リレー小説企画「瑠璃色の華」

1回目:クサムラエチル(物語)・長月あきひろ(挿し絵) 作
Copyright 2001,2003 by Kusamuraetiru (story)
Copyright 2005 by Akihiro Nagatuki (picture)

『えーと、自己紹介します。こんにちわ。僕の名前は天野瑠璃(あまの るり)。身長155センチ 年齢15才の中学3年で、えっと……よくまちがえられるけど一応、男です。もう1週間位病院に入院していて、特にやることがないのでこれをかきました』
 少年はそのか細い手に持っていたペンを置いた。ここはI県H市にある病院の一角。入院病棟の隅にある個室で少年はベッドにこしかけていた。
 何気なく、脇においてあった鏡を見る。
 鏡に映っていたのは大きな目と瞳,カラスの濡れ羽色と形容できる艶っぽい見事な髪と整った目鼻立ちをもった美少女顔負けの美少年だった。
 髪は肩の辺りで切りそろえている。
 全体的なシルエットも細くて頼りない。百合の花という形容がぴったり似合う少年、それが瑠璃だった。
「回診でーす」
 ドアを開けて看護婦さんが入ってきた。慣れた足取りで瑠璃に近づいてくる。自分の声が聞こえる距離まで近づいたのを確認し、瑠璃は口をひらいた。
「看護婦さん」
 透き通った声だった。
「ん?なに?瑠璃君」
 瑠璃は目を伏せて肩を小刻みに震わせながら言った。
「僕の病気……一体本当は何なんですか」
 看護婦は瑠璃を強く抱きしめたい衝動を振り払うと言った。
「た、ただのぜんそくよ、すぐに治るから、元気だそ、ねっ?」
「うそ、なんでしょう……。本当は……本当は…………」
 途中で言葉は途切れてしまった。うつむいた瑠璃の横顔に、顔を真っ赤にながら看護婦は瑠璃のくわえていたであろう体温計を必要以上に大事な物のように両手で抱いて部屋からでていった。
「フーー」
 瑠璃は悩ましげなため息をその小さな唇からついた。自分の体のことは自分が一番よくわかる。
 きっともう助からない病気なのだろう。ただ、はっきりとそれを口にするのが怖かった。それを肯定されるのが怖かった。
 なんて弱い人間なんだろうと思う。
 そして、そんな自分を変えたいとも思う。しかし、そんな時間はもう残されていないのだ。
 入院した時から発作(息ができなくなって全身がひどく痛む)の間隔は短くなってきているし、起こる度に苦しさもましてゆくのだ。
 次の発作のあとで生きている保証はどこにもない。
「時間が、あればなぁ……」
 そう呟いた時、ぞわりと異変が起こった。なんというか……止まっていた。
 窓の外をとんでいた鳥は羽を広げたまま空中で(!)静止し、道路を走っていた車は慣性を無視してその場で停止していた。
 そればかりでなく、少なくとも目に見える範囲の全てのものが止まっていたのだ。
「こ、これは……」
 思うやいなや、目の前に煙が立ち昇ったかと思うとその中から仙人がでてきた。なぜ仙人と分かったかというと、額に仙人と黒く書いてあったからだ。(いいのかそんなんで)
「お主の願い、かなえちゃろうか?可愛い兄ちゃん。時間が欲しいとかいっとったのう」
「あ、あなたは……?」
「ワシは仙人。額にもそう書いてあるじゃろ。そんなことよりどうすんじゃ?ん?ワシはどっちでもいいんじゃぞ」
「あ、えっと、そんなこと、いきなりいわれても、その」
「そんな可愛い顔で困るな。時間をやるといっとるんじゃ。せっかくのチャンスじゃぞ。断っとくがお主このままだとちょうど10分後にヌシイタッゼ病の発作で死ぬぞ」
 自分の死がすぐ近くにあって、それをさけるための方法もまた近くにあるならば、たとえどんなに胡散臭くても人はそれを選択するだろう。
「お……お願いします。僕に時間をください」
 自称仙人はニヤリと笑うとふところからいかにも怪しいドクロマークのビンをとりだした。中には無数の丸い玉がつまっている。
「このルナクヨデジマを飲めばお主の病は絶対治る!!ただ副作用が……まあ、お主の顔なら問題あるまい」
 なにやら一人で納得すると仙人はビンの蓋を開け、粒をひとつとって瑠璃に手渡した。それを瑠璃が受け取ると仙人の足元から煙が出始める。
「じゃーな、可愛いにいちゃん」
「ま、まって、その、何で……こんなことを……?」
「気まぐれじゃよ。気まぐれ。ただのつまらん普通のなんでもない気まぐれじゃ。せいぜい気にせんことじゃ。フォッフォッフォー」
 言葉の途中で仙人の姿は完全に煙に包まれ、笑い声が聞こえなくなり煙がはれたときには影も形もなくなっていた。…………しばしの空白。
「カーカーカー」
 瑠璃が音に反応して外を見ると、静止していたカラスが飛ぶのを再開していた。
 否。カラスだけではない。全てのものが動くのを再開していた。
 全ては夢だったのか?いや違う。
 右手に残った丸薬(?)がそれを証明していた。
 あの自称仙人は言っていた。
『あとちょうど10分後に死ぬ』
 しばらく悩んだ末、瑠璃は薬を一口のもとに飲みこんだ。
 嚥下の数瞬間後、身体中に電撃に似たような感覚がはしり、瑠璃は自分の目を疑った。
 胸が、わずかではあるが、しっかりと、確実に、膨らんでいる。
 仙人の言葉がフラッシュバック。
『ただ副作用が……まあ、お主の顔なら問題あるまい』
 まさかと思い、瑠璃は自分の股間の辺りを見た……何もない。
 静かに意識が遠のいていき、瑠璃は失神した。

