リレー小説企画「瑠璃色の華」

FINAL 3回目(分岐1):ステンドR 作
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 瑠璃の部屋は6組の巨乳で埋め尽くされていた。すなわち瑠璃、飛鳥、魅鈴、藍、翠、それにルーミンである。
「・・・というわけで、全部バレてしまいました」
 瑠璃は申し訳なさそうに頭を下げる。
「まあ、別にいいんじゃない?バレちゃったものは。
 でもこれ以上は広めないようにしてね。色々としきたりがうるさいのよ、仙人界って」
 ルーミンはあっけらかんと軽い様子で事を済ませた。
「あの〜仙女様?」
「ルーミンでいいわよ。何?」
 魅鈴がルーミンの胸元から視線を離さずに質問する。
「その・・・すごい胸ですけど、どれくらいあるんですか?」
「え〜っと、そういえばここしばらく測ってないわね」
 ルーミンは立ちあがってブラを外す。するとたちまち胸元が山のように隆起し、着物の前がはだけた。
「むきゅ」
「あっ、藍ちゃん!」
 予想外の乳肉の洪水に、近くに座っていた藍が飲み込まれてしまう。
「それ・・・すでに縮めてたんですか・・・?」
「うん。こりゃ〜12尺(約396センチ)はとうに越えたわね。道理で最近きつかったわけだ」
「これはおっぱいを小さくするブラなんですか?」
「そうよ。アタシ達仙女の必需品よ」
「・・・あたしも欲しいな」
 藍は小声で呟いた。たかだかKカップの分際で欲しがるなんて失礼かな、と遠慮しながら。
 皆、唖然とルーミンの乳に見とれる中、興奮気味に翠が尋ねる。
「ねえねえ、仙女さんって皆おっぱい大きいの?」
「そうね、あたしなんて中の下ってとこかな」
「ええっ!?」
 さすがの飛鳥もこれには驚いた。まだまだ世界は広い。そう思った。
 そしてルーミンの前にサッと正座すると、深深と頭を下げてこう言った。
「ルーミンさん!私を・・・仙人界に連れてってください!」
「ええっ!?」
「あ、飛鳥ちゃん・・・」
「瑠璃・・・私、見てみたいの!私の想像だにしなかった巨乳の理想郷がそこにはあるはずだわ!
 それにルーミンさんを上回る巨乳がいるとすれば・・・この目で見てみたい!」
「はーい!あたしもいきたいでーす!」
「翠ちゃんまで・・・」
 それを聞いてルーミンはう〜んと考え込んでしまう。
「困ったわね・・・人間を仙人界に連れてくとなると、それ相応の名目・・・理由が必要なのよ」
「ほらやっぱり無理だよ。飛鳥ちゃんあきらめよう」
「な、何とかならないんですか?」
「う〜む・・・んっ?あなた・・・飛鳥ちゃん?」
「はい」
「おっぱい大きいじゃない。もしかして6尺、つまりおよそ2メートル以上ある?」
「はい、最近測ったので215センチですから」
「よしっ!理由ができたわ。あたしが飛鳥ちゃんを仙女にスカウトしたってことにすればいいのよ」
「ええっ!?」
 これには皆、驚いた。人間の飛鳥が仙女になれるのか?
