リレー小説企画「瑠璃色の華」

18回目(分岐3):樋口耀翠 作
Copyright 2001 by Yousui Higuchi

四日目の朝を迎えた。
昨日、島に戻ってから美樹がくれた新しい水着を着けながら瑠璃が口を開く。
「今日はバナナボートに乗るんでしょ、あれって面白そうだよね!絶対に落ちないように頑張らないとね!」
「そんなこと言っちゃっていいの?瑠璃ィ瑠璃ィ、一番はじめに『キャー』なんてね」
里美が突っ込む。
「準備オーケー!レッツゴー!」
四人はレイと霞に合流してビーチへ向かった。・・・
「みなさんお早うございます」
出迎えたのはナンシーだ。
「今日は、一日みなさんとご一緒させていただきますので、よろしくお願いします、ところで昨日のダイビングは如何でしたか?」
バナナボートの乗り場に向かいながら、瑠璃はナンシーに昨日の出来事を話した。
「宝物なんて素敵ですね、今日も良い一日になると良いですね」
ナンシーは受付の女性に会釈するとバナナボートに近付いて
「みなさんどうぞ乗ってください」
「ナンシーさんも運転出来るんですか?」
「私は趣味でジェットスキーに乗るんですよ、みなさん落ちないようにしっかり?まってて下さいね!」
バシャバシャと音を立てながら浅瀬に留めてあるバナナボートに跨る。超乳の持ち主が6人も乗ると前後の間隔はかなり狭く、胸を前の人の背中に押し付けて乗るような形になった。中でも瑠璃の後ろに陣取った霞は必要以上に胸を押し付けている。先頭に乗った飛鳥は振り向いて霞に
「先生!瑠璃にくっ付きすぎじゃないですか!」
「ん〜でもしょうがないじゃない、ねっ!瑠璃さん」
「もーっ!」
「出発します!?まって下さいね!」
ブロロロロロロッ
ジェットスキーのエンジンがかかり引っ張られたボートが徐々に滑り出す。沖に向かうためスピードはあまり出ていない。それでも波を通過するたびに背中に軟らかくて温かい胸の感触が十分に伝わった。
ブゥオーン
エンジン音が大きくなりスピードが速くなる。置いていかれそうになる体を必死でしがみついてこらえた。後ろの人の軟らかさを感じながら・・・
ジェットスキーは弧を描きながら左右に蛇行していく、ボートはロープを介して繋がっているためジェットスキーが作る白い水の尾を勢いよく飛び越えながら蛇行する。
「キャー!ワー!落ちる〜ぅ!」
ドボン!ドボン!ドボン!
瑠璃は悲鳴と共に飛鳥と霞を道連れにして海に放り出された。
スピードを落としたナンシーは三人のところにボートを誘導する。無事だった里美が
「キャハハハハハ、やっぱり瑠璃が最初ね!予言大当たり!」
「え〜んやっちゃった、早く助けてぇ〜」
再びボートに跨るとナンシーはスピードを上げ、そしてまた蛇行が始った。しばらく耐えていると今度は大き目の波が近付いてきた。その波を越えた瞬間、
ドボン!ドボン!ドボン!・・・ドボン!ドボン!・・・ドボン!
水しぶきを激しく上げながら全員が撃沈した。
「ハハハッ、みなさん大丈夫ですか?」
ナンシーが笑いながら助けに来た。六人はお互いの顔を見ながら大きな声で笑い、また引っ張られていった。・・・
ビーチへと戻ってきた一行は
「面白かったね、ブゥオ〜ン!グゥイ〜ン!んでっ、ドボ〜ン!なんてね!」
「でも何回落ちたかな?その度に水着がズレちゃうから大変だったね」
「やっぱり瑠璃が最初だったしね!」
「また〜っ、里美ったらひどい〜」
「フフッ、みなさん少ないほうですよ!」
「さあ、みなさん泳ぎましょう」
「そうですね、少し泳ぎましょう」
みんなは海へと入っていった。
「私、少し焼いてるね」
瑠璃はサマーベッドに横たわり、他の観光客を見渡す。
『いつ見てもみんなすごく大きいな、羨ましい・・・でも、いろいろと大変だろうな』
どれくらいの時間が経っただろうか
「瑠璃さん、隣にいいかしら?」
ナンシーが戻ってきた。
「どうぞ」
瑠璃は隣に座ったナンシーの大きな胸を見て続けた。
「ナンシーさんはいつ頃から胸が大きくなったんですか?」
「急にどうしたんですか?」
「いや、ちょっと」
「そうね、初めてブラを着けたのは幼稚園の時ね、ぐんと大きくなったのは小学校に入ってからすぐだったの」
話し始めたナンシーはいつもの敬語が解けていた。