 次に目覚めたとき、自分がベッドに寝ていることに瑠璃は気付いた。
 隣では母が自分を心配そうに見ている。目があった。
「瑠璃、瑠璃、大丈夫なの……そう、よかった。急に倒れたって聞いて、私……私……よかった。本当によかった。お父さんももうすぐ来るからね」
 泣きださんばかりの勢いで一息に言うと、母は瑠璃に抱きついてきた。瞳には涙がたまっている。
 抱きついた際、母の腕が瑠璃の胸に当たった。
「瑠璃、あなた……胸が???」
 今度は母が失神した。

 1週間後
「えー、急に性別が変わったのなんらかの関係はあるようですが、病気は完治しています。信じられません。奇跡としか表現の仕方が思いつきませんよ」
 初老の医師はまだ信じられていない口調で告げる。
「本当に、本当に瑠璃はなおってるんですね……神様」
 瑠璃の母が万感の思いで答えた。

 更に1週間後
 退院の日、もはや外見は完全かつ完璧に美少女になっていた瑠璃は患者・看護婦さんに惜しまれながらも病院をさっていった。
 それにしても、瑠璃の胸はわずか二週間でどんどん大きくなっていった。
 メロンパン大の大きさになったそれは、瑠璃の着ているTシャツの胸の辺りを内側から大きく、力強く押し出し、男だったとき瑠璃のへその辺りを覆っていた部分の布地は胸にとられ、瑠璃のへそが見えているほどだった。
 入院している時に来ていたパジャマのサイズもひとつ大きくなった。
 なぜ急にこんなことになったのか聞かれることは幾度となくあったが、知らぬ存ぜぬで通した。
 まだ精神病院には行きたくない。
 瑠璃自身はあの仙人は本物だったと信じているのだが。
 でも、このまま大きくなっていったらどうなるんだろう……?
 もちろん胸のことである。それはなるべく考えたくない問題だった。

 次の日の月曜日は、予定通り瑠璃は学校にいくことにした。
 制服は二時間迷った挙句、セーラー服を選択(退院前に母が買っていた)。
 事前に学校には連絡がいっているそうだから変態扱いもされないだろう(と、信じたい)し、今の瑠璃は完全に巨乳美少女だったからだ。
 このセーラー服は、退院の1週間前に買ったやつのくせに胸の部分がすこしキツくなっている。少し着るのに苦労して瑠璃は家を出た。
 学校への道を歩いていると、他の通行人の視線を痛い程感じる。男だった時から多かれ少なかれ感じてはいたが、そのころより明らかに多くの視線を感じる。その時、
「瑠ー璃」
 流れるような声にのって小柄な手が瑠璃の後ろからまわり、ムニッ、という擬音の感じで瑠璃のデッカい乳をワシづかみにした。手のひらの大きさは瑠璃の胸の半分程度なので瑠璃のメロンパン大の大きさの胸を全くつかみきれていない。開かれた指の間から瑠璃の胸がその弾力でこぼれ落ちていた。

