「・・・ねぇ、由利。いったいどういうことかなぁ・・・」
「・・・・・・」
朱音の家を後にした二人は、揃って今日の彼女について考えていた。
いきなり息子と言い張る少年が登場。触ることも許されない。
無くなった薬。朱音にしては下手な嘘。そして、入れてもらえない研究室の奥の部屋。
一気に増えた多くの謎の共通点を探す。
「ねぇ、由利。由利ってば!」
「ごめん、沙紀ちゃん。ちょっと静かにしてて。」
「・・・・・・はぁ。」
昔から深く考えることが苦手な沙紀は、逸る気持ちもあってか由利に多く話しかけるも、かえってそれが邪魔になる。
由利の一喝に静かになった沙紀だが、代わりに溜め息が一つ口から洩れた。
(優太君が息子・・・なのは間違いなさそうね。疑う証拠が無いもの。まだ確証は無いけど・・・おそらく何らかの原因があって、息子に・・・)
沙紀とは対照的に、由利は昔から思慮深い人間であり、今回のように深く考えるのが得意だ。
数秒おきに聞こえる沙紀の溜息を聞き流しながら思考を進めていく。
(あの様子からして、優太君の事を溺愛している・・・?でも、今までそんな様子は無かった。)
まるで大きな山を少しずつ崩すかのように順に予想を立てていく。
その結果
(それに、あの無くなった薬・・・あれってひっくり返したって言うか、中身だけどこかに消えた感じよね?でも、どこに?出来上がった薬を流しに捨てるわけ無いし、それだったら嘘なんかつかずに正直に言うはず。だったら・・・・・あっ!!)
由利が何かに気がついた。
「ね、ねぇっ!!沙紀ちゃん!!」
「わぁっ!びっくりしたぁ・・・な、なに?」
突然の大声に驚いた沙紀が目を丸くするが、由利はそんなことお構いなしに質問を始めた。
「沙紀ちゃんが朱音ちゃんに頼んだ薬ってなんだっけ!?」
「え、えっと・・・『惚れ薬』かな?」
「よね?で、私のが3つで・・・そうかっ!!」
由利の中で謎が繋がっていく。
これなら説明がつく。というか、これしか考えられない。
「なにか分かったの?」
「沙紀ちゃん・・・おそらくだけど、朱音ちゃん・・・私達が頼んだ薬、全部飲んでるかも知れない。」
「え、えぇぇっ!?なんでよっ!?」
到底思いつかない由利の発言に、沙紀は大声を出す。
しかし、由利は対照的に深刻な顔を浮かべ、説明を始めた。
「・・・まず、私が前に頼んだ二つの薬があるんだけど、これは朱音ちゃんが飲んだのか、優太君が飲んだのかは分からないわ。見た目じゃ判断できない。」
「う、うん・・・」
「でも、私が今回頼んだ『母性が湧いてくる薬』。これは確実に朱音ちゃんが飲んでる。それで、朱音ちゃんはあんなに優太君のことを溺愛してるのよ。」
「なるほど・・・」
確かにそれなら納得がいく。
あの溺愛っぷりは見ていて恥ずかしいぐらいだったし、薬のせいと考えると分かりやすかった。
しかし
「・・・でもさ、だったらなんで私達に優太君を抱っこさせてくれなかったの?それどころか『触るな』って・・・」
そこが納得出来ない。
ただ単に母性が湧いているだけなら、そんなこと言うはずが無い。
むしろ他人の腕に抱かれる我が子を愛でるぐらいの器量が出てくるだろう。
だが、朱音は違った。
自分以外の人間に少年を抱かせることを・・・いや、触らせることでさえ許そうとしない。
それは『母性』という一言だけでは到底解決出来るものでは無かったが
「それはきっと・・・沙紀ちゃんが頼んだ『惚れ薬』のせいね。」
由利はそれを論破してみせる。
「えっ、私の?」
「そう。おそらくだけど、朱音ちゃんはその『惚れ薬』のせいで優太君にメロメロなのよ。そこにさらに私が今回頼んだ薬が合わさって・・・」
「・・・それで、あんな反応を示した、ってこと?」
「おそらくね。」
幸か不幸か。二人が同時に頼んだ薬が見事に作用しあい、あの病的なまでの朱音の反応を作りだした。