「家の家系は代々みんな大きいの、だから驚きはしなかったわ、どんどん大きくなって小学校を出るときには120インチ、3mを超えてたの、その後も成長してね、今ではこの大きさよ」
そう言って自分の巨大な胸を抱きかかえ、微笑んでみせた。
「小学生で3m以上なんて、すごいですね、でもいろいろと大変だったんじゃないですか?」
「ん〜、小さい時は男の子にからかわれたり、まわりの人たちにジロジロ見られて、大変って言うかヤダったの・・・でも、今はこの胸が大好きよ」
「フ〜ン?」
「今でも少しずつだけど成長しているこの胸をね、喜んでくれる人もいるのよ」
「喜んでくれる人?」
「そう、喜んでくれる人、瑠璃さんは彼氏いないの?」
「彼氏?」
「そうか、まだ中学生だもんね、あと少し経てば瑠璃さんも分かるわよ、好きな人が出来ればね」
『好きな人・・・バスケ部の藤谷君・・・』
瑠璃の頭の中で顔が浮かんだ。
「あっ瑠璃さん、顔が真っ赤になった!いるんでしょ好きな子が、どんな子?どんな子?」
「えっ、いや、いませんよ好きな子なんて・・・」
真っ赤になって下を向いた。
「フフッ、恥ずかしがることなんてないのよ、それが普通よ」
ナンシーはこれ以上深く聞こうとはせずに
「さあ、泳ぎましょう、日差しが強いから真っ黒になっちゃうわよ!」
「はい」
二人はみんなのいる海に駆け出した。
「瑠璃ィ遅かったじゃない、真っ赤な顔してどうしたの?」
プカプカと胸を浮かべながら飛鳥が声を掛ける。
「うう〜んっ、何でもない、日焼けよ、日焼け」
瑠璃は必死で潜り、飛鳥の足をくすぐる。
「瑠璃ぃやったなー、お返しよ、それ!」
「キャハハハハ」
里美と美鈴も参加して、くすぐり合戦が始まった。
「霞ちゃん、あの子たち楽しそうね、連れてきて良かったわ」
「そうですね、みんな明るいし、とっても良い子ですね」
レイと霞が話していると、ナンシーが、
「レイさん、霞さん私たちも入れてもらいましょう!」
「そうね、童心に返ったつもりでね」
そう言って夕方まで海と戯れた。・・・
部屋に戻り、身支度を整えた一行は南国ムード満点のハワイアンレストランへと向かった。
「ここだここだ、レストラン『チチフル』」
『Tit Ful』と書かれた看板を指差しながら魅鈴がはしゃぐ。
「チチフル、なんか意味深ね」
里美は自分の乳房を左右に揺らしながら飛鳥を見た。するとレイが、
「フフッ、チチフルっていうのはね、こっちの言葉で潮騒っていう意味なのよ」
「そうなんですか、なんか勘違いしちゃいました」
「さあ中に入りましょう」
店内は賑わっている。席に着いてから、数分が経つと色とりどりの料理が運ばれてきた。
「わぁーおいしそう、こんなの見たこと無いです」
「皆さんどうぞ遠慮しないでたくさん食べてね」
「はい、いただきます!」
魚介類を中心に肉や野菜を使った料理を食べながら、
「今日で最後なんて私信じられないな〜」
「ホントよね、明日帰国するなんて実感沸かないし〜」
「私なんかここに住みたくなっちゃった」
「せめて夏休みぎりぎりまで居たいよね」
「あなたたち、なに言ってるの夏休みの宿題ちゃんと終わってるの?」
霞が教師の顔で釘を刺した。
「霞ちゃん今日は良いじゃない、皆さんここが気に入ってくれておばさんも嬉しいですよ、来年も良かったら来てくださいね」
「えっーホントですか!?絶対行きます!」
「嬉しいな、早く来年にならないかな〜」
「まぁ魅鈴ちゃんたら気が早い」
「レイさんが甘やかすからですよ」
「あら、それじゃあ霞ちゃんは来年誘わなくって良いの?」
「それとこれとは・・・」
「フフッ、冗談よ冗談」
「わー先生へこんだ、へこんだ」
「キャハハハハハ!」
笑い声が木霊した。・・・
食器が下げられ食後のコーヒーを飲みながら、
「皆さんお腹一杯になりましたか?魅鈴ちゃん大丈夫?」
「はい、大丈夫です、ご馳走様でした」
「良かった、これからね本日のメインイベントがあるのよ!」
「メインイベントって何ですか?」
「一週間に一度のショーよ、さあ始まるわよ」
店内の照明が落とされアナウンスが流れた。
「皆様、お待たせ致しました、当ホテル従業員が自身を持ってお送りするフラダンスショーが始まります!皆様、存分にお楽しみ下さい!」