「私・・・仙女になれるんですか?」
「修行次第でね。6尺以上のバストを持つ人間には仙女の素質があるのよ。
 そういった人間はあたし達仙女がスカウトしてるの。めったにいないけどね」
「待ってください。もし仙女になったら・・・人間界で暮らせなくなるんですか?」
 心配そうに飛鳥が尋ねる。
「ううん。それは本人の自由よ。ましてや飛鳥ちゃんは元々人間だもの。
 ただし人間界では、特例を除いて仙術や仙人界のアイテムを使っちゃいけないという決まりがあるだけ」
「よかった・・・是非、おねがいしますっ!」
「あ、飛鳥ちゃんホントにいいの?」
「それじゃあ善は急げよ。飛鳥ちゃんと瑠璃ちゃん、二名様。仙人界へごあんな〜い」
 ピンクの霞と共に、3人の姿も消えていった。そして部屋には翠、藍、魅鈴が残された。
「あたしも行きたかったな〜・・・」
「翠ちゃんも、2メートルになったら行けるんじゃない?」
「そっか!よしっ、一刻も早く2メートルに達するように、今から特訓よ!藍も付き合って!」
「ええっ!?と、特訓て・・・」
 腕を引っ張られ、問答無用でいもうとるーむへ連行される藍。
「さて私は・・・」
 取り残された魅鈴。
「・・・帰ろっかな。店番やんないと」

 小さな滝の裏側から、瑠璃の一行は姿を現した。
「ここが人間界との連絡口よ。あたし専用で、今は瑠璃ちゃんの部屋につながってるの。帰る時はここからね」
「は〜い」
「うわ〜・・・ここが仙人界かぁ」
 屏風に描かれたような桃源郷が、今まさに存在している感じだ。
「この辺は乳仙谷っていうの。今日は特に賑わってるはずよ」
「どうしてですか?」
「選挙があるのよ。五大仙女様のうち一人が引退なさったから、新しく決めるの」
「大仙女様か・・・さぞや偉い方なんでしょうね」
「きっと胸も、とんでもなく大きいんでしょうね」
 飛鳥の発想は乳から離れないのか?
「そうよ。だって選挙なんて建前、その実は仙人界を挙げての巨乳コンテストだもの」
「はっ!?」
「大きさ、美しさ、触り心地、それらを吟味されて多くの票を得た者が次の大仙女になるの」
「すばらしいです!ルーミンさん!」
「・・・・・・」
 あきれ返る瑠璃。この仙人界という所は、乳を中心に回っているらしい。飛鳥にとっては、さぞ居心地よかろう。
「まだ始まってないと思うけど、会場へ行ってみましょうか?」
「はい!」

 市街は賑わっていた。それはつまり空間のほとんどが乳に占領されている事を意味していた。
「・・・・・・うわぁ」
 目のやり場に困る瑠璃。さっきから目の前を行き交う人々は、ことごとく人智を超えた巨乳なのだ。
 2メートルから、大きいものでは10メートル級に及ぶと思われるものまで、実に様々。
 無邪気にはしゃいでいる幼児ですら、1メートルを下る者はいない。
 見た目6〜7才ぐらいなのに、飛鳥をも上回る胸の女の子が目の前を過ぎていった。
「すごい・・・なんて素晴らしいとこなの!楽園だわ!」
「こちらこそ。気に入ってもらえて何よりよ」
 すっかり意気投合している二人。瑠璃ちょっとさびしい・・・?
「着いたわ。ここが会場よ。もうすぐ始まるみたいね」
「うわぁ、もうおっぱい、いや人でいっぱいですね」
「・・・・・・ダイブしたい・・・」
「え?飛鳥ちゃん何か言った?」
「い、いや何も」
「見て、あのステージ上で候補者達が各々の乳を競うのよ」
 ルーミンが指差したのは、学校のグラウンド程ありそうな広大なステージだった。
「しかし・・・やけに広いステージですねえ。候補者って100人くらいいるんですか?」
「ううん、今回は確か8人よ。でもこんぐらいの広さは必要でしょ」
「たった8人なのに?」
「あっ、始まるわよ!候補者が入場してきたわ」
「でええっ!!!!!?????」
 瑠璃はルーミンの言葉の意味を理解した。8人でも一杯一杯なのだ。
 片乳の容積だけで瑠璃の部屋を埋め尽くせる程の超乳が16個、所狭しと並ぶ様子は、まさに圧巻だった。