母親が愛する我が子に注ぐ無償の愛。その深い深い愛情と共に重なるのが、好きな相手への異常なまでの独占欲。
それらが綿密に重なったせいで、朱音は狂ってしまったのだ。
しかも、厄介なのが
「・・・じゃあ、どうやったら元に戻るの?」
「それが・・・わからないわ。」
この問題である。
今回の場合、薬がその原因なのだとしたら、朱音にいくら声をかけても無駄である。
よって、解決策は
「でも、たぶんだけど、朱音ちゃんや優太君が飲んだお薬を中和する物があれば・・・そしてそれを飲んでくれたら、もしかしたら元に戻るかも。」
これしかなかった。
しかし、これにも問題が山積みである。
まず一つは、朱音や優太にそれをどう飲ませるかという問題。
あの様子からして、今彼女はかなり周りに神経質になっている。
そんな彼女に薬を服用させることなど出来るだろうか。
二つ目に、その薬の開発はどうするのかという問題。
近所の医師に頼むにしても、どんな材料かが分からない。
これを解決するためにも、もう一度朱音の家に行って薬をほんの一滴でも採取する必要があるかも知れない。
そして、一番問題なのが
「・・・そんなの作れるの?だって、朱音は天才だよ?ちょっと勉強をかじったぐらいじゃ対抗できそうにないよ?」
「そこなのよね・・・」
この問題。
こと化学的な知識においては天才と言える朱音だ。そんな彼女が発明した薬に誰が対抗できるのか。
付け焼刃の薬では対抗できないかもしれない。というよりむしろ、既に彼女が先回りしてその対抗に対する対抗を施しているとも考えられる。
つまり、現状ではどうにも対抗できそうになかった。
「・・・とにかく、一度帰りましょう。じっくり考える必要があるわ。」
「う、うん・・・」
二人は急に訪れた問題から、友人を救うべく考えを巡らせることとなった。
「・・・やっと帰った。」
玄関戸を閉めた朱音は、厳重に鍵をかける。
そのついでに家中の扉や窓に鍵をかけ、誰も家に侵入できないようにする。
研究室に入ると、その研究室の扉に鍵をかけ、さらに奥の寝室に入ると、その扉に鍵をかけ。
そして、全ての扉や窓に鍵をかけ終えると
「・・・優くん、もういいわよ?」
愛する我が子に声をかけ、目と耳の自己拘束の任を解く。
「・・・ママ、どうしたの?時々大きい声出してたみたいだけど。」
「あぁ・・・優くんったら、ママを心配してくれてるの?嬉しいなぁ・・・」
朱音は少年の頭を腕に抱くと、ぎゅぅぅぅ・・・っと胸におしつける。
あくまで少年が苦しまない強さで。それでいてこの溢れんばかりの愛情がしっかり伝わるように。
「大きい声だしてごめんね?うるさかったね。でも・・・これで優くんを狙う悪い虫は居なくなったからね。」
と、優太が抱きしめの拘束から頭だけを出すことに成功し、朱音の目を見上げてくる。
「虫?虫が居たの?」
「ええ。大きい虫が2匹も。」
「そんなに?じゃあ僕刺されてたかも知れないの?」
想像して少し怖くなったのか、眉尻を下げる優太。
それを見た朱音が、柔らかい笑みと共に彼の頭を撫でながら
「ふふっ・・・大丈夫。優くんはママがずぅ〜っと守ってあげるから。それに、虫が優くんを刺したら・・・その時は虫以下になるだけよ。」
狂気じみた瞳を浮かべる。
対して優太は自分を永遠に守ってくれる者が現れて嬉しいのか、自分から朱音の胸に頭を潜らせていった。
朱音はそれが可愛くてたまらない。思わずまた抱きしめてしまう。
すると
(んっ・・・またおっぱいが・・・)
胸が張る・・・というより『乳が張る』。
胸の奥がジュンジュンと熱を持っていき、先っぽの乳首へと向けてその熱が動いていく。
今度のそれは先程の物より激しく、胸の奥から奥から滾々と湧き出る泉のように熱が生み出される。
それと同時に、乳房がパンパンになっていく感覚が分かる。
