ある朝のこと。
「ふあぁ……おはようございます……あれ? マリエルさん、フィル君、どうしたんですか?」
寝室から出てきたリーゼの姿を見たマリエルとフィルは、リーゼの姿を見て言葉を失った。
リーゼの乳房が、とてつもない大きさに肥大していたのである。リーゼ自身でも抱えきれないほどの大きさに。
「な……何よそれ……」
「ああ……これですね。わたし、2年に1回くらい、『先祖返り』を起こしてしまうんです。」
「先祖返り……?」
「そうです、私は他のヨトゥン族の方より巨人族の血が濃いみたいで、時々こうなってしまうんですよ。いつもルーン魔術で乳腺を活性化させて搾乳してるせいか、余計に大きくなってしまうみたいで……。それに……これは巨人族が受けた呪いのせいでもあるんです。」
リーゼはそういって乳房をさすってみせる。ヨトゥン族の強靱な肉体でなければ、彼女は立つことすら出来なかったであろう。
「呪い……? で……どうするのよ……それ……」
マリエルが呆気にとられたまま、リーゼに問う。
「ああ、ミルクをたくさん搾って、それを周りの人に振る舞えばいいんです。ですから、人がたくさん集まる夜の酒場に行きましょう。それで呪いは収まって、胸も元に戻ります。酒場のマスターも一時期ヨトゥン族の村に住んでましたから、そのことは知ってるはずですよ。実際、二年くらい前にマスターに搾ってもらいましたし。」
「……変な呪いねぇ……。ま、いっか。付き合ったげる。」
「さあ、今日は巨人の姉ちゃんが特別にミルクをみんなにご馳走してくれるそうだ!」
夜の斬竜亭。老若男女問わず、多くの客がリーゼの周りに集まっている。普段リーゼを見慣れている酒場の客や近所の住人も、先祖返りを起こした彼女を見るのは初めてで、みな一様に驚いていた。
「先祖返りか……大変ですねぇ。大丈夫、俺たちがリーゼさんのミルク、飲み尽くしてあげますよ。」
「お姉様のミルク……美味しく飲ませて頂きますわ……。」
「ヨトゥン族の先祖返り……噂には聞いていましたが、初めて見ました……。ミルクの成分にも、興味があります……。」
「リーゼちゃんにはお世話になりっぱなしだからなぁ、たまには俺等が恩返ししてやらねぇとな。」
「何言ってんだいあんた、ただミルク飲むだけじゃないのさ、それに、鼻の下デレーンと伸ばしてさぁ。……ごめんねリーゼちゃん、こんな旦那でさ。」
『麗しき女巨人』として有名になったリーゼの母乳が飲めるとあって、斬竜亭には多くの人が集まっていた。女巨人の母乳を飲むと力持ちになれる、美人になれる、といった言い伝えもそれを後押ししていた。
「えと……それじゃあ……始めますね……。マリエルさん、フィル君、それにウエイトレスさん……お願いしますね……。」
テーブルの上にのせられたリーゼの乳房を、二人のウエイトレスが両手で抱きしめるように揉みしだくと、ピンクの乳輪はぷっくりと膨らみ、乳首は固く勃起してゆく。そして、マリエルとフィルがリーゼの乳首に手をかける。二人の小さな手では掴みきれないほどに巨大化した乳首をさすり、乳首の先の割れ目に指を差し込み、乳穴をかき回して刺激すると、乳首がビクビクと震え出す。
「ん……出ますぅ……。皆さん……飲んで下さいね……。あぁ……あはぁぁぁ……。」
……びゅ……ぶびゅぅっ!! ぶびゅびゅ!! ぶぢゅぢゅぅっ!!