「飛鳥……ちゃん」
 首だけ回して後ろを振り返った瑠璃の見たものは、髪をリボンで束ね腰の辺りまで垂らしたセーラー服の少女の笑顔だった。セーラー服は瑠璃と同じものだ。顔はかなり可愛い部類に入るだろう。
 瑠璃の幼なじみ、新宮寺飛鳥。(しんぐうじ あすか)その手で瑠璃の大きい胸をもてあましながらももみつづけ、笑顔を崩さずに言う。
「女の娘になっちゃったって本当だったのね。瑠ー璃。子供の頃から女の娘みたいな顔と身体だなーって思ってたけど。本物になっちゃうなんてねえ、ま、病気が良くなったなら良かったじゃない……それにしても大きいわね。これ」
 胸をこねくり回す腕に一層の力が入り、グニョンと変形する。
「飛鳥ちゃ……やめ……」
 瑠璃はどうにか聞き取れる声でとぎれとぎれに言葉をついだ。その頬は桜色に染まり、目には涙が滲んでいる。声には艶が多分に含まれている。
 その訴えを聞いて、飛鳥の笑みが悪戯を思いついた悪ガキのものになり、
「止めて欲しかったらやたらおっきいこれのサイズをいいなさい。さあ、さあ、さあ」
「87の……ジ、G、カップ……ハア、も、もう止めてよう、飛鳥ちゃん」
「たったG?たった250ミリメートル?この膨らみがそんなちっちゃいわけないでしょ全く。これは、その罰」
 飛鳥の手の動きがさらに活発になる。人差し指と中指の腹で何かとがった部分をはさみ、弄びはじめた。時計回りに手首が回転を始める。
「ほ、ホント、は…………92、92センチの……Iカッ、Iカップ、だから……だから、お願い……やめて」
「ようし、正直でよろしい」
 飛鳥はあっさりと両腕を離すと、前かがみになって肩で息をしている瑠璃の前に立った。前かがみになった瑠璃の胸は大きな谷間をつくっていた。
 上気した顔で飛鳥を見上げた瑠璃に対して、飛鳥は得意そうに言う。
「92のIじゃ まだまだ私にはかなわないわよ。瑠璃ちゃん」
 ちゃんの部分を強調していうと飛鳥は細い腰の後ろで手を組み、胸を前に突き出した。
 ……デカい。瑠璃が最後に見た時より確実に一回りは大きくなっている。特注サイズのセーラー服の胸の部分を大きく大きく盛り上げ、はち切れんばかりに膨らんでいる胸は、正面から見た時に飛鳥の腕のある程度を見た者の視界から覆い隠すだろう。
 先刻瑠璃の胸を後ろからもんだ時も、瑠璃の背中のほとんど全部と面積と体温を共有していた。
 そして飛鳥の瑠璃とさほど変わらない小柄な身体(瑠璃のほうがやや小さい)は、ただでさえ大き過ぎるほど大きい飛鳥の胸を実際以上の大きさに見せるのに一役買っていた。
「125センチよ、125センチ。すごいでしょ。あんたの倍のダブルI(U)カップもあるんだから」
 自慢そうに言うと、飛鳥はへその前で腕組みをする。と、その腕を一気に上に押し上げた。
 文字通り寄せてあげられた胸は窮屈そうに押し込められ、あまったかなりの部分は腕組みの柵を乗り越えて、物凄い重量感と存在感をだしていた。セーラー服の胸部の布地は今にも破れそうだ。
 瑠璃はなんとか息をととのえたが、圧巻な光景になにもいうことができない。
「さっ、いこっか学校。遅刻するよ」
 腕組みを止めた飛鳥が言い、瑠璃に手を伸ばす。腕で支えられていた胸が支えをなくし、大きくタプンと揺れた。
 そして手をつないだ美少女二人が去ったあと残ったのは、鼻血で地面を濡らし倒れている通行人の山だった。そう、ここは天下の通学路。市街の大通りだったのだ。
 美少女二人が歩いていると、道の先で手を振っている影が一つ。
 その影がこちらに駆けてきた。瑠璃や飛鳥よりも身長は大きいのが見てとれる。170前後だろう。首の辺りで切りそろえた綺麗な髪を持った細身の女性が近づいてくる。
 瑠璃と飛鳥の担任、扇 霞(おうぎ かすみ)22才だ。
 ちなみに細身の女性という表現は一部正しくない。胸がかなり――いや、とんでもなく大きいからだ。