彼女の小さな膨らみは、いつしかその全体が熱を持ち、ふよふよと柔らかいものからムチムチとした張りのあるものへと変化していった。
それに気がついたのか、優太が顔を上げる。
「・・・ママ、なんだかおっぱいがムクムクしてるよ?」
「ムクムク?ぽかぽかじゃなくて?」
熱が伝わっているのなら『ぽかぽか』の方が適切な擬態語のはずだ。
だが、少年は首を振る。
「ううん。ムクムクしてる。ぽかぽかもしてるけど、ドクドクしながらムクムクしてるの。」
ドクドクしながらムクムク・・・擬態語が多すぎて良く伝わらない。
・・・とりあえず言われるがまま自分の目で確認するべく、一度少年を自分の胸から離す必要があった。
「・・・優くん、ちょっとごめんね?」
「んぇ?う、うん・・・」
甘えられる存在が居なくなったのが残念なのか、優太は少し戸惑いを見せながらもベッドの上にチョコンと座った。
朱音はその隙に姿見の前に立ち、着ていた白衣を脱いで下着姿になる。
そこには
(・・・あれ?ブラが合ってない・・・・・)
パッドを入れてギリギリAカップに収まるぐらいの大きさしかなかった乳房だが、姿見に映った胸部はブラジャーが少し浮き上がっていた。
良く分からないまま、中にあったパッドを取り出すとピッタリに・・・ならない。
まだほんの少しだが余裕が足りない。
どういうことかと悩んだその時
「・・・ママぁ。」
少年の暇そうで寂しそうな、それでいて母親を心配するような声が聞こえる。
「あぁっ、ごめんね?」
それを聞いて焦りを覚えたのか、パッドは取り出したままで白衣を着ようと
――――・・・ジュン
――――ドクンッ
――――・・・ムクッ
突然胸を襲う3つの衝撃。
胸の奥に湧き出た熱。続く脈動。そして、さらに張る乳房。
その様子を姿見でくまなく見ていた朱音は、ブラジャーの謎が解ける原因を発見した。
(今、ムクッておっぱいが大きくなった・・・よね?)
視線を降ろすと、僅かながらも先程より隆起した乳房が、ほんの少しながらもAカップのブラジャーを押し上げていた。
しかも優太が背後から声をかけた直後に、である。あの時自分に起こったことと言えば、自分を求める優太に対する『かわいい』という感情のみ。
だが、この感情と、目の前で起こった現象が朱音の頭に一つの閃きを導かせる。
(ってことは・・・やっぱり『母性が湧くと母乳がでる』ってのは本当なのね!そして、それに合わせて胸も大きくなって・・・)
そう考えると、良い事ずくめである。
なにしろ、無限に湧く母性なのだ。ということはつまり、母乳も無限に湧き、乳房も無限に大きくなる。
この『世界』において、これほど素晴らしい状況など他にない。
その上、自分がやることと言えば、あのかわいいかわいい優太に愛情を注ぐだけ。たったそれだけで乳が張って母乳が湧いて出る。まさに願ったり叶ったりだ。
(でも、どうしてこんなに急にムクッて大きくなったのかしら・・・)
本来なら、妊娠を機に脳内からホルモンが分泌されて胸が大きくなって・・・という順序を踏むはずである。
だが、自分は妊娠していない。にもかかわらずそれと大差ない変化が起こった。
ここから導き出せる答えと言えば
(あまりに大量に母性が湧いて出たから、擬似的に妊娠状態・・・しかも常になってるってこと?じゃあ、私の体は今ホルモンがどんどん出て・・・)
これしか考えられなかった。
そして、そういう事だとすると
(これは・・・新しい薬を作る必要がありそうね。)
これを利用しない手は無かった。
「ママ、またお仕事?」
優太を膝に乗せ、新たな薬の開発を進める。
今回開発する薬は2つ。
一つは『分泌された例のホルモンの作用する点を、全て胸部に向ける』もの。
これにより、間接的に薬で母乳を大量に出すことが出来る。
しかも、この薬が効果を示すのは母乳そのものではない。よって、毎月の測定にも引っかかることは無い。