♪ドンドンチャカ、ドンチャカ、ドンドンチャカ
太鼓の音が聞こえると客席から大きな拍手が送られ、ステージにスポットライトが当たるとダンサーが現れた。超乳の女性が二十名、中には美樹とナンシーの姿も見える。彼女達の衣装は美樹に水着を貰いに行った時に見たヤシの実を半分に切っただけのブラジャーと腰箕、頭と首には花飾りという大胆なものだった。ナンシーの大きな胸はヤシの実ブラで支えることなど出来ず、ズルズルと床に引き摺りながらの登場となった。横一列に並んで客席に礼をすると、ゆったりとしたハワイアンの音楽が流れ、彼女達は曲に合わせて腰を左右に振り始めた。それに合わせて胸も左右に揺れ動く。
「わー綺麗、みんな素敵だねっー」
しばらくすると曲のテンポが速くなり腰の動きも激しくなっていく、申し訳なさそうに着けていたブラはその瞬間から役目を終え、巨大な胸は別の生き物のように動き回った。
「凄い!壮観ね!」
「・・・」
汗を掻いた体をライトが艶やかに照らし、眩しく見えた。曲が終わると客席から割れんばかりの拍手が送られた。すると息を切らした美樹がステージの中央に来て、
「たくさんの拍手ありがとうございます、次はお客様の中からステージに上がって頂きまして私たちと一緒に踊って頂きたいと思います」
「美樹姉カッコイイ、いつもと違うー」
こそこそと話していた飛鳥を見つけると
「そこの四人組のお嬢様、一緒に踊って頂けませんか?」
美樹は笑顔でこちらに語りかけた。
「あなたたちよ!さあ行ってらっしゃい!」
霞も笑いながら四人に言った。
「えーでも」
瑠璃が困っていると
「お客様、彼女達に大きな拍手をお願いします!」
パチパチパチパチ
「美樹姉ったら、白々しい、よしこうなったら行きましょう!」
そう言うと四人はステージに上がって行った。
パチパチパチパチ
「私が簡単な振り付けを教えますのでやってみて下さい」
美樹はスローテンポで簡単な振りをやって見せた。
「さあどうぞ!」
四人は見様見真似でやってみるが何かが違う、客席が笑い声で包まれる。ツカミというやつだ。
「もう一度やりますよ」
また笑い声で包まれる。
「それでは本番行きますよ!レッツゴー」
音楽が流れステージの全員が踊りだす、客席の笑い声は消えていた。
「良いですよ!その調子です!」
その言葉を合図に急にテンポが速くなる。二十人の女性は何事も無かったように踊り、四人は慌てて付いていこうとするがうまく踊れない。客席は大爆笑に包まれた。やっとの思いで曲が終わり拍手に包まれながら、
「客席の皆様、彼女達のダンスは如何でしたか?勇気ある四人の女の子にもう一度大きな拍手をお願いします!」
拍手に包まれ顔を真っ赤にしながら席へと戻った。
「皆さん初めてにしては良かったわよ」
「私も踊りたくなっちゃった」
「ママも先生も人事だからって」
「恥ずかしかったけど楽しかったね」
「そうね」
「・・・」
ステージでは次の踊りが始まっていた。・・・
ショーが終了してお客さんの数もまばらになったころ、美樹とナンシーが彼女達のテーブルにやってきた。
「みんな凄く上手だったわよ!」
「私もビックリしました」
二人は上半身裸のままで、体中に汗が滴り落ちていた。
「美樹姉!ひどいじゃないっ!はじめから言っといてくれれば少しは練習したのに!」
「ゴメンゴメン、でもこれがこのショーの見どころなの、それに滅多に経験出来ないことだから良かったでしょ!」
「恥ずかしかったけど面白かったです!ねぇみんな!」
魅鈴はニコニコしながら皆に語りかけた。
「そうね、いい思い出になりました」
「みんないつでも言ってね!本格的に教えてあげるから!」
そう言うと美樹は胸を揺らして、ポンと叩いた。・・・
部屋に戻ると、興奮冷めやらぬ魅鈴が皆に向かって、
「見て見て、こうかな?こんな感じかな?」
覚えたてのフラダンスを踊って見せた。
「違うよ!こうだよ!右!左!右!左!」
里美も一緒に踊りだす。
「二人とも違うよ!こうこう!見ててっ!」
飛鳥も参加する。
「瑠璃もやろうよ!ほらっ早く!」
「うん」
「あっ瑠璃ィうまいじゃない!どうやるの?教えてよ」
「コツはね、こうやって、こうするの」
四人はフラダンスが気に入ったようで、夜中まで踊り続けた。・・・

続く