科学のチカラ その5

せい 作
Copyright 2013 by Sei All rights reserved.

「・・・祭りはいつなの?」

この世界で最も大きく、豪華な建造物。
その中でも最も広く、きらびやかな一室で、二人の女性が話しあう。

「はい。3日後でございます。」

呆れるほど高い天井、長く延びた赤い絨毯。
いくつかの階段の上にはこれまた豪華な椅子があり

「準備のほどは順調でございます。女王様。」

その椅子に座る人物は女王と呼ばれた。
その女王と呼ばれた女性の目の前には、恭しくかしずく女性がいる。

「そう・・・それで?例の件はどうなってるの?」

女王と呼ばれた女性は頬杖をつきながら話を聞く。
ただ、たったそれだけの動作でも彼女のとてつもない大きさを誇る乳房はその存在を誇示するかのように揺れる。

「そ、それが・・・さすがに『自分より胸の大きな女性には絶対に従う』・・・これをより厳しくしてしまうと民がなんと言うか・・・」

女王の質問に、女性は困った様子で返事をする。

「・・・なに?あなたその程度の胸で私に反論するわけ?」

だが、その言葉が不満だったのか、女王は眉をピクリと動かし語気を強める。

「い、いえ。そのようなつもりは・・・」

「だったらすぐに進めて。下がって良いわ。」

「し・・・承知いたしました。」

この世界において女王は絶対。
女性は顔を困らせたまま部屋を後にした。




時を同じくして

「志穂様、さっき町の人に聞いたんですけど、お祭りは3日後らしいですよ?」

今や都に住んでいる志穂と久美。
久美は志穂の身の回りの世話をしながら一緒に住んでいた。

「そう。楽しみ?」

「はい!私、今までお祭りに参加したこと無くて・・・その、胸が小さかったから・・・」

祭りは都で盛大に開かれる。
だが裏を返せば「都でのみ」開かれる。
今まで都に住んでいなかった、というより住むことが出来なかった久美は初めての祭りに心を躍らせていた。

「あら、私も初めてよ? どんな祭りなのかしらね。」

もちろんそれは志穂とて同じである。
志穂も初めての祭りに心を躍らせながらも、これから自分のやるべきことを心の中で確認していった。

すると

「・・・あら、どうしたの?」

「あ・・・いえ。」

急に久美が物悲しい表情を見せる。

「なに?何か嫌なことでもあった?」

関係はもはや主従の関係ながら、二人は元々幼馴染み。
志穂は久美のことを心配して声をかける。

「・・・いえ、理沙子(リサコ)のことを思い出しまして・・・」

「ああ・・・」


理沙子とは彼女達のもう一人の幼馴染みである。
だが彼女は志穂達が小さい頃に遠くへ引っ越してしまい、それっきりであった。
彼女も志穂達の幼馴染みというだけあって、胸が小さく、同じ都から遠く離れた町で暮らしていた。
だが、彼女の母親は娘とは正反対で、大きな胸の持ち主であった。
本来なら90cm以上・・・いや、もしかしたら都で暮らすことが出来たかも知れない。
しかし、それには理沙子が障害となった。

都などに住む女性が子供、とりわけ娘を産んだとする。
産まれたばかりの子供は当然胸が膨らんではいない。
だが、ほとんどの子供は親の遺伝か、順調に胸が膨らんでいき、そのまま都で暮らすことになる。
ただ稀にその枠にはまらない場合がある。娘の胸が成長しない場合である。
その場合、ある一定の年齢までは都に居ても構わないが、その年齢に達しても既定のバストにならなかった場合は、娘だけを都の外に出すか、親も一緒に都を出ることになる。

理沙子の家庭はまさにその場合であった。
それゆえ彼女は志穂や久美以上に自分の胸へ大きな劣等感を感じ、その上親、さらには周りの人間からも「あなたの胸が小さいから・・・」と揶揄されてきた。
そして、彼女はついに耐えられなくなったのか、親元を離れ、町をも出て行ってしまっていたのだ。


「・・・結局理沙子にはあれから会ってないわね。」

「ええ・・・もし会っていたら、私のように志穂様と一緒に都で暮らせたのに・・・」

どうやら久美は理沙子のことを思い出し、一緒に祭りへ行けなかったと悔しく思っていたようだ。

「理沙子・・・大丈夫でしょうか・・・」

久美が不安そうに志穂を見つめる。
その視線を受けて、志穂は久美を元気づけるべく

「大丈夫よ。きっとどこかで元気にやってるわ。今度の祭りは理沙子の分まで楽しみましょ?」

笑顔で答えた。




祭りの前日になり

志穂達は例の下着屋に足を運んでいた。
と言っても新しい下着を買いに来たのではなく、ただ単にあの店員と話をするためである。
あの店員、名前を杏奈(アンナ)というが、彼女は志穂が都で初めて会話をした女性なだけあってかすぐに仲良くなり、最近ではお互い下の名前で呼び合うことになった。

「あ、そうそう。今回の祭りにいらっしゃる重臣の方なんですけど。」

「ええ。わかったの?」

店の奥で机を囲んで話す3人。
話は杏奈から始まった。

「それが・・・今回は結構お城の中でも位の高い人がいらっしゃるらしくて・・・なんでもバストが300近いとか。」

「杏奈さん、それホント?」

「おそらく・・・それにしても、志穂さんの倍以上ですもんね・・・」

杏奈は志穂の胸をチラと見ながら300cm近い胸を想像する。
久美はその話を聞きながら自分の胸に手を当て、300cmがどんなもんか考えている。

「でも、ということは・・・女王の胸はそれよりも大きいってことよね。」

志穂は聞いた話から新たな情報を引き出そうとする。

「そう・・・なりますね。しかも今回いらっしゃる方もお城の中で女王様の次に位が高いというわけでも無いみたいですし・・・」

ということはまだまだ上がいると言うことだ。
まだその重臣の胸を見たわけではないが、おそらく相当な大きさだろう。

(・・・どうにかして会えないかしらね・・・)

志穂は自分の夢を叶えるべく考えを巡らせる。
そこで

「・・・杏奈さんは今まで重臣の人と話したことあるの?」

志穂は遠回しに直接話す機会があるかを聞くことにした。
杏奈にはまだ自分の過去を話していない。もちろんつい最近都に来たことも。
もしそのようなことが知られたらどうやってそこまで胸を大きくしたのか問い詰められかねない。

「それが・・・私はまだ無いんですが、噂によると結構いろいろなところを一人で歩き回られているらしいですよ?もしかしたらばったり出会うかも・・・」

「そうなの?」

「ええ。でも、自分から捜しに行くぐらいじゃないと会わなさそうですけどね。なんたって都中の人が集まるんですから。」

それだけ聞くと志穂は再び考えを巡らせる。
杏奈は久美と話を続けているようだ。

(ってことは、注意深く捜せば会えるかも知れないわね・・・いいえ、またとないチャンスだもの。絶対に会ってみせるわ。)


それから3人は他愛も無い話も織り交ぜつつ、翌日の祭りを待つことになった。