「・・・や、山・・・・・・?」
 これにはさすがの瑠璃も失神しそうになった。飛鳥も呆然として候補者達の超乳に見とれている。
「それでは審査を始めます。投票者の皆さん、どうぞステージにお上がり下さい」
 アナウンスが入る。すると投票者達は各自、候補者達の乳を揉んだり、頬ずりしたり、埋もれたり、
 好きなようにして乳の吟味を始めた。
「それじゃ、あたしもちょっくら投票してくるね」
「わ、私も行きます!」
 ルーミンと飛鳥もステージに上がる。
「飛鳥ちゃんは選挙権ないから投票できないわよ?」
「いいんです・・・ああ・・・これが全部おっぱい・・・こうしてるだけで私、幸せ・・・」
 飛鳥は恍惚の表情で、候補者の胸の谷間に全身を深々とはまり込ませてゆく。
 瑠璃は動けなかった。ただ目の前に起こっているあまりにも超常的な出来事を受け止めるので精一杯だった。
 ただそこに立ち尽くす瑠璃の肩を、しわの寄った老人の手が叩いた。
「よう可愛い兄ちゃん。おっと、姉ちゃんか。久しぶりじゃの」
「・・・あ、あなたは!」
 額に「仙人」の文字、間違いない。瑠璃に秘薬を与えたあの仙人だ。
「フォッフォッフォ、ワシは新しい大仙女の任命式に呼ばれたんじゃが、偶然じゃのォ。こうしてまたお主に会えるとは」
「あ、お久し振りです。この度は私の命を救って頂いて、本当に、ありがとうございました」
「あー、そう畏まらんでもよい。ところで瑠璃よ、病状は大分回復したようじゃのォ」
「はい、おかげさまで」
「フム、もう体内にヌシイタッゼウイルスは一体も見つからん。こりゃあ完治じゃの」
「えっ、そんなことが分かるんですか?」
「フフン、ワシを誰だと思っとるか。薬師大仙じゃぞ。この透視眼をもってすればお主の体内など・・・」
 瑠璃はルーミンの師匠であるこの仙人が、大層偉い人物であることを思い出した。
「そしてお主の服の下も・・・」
「きゃっ!や、やめてくださいっ!」
「フォッフォッ、冗談じゃよ。可愛い反応をするようになったのォ。しかし乳の方もかなり膨らんでしまったようじゃて」

 一方その頃、霞先生の研究室では、
「やったぁ・・・ついにできたっ!できましたぁ!」
「おめでとうございます、先生」
 ウィルソンの協力により、霞先生はついに薬を完成させたのである。
「ではいよいよ実験です・・・ウィルソン君、先生はちょっと杉山さんを呼んできますね。
 あの子、自ら進んで実験台になりたいと言ってましたから」
「・・・はい」
 霞先生は職員室の電話を使いに、研究室を出ていく。
 それを見届けると、ウィルソンは完成した薬を見つめながら小さく呟いた。
「・・・・・・ごめんなさい、先生。でもこうするしかなかったんです・・・」

「あっ師匠、よいところへ」
 ルーミンと飛鳥が戻って来た。
「ようルーミン。ん?そっちの姉ちゃんは・・・人間じゃな?もしや素質のある奴を見つけたのかの?」
「はい。飛鳥ちゃん、こちらはあたしの師匠、薬師大仙様よ。ほらごあいさつ」
「はじめましてっ。新宮寺飛鳥と申します。此度は仙女に志願したく、人間界より参りました!」
 飛鳥は深々と礼をする。
「まぁまぁ、そう堅くならんでもよい。しかしまぁ、人間にしてはとんでもない大きさの乳じゃのぉ。
 バスト6尺以上の人間が仙女志願に来たのは、実に数年ぶりじゃよ。どれどれ・・・」
 仙人は透視眼で飛鳥を見る。
「むっ・・・!?」
「どうしました?師匠」
 仙人の顔に当惑の色が浮かぶ。
「お、お主、飛鳥よ。この乳は・・・自然に成長したものか?」
「え〜、天然物ではありますが・・・実はちょっとこんな裏ワザを。瑠璃、またアレ手伝ってくれる?」
「いいよ」
 瑠璃の協力を得て、飛鳥は三度『乳房膨大』のツボを押した。たちまちムクムクと飛鳥の胸は成長してゆく。
「ふぅ・・・ありがと。今回は20センチ近くアップしたね。上出来上出来」
