科学のチカラ その16

せい 作
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「志穂さんっ!!!!!」

と、その時理沙子の後ろから志穂を呼ぶ大きな声が上がる。
それと同時に

「なっ!なにをしてっ・・・ああっ!!」

彼女が伸ばした手によって、理沙子の頭からあのティアラが転げ落ちた。

「このぉっ!!誰よ一体!この私に刃向かうなんてっ!」

「きゃあぁっ!!」

理沙子が怒り狂い、背後からの襲撃者の腕を掴みあげてる間も、ティアラはコロコロと転がって階段を落ちていく。
随分と精巧に作っているのだろう。多少の衝撃にはビクともしないまま階段を下り・・・

「・・・・・・・」

志穂の目の前でそれは止まった。


「志穂さんっ!!早くそれを壊してっ!!女王様を止めて下さいっ!!」

「黙りなさいっ!!っくぅぅ・・・貧乳のクセに、よくも私の邪魔をしてくれたわねっ!!」


志穂は無言でそのティアラを拾い上げると、『貧乳』と呼ばれた女が誰かを確認した。


「・・・恵美花・・・・・」

その女は、あの丘で出会った重鎮の一人・・・恵美花であった。

「あなた、あっちの会議用の扉から来たのねっ!?まさか城の中に鼠が潜んでただなんてぇ・・・ちょっと!誰かいないのっ!?」

理沙子が半ばヒステリック気味に叫ぶ。


だが、不思議なことに誰からも反応は無い。
部屋の中の兵士たちがあのおびただしい量のエネルギーによる恐怖で再起不能なのは分かる。
しかし、そうでなくとも城の中にはまだ兵士・・・少なくとも重鎮たちは・・・



「・・・あっ!!」

と、そこで理沙子は昨日の大臣の台詞を思い出した。

――――明日は各重鎮たちによる僻地への視察がございます。ほぼ全ての重鎮と多くの兵士が城からで払う形になりますので、公務は行いませんが御注意願います。

・・・志穂を囲むための兵士で城の中に残された兵を全て使いきり、大臣は近くで再起不能。重鎮は皆僻地に移動し、それと共に兵士も移動。


「っくううぅぅぅ!!」

そして、たまたま祭りの後処理が終わり、一人戻って来たのだろう恵美花に背後を取られ、この始末。

(油断したっ・・・!!)

そう思うのもまさに『後の祭り』。状況は大きく揺らいでいた。


「志穂さん、早くっ!!女王・・・この女が動かないうちに早くっ!!」

「うるさい、うるさい!うるさぁい!!志穂、とにかくそれを返しなさいっ!!今すぐ、さあっ!!」

理沙子が凄身をきかせるが、ティアラの無い彼女はただ胸の大きな女性なだけであまり心に響かない。
いや、響かないと言ったら嘘になるか。だが、今の志穂は彼女と同じぐらいの乳房を持っており、先程まで遥かに遥かに強大な恐怖と闘っていたのだ。


「・・・・・理沙子。」

志穂はかつての友の名を呟きながら、手に持ったティアラをこわ・・・・・さなかった。

それどころか、そのティアラをゆっくりと自分の頭の上にのせていく。


「志穂さん・・・志穂さんっ!?どうしてっ!?」

恵美花の信じられないという視線を無視して、彼女はティアラをゆっくりと降ろす。
恵美花から見たらティアラを使う人間が理沙子から志穂に変わっただけだ。恐怖を感じるのに変わりは無い。

