夢で逢えたら

流浪の暇人 作
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 俺は御影 祐貴。特別でもない、普通の高校2年生だ。むしろ家庭環境は悪い。そんなよろしくない家庭に戻る真っ最中だ。
 家の前立つ、見慣れない女性がいる。どうせクソ親父が連れ込んだ女だろう。親父は女癖が悪い。それでお袋から見放されたのが、今から大体10年前。それ以来、親父は飲んだくれながら女を連れ込んでは口説いている。もっとも、大抵は拒絶されている。
「ただいまーっと・・・」
 酒臭い臭いが鼻につく、だから逃げられるんだと、コイツは分かってないんだろう。
「あぁ?・・・んだよ、下手な期待させやはって」
 舌が回っていない。・・・いつものことか、「が」を「は」と発音している。やけ酒な所を見ると、勧誘か何かで来た女を口説き損ねたって所だろう。血縁があると思うと、殴り飛ばしたくなる。
「それよか、バイトしてんのかぁ?しっかりやんねぇと、俺の酒が無ぁくなっちまうからよぉ、頼むぜぇ」
 家の生活費は少ない。当然だ、学生の生活費などたかが知れている。それの半分を酒代に使おうとする親父を、ブン殴って止めている。殴り合いは慣れたものだ。さっき思った殴り飛ばすというのは、致死量に匹敵する殴打を加えたい、という願望に他ならない。それでもしないのは、こんな人間を殴って、それで後の人生を棒に振るのは勘弁だからだ。 飯は作らない。親父は酒とつまみで食事を済ませている。俺はバイト先のまかないを貰っている。バイト先や学校の人間は、いい人が多い。相当助けられている。
 俺は早々に布団に入った。親父と会話する必要も、風呂に入る必要も無い。風呂は二つ目のバイト先が銭湯で、そこで入らせてもらっている。毎夜、この家庭環境を嘆きながら、床につくのだ。