出てくる母乳は新鮮そのもの。この薬を飲んだら、早速優太に授乳してあげよう。
そして、もう一つが・・・
「あ、こらこら優くん。火傷しちゃうわよ?」
と、優太が興味本位に実験用のバーナーに手を伸ばす。
それを注意してやると
「えへっ、ごめんなさ〜い。」
かまって貰って嬉しいのか、満足したように抱きついてきた。
それを頭を撫でることであやしながら、薬と向き合う。
既に材料は入れた。あとは完成を待つのみだ。
朱音は優太の頭を撫でながら、その時を待った。
「・・・出来た。」
夕刻、それは完成した。
二つの薬。その内右側にあるフラスコに入ったピンク色の液体を、朱音は躊躇いも無く口に運んだ。
――――・・・ゴクッ・・・ゴクッ・・・
眠たくなったのか、優太は既に胸の中で寝息を立てている。
左手で彼の頭を支えながら、右手だけでフラスコを傾けていく。
そして、全てを飲みきると
「っぷぁぁ・・・ふぅ。さぁて、どうなるかしら・・・」
少年を起こさないよう、フラスコをゆっくりと置き、自分の胸を見る。
今はまだ目立った反応は無く、やはりAカップのブラでは若干苦しいぐらい。
試しに、かわいい優太をあやしてみる。
「・・・優くん・・・優くぅ〜ん・・・」
すると
――――・・・ドクンッ!!
「うわっ、熱い・・・うふふふっ、来た来たぁ♪」
胸の奥がどんどん熱を帯びていくのが分かる。
それと共に、ジュンジュンではなくドクドクと母乳が作られる感覚。
そのあまりの生産の激しさに
――――ップシャ!!
「あららら・・・溢れちゃった。」
ついには乳首が耐えきれなくなり、母乳を噴き出してしまった。
――――プシャァァァ・・・ジュワァァァァァァァ・・・・・
母乳パッドもつけていないままのブラジャーでは耐えきれず、表面までじんわりと濡れていく。
それでもなお母乳は作られ、胸もムクムクと大きくなっていく。
「っくぅ・・・きついわね。外しちゃいましょうか。」
器用に右腕だけで背中のホックを外すと、戒めを解かれた乳房がぷるんと微かに震える。
だが、胸の成長は続く。心臓の脈動と共に「ムクッ、ムクリッ」と膨らんでいき、寝ている優太の顔を少しずつ押し上げていく。
「ふぁっ、ああぁぁ・・・大きくなってるぅ・・・いいわ、そのままどんどん膨らんで・・・」
すると、胸が大きくなるにつれて、母乳を溜めるタンクの容量が大きくなったというのか、溢れ出ていく母乳の量が少なくなってきた。
しかし母乳は未だに少しずつではあるがジュクジュクと湧きだしている。
と、その時
「・・・んぅぅ・・・・・」
異変に気がついたのか、優太が目を覚ました。
「あら、優くん起こしちゃった?」
朱音の声を聞いてもなお、寝ぼけているのか目をしきりに擦る。
そんな今がチャンスとばかりに、朱音はさらなる行動に出る。
「・・・ほら、喉が渇いたでしょ?これ飲んで。」
「ん・・・え、あ・・・うん。」
ぽけーっとした優太の目の前に差し出されたのは青色の液体が入ったフラスコ。
優太は寝ぼけたまま、朱音に言われるがままにその薬を口に含んだ。
「・・・ック、ン・・・ック。」
「そうそう。全部飲んでね?」
喉は渇いていたのだろう。結構な勢いで飲み干していく。
そして、全てを飲みきったあと
「・・・はい。よく出来ました。」
朱音が空になったフラスコを受け取り、優太の瞼がゆっくりと閉じられるのを確認する。
そして、再び優太の瞼が開かれる。
その目は微かに濁っていて、どこを向いているのか分からない。
朱音はそれを確認すると、一気に用意していたセリフを言い放った。
「優くん。優くんはママの事が大好きなの。大好きで大好きでたまらないくらい。だからいっぱいいっぱ〜い甘えて過ごすんだよ。
でね?ママのおっぱいが大好きでね?もういくらでも飲めちゃうって感じなの。他の女のおっぱいだとなぜかすぐ分かっちゃって、飲まないの。美味しくないから。
