言われた。
シンプルで特にこれといった特徴のないワンピースと下着だが、なんでもかけられている魔法により、
傷ついてもすぐ直るうえ、着たままでも清潔に保たれるし、さらには体型の変化に合わせて勝手に調整までされるらしい。
着替えてみると、肌触りはよく、動き回っても問題ない程度に適度に余裕があり、全く気になるところがなかった。
これならこの施設にいる間中着続けても問題なさそうだ。

着替えると部屋に案内されることとなった。
案内をしてくれた人(高齢の女性で、その視線にいやらしさは全くない)によると、
これから入る部屋自体防音されていることはもちろんだけど、
対象者(今回は私)が部屋に入り、案内人がその部屋のある区画から離れ次第、その部屋に通じる廊下すらも封鎖されて、
よほどのことがない限り、対象者が部屋を出るまで、近くを誰かが通りかかることすらないそうだ。
そういう説明を受けながら進み、私は部屋に入った。

部屋はかなり広々としていた。
実際に見たことはないが、ホテルのスイートルームだと言われても納得できるものだ。
窓はないが、圧迫感は全く感じない。
また、適度に明るく、温度や湿度も実に快適な状態が保たれている。
ちなみに明かりには適度な量の紫外線も含まれていて、太陽光を浴びなくても体に不調が起こらないようになっているそうだ。
当然風呂やトイレも完備されている。
ベッドも、妙にサイズが大きい気はするが、寝心地はかなりよさそうだ。
娯楽スペースとなっているエリアもあり、そこにはテレビや各種ゲーム機、様々な漫画や小説などが用意されていた。
別のスペースにはPCまで用意されていた。ネットにもつながっていて、各種サイトの閲覧も問題なく行えるそうだ。
また、中学・高校のカリキュラムに従った教材と受講スケジュール例も一式用意されていた。
(掲示板やSNSなどへの書き込みやアップロードなど、情報を外部に出すことはできないようになっているそうだ)
さらに、トレーニングマシンなどが置かれた、運動用のスペースまであった。
まあ、こんなところでだらだらと過ごしていたらとんでもないことになってしまいそうだから、適度に利用することになるだろう。
キッチンもあり、冷蔵庫や棚には食材や調味料、保存食やお菓子などでいっぱいになっていた。
これらには保存の魔法がかけられていて、何年でも品質が保てるのだそうだ。
また、使う端から、転送魔法により補充までされるのだそうだ。

部屋の片隅には大きな妙な機械が置かれていた。
なんでもそれは健康管理のための装置だそうで、
中に入ると全身がスキャンされ、体に何か異常があると、健康管理AIにより適切なアドバイスや処置をしてもらえるのだそうだ。
ただ、AIの判断制度を上げるため、毎日1回はスキャンするようにする必要があるとのこと。
なお、このAIはスタンドアローンになっていて、スキャン結果が外部に出ていくことはないから安心してほしい、とも言われた。

部屋の案内が一通り終わると、案内してくれた人は部屋から出ていき、扉が閉められた。
これであと5年は、あの扉が開かれることはない。
そうして、私のこの部屋での生活は始まった。

ここでの生活は、実に快適だった。
ここから出た後で苦労することのないよう、毎日決めた時間に、例に合わせたスケジュールで勉強はしているが、
それ以外の時間は、ゲームをしていようが、お菓子を食べながら漫画を読もうが、ネットで見つけた動画を見ようが、だれからも文句を言われない。
食事は、あまり料理経験の私にも作れるわりに、栄養バランスがよく、味もいいレシピが書かれた本が用意されていたので、それを見ながら作っている。
(レシピの種類も多く、飽きることはおそらくない)
ベッドは、予想通り、いつまでも寝られそうなほど寝心地がいい。
なにより、人の目を気にする必要が一切ない。
これなら何年でも問題なく過ごせそうだ。
ただ少し気になるのは、用意されていた漫画や小説、ゲームの中に、明らかに18禁のものが混じっていたことだ。
ここに入るのは思春期の少女だけのはずなので、年齢制限に引っかかると思うのだが、
思春期だからこそそういうものが気になる人もいるから、ということだろうか。

そんな感じでひと月ほどしたとき、健康管理AIから運動不足を指摘された。
確かに、運動用スペースはほとんど活用していない。
指摘を受けて思わずおなかを触ったところ、心なしかふっくらしてきている気がする。
そういえば、お風呂に入ったときに見た胸も少し大きくなっていたような・・・
服が自動調整されるがために、そういうことに気づきにくくなっているようだ。
ランニングマシーンで久しぶりに走ってみると、体中が揺れている気がするし、前ほど走り続けられなくなってもいた。
そこで私は、毎日の予定に、学習時間に加えて、運動の時間も確保することにした。

あと、今更ながらこの部屋には鏡がないことに気づいた。
改めて確認してみると、テレビやPCのディスプレイも特殊な加工がされているのか、消しているときにも反射して私の体が映るようなことはない。
それどころか、蛇口などすらも樹脂で覆われていて鏡代わりにできない。
そこまで徹底しているということは、自分の姿を見て困ることでもあるのだろうか。と新たに気になることができてしまった。

そんな感じで少し生活パターンを変えつつ、ここでの生活を楽しみ始めた。