妹はお姉様

クサムラエチル(物語)・LRE's(挿し絵) 作
Copyright 2001,2003 by Kusamuraetiru (story)
Copyright 2007 by LRE's (picture)

 俺の名前は佐倉 大。高校2年の17才だ。実はいま深刻な悩みを一つ抱えている。
 自分で言うのも何だが割と整った方の顔のつくりだし、体のどこかが変というわけでもない。性癖だっていたってノーマルだ。ああ、俺の悩みはそんなことじゃないんだ。
 その悩みを説明するには話を二日ほどさかのぼらなきゃいけない。

「おにいちゃん、これなあに?これなあに?」
 TVで『それ往け 刺身パンマン(愛と勇気だけが友達と主題歌で公言する孤高のヒーローだ。)』を見ていた妹が、ソファーに座っている俺に身を乗り出して聞いてきた。
 佐倉 美宇。それが妹の名前だ。過小評価しても可愛い笑顔が俺を見つめている。といっても妹はまだ小学2年生なので色気なんかとはかけ離れた無邪気な、微笑ましい笑顔だ。
 妹の小さい手は妖しい色の液体の入った試験管をもてあそんでいる。
「ああ、それは親父が新しく開発した薬だそうだからあんまりいじるなよ」
 親父は業界最大手の製薬会社の研究室長をやっていて、たまに実験中の新薬を家にもって帰ったりする。
 それがたまに大爆発したりするから我が家は近所から『悪魔の棲む家』の異名をとってしまっている。
 親父は昨夜も夜の2時過ぎに帰ってきたと思ったら、今美宇のいじっている試験管をテーブルの上に置くとすぐに自分の部屋に引っ込んで寝てしまった。
 ――しっかし、我が実父ながらさっぱり分からない人だな。
 そんなことを思いながら、「ふーん、おとうさんのかあ」などと言いながら楽しそうに試験管を振ったりしている美宇から目を離し天井を見てる。と、キュポッ、という音がした。
 音のした方向を見ると、美宇が試験管の口をふさいでいたコルクを抜いた所だった。そしてその試験管を口元に運んで行く――
「バカ、やめろっ!!」
 そう叫んだ時にはもう遅かった。ゴクン、美宇ののどが嚥下するのがやけにゆっくり見えた。
 ――まずい、あの親父の造った薬をのんでしまった。あぁ、もう遅い。妹はたちまちの内にドロドロに溶けてしまうかどんなに運がよくても1ヶ月は意識不明だろう。くそう、俺がもっとしっかりし見ていれば
 しかし、薬を飲んだ妹の変化は俺の予想と全く違うものだった。
 (なぜか)妹の体が光に包まれると、その中でシルエット化した妹の体に劇的な変化がおとずれてゆく(一昔前の魔法少女みたいだな、とかなんとなく思った)。
 身体がゆっくりと大きく……いや、成長してゆく。ショートの髪は伸びてゆき、腰の辺りでそれ以上伸びるのをやめ、麗しく艶を放ちはじめた。
 安産型に膨らんだ尻から伸びる長い脚は、つけ根から太もも、太ももからひざ、ひざから足首と理想的なラインを描く。腰はある程度まで太くなると、それ以上太くなるのを拒んだ。
 しかし何よりも俺の目を引いたのは、胸の成長だ。どうしようもなく大きくなってゆく。ぺったんこだった美宇の胸が目に見えて大きく、大きく、更に大きく膨らんでゆく。1センチ……2センチ……3センチ……4、5、6……10センチ。
 まだ止まらない。……20センチ。プチンッ。服のボタンが物凄い勢いで弾け飛んで棚の花瓶に直撃、破壊した。それでもまだ胸の成長は……30……40……50…………
 目測だが、妹の乳房の膨らみは90センチメートルほどトップとアンダーに差をつけるまで膨らみ、ようやく成長をやめた。

