リレー小説企画「瑠璃色の華」

6回目(分岐1):クサムラエチル 作
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「ねえねえ瑠璃ちゃん」
「何ですか乳命さん?」
「今度、調教していい?」
「ちょうきょう……?」
「おっとと失敗失敗、少し早かったかあ。1年待つよ。じゃーまたねー」
 ピンク色の煙に包まれて乳命が帰っていった。
 瑠璃はしばらく可愛く首をかしげて『ちょうきょう』の意味を考えていたが、分かりそうにないので考えるのを止めた。
 乳命の置いていった風呂敷らしき布に目線を落とす。乳命との会話を思い起こす。
「タイム ザ フロシキー」
「あの、その発音は、大山のぶ……」
「それ以上はいけないわ瑠璃ちゃん。説明へゴ?ゴー。この風呂敷の表を外に向けて身体に巻くと、巻いた時間に応じて、包まれた部位が成長するのよ。逆側で巻くと戻るしね。分かった?のび……瑠璃ちゃん。 あとねぇ、もう一つ。タイム ザ フロシキで成長した姿はあくまで可能性の一つと考えて。現実に必ずそう成長するというわけではないの。特に先のことほど精度は落ちるわ。未来というのは先になればなるほど不確定要素が増えるからね。絶対的な未来は無いのよ。未来は変えられるの。あくまでこれは一つの目安と考えて」
 その説明を聞いて、瑠璃は未来を変えるためダメ少年のところへはるばる23世紀から来たネコ型ロボットの話を思い出した。あのガキ大将の妹の本名はなんというのだろう?
 それはさておき、瑠璃は結構嬉しかった。このフロシキを使えば、いままで頻繁にあった注文した服の胸の部分がキツいという事態を避けることが簡単になる。
 注文する前にどのくらい大きくなるか見てから頼めばいい。
 そう思うと結構、いやかなり使えるものだと瑠璃は判断した。
 自分に巻く前にとりあえず風呂に入ろうとして、タイム ザ フロシキを部屋に放置したまま風呂場に瑠璃は向かう。
 シャワーより風呂の方が瑠璃は好きになった。普段、瑠璃の肩にかかる重量といったらもう半端な物ではない。かなり苦痛だ。
 その重さから開放される時といったら、胸を何か物の上に乗せてる時か水に浮かぶ時の2つに大別される。
 悩みもある。湯船に浮かぶ自分の胸を見る度に大きくなっているのが分かり、ちょっと憂鬱なことだ。最近では、湯船に浮かぶ自分の胸の上に楽々洗面器が乗ってしまう。
 ちなみに持参するバスタオルは2枚。一枚のタオルだけでは風呂あがりの身体を包みきれないからだ。胸に1枚。腰に1枚が基本スタイル。
 それでもバスタオルの下からは胸がハミ出てしまうが、完全に包むのは物理的に無理なのでそれは仕方ない。胸と腰回りを同じ色のバスタオルで包む姿は、パレオの水着にも似ていた。

 湯煙立ち上る中、瑠璃は身体を洗っていた。ボディシャンプーの泡が申し訳程度に身体を覆っていて、滑りの良くなった胸がボディブラシにこすられている。
 ブラシに合わせてグニグニと歪む瑠璃の胸。表面積がやたら大きいので洗うのに時間がかかる。
 ボディブラシを差し込むように押し込めば、柄の一部まで瑠璃の胸に埋没するだろう。
 刺激に耐えながら顔を赤くして、声を微妙にもらしつつ、瑠璃は胸をブラシで撫でるようにこすり続ける。

 瑠璃が身体を洗っている頃、瑠璃の部屋に忍び寄る影2つ。
 パジャマの翠と藍。学校の宿題が解けずに瑠璃に聞きに来たのだ。
 ここまではよくある光景。
「瑠璃姉、つつじ(躑躅)とセルビア(塞爾維)とニューヨーク(紐育)ってどう書くの?」
 ちょっと珍しい光景だ。本当に宿題かそれ?
 しかし部屋に瑠璃はおらず、部屋の真ん中にはフロシキが一枚。
 胸だけなら平均をちょっとオーバーしている外人モデルを大きくオーバーしているとはいえ心は小学生。
 翠がぽん、と手を叩くのとゴムでまとめられてるまげがシャキ?ンと音を立てて直角に持ち上がるのは同時だった。
なにか思いついたらしい。
 藍に耳打ち。うなづく藍。
 とりあえずというかなぜかというか、二人で抱き合ってフロシキに巻かれてゆく。瑠璃が帰ってきたらフロシキに何か巻かれている。開けてみると翠と藍がいてビックリという寸法らしい。
 しかし小学生の体格にGオーバーのバストを持つ二人が一枚の布に包まれて密着している姿は凄いものがある。
 なにが楽しいのか、初めはキャッキャッいいながらじゃれあっていた双子だったが、変化はすぐに始まった。
 呼吸が苦しいため、瑠璃が来るまではとフロシキから顔だけ出している翠と藍。その一かたまりのシルエットが、次第に大きくなってゆく。とっさのことに動揺し、もがくようにシルエットが動く。
 が、布に動きをとられでもしたのか抜け出せる様子はなく、加速度的に影はますます大きくなってゆき…………