それで、えっと・・・そうそう。ママ以外の人はとっても怖いの。他の人に抱っこされると怖くて、なんだかとっても寂しくて、すぐママの事呼んじゃって、泣きついて来るんだよ?そうすると安心なの。
でもね、ママが『この人は安心』って言えば怖く無くなるのよ?それでも一番はママ。ママと他の人が抱っこしてあげるって言ったら迷わずママを選んじゃうの。
う〜ん・・・むしろ、優くんはママ以外の人が」
とそこで優太の目が再び閉じられる。
「怖いって言うか大嫌いで・・・って、もう終わりか。」
朱音が優太に飲ませたのは『催眠の薬』。
飲んだ後に目が開かれ、その間に言われたことが心に沁みついていく。
再び目が閉じられると、それが時間切れの合図で、それ以前に言われたことまでが効果として現れる。
この薬、作ってみたはいいものの、おそらく今回限りだろう。
というのも、この薬は脳に直接作用するため体の中で抵抗が作られてしまう。
それはどう考えても回避することが出来ないため、一度きりなのである。
「・・・まぁ、いいか。言いたいことは大体言ったし。」
再び目を閉じて、安らかに眠る優太を見つめながら、笑みをこぼす。
彼が再び目を開けた時、催眠は効果を発揮して、おそらく彼は自分に全力で甘えてくることだろう。
それを考えると今からでも胸の奥がジュンジュン熱くなっていき、母乳が溢れ、胸が膨らむ。
既に彼女の乳房はやんわりと手で包める程に膨らんで、もう少し大きくなれば沙紀の胸に追いつきそうな勢いだった。
だが、母乳はその限りでは無い。朱音の胸はほとんどが母乳であると言っても過言では無いくらいで、現時点でも数リットルは母乳を出すことが出来るだろう。
「ゆっくりお休み・・・優くん。」
朱音は今もプシャプシャと母乳を噴き続ける胸に愛する我が子を抱いて、起こさない程度に頭を撫で続ける。
体は自然と前後に揺れ、彼専用の揺り籠を作り、安らかな眠りを誘いだす。
カーテンから漏れ出た橙色の西日が、少年の髪を輝かせていた。
「・・・ん、んぅ?」
ほとんど陽も落ち、時刻は午後7時頃。
遅い昼寝を終えた優太が目を覚ました。
「あっ・・・優くん起きた?」
小さい欠伸をしながら、目を擦る姿がなんとも可愛らしい。
と、少年がまどろんでいた目を開け、朱音の姿を捉えると
「ママぁ!!」
喜びの声を上げながら、思い切り抱きついてきた。
それはつまりあの薬がきちんと効果を発揮しているということであり、そのせいか
「んん〜・・・♪」
グリグリと、まるでマーキングするかのように頭を擦りつけてくる優太。
『これは僕の物だ』と言わんばかりの熱烈な求愛に
「あはぁぁぁぁ 優くぅん・・・」
――――・・・ムクッ、ムククッ
強烈に母性が刺激され、胸が膨らんでいく。
さらに、胸が膨らむということは母乳が溜まっていくということであり
――――プシャッ!プシュワァァァァ・・・
「うきゃぅ!!」
「あぁっ、ご、ごめんね優くん!?おっぱいが溢れちゃって・・・」
急に勢いを増して飛びだした母乳が優太の顔にかかり、驚きの声があがる。
朱音が慌てて彼の顔についた自分の母乳を指で拭き取っていく。
と、その時
「・・・あむっ!」
「きゃぁっ!!ゆ、優くん?どうしたの?」
朱音の母乳がたっぷりついた指を、優太が突然口に咥えてしまった。
さらには
「・・・ンジュ、ジュ・・・ジュウゥゥ・・・」
その指を舐めとるだけではなく、音を立てて吸い始める。
意味が分からず、されるがままの朱音だが
――――くぅぅ〜〜・・・
少年のものと思われる、可愛らしいお腹の音を聞いて納得した。
照れ隠しなのだろうか、優太がこちらを上目づかいで見上げてくる。
その目からは『誰のせいでお腹が鳴ったと思ってるんだ』という非難の念も微かに見え、子どもらしい意見に思わず笑みがこぼれる。