 美宇を包んでいた光が消える。そこで俺が目にしたのは、特大のスイカがまだ小さく見える膨らみを二つ胸にもち、破れ伸びきって原型をとどめていない子ども用の衣服を申し訳程度にまとった妹……いや、お姉さまの姿だった。
 部屋のテレビからは刺身パンマンの次の番組『ウルト・ラマン(八つ裂き光輪というセンス抜群な名前の必殺技を持つ巨大ヒーローだ)』の主題歌が流れてきたが、それはどこか遠いところでの事に思えた。

 そして二日、現在に至る。親父いわくあの薬は植物の成長を促進させる薬の試作品で、人には言えないような実験をするため家に持って帰ってきていたのだそうだ。
 俺が「そんなもん子供の手の届く所に置いてんじゃねえ!!」と怒鳴ると澄ました顔でかえしやがった。
「売る時は注意書きが必要だな」
 売る気なのかこの野郎。
 現在親父は薬の効果をなくす薬を作り出すべく会社にカンヅメで研究している。昨日あった電話ではあと1ヶ月程で完成するそうだが、電話の切り際にこんなことを訊いてきた。
『希望小売価格はいくらくらいがいいと思うね息子よ』
 売る気なんだなこの野郎。
 今日は八月十日、しばらくは夏休みだからいいとしても、美宇の小学校の始業式は九月一日…………上から160・58・89の小学生なんて…………いないよなあ。
 夏休みの間に成長したってことにすれば…………不毛な思考は止めよう。
「おにいちゃん、おふろいいよ」
 妹――美宇が裸にバスタオルという非常に刺激的な格好で俺の前に出て来た。しっとり濡れた髪が、ほんのり火照った風呂上りの肌が、浮き出る身体のラインが大人の色気をまき散らしている。
 身体に巻いているのはだいぶ大きいバスタオルなのに、胸にほとんど布をとられて太ももはかなりキワドイところから露出している。それでも胸は覆い切れていない。
 さっき『おにいちゃん、いっしょにおふろはいろ』と言われた時はよく理性が勝ったものだ。
「おにいちゃん、おふろはいらないの?」
「あ、あぁ。もう少ししたら入るよ」
 今は立ち上がれない訳がある。
「はやくはいらないとおふろさめちゃうよぉ」
 急かすように美宇は俺の前で前かがみになる。160センチの谷間が視界を埋める。サービスカットもいいとこだが、だからそういう事をやられるとますます立ちにくくなるんだってば。あ、だからそんなところに手をかけないであんま上半身を揺らさないで無理に立たせようとしないでいいってば……ギャー。

 美宇は小さかったから覚えていないだろうが、美宇は親父の再婚相手の連れ子、つまり義理の妹なのだ。
 風呂に入りながら目を閉じると、なぜか今日の午後街まで美宇の服を買いにいった時のことが思いだされた。
 服を買うのがあんなには大変だったのは初めてだ。
 店にいく時美宇は俺の服を着ていたが(男装の麗人というのもどうしてなかなか――なに考えてんだか)、帰ってから見ると胸の部分が伸びきっていてもうきれなくなっていた。ついでにいうと、ズボンを履かせてみると美宇の脚は俺より長いとわかってショックだった。身長は俺より低いくせに。
 美宇は無邪気に俺の右腕を抱いていたが、完全に俺の手は柔らかい山二つにメリ込んでいた。美宇の顔は完全に大人の美人さんである。客観的に見てかなりインモラルな関係に見えなくも無い。変な奴らにからまれたらどうしようとか思ったが、そんなことはなかった。
 店に着いて服を選ぶが、妹はアニメのプリントされたTシャツが前から欲しかったらしく最後までだだをこねていた。
 それじゃ胸の半分もかくれないだろ。
 妹の選ぶ服は子供用ばかりなので俺が選ぶことにしたが、合うサイズのものがほとんどなくて大変だった。ブラのサイズはダブルOカップ。売ってるわけないので今は布を巻いて端を谷間の前で結ばせているが、幅広の布は水平に胸の中心線を覆うのが精一杯で布の上と下からは胸がハミ出ている。
 女性用服売り場を特大サイズ探してうろうろする男なんて変質者そのものだったんだろうなあ、と。