 バスケットボールを二つ入れたほどもあるその胸は、男子生徒群の必死の調査により158センチという報告がされている。が、いまだに成長中という情報もあり実際の大きさは謎のままだ。
 つまり最低158センチ。
 こちらに向かってくるのに足を一歩動かす度にダプンダプンと上下に大きく揺れる胸は、教師お決まりのスーツでは覆いきれていない。布地が伸びきった黒いシャツに覆われているその胸は、見事に前に突き出ていた。
 彼女が理科の実験のとき白衣を着ると、白衣の上3つのボタンは前を合わせることが絶対できないというのは彼女が理科を教えていないクラスの生徒も知っている。
「瑠璃君、じゃなかったぁ、瑠璃ちゃん、飛鳥ちゃん、おはようございますぅ」
 走ってきたおかげで熱い吐息をルージュのひかれた唇から吐きながら霞は言った。頬も紅く染まり息も荒い。どうやら体力は無いらしい。
 霞が前に立つと丁度瑠璃と飛鳥の頭の辺りに巨大な塊のくる格好になる。
 悠々とそびえる、自分の頭より大きな胸を見ながら瑠璃と飛鳥は挨拶をした。
「先生、オッハヨー」と片手を挙げて飛鳥。その拍子に125センチがタプンと揺れる。
「お、おはようございます。霞先生」こちらは瑠璃。小さく礼をしたせいで胸は谷間になる。他の二人程ではないにしろ重量感がありありと分かる。
 補足をすると瑠璃の胸は二週間でここまで大きくなったのだ。これからもどんどん大きくなってゆくのだろう。
 瑠璃が小さく下げた上半身を元にもどした時、そのわずかな振動にも胸は大きくたわんだ。
「瑠璃……ちゃんは病気が良くなってよかったですねぇ」
 笑顔で言ったあと、霞の表情が曇る。が、もののみごとに一瞬で曇った表情を消すと、笑みをたたえて瑠璃に言葉を向けた。
「瑠璃ちゃんはぁ、女の子になってもぉ、とっても可愛いですよぉ、自信もってくださいねぇ」
「はい……」
「困った事があったらぁ、いつでも私に言って下さいねぇ……便りにされるのはぁ、嬉しいんですからぁ……………………特に、瑠璃君にはぁ」
 語尾は霞以外には聞こえなかっただろう。と、突然霞は瑠璃をだきしめた。胸の谷間に瑠璃の顔が完全に埋まる。
 柔らかくて、あたたかい。心臓の鼓動が左右の胸を通じて伝わってくる。鼻で口で呼吸するたび霞の――年上の女性の香りが流れ込んでくる。
「がんばって下さいねぇ、瑠璃くん」
 『くん』を強く発音した言葉を瑠璃の耳元で囁くと、霞は瑠璃を解放して学校の方へ駆けていった。
「……あの先生、あれでIQ200あるんだから不思議よね。人は見かけによらないってことか」
 飛鳥がそんなことを言っいるそばで、瑠璃は虚ろな目で霞の後姿をみつめていた。顔全体が上気していて、口は半開きの状態だ。恍惚といってよい。
 しばらくそんな瑠璃の顔を唖然とした表情で見ていた飛鳥だったが、突然目つきが険しくなると急に瑠璃の手を握ってきた。
 そしてそのまま瑠璃を引っ張るようにして歩きだす。
 足早に歩いているので125センチの胸が大きく揺れているが、飛鳥は全く気にしない。
 自分の乳揺れが恥ずかしくなった瑠璃は、
「飛鳥ちゃん……もっと、もっとゆっくりお願い」
 と情けない声をだしたが、瑠璃の倍は乳を揺らしている飛鳥はその嘆願を
「うるさいっ」
 と一括した。それ以上瑠璃は何も言えず、飛鳥もなにか言おうとはしなかった。
 右手を飛鳥に引っ張られているので瑠璃は左手で自分の胸を押さえたが、細いその腕では自分の胸の真ん中の3分の1を上から押さえつけるので精一杯。
 セーラー服ごしではあるが押さえきれずに膨らみが腕の上下からハミ出て、瑠璃の左腕を上下からはさみながら、主の意思に反して大きくたゆむのを止めようとはしなかった。瑠璃の頬が羞恥に染まる。
 瑠璃の手を引いて先を行く飛鳥は
「私だって、私だって、私だって……」
 と小さく呟いていた。

 ――学校が見えてきた。

続く