翌日の放課後。
「さあ行きましょう」
家に戻る時間も無く、セーラー服のままで四人は集合場所へと向かう。指定された場
所は電車で20分位のところにある喫茶店でくんつの行きつけらしい。
車内では相変わらずジロジロと視線を注がれたが、彼女たちは気にもせずにおしゃべ
りを続けた。
「どんな喫茶店だろうね?」
「私たちなんか喫茶店って言えば駅前にある『スターフォックス』ばっかりだもん
ねぇ」
「たまに『トトール』ってとこね」
「きっと高級なんだろうね」
しばらくすると電車は目的地へと到着した。住所を頼りに喫茶店『アラモンド』を目
指す、
「ここだ、ここだ」
「あった『アラモンド』、やっぱりちょっと違うね、高級そう〜」
「ちょうどいい時間だし中に入りましょう」
「でも少し緊張しちゃうね」
「久しぶりに会うんだもんね」
「ねぇねぇ、やっぱりドアを開けるとカランコロンって鳴るのかな?」
「そんなのいまどきないんじゃないの」
「さぁ入りましょう」
「うん」
カチャ
カランコロン、カランコロン・・・
「あっ鳴った、鳴ったよ!」
「フフッ、ホントだ」
四人は顔を見合わせて微笑んだ、一瞬にして緊張がほぐれた感じだった。
店内をキョロキョロと見渡していると、奥のほうから聞き覚えのある声が聞こえてき
た。
「君たちこっち、こっちだよ!」
派手な服装をしたくんつともう一人、男が手招きをしている。
「あっ、こんにちは」
「お久しぶりです」
「いやぁ久しぶりだね、みんなのことをずいぶん探したよ」
くんつは鼻から血が出るのを辛うじて堪えていたが、隣にいる男は既にティッシュを
詰め込んでいた。
「彼は初めてだから紹介するね、番組のプロデューサーで須藤さんって言うんだ、な
んかピーナッツを食べ過ぎたみたいでね、ハハハッ・・・」
くんつはカモフラージュのために注文しておいたナッツの盛り合わせを指差した。
「みなさんはじめまして、プロデューサーの須藤です」
須藤は名刺を差し出した。
「みなさんそんなところでつっ立ってないで、こっちに来てさぁ座って座って」
彼女たちのためにテーブルとイスを広くとってあるボックス席に案内した。もちろん
ナッツの盛り合わせを持って
「さぁどうぞ」
「はい、失礼します」
十分にスペースを確保しておいたつもりだったが、それでも窮屈そうだった。
「しばらく見ない間にみんな凄く大きくなったよね!?」
くんつが切り出した。
「はい、どんどん成長してるんです」
瑠璃は少し顔を赤くして答えた。
「瑠璃ちゃんどうしたの?顔を赤くして、恥ずかしがることなんかないんだよ」
「はっはい、いやっ憧れている人にそのぅ〜」
瑠璃は益々顔を赤く染めながら小声で言った。
「みんなだってとっても魅力的だし、もっと自信を持って!」
「そうだよ!とっても可愛いよ」
須藤が相槌を入れる。
「ところで今どれ位あるの?バストサイズは?」
飛鳥は待ってましたと言わんばかりに
「えーっとですね、3週間前にみんなで計ったんですけど魅鈴が385で里美が42
9、私が597で瑠璃は673だったんです」
「3週間も前ですからもう少し大きくなっていると思いますけど」
一番小さなバストの持ち主、魅鈴が補足する。
「それにしても凄い成長だね・・・」
くんつはポケットに用意しておいたティッシュを鼻に突っ込んだ。
「今頃ピーナッツが効いてきたよ、ハハハッ・・・」
そう言ってナッツの盛り合わせを指差した。
「くんつさん大丈夫ですか?もっとティッシュありますよ」
隣に座っていた里美がくんつのほうを向いてカバンからティッシュを差し出す。たっ
たそれだけの動作で、
ムニュッ・・・
くんつの肘に里美の胸が食い込んだ。ティッシュは見る見るうちに真っ赤に染まっ
た。
「ありがとう、たっ食べ過ぎだね」
くんつはティッシュを取り替えながら続けた。
「そろそろ本題に入ろう、電話でも話したようにみんなには書類選考の手伝いをして
もらいたいんだ」
須藤が足元からダンボール箱を取り出しながら説明を始めた。
「応募総数は約5000通、書類審査で30人前後まで絞り込んでその後に面接、それで1
0人まで絞って最終選考になります」
「その中には私たちは入っているんですか?」
「みんなは既に合格です、だけど他の女の子には絶対に内緒ですよ、従ってこの数字
はみんなの数は入っていません」
「そうすると最終選考は私たちを入れて14人ってことですね」
「その通り、それでデビューするのはみんなを入れて7人ってところかな」
「そうすると5000分の3ってことですね」
「そう、だけどくれぐれも5000分の7ってことでね」
「はい分かりました」
「でも責任重大ですね」
「ハハハッそんなに硬く考えないで君たちの意見を聞かせてくれればいいんだよ、そ
れを参考にさせてもらうだけだからね」
くんつにバトンが渡った。
「はい」
「それじゃぁ早速始めよう、5000通の応募と言ってもねみんなの様な大きな胸の女の
