ホワイトデー

ロイヤルみるく 作
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「...それで、和史くんとはあれからどうなってるのよ?」

いつものように、美紀と机を付けてお昼を食べていた久美子はいきなりの質問に、飲んでいたフルーツ牛乳で咽せた。

「っけほ。けっほっ...い、いきなり何言い出すの。」

顔を真っ赤にしながら、他の誰かに聞かれないように小さな声で久美子は言った。

「だって結局まだ告白して(コクッって)無いんでしょ?」

「う、ウン...」

久美子は消え入りそうな声でつぶやいた。

久美子はまだ入学したてで、新しい校舎にも慣れてない頃、たまたま廊下ですれ違った和史に一目惚れをしてしまったのだった。
それ以来、彼女は和史の事をずっと陰から想い続けていたのだったが久美子の内気な性格が彼女を陰から出させる事はなかった。
そのような恋の異変は、当然親友の美紀にすぐにばれ、いつまでたっても動こうとしない親友の為に、美紀はいろんな作戦を試みてみた。教室に二人っきり作戦は当然として、行事の班決めのくじに細工作戦、休みの日にたまたま出会う作戦、ぼっとしてる久美子を突き飛ばし和史にぶつけてプールに落とす作戦...など。かなりの強攻策も用いてきた彼女だったが、そのすべてが失敗に終わってしまったのである。

「思えば、もう2年にもなるんだ...いろんな事あったよね。」
「う。うん....」
「彼に彼女ができちゃった時、一緒に泣いてあげた事もあったよね..」
「うん......」
「あの時、すっごい顔してたよ。ずーっと目が腫れてて。休みの度にトイレでメイクしてあげても授業始まったら、後ろでまた泣いてたし。」
「うん...あの時はごめんね。」
「あー。別にいいよー。ってまたしんみりしない!」

美紀はいろんな事を思い出して泣き出しそうになった久美子のほっぺをぷにーっとひっぱった。

「ひ、ひたいよ。みーひやん。」
「いちいち暗い顔しちゃだめ!あんたかわいいんだから、にこーって笑ってなさい。」

美紀はほっぺをつまんだまま、上にもちあげて無理矢理笑顔を作って離した。
久美子は、まだ少しひりひりするほっぺをさすりながら言った。

「わたし、かわいくなんかないよぉ....」
「クーは、そうやっていっつも自分に自信ないからだめなのよ。ってもう1万回くらい言ってるような気がするけど....」

美紀はいまさらながら言ってもしょうがない親友の性格にため息をついた。

「とにかく、もうすぐ三学期も終わっちゃうんだから。今年せっかく和史君と一緒のクラスになれたのよ。来年は3年生になっちゃうし、また一緒のクラスになれないかもしれないから、もうチャンスは今しかないのよ!」

美紀は、2年になって偶然にも3人が同じクラスになった今年を最大の勝負所としていた。
だが、結局今まで何ら成果を上げる事もなかった。

「バレンタインデーまで失敗しちゃった時、こっちが泣きたくなったわよ。」

二人でお小遣いを貯めて有名ブランドのチョコを買い、一緒に溶かし、成形をしてラッピングまでし、添えるメッセージを何週間も前から考えて決めたのに、いざ当日渡す時になって、久美子の『不動の構え』の前にすっかりタイミングを逸してしまった悪夢が美紀の脳裏によみがえった。

「ごふゅえんめー。」

久美子がまた落ち込むのを察知した美紀は、久美子の鼻をつまんだ。
すごく間抜けな声にされてしまった久美子は、さすがに怒った。

「もう、何するの、ミーちゃん!」
「あははは。そうそう、元気じゃなきゃだめよ。」

美紀はひとしきり笑った後、急に真顔になって久美子を見た。

「とにかく私たちに残された時間はもう少ないの。今度こそちゃんと告白するのよ。」

親友の真剣な眼差しも久美子は下にそらし、そしてうつむいた。

「だって...わたし...」

美紀は久美子が何を言いたいのか嫌というほど解っていた。久美子が告白できない最大の理由。
それは貧乳というコンプレックスだった。美紀が久美子と知り合ってからもう何年も経つのだが、その間、美紀は普通の成長をし続けたのに対し、久美子の胸はほとんど変化を見せなかった。
美紀は親友のコンプレックスの原因が自分と比べる事にもあるのではないかと思っていた。
とは言え、色々試してみても成長しないものはどうしようもなく、美紀は久美子になるべく小さな胸の事を考えさせないようにする他には手段がなかった。

