愛のかたち

ロイヤルみるく(仮) 作
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秀樹は紀美子の強固な制止にその場に、一瞬留まってしまった。
しかし再び彼女の下へと駆け寄り、彼女をすぐにでも助けあげようとした。
だが、その目に飛び込んできた状況は彼の足をそこへと凍りつかせ、そして彼を真っ白な何もない空間へと叩き込んでしまったのである。

「うくうううううううっ!!ああああああぁぁぁぁぁぁぁ!! あ、くぅぅ、あたまがあぁぁぁぁ!!」

彼女の指の間から押し上げるように何かがでてくる。

『アレハナンダ?』

「ふううぅ...くうううううううううう!おしりがぁぁぁ!ああああああんっ!」

彼女の手から何かが出てきて、それが彼女にぶらさがっている。

『キミコ?カノジョ?アレハナンダ??』

彼は呼びかけられる...『頭』?『こころ』?『誰だ』?そして、『アレハナンダ』?

例えどんなに不測の事態がおきようとも、何らかの手段でそれを事前にシュミレートできていれば的確ではなくとも何かしらの行動はとれるものである。だが、この状況はそれを超えていた。
彼はただ見ているしかなかった。いや、正確には見えてもいない。その目にただ映してたにすぎなかった。
何も動けない。動くより以前に答えが無い................
彼が蝋細工の人形のように立ち尽くす中、まだ息も荒い彼女が口を開いた。

「....秀樹、みないでっ!ううぅぅ。くっぅ..解ったでしょ、ハァハァ..秀樹。...わ、くぁぁぅ。
私は、人間なんかじゃないの。 ...わた!ふぅぅぅくっ!私は化け物なのよっ!...
うううううくううぁぁぁぁ!貴方なんかっ!と一緒に いられるっ!ううううぉくううう...はずないのよっ!」

彼女は手で彼女のバケモノを必死で隠しながら、肩で大きく息をし、まだ治まりきらない何かと戦い続けそう彼に言った。その言葉は答えを求め続けていた秀樹へと響いた。

「...化け物?そうか。化け物だったんだ。アレハバケモノダッタノカ...」

彼はそう何度かつぶやいた。そして改めて目の前のモノを見た。頭には狐のような三角のとがった耳。
そしておしりには、ふわっとしてふるふると動く狐のしっぽ。だけど体は人間。

『そうか、化け物だったのか。』

彼は答えを見つけた。例えそれが初めてのものであったとしても、理解さえしてしまえば行動はできる。
そして、再び目の前の化け物を見始めたのだった。

『化け物か..チガウ..狐の耳に...チガウ!...狐のしっぽ...チガウ!..体は人間みたいだけど汗で濡れてて妖しげだな...チガウ!チガウ! 目のところの汗も...チガウ!チガウ!チガウ! 月に照らされて輝いて怪しげに綺麗だ。チガウチガウチガウチガウ化け物...チガウ!!チガウ!!チガウ!!!チガウ!チガウ!チガウ!!!!!』

その声はどんどんと大きくなっていった。そして一度彼の見つけた答えを強く強く否定していった。
彼は突然彼女へと歩み寄ると、彼女をしっかりと見据えながら言った。

「違う!君は化け物なんかじゃない!君は僕が愛した、僕の婚約者の白木紀美子だ!」
「...くうっ..いいえっ。私は化け物ぅぅくぅ...」
「違う!狐の様な耳が生え、しっぽも生えた。たしかに変った。だけど君は変ったのか?
 君の、白木紀美子のこころは化けてしまったのか?僕を愛してくれたこころまで変ってしまったのか?!」
「...そ、そうよっ!こころまで....」

彼女はそう言うと、秀樹の目を見た。何度と無く見たこの目。このまっすぐな目が、強いこころが、彼女を深い泥の底から救い上げてくれた。彼女にとって忘れようとしても忘れられない大切な宝物。
そして、彼女の目からひとすじの月明かりがこぼれた。

「変われるわけないわ!...貴方をっ!...貴方をこころの奥に押し込める事なんてっ!!
 貴方が私を変えてくれたんだからっ!だからっ!..私は変らない!
 貴方を愛する気持ちだけはっ!絶対にっ!変らないっ!!!」

秀樹は紀美子の目からあふれ出す涙を指でぬぐい、そのまま彼女にキスをした。
秀樹の思い。紀美子の思い。お互いの思いをぶつけあい、確かめ合い...
確かにそこには何も変らないものがあった。
 

「...秀樹。もう、私、絶対に逃げない。うぅ。だから貴方に見て欲しいのっ。んんんっ!」
「ああ。僕も逃げないよ。だから君を僕に見せてほしい。」

紀美子は、彼女にまだ潜む何かの手をとるようにゆっくりと立ち上がった。

「...さあ、うぅぅう。ううんっ!...いらっしゃい。ううっ!あぁぁぁぁ...」