 夢を、見ている。どこか、とても綺麗な場所だ、緑が溢れている。癒される。
 小屋がある。俺の足はそこに、自然に向かっていく。誰か済んでいる気配はある。尋ねてみようという気が起こる。夢ならば、一体誰が出てくるのだろう。親父だけは勘弁だ。
 トントン。「誰かいますかー?」トントン
 しばらくして戸が開く。見たことのない、見覚えのある女性が出てきた。
「いらっしゃい、待っていたわ。さ、上がって」
「ああ・・・どうも」
 誰だろうか?彼女は。俺より年上である事は間違いない。しかし、どこかで会った気がする。透き通るくらいに綺麗な肌。風になびく美しい長髪。が、服装がおかしい。魔女のローブとでも言おうか、そんな服だ。しかし、そんなのよりも特徴的なのが、胸だ。ギネスに載るような、巨大な胸。思わず見入りそうになる。こんな格好しているならば、覚えているだろうけど・・・。
「それで、ご用件は?」
「えっ?」
「あなたが望んだから、私はここに来たのよ?それとも・・・自覚無い?」
「・・・多分。俺は、誰も呼んではいないから」
 分からない。けど、夢なんだ、これは。目の前にいる人も、夢。自覚が無いのは当然だ。夢なんだから。
「そうか・・・。えっとね、私は魔法使いなの。心の底で助けを求める人を助ける魔法使い」
「・・・・・・そう、ですか」
 俺は・・・相当な夢見てたんだな。魔法使い、か。現状の改善に、そんな者をのぞんでいたとは。
「なるほどぉ。ようするに、父親にしっかりしてもらいたいと、そう願うのね」
 俺は今の悩みをぶちまけた。夢でもいい、何処かで発散したかったから、それだけだ。
「ああ。ついでに面倒見の良い姉か母親か、彼女でもいいかな。そういう人も欲しい」
「・・・・・・そう、分かったわ。なら・・・・・・」
 すると、いきなりローブを脱ぐ彼女。下着がバッチリ見えている。というか、下着のみだ。その下着に支えられる胸の大きさを見る。デカイ。大玉のスイカを楕円にしたようなのが、二つも下がっている。
「・・・・・・・・・・・・!?」
「これからある事をするから、それで決めて」
 突然、深い谷間が迫ってきた。スイカが、目の前に来て止まる。一気に迫った彼女のスピードは、普通の人間の比じゃない
「え、なっ!?」
「さっきから見てたでしょ?いいのよ、触っても」
 嬉しい一言。が、イキナリ初対面の人に言われても、すぐには実行は出来ない。
「冗談だろ?普通、嫌がらないか?」
「別に。だって自慢できる所だもの、アピールしたいのよ」
 楽しげに言う彼女。からかわれているのかもしれない。
「けど・・・・・・」
 納得は出来ない。少なくとも、相手がして欲しいと強く願う限りでなければ、俺はそんな事はしない。そんな俺に焦れったさを感じたのか、彼女は俺の目の前で指を一振り。不思議な輝きの軌道を残すと、身体が勝手に動く。ある事って・・・これか?
「な、何をしたぁっ!?」
「だってぇ、奥手でしょ?強制でやってみました」
 楽しそうに言う彼女。胸を張っている。なにがそんなに偉かったんだ、今の一言のどこが?
 俺の支配を離れ、勝手に彼女の胸に触る俺の手。・・・・・・柔らかい。途端に、それまで抑えていた感情が、湧き上がってくる。体全体で触ってみたい・・・
「じゃあ、そうするわね」
 思考を読んだのか、俺が漏らしたか。彼女はそう言った。大きかった胸が、益々大きくなる。いや、大きいではないだろう。それでは足りない。何と言うべきか・・・肥大だ。柔らかな肉の感触が広がって行き、いつしか俺の背丈を超える。それでも止まらず、ついには俺の二倍近くの高さになった。それは、もはやスイカではない。離れ小島と言ってもいいくらいだ。その島は、俺が今は独り占めしている。うつ伏せ、仰向け。感触が気持ちいい。そんな俺を見て、彼女が笑っているのが見える。
 谷間に落ちる。全身に隙間無く感じる弾力。俺は胸肉の狭間を泳ぎ、彼女と島を結ぶ場所まで来た
「・・・望めば、逢えるわ。それが私とあなたを結ぶ、糸になる」
 静かに抱きしめられる。俺よりも身長は多少大きい彼女。細い腕が静かに背に回る。デカイ、俺の胴体を包める大きさの胸に抱かれ、思った。
 この人なら、本当に助けてくれるかもしれない、と。

 携帯の音で目が覚める。
「んあっ・・・・・・朝か」
 奇妙な夢だった。珍しくも、ハッキリ覚えている。望み、今も続く。俺も、逢いたい。
 今日も学校へ行く。土曜なので終わるのが早い。しかし、たった4時限の間、俺はずっと奇妙な魔女の夢について考えていた。もう一度、夢で逢えるだろうか。
 家に着く。親父の上機嫌なバカ笑い声が聞こえた。中に女性がいる。
「ただいまー」
 昨日の女性だ。家の中でくつろいで、まんざらでもない顔をしている。正気か、はたまた猫かぶりか?
「おう祐貴!さっそくだが、俺は再婚するぞぉ!」
 ・・・・・・何と言った?このバカは・・・
「・・・ハァ!?マジかよ・・・!」
 絶句だ。それこそ夢にもあり得ない現実。
「それでだ、彼女にも娘さんがいる。今日からでもいいから、義姉さんと呼ぶんだぞ?」
 親父のバカ笑い声と、ドアが開くのは同時。そこから出てきたのは・・・
「初めまして。よろしくね、祐貴くん」
 笑顔で出てきた彼女。それは、夢で逢った人。衣装以外、一つも変わらない。初めて昨夜逢った時と、一つも。その笑顔も、きっと、気持ちも。
 ああ、そうか。昨日、家の前にいた人。彼女と似ているんだ。だから見覚えがあった。最初から、俺に逢うために家に来てくれていたんだ。どこかで、隠れてたのかな。
「言ったでしょう?望めば逢えるって」
 俺は驚きを喜びに変えて、素直な笑顔を作った。むしろ、自然に笑えた。
 その笑顔のまま、俺は手を差し出す。握手を求めながら、こう言った。
「よろしく、義姉さん」
 明日からは、きっと毎日が楽しめそうな気がした。それこそ、夢みたいに。