「女の子は胸だけじゃないのよ!こんなのただの飾りよ、飾り。」

ふつうくらいの胸の美紀だったが、久美子から見れば巨乳にも思える胸をもつ彼女に説得力はあまりなかったが、美紀はなんとか勢いで押し切ろうとしていた。

「だって、和史君の前の彼女、おっきかったし....」
「だから、別れたのよ。胸が大きいだけの子なんてすぐ飽きられちゃうのよ。」
「彼女、胸だけじゃなくてかわい...」
「あー、もう!あんたもかわいいから!そんなに胸小さいのが嫌なら今揉んでおおきくしちゃる!」

このままではらちがあかないと思った美紀は捨て身の強攻策で久美子の胸を揉みにいった。
 

何事も無く授業が終わり、いつものように二人で帰るはずだったのだが、その日は部活の急用で呼び出された美紀と別れ、ひさしぶりに久美子は一人で帰る事にした。
すっかり顔なじみのお店でイチゴサンデーを食べて、いつもなら二人で寄り道をしながら帰る商店街を今日はまっすぐ通り抜けようとしていた。心持ち足早に通り過ぎようとしていた時、彼女はいつもは通りすぎてしまう路地にちょっと気になるお店を見つけた。

「へー。こんなところにお店あったのね...。」

お店はどうやら少し外装に手を加えてある事以外は古い建物をそのまま使ってるみたいで、少し古めの通りに面した窓から中の様子が見れるようになっていた。
彼女は窓のそばまで近寄ると、気になるお店の中を覗いてみた。

「うゎぁ。結構かわいいかも...。」

お店の中は店内の作りに合わせたアンティークの家具の上に、白いフリルの付いたクロスを敷き、その上に色とりどりのかわいい小物が並べられていた。すっかり魅了されてしまった彼女は、時が経つのも忘れてしばらくの間、外から小物たちを眺めていた。
やがてもっと近くで見てみたいと思った彼女はお店の扉を開けて中に入った。

カラン、からぁん..

かわいらしい呼び鈴が鳴って、奥からとても綺麗な女の人が出てきた。

「いらっしゃいませ。あら、かわいいお客様ね。ふふっ。」

とても優しい声と、素敵な笑顔のひとに「かわいい」って言われてしまって、久美子はちょっと照れくさくなって、少しうつむきながら言った。

「ちょっと見せてもらってもいいですか?」
「ええ。どうぞ。ゆっくりみていってね。」

彼女はあらためて店内の小物を見てみた。小さなガラス細工に色鮮やかな装飾のされたピエロの人形。小さなハートを重ねたシルバーリング。5つの大小の木で作られたおもちゃの兵隊。五月兎の懐中時計。綺麗でかわいい柄の布で作られた3つのお手玉...
見れば見るほどどれも欲しくなるほどのかわいさで、彼女はすっかりお店の世界に夢中になってしまっていった。
しばらくして、ようやく彼女が一通り見終わった頃に店員のお姉さんが声をかけてきた。

「どぉ?なにか気にいったものはあるかしら?」
「は、はい!全部です!」

久美子はつい興奮気味に答えてしまった。それほどお店にある全ての小物が彼女にとって小さな宝物のように見えていたのだった。

「くすくす...ありがとう。そんなに気にいってくれて、うれしいわ。」

お姉さんは、とてもうれしそうにかわいく笑った。

「ところで、ひとつ聞いてもいいかしら?」

突然お姉さんに質問されて久美子は少し驚いた。

「え?あ、はい。何でしょうか?」

「あなた...今、恋してるのかな?」

まさかの質問に、久美子は急に顔が熱くなって下を向いてしまった。

「ごめんなさい。いきなりすぎちゃったかな?あなたを見てたら何となくそう思えちゃったから。お詫びにあなたにピッタリのもの、持ってきてあげるね。」

そう言うと、お姉さんは奥に行ってまた戻って来た。まだ顔を真っ赤にして少しうつむき加減の久美子の目の前に、綺麗な手でかわいらしいハートの形をした小瓶を差し出した。

「これはね、『ホワイトデーコロン』っていうの。バレンタインデーに想いを伝えられなかった女の子の恋の魔法のアイテム。おまじないみたいなものね。もしかしたら、あなたの恋を応援してくれるかも。」

お姉さんは、そっとコロンを久美子に手渡した。小さなハートの形をした入れ物に、金色の小さなスプレーがついていて、中には白っぽい液体が、光に反射してきらきらと光っていた。
一目ですっかり気にいってしまった久美子はお姉さんに聞いてみた。