程なく、リーゼの乳首の先から濃い母乳が噴き出し、桶に溜まってゆく。そして、それを酒場のウエイトレスがコップに注ぎ、みなに振る舞う。
「リーゼさんのミルク、濃くて美味しいです……。こんなミルクを毎日飲めるなんて、マリエルさんとフィル君は幸せ者ですよ!」
「これが……お姉様のミルク……んく……美味しい……お姉様……。」
「なるほど……これほどまでに栄養価の高いミルクはそうそうない……それに味も……。」
目の前で、たくさんの人が自分の母乳を飲んで喜んでいる……。その光景を見つめるリーゼ。
「あはは……ありがとうございますぅ……わたしにつきあって頂いて……。」
搾乳されるに従って、少しずつリーゼの乳房が小さくなっていく。それに伴い、母乳の分泌量も減ってゆく。
「お姉ちゃんのミルク、おいしかったよ!」
「ありがとうございます……これでもう少し長生きできそうですじゃ……。」
リーゼの母乳を飲んだ人々が、次々に感謝の言葉を述べてゆく。彼女はそれを、恍惚の笑みを浮かべながら聞いていた。
「ん……ふふ……ありがとうございます……あはぁ……。……あ……ヴォルトさん……来てたんですね……。」
リーゼがふと見ると、騎士団長のヴォルトが壁にもたれかかり、頬を赤らめながらばつが悪そうにグラスに注がれたリーゼの母乳を飲んでいた。
「ありゃ? 騎士団長さんがなんでこんな所にいるのかにゃ〜?」
マリエルが意地悪そうにヴォルトに問いかける。
「……いや……リーゼの『先祖返り』が再発したと聞いたのでな……ここはやはり騎士団長として彼女の手助けをしてやらんとな、と思ってだな……うむ……。」
「ふふ……照れなくってもいいんですよ……で……わたしのミルク……美味しかったですか……?」
リーゼの問いに、ヴォルトは無言で頷く。それを見て、リーゼも優しく微笑んだ。
「で……マスター、リーゼにかかってる呪いって何なの?」
「私もそれは気になっていたのだ。やはり、遙か昔の戦争に由来する物なのか……?」
マリエルとヴォルトがカウンターで酒を飲みながら、マスターに問いかける。胸が元の大きさに戻ったリーゼとフィルは店の隅に敷かれた毛布の上ですうすうと寝息を立てている。
「わしも詳しくはよく分からんし、リーゼに聞いても同じ答えしか返ってこんだろうが……。」
マスターによると、リーゼを初め、巨人族にかけられた呪いは、やはり遙か昔の戦争に依る物であるそうだ。巨人族の体躯から繰り出される強力な攻撃に苦しめられてきた神々がかけた呪い、それは巨人族が自らの巨大な体躯で苦しむようにと……。
「つまり、隔世遺伝で昔の巨人族に近いリーゼに、呪いが発動してしまった、と言う訳か……。」
「……で、何でミルクを周りに人に振る舞わなければいけないの?」
「昔の巨人族は乱暴で醜く、人間から嫌われていたそうだ。そういう巨人族のミルクを飲もうとする人間なんていないだろう。もっとも、、今は力持ちになれるとか、美人になれるって言い伝えの方が有名になったけどな。」
「……なるほどねぇ……悪質な嫌がらせね。」
「じわじわと苦しめる、と言う訳か……。」
マリエルとヴォルトがため息をつく。
「……まあ、そう悲観することもないだろう。」
マスターがリーゼの寝顔を見つめる。
「自分たちは巨人族を屠った神々の子孫だ、と言い張る一部の上流貴族連中はともかく、少なくともこの街のみんなはリーゼを嫌ってはいないさ。それどころか、この街を叩き上げの騎士団と一緒に守ってくれた……そんなリーゼに感謝しているんだ。リーゼの呪いはみんなで軽くしてやるさ。」
「そうか……そうだな。」
下級貴族から実力のみで騎士団長になったヴォルトが頷く。実際、この国の騎士団は、身分を問わず高い実力と市民を守るという強い意志を持つ者のみで構成されている。
「まったく、リーゼったら幸せ者よ、ホント……。」
マリエルは寝ているリーゼの頬を優しく撫でた。そして、そのままフィルの隣で寝入ってしまった。