 仙人とルーミンはその光景をただ唖然と見ていいた。
「し、師匠、これは伝説の・・・」
「間違いあるまいて。歴代最高の実力を誇った初代大仙女、柔白(ロウパイ)の術じゃ。・・・飛鳥よ!」
「はいっ!」
「今、お主の行ったワザ・・・それは400年前、仙人界が失った遺産なのじゃ・・・」
「はい?」
 仙人は初めて見せた真剣な口調で語り出した。
「今では大仙女は5人じゃが・・・400年前の当時、初代大仙女はたった一人じゃった。
伝説として語り継がれる彼女の実力は大変なものじゃった・・・名を柔白といった」
「その実力は並の大仙女5人分なんてもんじゃなかったの。もちろんおっぱいもよ。
 乳仙谷歴史資料館に肖像画があるけど、とても実物大では全身が描けなかったみたい。
 立体で再現しようとすれば、おそらく体育館が2軒必要だと思うわ」
「マジで・・・?」
 帰が遠くなる瑠璃。
「大変優秀な仙女じゃった。特に数々のツボの発見は、仙人界に大きく貢献したもんじゃ。
 ・・・だが優しすぎたのじゃな。人間界に干渉して、その責任から大仙女を辞めたのじゃ」
「く、詳しく聞かせてください!」
 思い当たる節から、息を荒くしながら興味を示す飛鳥。
「当時の日本は戦国時代。そこに忍びの一族が住む隠れ里があったのじゃ。
 周辺との交流を一切断ち、自給自足の生活を行っておった。
 しかしある時、異常気象から飢饉が数年にわたって起こっての・・・
 掟を重んずる住民は、誰にも助けを求められずに何人も死んだのじゃ。
 それを知ってしまった柔白は・・・見殺しにはできなかったのじゃろう。
 里を代表して名乗りを上げた娘、名を「なるみ」といったかの?
 柔白は彼女に『滋乳湧泉』のツボを使ったのじゃ!」
 続いてルーミンが説明する。
「それは乳房を圧倒的に膨張させ、滋養に富んだ乳液を数年にわたって、泉のように噴出させるツボよ。
 その乳液で里の住民は救われた。でもなるみさんはあまりの胸の大きさに、
 人間として普通の生活が出来なくなってしまったの。結果的に里を救ったとは言え、
 一人の犠牲者を出してしまった・・・柔白は責任を感じて大仙女を引退したと聞くわ」
「そんな伝説があったんですか・・・」
「以来ずっと消息不明・・・一説には人間界に移り住んだのではないかとも聞く。それがどうやら本当じゃったらしい」
 そう言うと仙人はキッと飛鳥を見る。そして告げた。
「飛鳥よ・・・先程、透視眼でお主の体内を見たところ、仙女の血が何分の一か流れておった!
 すなわちお主は・・・柔白の子孫なのじゃ!」
「え・・・?えええええっっっ!!!???」
 衝撃の事実を告げられて、瑠璃も飛鳥も信じられないといった様子だ。
「飛鳥よ・・・お主、そのワザはある古文書から学んだものじゃな?」
「はい。これのことですか?」
 飛鳥は蔵から発掘した例の古文書を取り出して見せる。どうやら常に携帯しているらしい。
「ま、まさしくそれじゃ!柔白と同時に忽然と姿を消した門外不出の書!
 中には柔白が今までに発見したツボが書かれておるはず!」
「きっと責任を感じた柔白は、自分の技が人を不幸にすると思って、その本を封印したんでしょうね」
 ルーミンが悲しそうな目で語る。するとすかさず飛鳥、
「大丈夫です!子孫の私が・・・きっとその技を有効活用してみせます!それが私の夢です!」
「な、なにぃっ!?」
 驚く仙人とルーミン。
「あ、飛鳥ちゃんそれはマズいわよ!それは立派に仙術なのよ?一般民に使うだなんて・・・」
「いえ、人間界も仙人界に負けないくらい、超乳の楽園にしてみせます!私がその時代へ導くのです!」
 使命感に燃え、瞳を輝かせる飛鳥。
「な、ならぬ!それはいかんぞ!古文書を発見してくれた事には礼を言わねばならん。
 しかし、それは仙人界に返してもらうぞい。人間界を混乱に陥れてしまう!」
「それだけは出来ません!この本はもともと柔白さんの物でしょ?