「これもすっごくかわいいですね。これってお幾らくらいなんでしょう?」

「これは高いわよ〜。200円でどうかな?」

お姉さんは少し真剣な顔をした後、いたずらっぽく笑った。一瞬思った金額よりも、かなり安かったので久美子は拍子抜けすると同時に、お姉さんにつられて少し笑ってしまった。

「これすごく気に入りましたので、いただきます。」
「ふふっ。ありがとうね。今包んできてあげるから少し待っててね。」

お姉さんは奥に行くとコロンをかわいらしい赤いチェックの小さな袋に包み、リボンのシールを貼って久美子に手渡した。

「はい。おまたせ。がんばってねっ。」

お姉さんは、小さく笑うとウィンクをした。お姉さんに応援された久美子は、また顔を真っ赤にすると、少しうつむき加減で包みを受け取り、お店を後にした。
 

そして3月14日(とうじつ)。美紀はほとんど人の居ない校門の前で和史の事を待っていた。
この日の為に久美子と二人で立てた2段階の作戦...
『まず美紀が和史と校門で待ち合わせをし、そして美紀が和史を久美子の待つ屋上へと行かせる。』
二人はこの作戦の為に、綿密に打ち合わせをし、今日も約束した時間よりかなり早めに来てすでに色んな準備を終え、あとは幕が上がるのを待つだけだった。
美紀は自分の事では経験した事もないくらいにかなり緊張していた。
親友の最大にして最後かもしれないチャンス。それがうまくいくかどうかが自分から始まる事に今まで以上の強烈なプレッシャーを感じていた。そんな彼女の事を知ってか知らずか今日のもう一人の主役。和史が校門へとやってきた。

「井上さん、お待たせ。それで昨日言ってた、僕に用って一体どんな事?」
「あ、あ、っと。じ、じつは、私じゃなくて用があるのは久美子のほうなの。」

ただでさえ不可解な事なのに、自分が緊張する事でさらに彼を警戒させてちゃったかもしれない。と美紀は後悔した。

「え?片瀬さんが?」

彼は、突然久美子の名前を聞き少しどきっとした。

「う、うん。そうなの。もしよかったら、屋上に行ってみてくれないかな?たぶんいると思うから。」

美紀は緊張でさらにしらじらしさが増してしまった自分の演技を激しく悔いた。

「あ、う、うん。わかった。屋上に行ってみるよ。」
「え?あ、うん!行ってくれると助かるー。」

美紀は諦めかけてた作戦がとりあえず上手く行ったので一気に体の力が抜けた。
そして彼が見えなくなったのを確認して、まだ震える指で久美子にメールを送った。
 

(いつもは騒がしいくらいの校舎なのに.....)

久美子は休みで誰も居ない屋上に一人でいた。遠くから運動部のかけ声がたまに聞こえてくるくらいで風の音もほとんど無く、すべては彼女のこの日の為にと用意された場所の様であった。
彼女は両手を胸の前あたりで握りしめ、手足は緊張で少し震えていた。

(お、おちついて!私!だ、大丈夫だから!)

彼女は自分に言い聞かせようとしたが、依然として手足の震えが止まる事は無かった。

<<〜♪ 〜♪ 〜♪>>

突然鳴った携帯に彼女は『びくっ!』と驚いた。そして震える手で携帯を持つとメールを確認した。

『がんばれ!』

親友からの短いけどいろんな思いのこもった言葉に、久美子は勇気づけられた。

(そうよね。がんばらないといけないのは、私!)

久美子はポケットからコロンのビンを取り出すと、小さな使い方のメモに書いてあった通り紅茶をかき混ぜる時のようにゆっくり回しながら自分にかけた。
あまい香りのするコロンは、なんだか気持ちを落ち着かせてくれて、まるで久美子を応援してくれるかの様だった。

(メールが来たっていう事は和史くんがこっちに向かってるって事よね。
もう後戻りできない。ううん!後戻りしたくない!)

いつの間にか久美子の手足の震えは止まっていた。
 

キイィ...

少し軋む様な音がし、和史は屋上にやって来た。
久美子は右手を握り、小さな胸の間に置きながらまっすぐ彼の事を見つめた。
和史はそんな久美子の思いに引かれるように彼女のそばへとまっすぐに来た。

「か、和史くん、あ、あの...」

久美子は、また顔が赤くなってしまった。下を向いてしまいたい。逃げ出してしまいたい。
そんな弱い自分に押し流されようとしていた。

(でも私には伝えないといけない...ううん。和史くんに伝えたい気持ちがあるの!)