「あははははっ!!志穂、あなたも結局チカラが欲しいだけなの!?単純ね!あはははははっ!!」

何を思ったのか、理沙子が急に笑い出す。
その度に腕を掴まれた恵美花が体を揺さぶられ、くぐもった声をあげる。

「でも、残念でしたぁ♪そのティアラの台座は私が特別に作ったの。効果を発揮するのは『世界で一番胸の大きな女性だけ』ってね。」

そう言っている間に、志穂はティアラを頭にのせる。
しかし、理沙子の言う通りティアラは一向に輝かず、ただただ美しい宝石をあしらった冠が頭の上にあるばかり。

「ね?言ったでしょ?そのティアラは女王しか使えないの。ほらほら、言って御覧なさい?あなたのおっぱいのサイズ。」

「・・・568cm。」

「ざーんねんっ!惜しかったわねぇ〜。私、570cmなの。あと2cm。ほんのこーんだけっ!・・・でも、私の勝ちは勝ち・・・」

そう言うと、理沙子は恵美花をドンと突き飛ばして、ゆっくりと立ち上がる。


「・・・さぁ、これで分かったでしょ?それを持つべきは私。それを使うのは私なの。それともどうする?今ここで2cmだけおっぱい大きくする?」

馬鹿にしたように両手で自らの乳房を揺らす理沙子。
その姿を見て、俯いた志穂は




「・・・ええ。そうするわ。」


「・・・・・へっ?」

理沙子が素っ頓狂な声をあげる。
まさか本当にそうするとは思えなかったのか。

「・・・っぷ、あはははははっ!!馬鹿じゃないのっ!?あなたの切り札である『機械』はココにあるのよっ!?それに、起動条件も対象もいじってあって・・・」

と、その時、志穂が例の含みを持ったニヤリとした笑みを浮かべる。
そして・・・


「・・・理沙子、これ・・・なんだと思う?」

彼女は自らの胸の谷間に手を突っ込んで、中から箱状の物を取り出す。
それには何やらボタンやらレバーやらが取りつけてあり、志穂と同じく科学に明るい理沙子は冷静に分析していた。

「・・・なにかを・・・遠隔操作する、装置?」

「そう。私はこれを『万能リモコン』って呼んでるんだけどね。まだまだ試作型だから、そんなに遠くまでは操作出来ないんだけど・・・あ、周波数を登録すれば別よ?でも、その機械はあなたがいじっちゃったじゃない?」

そうこう言いながらもリモコンのレバーをどんどん合わせていく志穂。
そして、一度大きく息を吸うと


「・・・ここからその機械まで・・・・・20mも離れて無いわよね?」

「なっ!!ま、まさかっ!?」

大仰に言ってみせると、流石に理沙子も慌て始めた。

「あなた、使用者権限を奪うつもり!?そんなこと出来るわけが・・・」

「それが出来るのよねぇ・・・空調機器って、遠隔操作できるからこそ便利だとは思わない?」

あれ便利なのよ〜、とニヤニヤしながら説明する志穂に対して、理沙子は真っ青な顔に汗を浮かべはじめる。

「そ、そそ、そうなの・・・あ、あのね志穂。私、あなたに謝ろうと思ってた事があってね?」

「あら、何かしら?」

「ほ、ほら!さっき『可愛がってあげる』なんて生意気なこと言ったじゃない?あれ冗談だから!本当は、志穂と一緒にこの世界をよりよくしようと思っててね?」

必死に話を続ける理沙子を尻目に、志穂はレバーの調節を済ませる。

「だ、だからね?それやめて頂戴?あなたはかなりの待遇で・・・そ、そうだ!ほら、久美も杏奈も返すわっ!それに・・・この機械の権限も返すっ!これでいくらでもおっぱい大きく出来るわよ?でも、その前にティアラを返してほしいな〜、なんて・・・」

理沙子の話を華麗に無視しながら、志穂は電源へと指を伸ばす。


「・・・言いたいことはそれだけ?」

「ま、待って!!志穂っ!!いや、志穂様っ!!待って下さい・・・私の、私の話を聞いて・・・」

「悪いけど」

と、志穂が理沙子の話を遮って言い放つ。



「科学って、正義のためにあると思わない?まぁ、私が言えた口じゃ無いかも知れないけど・・・大丈夫、安心して?私が、あなたが作った科学までまとめてぜーんぶ・・・正義のために使ってあげるから。」

「あ、ああぁ・・・そん、な・・・・・・」

完全敗北を悟った理沙子が、その場にヘナヘナと座り込む。
その姿を見た志穂は、満面の笑みを浮かべ


「それじゃあ改めて。『椅子を貰いに来ました』。」



電源を・・・・・入れた。




――――・・・ドクンッ!!