 私が子孫なら、所有権は私にあるじゃないですか!それにこんな凄いワザを仙人界だけで楽しもうなんて、
 独占禁止法違反ですよ!」
「ちょっと違うんじゃ・・・」
 即答する飛鳥につっこむ瑠璃。すると仙人は止むを得まいといった表情で、
「ならば奪い取るしかないかの・・・すまぬ」
 仙人が手に持っていた杖を掲げると、
 ぷるるんっ!
「あっ!?」
 飛鳥の胸の谷間深くにしっかりと守っていた古文書が、ふわりと宙に浮き、彼方の方角へ飛んでいった。
「ふ、ふん・・・いいわよ!本は失っても、解明したツボの場所は全て覚えてる!
 特に乳房膨大のツボだけは人間界で使わせてもらうわ!」
「・・・お主がそのつもりなら・・・これを使わねばならんようだの・・・」
 そう言って仙人は懐から薬の入ったビンを取り出した。
「師匠!それは・・・飛鳥ちゃんの記憶を消すつもりですか?」
「こうなってしまっては止むを得まい。せっかく仙女の天才的な素質があるのに・・・残念じゃったがの」
 仙人が薬を手にゆっくりと飛鳥に近づく。
「瑠璃っ!逃げるわよ!」
「え?えええっ!?」
「駿足快走!」
 飛鳥は脚のツボを突くと、飛鳥は瑠璃の腕を掴み、信じられないスピードで駆け出した。
「うわぁあああーーーーー!」
「ふふ・・・ついて来れるはずないわっ!」
 飛鳥は215センチの乳を振り乱しながら、もと来た方角へ疾走する。
 仙人は少々焦りながらも、すぐに冷静になると、念波を送り始めた。
「大仙女、およびその候補者達よ・・・その二人を止めよ!決して人間界に返してはならぬ・・・」
「師匠、やってること矛盾してませんか?人間の胸を大きくしてはいけないと言うのなら、
 瑠璃ちゃんが師匠の薬で膨乳している事実はどうなるんですか?」
「あれは副作用じゃよ!女性化は別として、ワシだって乳が大きくなるとはまさか思わんかったわい」
「え!?あれって師匠の趣味じゃなかったんですか!?」
 驚くルーミン。
「おぬし・・・ワシを単なるすけべじじいだと思っとるじゃろ?」

 飛鳥と瑠璃は人間界へつながる滝を目指して走る。しかし、目の前に突然山のような乳房が出現した。
「ここは通しません!」
 大仙女と候補者達である。彼女はみっちりと乳房を寄せ合って、肉の壁を作っていた。
「あ、飛鳥ちゃん!ジャンプで越えられる?」
「ジャンプは無理、だけど・・・こうよっ!」
 飛鳥は自分の脇腹のツボを突く。そしておもむろに前から地面に倒れた。すると、
 ぼっよよよよよ〜〜〜〜〜ん!!!
 地面に胸をバウンドさせ、二人の体は空高く舞い上がる。
「うわぁあああ!?」
「弾力増強!」
 スタッ
 見事、大仙女達を撒いた二人は再び駆けて行く。一方、大仙女達は互いに乳房がつかえて振り向けない!
 そして滝が見えてきた。しかしそこには既に仙女兵が待ち構えている。
「逃がしませんよ!」
 飛鳥は一旦立ち止まり、スッと構えをとると、目にも止まらぬ速さで仙女兵達のツボを突き出した。
「内傷回復!」
「う・・・?」
 以前、翠に使ったあのツボだ。傷を回復する代わりに、しばらくの間全身に力が入らなくなる。
「こういう使い方もあるってこと!」
「飛鳥ちゃん・・・すごい!」
「さあ瑠璃、人間界まで逃げるわよ!」

 一方こちらは里美。霞先生から薬の完成の知らせを聞き、研究室へ駆けつけた。
「先生、ついに完成したんですね!」
「はいっ!これですよぉ」
 二人は野望の実現を確信し、互いにくすくすと笑う。
「あれ?先生、その子は?」
「ああ、身寄りのない子で、先生が引き取ってるんです」
「はじめまして。僕、ウィルソンっていいます」
「杉山里美です。よろしくねっ」
「それじゃ早速、実験にかかりましょう。広い場所が必要ですから、校庭へ出ましょうね」
 校庭に出た3人。そして里美が薬を飲もうとしたその時!
