視線から逃れたら

ニュウセイ 作
Copyright 2022 by Nyuusei All rights reserved.

最終話

ついにその時が来てしまった。
一応服を着て待っていると、久しぶりに扉が開かれた。
入ってきたのは若い女性だったが、私を見た瞬間目を見開き、次の瞬間には目をつぶり、さらに少ししてから再度私を見た。
最初に見られたときには一瞬とはいえ性的な視線も含まれていたが今はないことから、ある種の精神防御の魔法を使ったのだろう。
彼女はアンと自己紹介したうえで、いろいろ説明したいことがあるので楽にしてほしい、と言った。
そこで私は、遠慮なくベッドでくつろぎながら、話を聞くことにした。

まず、淫魔族の特性について。
淫魔族は、母が言っていたように「見られれば見られるほど、見た人の欲望が増すような体型になっていく」のだが、
では見られなければどうなるのか。
その答えは「体が魅力が足りないと判断して、どんどん魅力的になっていく」なのだそうだ。
つまり、「見る人の欲望の限界」というリミッターがなくなり、際限なく成長していくということらしい。
そしてこの施設は、そういう「際限なき成長」を遂げたい淫魔族やその血を引くものためのものなのだとか。
それならもっとこの施設を利用する人がいてもいいはずだが、
基本的に淫魔族は「人に見られたい」という欲求が強く、長時間人目がないことに不快感を感じるため、
使用頻度はかなり低いのだそうだ。
ただ、いくら際限なく成長するとは言っても、せいぜいバストやヒップが200cmを多少超える程度で、
私ほど成長した人はおらず、2位以下に数倍の差をつけたうえでの圧倒的なトップらしい。

その話を聞き、私はなぜここに来る前にあれだけ視線を避けたかったのかが理解できた。
私は「性的な視線を受けることで、だれかに成長の限界を定められたくなかった。」
つまり、「誰にも想像できないほどの肉体を手に入れるまで成長したかった」のだ。
そして、視線から逃れ切った結果、私の体は望むがままに成長し、今の比類なき肉体となったのだ。
そして今となっては、その制限もなくなった。
「今の私」という実物がある以上、「今の私がさらに成長した姿」を望む人は必ずいるのだから。

続いて、この部屋の中で得られたデータの扱いについて説明された。
この部屋の中で計測されたあらゆるデータ(隠しカメラで撮った動画もあるらしい)は、
この部屋に対象者(今回は私)がいる限り外部に出されないのは確かだが、
対象者が部屋から出ると公開されるのだそうだ。(もちろん閲覧は有料だが)
この施設の維持にはかなりのお金が必要になりそうだったが、それに見合うだけの収入源がこれなのだ。
個人情報であるため本人の許可は必要だが、この施設に入るのは人に注目されたいという欲求を持つ淫魔族であり、許可されなかった例はないそうだ。
当然、私もすぐさま許可した。
貧相だったあの私がここまで成長するまでの6年間を大勢の人に見てもらえる、そう考えるだけで絶頂してしまいそうになった。
そのデータの中には、日々のスキャンデータを基に作成された、成長していく肉体を3Dモデルで再現したものもあるらしい。
それについては今作成中で、完成したら送ってもらえるとのこと。
(普通なら1日もあればできるはずが、私のものはいろいろスペックが違いすぎるので、数週間はかかりそうなんだとか)
話の流れで、今の私のスタイルデータを見せてもらえた。それによると
身長:172cm、体重:不明、バスト:583cm(カップサイズ:不明)、ウエスト:76cm、ヒップ:149cm
だそうだ。正直、数値を見ても「バストがとんでもない」という感想しかでない。
アンさんに私の体の感想を聞いてみると、
「セレナさんの体はあまりに圧倒的で、職業柄耐性がある自分でも、あと少しでも目をつぶるのが遅ければ飛びついていたでしょう。」
「防御魔法を使っている今でも、気を抜くと持っていかれそうです。」
と、ある種の危険物にでもつけられそうなコメントが返ってきた。