彼女はしっかりと前を向き、まっすぐ和史の目を見、そして口を開いた。
その刹那、時が止まり、彼女の時が動き出した。

「私、和史くんの事が好きです。」

短いけどまっすぐな言葉。いままで何回も言いたくても言えなかった言葉。
すべての思いをこめた言葉を彼女は彼に伝えた。

「僕も片瀬、いや、久美子ちゃんの事が好きだよ。」

和史も久美子の気持ちに真正面から答えた。
久美子は和史の言葉が解らなかった。なぜだか色々なものが浮かび上がり、彼女の目からこぼれ落ちた。
和史は彼女の目尻を親指でそっと拭き、彼女の肩を優しく抱きながらそっとキスをした。

色んな想いが複雑に絡み合い、思う事も考える事もできないまま優しいキスをし、もっと彼の事を感じたいと思う心が彼女の心の殻をすこしづつ取り除いていった。彼女は大好きな彼の前に生まれたままの姿をさらしていた。だが、彼女にはまだ捨て去る事のできないものがあった。
彼女は引け目に感じる小さな胸を手で隠していた。
恥ずかしい。すごく恥ずかしい。こんなに恥ずかしいものは手で隠したい。
そんな彼女の後ろ向きな気持ちも
(もっと彼に想いを伝えたい!もっと愛しい彼の事を信じたい!)
彼女からわき上がる感情の前に次第に消えていった。
愛しい彼の手の動きに合わせるように、久美子はそっと自分の手を胸から離していった。

和史の手が久美子の小さな胸を揉む度に、彼女の頭は真っ白になっていった。
彼の手から胸を通して伝わる彼の想い、そしてしびれるような気持ちよさ、わき上がる恥ずかしさ、そしてうれしさ。その全てが彼女に押し寄せてきた。

「んっ...うんっ...」

久美子は思わず声をもらしてしまった。彼の手に合わせて上下に揉まれる自分の小さな胸。
でも彼女には小さくても様々な想いで熱く熱く感じられていた。

「んくぅ...ふっ....」

さらに色々なものが彼女に押し寄せた。何も考えられない、けど、なにかいっぱいのものがあふれ出してきた。

(胸が熱い。すごく熱いの...)

ぐぐっ...ぐぐぐっ...

彼女の張り裂けそうな想いに合わせる様に彼女の胸は膨らみ始めた。
まるで彼女が内に秘めていた想いが解放されたかの様であった。

「んふぅ...ふぅん...」

胸から伝わる想いがさらに大きくなっていった。さらに熱く、しびれる様な感覚に久美子は声を漏らした。そしてそれは胸の先のほうへと出口を求めて押しあがるかの如くに集まっていった。彼女のかわいらしい乳首はせつなくその頭を持ち上げた。
和史の指はそんな彼女の思いにこたえるかの様に彼女の乳首を優しくつまんだ。

「んくぅぅ!....ふぅくっ!....」

久美子は駆け抜けるような新たな刺激に襲われた。彼の指に乳首を摘まれる度に頭を突き抜けるような感覚が走った。そして彼の指が上下に動き始めると、一気に吹き出すかのように胸の先端へと集まってきた。

(なにかきてる!...胸からなにかがあふれちゃう!)

「んくぅぅぅ! ふぁぁぁ....!」

ぴゅっ!ぴゅっ!

彼女の体は震え、乳首から勢いよく二筋のミルクがあふれ出した。
 

久美子はまだ少し荒い息を整えながら和史と目があった。
二人はお互いに少し照れくさそうに赤くなりながら下を向いた。

「その...ごめん。どうしても...」
「ううん。いいの。それは私も同じだったから。」

彼女も同じ気持ちだった。「もっと彼の事を感じていたい。」なぜかそんな気持ちだった。
今まで恥ずかしくて表に出せなかったのに、ようやく持てた勇気...
「ありがとう、これも美紀のおかげね。」 彼女はかけがえのない親友に感謝した。
そして、久美子は自分の大きな胸を見た。ずっと小さくて嫌いだった胸...
「もしかしたら、嫌いだったのは自分で自分を押さえつけていた事なのかも...」と彼女は思った。
「お姉さんは恋の魔法のコロンって言ってたけど、きっと私の心に効く魔法だったのね...」
彼女はポケットの中の小さなコロンにそっと触れた。
ようやく表に出せた大きくて重い..まるで自分の心のような胸からあふれ出た小さな白い滴が彼女の指に乗っていた。久美子はゆっくりとそれを運ぶと、まだ照れくさそうにしてる和史の唇に優しく乗せた。和史が突然の事に驚き久美子のほうを見ると、彼女はとても幸せそうにいたずらっぽく笑って言った。

「私から大好きな和史くんへ。あまーいホワイトデーのプレゼント。」