「ふふふふっ。お腹が空いたの?優くん。だったら・・・」
未だに右手の人差し指から口を離そうとしない優太の顔に、左手で自分の左乳房を寄せていく。
「ほら、おっぱいよ。お腹いっぱい飲んでいいわ。」
優太の反応を見てみると、彼はチラチラと自分の顔に寄せられた乳房・・・特に今もチョロチョロと母乳を出している桜色の乳首へと目を運んでいた。
「どうしたの?遠慮しないで。これからは、いつでもどこでも優くんの好きな時に飲んでいいのよ?」
と、その言葉に反応するかのように、優太が人差し指を解放した。
そして、躊躇いがちに
「・・・ホントに?ホントにいつでもどこでも?」
母親の許しを請うように、ポツリポツリと呟く。
「ええ、本当よ。さぁ、わかったら・・・」
「かぷっ!!」
「ひゃうっ!!も、もぉ・・・優くんったら。」
いきなり乳首を襲った刺激に思わず声を上げる。
優太は朱音の言葉を遮るように、差し出された左乳房へとかぶりついていた。
「ンジュッ・・・ン、ック・・・コクッ・・・」
しきりに喉を鳴らす優太。どうやら十分な量の母乳を与えられているらしい。
だが、こうしてみると自分の乳房に吸い付いてくる幼子というのは、なんとも小さくて、か弱くて
(可愛い・・・可愛い♪)
授乳によって母性が滾々と湧き出てくる。
それによって優太に吸われていない右乳房がパンパンに張っていくのが分かる。
(・・・そろそろ新しいブラを用意しなきゃね。おっぱいあげやすいように、フロントホックがいいかしら?)
微かに膨らんでいく右乳房。
左乳房は今優太が吸いついているのでハッキリは分からないが、体の感覚からして左乳房の母乳の生産量が多い気がする。
これも母性がなせる技なのか。吸われる方へと母乳の舵を取って、両方均一に胸が膨らんでいく。
(もう結構大きいものね・・・C?いや、Dはあるかな・・・)
万年Aカップだった胸が、ぷっくりと膨らんでいる。
確か記憶だと沙紀がFカップだかGカップ。由利にいたってはHカップかIカップだったはずだ。
だが、自分の胸はそれより小さいといえども、現在進行形で膨らんでいる。FやGなどたやすいだろう。
「・・・今からなら間に合うかしら。」
時計を見て、そう呟く。
近所の下着屋さん・・・ではなく、この際大きい下着屋さんの方がいいか。
となると、今から歩いて30分・・・閉店時間が8時だとすると・・・
「ギリギリね。行きましょうか。」
そう言って、優太を胸に抱いたまま立ち上がる。
急に朱音が動いたというのに、優太は器用にそれに合わせて、乳首から口を離そうとしない。
それどころか
「・・・優くん。ごめんけど、ちょっと放してくれる?」
白衣をきちんと羽織るためにも、優太が一度離れる必要があったが
「ん、んん〜〜!!」
体を離そうとすると、頭をイヤイヤと振って離れようとしない。
さらには
「んぅぅ!!」
――――カリッ
「痛っ!!優くん、乳首を噛んだらダメでしょ!?」
文字通り牙を剥いて抵抗をみせる。
叱ってはみたものの、やはり口を離そうとはしない。
もはや諦めるしか無かった。
「・・・仕方ない。この上から着ましょうか。」
朱音は優太を抱いたまま、器用に白衣を着ていく。
その流れで、研究室の窓を開け
「雨は・・・振ってないわね。」
外の様子を確認すると、窓を閉めた。
「・・・優くん、ちょっと暗くなるわよ。」
白衣の前面を大きく羽織ることで、胸もとに抱きつく少年を隠す。
傍から見ればかなり大きな乳房を持つ女性のように、胸元だけがこんもりと盛り上がっている。
だが、こうでもしなければ、大事な我が子を誰に見られるか分かったものではない。
「・・・それじゃあ行きましょうか。」
朱音はそのまま研究室から出ると、人目を気にしながら夜の道を歩くため家を後にした。
研究室の窓は、鍵が開けられたままだったことに気づかずに。