ここまで説明されたところで、アンさんから「もうしばらくこの部屋で生活してほしい」と言われた。
流石にここまでの成長は予想していなかったうえ、私が勝手に動き回るといろいろ問題になりそうなので、
私が生活する場所を用意することがたった今決まったのだそうだ。
まあ、この体では普通の家での生活できないので、ありがたい話だ。
ただ、今決まったところで、場所の選定すらまだなので、結構な時間がかかりそうとのこと。
まあ、ここでの生活が続くことも問題ないので、私は即座に了承した。
ちなみに、データの公開は順次行われるとのことで、それを見た人の性欲も私のエネルギー源になるため、食事には気を付けるように、と注意された。
そうして、この部屋での生活の延長戦が始まった。

数日ほどして、私は体の中に今まで感じたことのない力を感じた。
どうやら私の今までのことを見た人が抱いた性欲がエネルギーとして私に供給され始めたようだ。
そのエネルギーは日に日にどころか刻一刻と増えていった。
それに応じて私は食事量を・・・意図的には減らさなかった。
普通なら食事で取った分が過剰になって太ってしまうのだろうが、私の場合はいまだに成長は続いていて消費されるため、問題ない。

ひと月ほど経った頃に、「日々のスキャンデータを基に作成された、成長していく肉体を3Dモデルで再現したもの」が届いた。
話を聞いた時の予想よりかなり時間がかかっていたが、受け取ったものを確認して納得した。
それはただの動画ではなくアプリだった。
そもそも私の成長が規格外であることから、たとえ正面固定であっても、
日ごとに成長していく様を3D動画化したものだけでも、膨乳ものが好きな人にとってはたまらないだろうが、
このアプリは、365°自由に見る角度を変えられるうえに、歩く・走る・飛び跳ねる、といったことをさせることも可能で、
日ごとの3サイズを表示させてその変化していく様まで見れるという、まさに至れり尽くせりといったものになっていた。
さらに、好きなタイミングで服を着せて、成長していくにつれてその服が破れたり、ボタンが飛んだりするさまを見ることができる機能まで入っていた。
・・・ここまで来ると、よく1か月でできたなと感心してしまう。

そのアプリが公開されたとたん、私に集められるエネルギーが爆発的に増加した。
それに伴ってか、私は浮遊と重量軽減の魔法を使えるようになった。
立っていても地面につくほどの大きさの胸を抱えての移動は難しくなっていたので、かなりありがたい。

アンさんは時々部屋を訪れて、近況を報告してくれる。
私の新居は、この施設の近くに急ピッチで建設が進められているが、強度を十分に確保するためもうしばらくかかるとのこと。
ちなみに、そこは体育館ほどの大きさで、バス・トイレを除くと壁もほどんどない構造になる予定だが、設備自体はこの部屋と同等かそれ以上のものになる予定だ。
相当お金がかかっていそうだが、私のデータの売り上げだけで軽く補えているため、今後を含めて気にしないで欲しいと言われた。
アンさん曰く、これまで通りこの部屋で生活し続ける案もあったそうだが、
いまだに胸の成長が止まりそうにない、どころかむしろ加速していることから没になったのだそうだ。
なお、現時点でも胸が大きすぎてこの部屋から出ることができないのはわかっているので、縮小魔法の使い手も集めているとのこと。
「縮小しても出られない」ということになる前に準備ができるといいな、といまだに成長し続ける胸をさすりながら思った。
・・・・・・
・・・

結局延長戦は半年ほどであった。
その半年の間に、身長:173cm、体重:不明、バスト:631cm、ウエスト:79cm、ヒップ:154cm、とさらに成長を遂げていた。
(浮遊魔法を使って移動するようになったためか、胸以外にも結構肉がついてしまった)
その中でも胸に集中して縮小魔法をかけてもらったうえで、ついに6年半間暮らしたこの部屋から、そしてこの施設から外に出た。
久しぶりに肉眼で見た空は、幸いなことに晴天で、これからの生活を祝福しているかのようだった。
その期待で実際に胸が膨らめばいいのにと考えながら、新たな生活に向けて進み始めた。