「またんかぁーーー!」
「しつこいわねっ!」
 校庭に逃げ込んできた飛鳥と瑠璃、それを追う仙人とルーミンだった。人間界まで追って来たらしい。
「あら?こんにちは瑠璃くん、新宮寺さん。後ろの方達はどなた?」
「仙人よっ!今逃げてるとこなのっ!」
 飛鳥はそれどころじゃない、といった様子で乱暴に答える。
「飛鳥め!口が軽すぎるわ!安々とワシらの正体を明かしおって!」
「師匠〜もういいじゃないですか、帰りましょうよぉ」
 何があったのかさっぱり理解できない霞先生。
「いったい・・・どうしちゃったんですかぁ?」
「実はかくかくしかじかで・・・」
 瑠璃の説明を聞いて霞先生は大きくうなずく。
「そういうことだったんですかぁ。だったらそんな無意味な争いはやめた方がいいですよぉ」
「無意味じゃと?」
「先生!私の夢、ひいては人類の輝かしい未来がかかってるんですよ!」
 すると余裕の表情で霞先生は答える。
「なぜなら究極の膨乳薬は既に人間の手によって完成したからです。この私と、ウィルソン君の手によってね」
「ええっ?」
「なんじゃとぉ!?」
「女性の胸に関する競争心には凄まじいものがあります・・・その結果、男性からの差別や、
 女性同士の醜い争いが起こる事もしばしば。それらを一気に解消するのが・・・」
「この薬なのよ!」
 里美は手に持っていたビーカーを高々と掲げる。
「胸の小ささに悩むなら大きくすればいい・・・しかし追い越された人もまた、更なる大きさを望む・・・
 自分が一番でないと気が済まない。その繰り返しの結果、行きつくところは生活の不便です!」
 うん確かにその通りだ。と納得する瑠璃。
「しかし全女性がこの薬を服用すれば・・・問題は解決です。
 なぜなら胸の大きさはもはや意のまま、自由に変えることができるからです!」
「な、なんですって!?」
「人間界の薬学はそこまで発達しておったのか!薬師大仙のワシを超えおった・・・」
 これには仙人界の二人も驚愕した。
「さあ杉山さん!実験開始ですよぉ!」
「里美、いきます!」
 ぐびっ
 ・・・・・・・・・・・・
「・・・あれ?」
「どうですか?杉山さん」
「先生・・・私の胸・・・大きくなりませんけど?」
「ええっ?そんなっ!?まさか失敗ですかっ?」
 当惑する霞先生に、ウィルソンがもう一杯薬を持ってくる。
「先生、もしかしたら個人差があるのかもしれません。先生も飲んでみてください」
「わかりましたっ、霞、いきますっ」
 ぐいっ
「・・・・・・うっ!?」
「先生?」
「・・・・・・にゃははははははは!!!」
 突然人が変わったように大笑いする霞先生。
「先生!どうしちゃったんですか!?」
「にゃんでもないでしゅよぉ〜ん!かしゅみはげんきでしゅよぉ〜ん!」
「何がどうなってるの!?」
 突如幼児化してしまった霞先生。事態の収拾がつかなくなってきた。
「究極の膨乳薬など、人間には無理だったという事か・・・」
「いえ、薬は確かに完成したんですよ」
 全てを知っているかのような口調のウィルソン。
「こわっぱめ、さっきから何じゃい・・・?ん!お、おぬしまさか!?」
 仙人は透視眼でウィルソンを見る。
「お主、人間ではないな!?魚か!?いやちがう・・・ウイルス!ヌシイタッゼウイルスじゃな!?」
「薬師大仙様・・・あなたにはひどい目に遭わされましたね」
 真剣な表情で対峙するふたり。
「もう何がどうなってるの?」
 事態を把握しきれない里美。
「さあソリティの出番や!解説したるで!」
 突然現れたソリティによってますます場は混乱してきた。
「し、白川先生!?いつの間に!?」
「まあまあるの字。最終回くらい、保健の先生らしいとこ見せとかなあかん思ってな」
 ソリティは照れくさそうに笑うと、解説を始めた。
「まずそこのウィルソンは人間やない。熱帯魚の遺伝情報をいじくって、人間の姿に近づけたもんや!」
「どういうことですか?」
「はい、ここでFINAL1回目を参照や。
 るの字のくしゃみでもって、体内に残った最後のウイルスが、家で飼っとる熱帯魚に移動したんや。
 ウイルスっちゅーのは、宿主の細胞の遺伝情報を書き換えて増殖するんやけどな。
 多分そのウイルスはるの字の遺伝情報を記憶し、熱帯魚の細胞を書き換えて、るの字そっくりの姿を得たんやろ」
「その通りです。でもこれが僕の最終目的だったんですよ。人間の男性になることが!」
「じゃあどうして霞先生の研究に加わってたの?」
「この薬を世に出してはいけないんだ!先生には感謝してるけど、この研究だけは阻止しなきゃいけなかった!」
「どうしてよ?そんな薬が出来たら素晴らしいと、あたしも思うけどなぁ」
 ウィルソンの返答にルーミンも疑問だ。
「人間になったばかりの僕が言うのもおこがましいけど・・・それじゃダメなんだよ!