爆発か、と思った。
それほどのものが、自分の胸の奥に一気に流れ込んできた。

「はぁぐっ!!?!?! あはああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」


『大きいわねぇ、あの人の胸・・・』
『いいなぁ、私のおっぱいも、もっと大きくならないかなぁ』
『女王様のおっぱいって・・・これぐらい?いや、もっとかしら・・・すごいわぁ』
『むぅ・・・羨ましい。あんなに揺らしちゃって・・・見せつけてるのかしら?』
『やった!3cm増えたっ!この調子でどんどん大きくするんだからっ!』
『悔しい・・・たった2ヶ月会わないだけで、+15cmですって!?どんな手品よ・・・あぁ、羨ましい』


世界中の胸への思い、欲望、嫉妬が集まってくる。
そしてその一つ一つが胸の中に溶け込んでいき、まるで両の乳房が心臓になったかのように「ドクンッ!!ドクンッ!!」と脈動する。

そして

「お、おっぱいがぁ・・・おっぱいが、爆発するうううううううううううううぅぅぅぅぅぅ!!!」

――――ググッ!ググググリュリュリュリュリュリュリュリュ!!!!!

中で何かが蠢くように、栄養を糧に育つように、外へ外へと張り出していく。
その動きは「ドクンッ!!ドクンッ!!」という脈動にも合わせていくこととなり、常に大きくなりながらもその脈動の部分だけ一際大きく「グググッ!!グググリュ!!」と膨らんでいく。


それと同時に

――――キイイイイイイイイイイイイィィィィィィィィィィン!!!!

頭上のティアラが激しく輝きだす。
2cmという矮小な隔たりは一瞬で埋まり、彼女が『世界で一番乳房の大きい女』になった瞬間はあっけなく訪れた。

「あくううぅぅぅぅ!!!ふひゃああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

胸が膨らむ、膨らむ、膨らむ!膨らむ!!膨らむ!!!膨らむ!!!!
力が漲る、漲る、漲る!漲る!!漲る!!!漲る!!!!

――――グゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・ッブチィッ!!

杏奈が丹精込めて作ってくれた丈夫なブラジャーも意味をなさず、内側からの膨大な圧力に耐えきることは出来なかった。
そして、戒めを解かれた乳房はさらなる世界を求めて内側から暴れ出す。


「こ、こんなのりゃめええええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇ!!おかしゅく、おかしぃくなるううううううううううううううううううううううぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!」

――――グリュリュ、グリュリュリュゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・

「あふぅいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいぃぃぃぃぃぁぁぁぁああああああああ!!!」

――――ゴゴゴゴっ、グリュリュブリュリュリュリュリュリュリュリュ!!!

「ら、めぇ・・・ひぎっ!!っくひゃああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

――――ゴゴリュリュリュリュリュリュリュリュ、ドクンッ!!ドクンッ!!!ドクンドクンドクンッッ!!!!!

「ああっ、あがぁ・・・あががががががががががががががががががががががががっ!!!」



頭の中は乳白色一色。
全身が快感。何があろうと関係はない。


部屋の中では

ミーーーーーー!!!ミーーーーーー!!!ミーーーーーー!!!ミーーーーーー!!!

と、機械の警告音のようなものが響くが、その大音量の音さえも耳に入って来ない。


「そ、そんな・・・そんな、そんなぁ!!!」

理沙子の絶望の声。

「志穂さんっ!!お気を確かにっ!!」

理沙子に突き飛ばされ、部屋の隅から見つめる恵美花の叫び声。

「あ、あああぁ・・・・・」

「し、ほ・・・・さま・・・・・」

理沙子の傍で焦点の定まらない目で元主人だった女性を見つめ、涙を流す久美、杏奈。


だが、全てが聞こえない。
目の前を埋め尽くすのは乳、乳、乳。
頭の中はミルク色。そして、焼け焦げるようなとてつもない快感。


「ああ・・・あはははっ・・・あはははははははっ・・・あーはははははははははははははははははははははははははははははっ!!!!」


楽しい。
嬉しい。
気持ちいい。
きもちいい。
キモチイイ。


それら全てが彼女を埋め尽くしていく。

――――ドックン!!!!!ドッックン!!!!!!

ミーーーーーー!!!ミーーーーーー!!!ミーーーーーー!!!ミーーーーーー!!!

「気持ちいい・・・気持ちいい気持ちいい気持ちいい気持ちいい気持ちいい気持ちいいいぃぃぃ!!!!」

様々な音が部屋の中に響き渡り・・・


「ああっ・・・いや、来ないで・・・来ないでぇ!!」


理沙子の元に段々と巨大な巨大な肉塊が膨らみながら迫り・・・






「キ、ンキュウ・・・・・テイ・・・シ・・・・・・シマ、マママママ・・・・・・」

壊れたラジオのような機械音が聞こえた後

―――――・・・ボンッ!!

小さな爆発音と共に、肉宴は終わりを迎えた。