科学のチカラ その1

せい 作
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これは別の世界のお話・・・

この世界では胸の大きさこそ最も尊いものとされている。

世の男性はその声をひそめ、女性達に従っていた。
その女性達も胸の大きさで分けられ、大きな胸の持ち主ほど力を持っていた。
100cm以下の胸の女性は都から遠く離れた土地に住み、都は大きな胸の持ち主で溢れ返っていた。
中でも一番胸の大きな女性はその世界の「女王」として崇められ、神と同等な不思議な力さえ与えられていた。
現女王のバストは200とも300とも・・・はたまたそれ以上とも言われている。
人々はその女王のもと、「胸の大きさが物を言う世界」で暮らしていた。



「・・・出来た。ついに出来たわ・・・!!」

都から遠く遠く離れた小さな町。
ここに住む小高 志穂(コダカ シホ)は、今まさにある物を完成させていた。

「ふふふっ・・・これさえあれば・・・」

彼女は町でも有名な科学者で、しょっちゅう変な発明をしては町の人を驚かせている。
だが、彼女の名が都にまで届くことは無かった。なぜなら

「これで私の胸も・・・」

彼女の胸が小さいからであった。
歳は17〜8ぐらいだろうか。顔はかなり整っており、どちらかというと可愛らしい顔つきである。
背は標準。髪は茶色で、研究のためかポニーテールに結んでいる。
手足は長く、腰も細い。ともすればかなりの美女であったが、ただ一つ。胸が小さかった。
70cm前後・・・全くと言っていいほど育っていない。
彼女はこの胸のせいで才能を認めてもらえないどころか、都から遠く離れたこの町でひっそりと暮らしていた。

「早速使ってみよう・・・」

何やら球状のものを飲みこむ志穂。

「後は私が指を鳴らせば・・・ふふふっ。我ながら天才ね。『周りの人間の胸が大きくなりたいという欲望を吸収して私に還元する装置』・・・これさえあれば私の胸は大きくなり続けるわ。それに、止めたい時は指を鳴らせばいいだけ・・・完璧ね。」

志穂は大きく深呼吸をすると

―――――――パチンッ
指を鳴らした。
すると

「・・・あうっ・・・胸が、熱い・・・」

装置が作動し、鈍い音が聞こえる。
この装置は志穂が飲んだ球体の持ち主に『胸が大きくなりたいという欲望』を送り込むものだった。
つまり、胸が大きくなるのは球体を飲んだ志穂だけである。

「ああっ・・・っく・・・ふあああああああ!!」

――――――――――ググググ・・・!!
彼女の着ていた服が悲鳴をあげる。
そして

「・・・もう、いいわね・・・」

志穂は服が破けてしまう前に装置を止めることにした。
―――――――――パチンッ

「ふぅ・・・実験は成功ね。念のため欲望の吸収範囲を『周辺5つの町まで』にしといて良かったわね・・・」

彼女はそのまま服を脱ぐと鏡の前に立った。

「ふふふっ・・・大きくなってる・・・そうだ、サイズは・・・」

近くに置いてあったメジャーを手に持つと

「えっと・・・はちじゅう・・・に。82cm。やったわ!80cm台!」

測定結果に喜ぶ志穂。
80cm台と言ったらここより少し都に近い町へと移り住むことが出来る。

「90cm台になったらいろいろな権利が与えられるのよね・・・よし!まずは引っ越しね!より人の多い所に行けば欲望も多いでしょうし!」

こうして志穂は引っ越しの準備を始めた。

彼女の作った装置は良く出来ており、どんなに離れたところに志穂が居ようと、指さえ鳴らせば反応する仕組みになっている。

そこで彼女は装置を人目につかないところに隠して引っ越しをすることにした。



準備を整え引っ越す途中

「あれ?志穂じゃない。」
「え?ああ。久美(クミ)。」

志穂は同じ町で育った友達の久美と出会っていた。
もちろん彼女も同じ町に住んでいるということは、胸も以前の志穂同様小さく、隆起が見られない。

「どうしたの?そんなに荷物を持って。」
「ああ。引っ越すのよ。」
「引っ越す?引っ越すって・・・」

久美の目線が志穂の胸へと向かう。
すると

「・・・ええっ?!」

久美は信じられないものを見たと言った感じで目を見開いた。

「ああ、これ?大きくなったのよ。」

志穂は自信たっぷりに胸を見せびらかす。
久美は自分の胸と志穂の胸を見比べていた。

「そ、そんな・・・いいなぁ・・・」

久美は羨ましそうに志穂の胸を見つめる。

「羨ましい?触ってみる?」
「え?!いいの?!」
「ええ、もちろん。」

志穂の提案に久美は嬉しそうに、そして羨ましそうに志穂の胸を触る。

「素敵ねぇ・・・いいなぁ・・・」
「いいでしょ?ふふふっ・・・」

志穂は夢中になって自分の胸を触る久美を見下ろしながら

(もっと羨ましがりなさい・・・その欲望、吸い取ってあげるわ・・・)

妖しい笑みを浮かべていた。