 風呂からあがって着替え居間に行くと、美宇があの「だっちゅーの」を俺に向かってやっていた。両腕が左右から胸を圧迫し、ただでさえ強調する必要もないくらい圧倒的存在感と質量、弾力性を誇るその大きな大きな胸が、更に強調される。

「ななな、何やってるんだ美、美、美宇」きっと顔は真っ赤だったろう。
「あはは、おにいちゃん、おかお、まっかっかだあ」やっぱり。
 邪な悪意なしの無邪気なイタズラ心でやってるから始末が悪い。
 今美宇の着ているパジャマは昨日買った3Lのやつだ。ボタンは無理やり全部を止められるが、ボタンとボタンの間は縦の楕円に歪み、そこから肌色の塊がはみだしている。
 ほかの部分はだぼだぼなのに、だ。
 俺の頭は暴発寸前になった。強調しておくが俺と美宇は血がつながってないのだ。
 そこにすかさず美宇が潤んだ瞳でこういった。
「あの、えっとね、おにいちゃん、きょう、みうといっしょにねてくれない?」
「ばばばばばばんばばん、バカなこというな」
「だって、さっきっこわいテレビみて……おねがい、あさまでいっしょにいてよぉ」
「一人で寝ろばか」
 半分自分にいいきかせる言葉だ。一息にいうと俺は自分の部屋へ向かった。
 今ごろ美宇は体育すわりでうなだれているだろうと思った。落ちこんだ時の美宇はいつもそうする。かわいそうだとは思ったが、これ以上いっしょにいると俺の理性はいつ切れるか分かったもんじゃないししょうがない。
 これ以上余計なことを考えなくてもいいようにベッドにはいると、自然につぶやきがもれる。
「親父……はやくしてくれよ」

 その頃、父は部下と呑んでいた。
「つまみがないぞつまみがぁ。おい小笠原くん。確かそこの冷凍庫にから揚げ入れてたから暖めてくれたまえ。これ室長命令」
「し、室長〜。この冷凍庫はサンプルを保存するためのですねぇ。それ以前にここはアルコールを摂取する場所じゃなくって……」
「おかたい事いいなさんなって。無礼講無礼講。プハァ〜、おい山田、芸だ、芸をしろ」
 目の据わった男が敬礼しながら答える。
「ウィィッス、不肖山田 健介二等研究員、こげパンダの物真似を」
「「「ツマラン!!」」」
 物真似の始まる前から山田に投げつけられまくる酒瓶、座布団、罵声と笑いとその他もろもろ。もんどりうって吹っ飛ぶ山田。なぜか沸く会場。

 居間で美宇は体育座りにうなだれておちこんでいた。今の体に発育するまではなんなくできた体育すわりだが、今はそうもいかない。膝で数キロの重さを押し上げなければならないからだ。押し上げられた胸は美宇の視界を完全に奪ってしまう。
 うなだれた顔は、弾力でわずかに押しかえされながら膨らみの上に乗っている。
 自分の吐く息を自分の胸に感じながら美宇は考えていた。
「おにいちゃん、なんでいっしょにねてくれないの……わたし、おにいちゃんのことだいすきなのに、だから、オッパイおおきくなったとき、これでおにいちゃんもわたしのことを、っておもったのに。 おとこのひとは、おおきいオッパイがいいってきいたから」
 にじんだ涙をぬぐう。
「それに、こわいテレビみたのもほんとうなのに……」
 しばらくそうしていたが、急に美宇は立ちあがった。その反動を受けて胸が大きくゆれ、パジャマのボタンが二つ飛んで行った。それにも構わずに自分の部屋へゆくと、自分の大きな片方の胸より小さいまくらをもって兄の――大の部屋へむかった。