 男にとってはね、「巨乳を探す楽しみ」ってのもあるんだ!それに「比較する楽しみ」ってのもある!
 全女性が大きさを自在にできるなんて・・・そんな究極までいったら、面白みがなくなっちゃうじゃないか!
 「私のおっぱい小さいかな?」「どうしてこんなに大きいの?」
 「もっと大きくなりたいなぁ」「いいなぁ、あの子うらやましい」「合うブラがなくてもう大変」
 乳は、乳は・・・そういうドラマがあってこそじゃないか!!!(力説)」
 クールなようで、言ってる事は男のエゴむき出しなウィルソン。
「里美さんが飲んだのはただの水。霞先生が飲んだのは、僕が作った忘れ薬だよ・・・
 明日になれば元に戻るさ。研究の事はきれいさっぱり忘れてるけどね」
 ウィルソンの力説に場の空気はシン・・・と静まり返っていた。
「僕のやるべき事は全て終わった。薬師大仙様、見ての通り、僕はもう人に危害は加えません。
 だからこのまま人間として暮らさせてください。・・・さようなら」
 そしてウィルソンはいずこともなく去っていった。

 1週間後。
「おはよっ、瑠璃」
「おはよう。飛鳥ちゃん」
 結局、仙人は飛鳥の記憶を消さなかった。
 胸の大きさをめぐり果てしない争いが起こる未来を、飛鳥は知ったからだ。
 飛鳥は「仙人界と無関係な人間にはツボを使わない」という約束を仙人と交わした。
 仙人とルーミンも納得して、帰って行った。
 里美はまだ例の膨乳薬を諦めず、毎日霞先生を激励している。
 しかし霞先生はウィルソンが去っていったショックで傷心気味のようだ。
「よかった。ルーミンさんたちと和解できて。秘密さえ守ればちょくちょく遊びに来ていいって言ってたよ」
「そう。今度は翠ちゃんたちも一緒に行こうね」
「でも飛鳥ちゃん、よくあきらめたね。人間界を超乳の楽園にすることが・・・夢だったんじゃないの?」
「ううん。私はいいんだ。この・・・」
 ぽよんっ
「瑠璃のおっぱいがあれば!」
 飛鳥は、朝の路上で瑠璃の制服をたくし上げ、胸を露出させた。
「えええっ!?」
「それっ!乳房膨大!」
 グッ!
「あああんっ!」
 ツボを押された瑠璃の体に言い様のない快感が走る。そして膨乳が始まる・・・
「ちょ、ちょっと!もうツボは使わないんじゃなかったの!?」
「あれは『仙人界と無関係の人間に』でしょ?瑠璃は別じゃない」
「そ、そんな!?」
「瑠〜璃、これからは二人だけで・・・ゆくところまでのぼりつめましょっ☆」
「ふえぇぇん」
 平和だ。とりあえず今日もこの町は平和だ。

 そして瑠璃の膨乳人生はまだまだ続く。(今日も朝から30センチ増)

   瑠璃色の華<分岐1> 完