「……また大きくなってる……」
 メジャーを片手に持ち、瑠璃は呟いた。沈んだ気持ちで着替えを始め、熱っぽい身体をパジャマに包んで戻ってきたとき、そこには、
「翠と……藍……なの?」
 フロシキにつつまれていない顔は小学生のまま。幼さを残したというよりは幼い顔そのままだ。
 だがその身体は、柔らかく張りのありそうな肌。細く長い脚。くびれている腰。しかし何よりも。
 その胸は、とんでもなく成長を遂げていた。
 翠の胸は瑠璃と同等、いやそれよりも大きく膨れ上がり、片方の膨らみだけでも両手で一抱えはあるだろう。
 だが、それも藍の前では小さく見えた。藍の胸は、翠のそれすら凌駕している。
 藍を正面から見る。その時に見える藍の胸の幅は、1mを悠々と超えるくらいはありそうだった。電信柱だってその谷間の間には完全にはさめそうである。
 胸の前で腕組みは絶対できないだろう。上半身よりも片方の乳房のほうが明らかに大きい。
 小学生の身体を包んでいたパジャマではとてもとても今の翠と藍を包むことはできていない。はちきれんばかりに張った布地。発育過剰だ。
 ズボンは太もものなか程までも届いておらず、上のパジャマは一番下のボタンがかろうじてとまっているに過ぎない。突起が左右に一つずつ、生地の下から浮き出している。
「瑠璃姉……どうしよう」
 翠のまげは、ダランと下に垂れていた。感情で動くらしい。
「お姉ちゃん……藍、どうなったの?」
 伏し目がちに藍。その視界は肌色で埋まっているだろう。
 ……こうして、『三人もいるんだから一人くらい俺にくれ』という状況が完成したのだった。

 タイム ザ フロシキは、バラバラに千切れ飛んでしまっていた。圧倒的な体積に内側から押し破られてしまったのだろう。それを見て瑠璃は事態を察した。
 つまり、二人を元に戻そうにもフロシキは無い。次に乳命が来るのは1週間後であり、こちらから連絡する方法は無し。
 一つだけ幸運と言えるのは、両親が結婚13年ということで旅行にいってて丁度1週間帰ってこないこと。(ご都合主義?なにそれ?)
 補足しておくと、瑠璃は両親の結婚2年前に産まれた15才である。
「と、とりあえず、これ着て」
 翠には自分のを、藍には飛鳥の服を手渡す。
 何で飛鳥の服があったかというと、そりゃあ、えっと……脱いだからである。文句あるか?
 服を着た二人を見て、瑠璃の頭痛は増した。
 翠のワンピースは胸元をはちきれんばかりに内側から押し出されている。胸元からは一部の(それでもかなりの量の)胸が除いている。
 おまけに落ち着いて見ると、翠は身長もかなり高くなっていた。瑠璃の服では下腹部まで届かずに、へそが全然隠れていない。少なく見ても180はありそうだ。
 藍は飛鳥のブラウスをもってしてもやっとこさ包むのでいっぱいいっぱいという感じだ。窮屈そうに収まっている胸は、藍の呼吸に収縮を繰り返している。
 藍は恥ずかしそうにに両手をもじもじさせていた。
「……とりあえず、二人とも今日は寝て」
 瑠璃は二人を手で促した。今はとにかく一人で考える時間がほしい。
 翠は頭をかがめて出ていった。その後に続く藍がドアの開いたスペースから出ようとしたその時、ぎゅむ、という音がして藍の胸が入り口に詰まった。大きすぎたのだ。
「え、ちょっと……と折れないよ……え?」
 顔を真赤にして訳が分からないといった感じで藍が言った。まだ大きさに対する自覚がないらしい。後ろに引こうとしても、胸が抜けない。立ち往生しながら半泣きで言った。
「お、お姉ちゃ〜ん、助けて〜」
 瑠璃の頭痛は更に激しさを増してゆく。前途多難である。

 朝が来た。
 一夜にして爆発的成長を遂げた翠と藍。
 少女ではなく女の身体。長い脚、童顔というか小学生そのままの顔。そして胸。
 そんな二人がとリコーダーの刺さったランドセルを背負っている姿は、教育的にも道徳的にも少し(かなり?大分?圧倒的に?)アブナい気がした。
「それじゃあ瑠璃姉、学校いってくる」
 一晩休んで考えをまとめた結果、翠はこの事態を『ラッキー』と判断したらしい。
 その証拠に、おさげは左右にぶんぶん振られている。犬かお前わ。
「本当に……行くの?」
「当然。皆勤賞狙ってるんだから。瑠璃姉は心配性だなぁ」
 言って翠は瑠璃の頭をなでてきた。いまや瑠璃は翠の胸の辺りまでしか身長はない。なにやら子ども扱いされてるようでかなり複雑な気分である。藍とは同じくらいの身長なのだが。
「んじゃ行ってきまーす」
「私は……休みたいんだけどな……」
 翠に手を引かれて藍は連行されていったが、玄関の入り口に、むぎゅっ、という音とともにまた詰まった。昨夜から数えて4回目だ。
 乳命が来るのは一週間後である。
 瑠璃は、1週間後が3日くらいで来ますように、と訳の分からない願い事を心の中でした。その願いはちょっと実現不可能な気がする。

番外編
「白河先生(分岐2参照)、『ちょうきょう』ってなんですか?」
「何やるの字。そういうのが趣味だったんか。しょーがないなーホンマ」
「え、何でムチなんか……ちょっと、何で服を脱が………………え?……やめ……………………ァ」

続く