 何か衣擦れの音がして俺が目を開けると、俺の顔に向かって膨大な体積をもつ肌色の山がふとんと擦れながら接近してきていた。俺の頭には腕が回されている。
 抱き枕よろしく美宇に抱かれているのだと分かるまで少し時間がかかった。両の太ももは俺の下半身を挟んでいる。
 美宇は、義理の妹は片方だけでも俺の頭よりデカい胸を俺の顔ににおしつけようとしていたのだ。
「バッ……美宇、やめろ!!」
「だって、だっておにいちゃんたら、わたし、とってもこわかったのに……ひとりでねろなんていうんだもん」
 涙声だった。これが演技だったらカエルが降るだろう。俺は思った。体は大きくなっても中身は小学2年生なのだ。明らかにつくりものの怖くない怖い話でも、胸が張り裂けそうな程不安になれる年齢なのだ。
 それで俺を頼ってきたのに、それを俺は……
 俺は美宇の抱擁から抜け出すと妹の手を握り、いった。
「これで……いいか?」
「おにいちゃん…………うんっ!」心底嬉しそうな声だった。

 時計の秒針の音が静かに響く。つないだ手からはぬくもりが伝わってくる。そろそろ美宇は寝たかなと思った時、
「おにいちゃぁん……あした、うみいこうよ」
 起きていたのか。ちなみに海へは30分も歩けば着く。美宇の水着姿を想像して顔を紅くした。
「お前、合う水着ないだろ」
「ううん、きのうかっておいたの。おとしだまつかって。あかいかわいいのだよ。おみせのひとがいってたけど、『ちょーびきに』っていうんだってねっ、いこうよ、うみ」
「……何で海なんだよ」
「あのねえ、おみずにはいるとかたがらくになるんだ。あとねえ、なんだかいまならおよげそうなきがするんだ。おみずにはいるとね、とってもからだがかるくなるの」
 胸が浮き袋になってるんだろうな、きっと。俺は寝返りをうって妹に背を向けるといった。手はつないだままだ。
「今度連れてってやるよ」
「おにいちゃん、だいすき!! でも、こんどっていつ?」
 美宇が俺の背中に抱き着いてきた。背中に押し付けられた美宇の胸は俺の背中を乗り越え、脇のしたにもその柔らかさを感じられた。何も言わず、俺は寝たふりを決めこんだ。
「おにいちゃん、こんどっていつ? ねえ、おにいちゃぁん」
 半分は不満そうに、半分は嬉しそうに妹が俺を揺する。それに応じて胸も俺の背中でユサユサと揺れ動いているのがわかった。
「親父……本当に早くしてくれ」

 その頃、父はモニタの前に座っていた。真剣な顔で考え込んでいる。画面には二つの選択肢。
『誘う』
『誘わない』
 男にはやらなければいけない時があるのだ松本先生。大決断。『誘う』
 モニタに表示されてたアニメ美少女の絵が変わる。
『ごめんなさい、お友達に噂されると恥ずかしいから……』
「むぉお、わしでは、このわしでは役不足だというのかー!!」
 もだえ苦しむ父。なぜか盛り上がるギャラリー。
「やっぱ彼女を一番に落とすのは俺のようだな」
「フン、寝言は寝て言えぼうや。彼女、画面の中から俺を見る目が違ってたぜ。こりゃ決まりだな」
「ちょ、ちょっとアンタたち、研究所のパソコンでそういう事はやめてくださいって何度も……」
 セリフの途中で父が口を挟んだ。
「おう小笠原くん。そういう事ってどういう事か言ってくれないと分からんよわし馬鹿だから」
「れ、恋愛、恋愛シュミレ…………うぅ〜、セクハラですっ!!」
 今どき国宝級に純真なお嬢さんな小笠原 素子一等研究員は身を翻して走り去ってゆく。
 右手を振り上げ父が叫んだ。
「さぁ野郎ども。一番先に彼女を落とすのはだれだぁ!?」
 わきあがる歓声。宴はまだ終わらない。

 おにいちゃんこと佐倉 大の心の叫びは、少なくともここには届いてないようだった。

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