子ってほとんど居ないんだ、一般的な巨乳クラスが95%位なんだよ」
くんつはダンボールから一つの封筒を取り出しながら続けた。
「そこで一定のラインを決めて分けたのがこれなんだ」
そう言って封筒を差し出した。
「一定のラインって言うと?」
「うん、バストサイズを120以上で分けてみたんだ、そしたらこんなに減っちゃっ
てね、98人になっちゃったんだ、2%にも満たないよ」
「ふ〜ん」
「まぁ中には2メートルを超えている娘もいるけどね、君たちに比べればまだまだ、
だからもっと成長しそうな娘を探したいんだ!」
「なるほど分かりました、やってみます」
「四人分のコピーをとってきたから渡しておくね、僕と須藤さんがいると集中できな
いだろうからしばらく席を外すよ、なんでも好きな物を注文して構わないから時間の
許す限り頼むよ、それじゃ後でまた」
くんつと須藤はコピーを渡すと前かがみになりながら喫茶店を出ていった。残った四
人は、
「とりあえず書類を一通り見て見ましょう、各自気になる娘をピックアップしてみん
なで相談しましょう」
「OK!」
「それじゃぁ開始!」
「えっ待って待って、なんか注文しようよ、せっかくだから、ねっ!」
「賛成!」
「そうね」
「それじゃぁ私は・・・」
各々書類に目を通し始めた。1時間後・・・
「ふぅ結構大変だったね」
「うん、でもみんな凄い娘ばっかりだったね」
「この娘なんて小2で160よ!ナンシーさんクラスね」
「でもそのナンシーさんを瑠璃はあっと言う間に越えちゃったけどね」
「でも凄いよね、この娘も凄いよ小5で3メートルを超えてるし」
「彼女も凄いよ高1で4メートル」
「さて、もう少しみんなで相談して煮詰めましょう」
更に30分後・・・
「こんな感じね、これで何人になった?」
「えーと29、30、31、32と、32人ね」
「いい感じじゃない!」
「大体こんなもんね」
ちょうどそこへくんつが戻ってきた。
「みんなどうだった?」
「はい、ちょうど終わったところです、全部で32人になりました」
「OK!大体ピッタリだね、助かったよありがとう、それじゃ今後の説明をするから
ね・・・」
くんつの説明では四人もカモフラージュのため面接を受ける。そして、面接の待ち時
間で他の女の子と接し色々と話をしてみて、その印象を参考にさせて欲しいというこ
とだった。
時は流れて面接の当日・・・
「はい、次の方どうぞ」
一人一人部屋へと入っていく。
その間にも四人は他の娘と話をしていた。
「あなたお名前は?」
瑠璃は最年少の女の子、そう小2の娘に声をかけてみた。
「アイダミチル」
相田ミチルは重そうな胸を揺らしながら顔を上げて瑠璃を見上げた。
「お姉ちゃんは?」
「私は瑠璃、天野瑠璃よミチルちゃん可愛いね、オッパイはいつから大きくなったの
?」
「幼稚園」
「ふ〜ん、幼稚園か自分のオッパイ好き?」
「うん、好きだよ、お姉ちゃんのオッパイも凄く大きいね」
「フフッ、ありがとう、ミチルちゃんは自分で応募したのかな?」
「う〜んっと、ママ、ママが出てみなさいって」
「そっかママか、ミチルちゃんはやってみたいの?」
「うん」
こんな調子でそれぞれに声をかけていった。
面接が終わると発表は後日電話で通知することが告げられこの日は解散となった。
四人組は解散後も残って印象を報告した。それを考慮して最終選考が行われ合格者が
決定した。
彼女たちが喫茶店に集まってからわずか12日間の出来事だった。
しかし、テレビ番組の企画のため、視聴者が面接から合格発表を観るには放送で二ヶ
月を要した。
毎週少しづつ小出しにして視聴者の好奇心をあおる。
とある日曜日の晩、天野家では・・・
いつもの席に瑠璃がいない、家族の恒例行事だったが数週間そんな状況が続いてい
る。合格者たちはこの時間もレッスンに励んでいるからだ。
「瑠璃が居ないと寂しいなぁ」
「お父さんそれは言わない約束でしょ」
「あぁそうだなぁ、テレビを見れば瑠璃が写ってる、変な感じだな」
藍と翠も少し寂しそうだった。
テレビでは瑠璃たちのオーディション風景が写っていた。そして、
「いよいよ、次週ぅ合格者の発表で〜す!」
いつもの軽快なナレーションと共にエンディングを迎える。
「テレビって馬鹿みたい、もう合格者が決まっているのにね」
翠が愚痴る。
「テレビにも都合があるのよ、都合が」
「それにしてもあいつはこれからが大変だな、忙しくなるぞ」
「そうですね、これからですよ、これから」
「そうだな、これからだ、これから」
「でもお姉ちゃんどんどん綺麗になっていくね」
藍だ。
「当たり前だ、俺の息子、イヤッ娘だからな!」
「あらイヤだ私の子供だからですよ!」
「パパもママもどっちだっていいじゃない」
藍と翠が口を揃えて言った。
こうして天野家の夜は更けていった。
読者のみなさん
「次回いよいよ、合格者の発表で〜す!」