恋愛悪魔の双六(サキュバス・マップ)。
人の愛や恋にひどく執着している狂った悪魔が作った双六。
マスに書かれた出来事は悪魔の力によって成就され、ゴールのマスに辿り着いた者には”何か”、特別な”何か”を手に入れるらしい。
高校1年生の僕、遠藤隼人(えんどうはやと)がそれを知ったのは、5月半ばの事でした。
5月半ば、僕の所属している部活、黒魔法同好会の部長である高校2年生の氷室彩(ひむろあや)部長が恋愛悪魔の双六を持ってきた。
艶のある長い黒髪と、ほどほどの大きさの胸を持った彩部長が、黒いボードマップを広げる。そして、広げたボードマップをテーブルの上に置く。
彩「とっても、面白そうでしょ?悪魔の作った双六なんて、これ以上面白そうな事はないですよ!」
ーそんな事じゃなくても、面白い事は世界に溢れていると思いますよ?
そう僕は言った。
彩「良いじゃん!良いじゃん!こう言うのは、楽しんだもの勝ちですよ!ほら、エリスちゃんも乗り気そうじゃないですか!」
ーエリスも?
ふと見ると、ボードマップが置かれたテーブルの前の椅子に同じ1年生の部員、クォーターの夕霧(ゆうぎり)・L・エリスが座っていた。
ブロンドの肩にかかるくらいの髪、同じ高校1年生とは思えないほどの低身長。学園の間で『ロリ姫』と呼ばれている少女は、スタート地点に3つのコマ(黒、青、金の3色)を置いている。
ーなあ、エリス。
エリス「隼人、やろ?」
ーやろ、って……。
なんで彩部長やエリスは、こんな怪しそうな物に簡単に手を出せるのだろうか?まあ、彩部長は持ってきた当人なので、警戒もしてないのだろうが……。
彩「さあ、さあ!やりましょ、やりましょ!」
ー……分かりましたよ。
僕は半分諦めモードで、椅子に座る。
順番は彩部長から始まり、エリス、僕の順みたいです。
彩「じゃあ、行きますよ!てい!」
彩部長は大きな掛け声と共に、サイコロを振る。サイコロは回転して、『3』の目を出す。そして3つのコマのうち、黒いコマをスタートから3マス進ませる。
コマが置かれた瞬間、ボードマップの真ん中のガラスが光り始めた。そして、文字のような物が出て来る。
ーおお。
エリス「本物っぽい……」
ガラスにはこう書かれた。
『胸が大きくなる』と書かれていた。
彩「……あん!」
いきなり彩部長が喘ぎ声を上げ始めた。僕が急いでかけよると、彩部長の胸が膨らみ始めた。
彩「あ……!いやあ!だめえええええ!」
彩部長の胸は、常人とはかけ離れた胸になった。その大きすぎる胸のせいで、服は肌けてボタンは飛び散っている。
彩「……はあ、はあ。凄い、これが悪魔の力、なのね」
ーまあ、普通で無い事は確かだね。
悪魔の力に感心していると、
エリス「てい」
エリスがサイコロを振る掛け声が聞こえた。
ーうぇ?
エリス「5」
エリスはサイコロの目を見て、その数5つ分金色のコマを進ませる。
金色のコマを5マス目まで進ませると、また鏡が光り始める。
『15歳まで急成長』。そう鏡に書かれている。
ーは?どういう意味ですか?これ?
彩「エリスちゃんって、15歳だよね?」
彩部長が聞くと、エリスもこくこくと頷く。
確かにエリスは低身長で『ロリ姫』と呼ばれている。けれども、エリスは飛び級している訳でも年齢詐称している訳でもないんですけど。
鏡の良く分からない文章の意味について考えていると、
エリス「……ッ!」
エリスの顔が苦痛に歪んでいく。すると、いきなりエリスの身長が伸び始めた。かなりの低身長だったエリスの身体が、ぐんぐんと伸びて行く。そして、僕の首辺りで成長は止まった。
僕はそれほどの高身長とは言えませんが、普通の人並みはあるつもりです。そんな僕の首辺りの身長という事は、女性としてはかなりの高身長だ。
エリス「……あん!胸が……!」
エリスがそんな声を上げると、いきなりエリスの胸が膨らみ始める。あの低身長にぴったりの胸は、今の身長に相応しい爆乳へと変わった。
エリス「……はあ、はあ。何、これ?」
ーいったい、どう言う事だ?エリス、お前はもしかして年齢詐称でもしてるのか?
エリスは首を振る。……でしょうね。あの文字はなんだったんでしょう?
彩「分かった!」
ー分かった、って何が?
彩「クォーターやハーフは早熟って言うでしょ?」
ああ、なるほど。
ーつまり悪魔から見て、エリスの身体は子供っぽいって事か。
僕がそう言うと、エリスが物凄い勢いでアッパーを繰り出した。
物凄い力のアッパーによって、僕は椅子から転がり落ちる。
ー痛ぇ……。
エリス「悪魔も、隼人も、ひどい」
エリスはそっぽを向ける。僕は痛む身体に鞭打って、椅子に座る。
彩「さあ!次は隼人君の番だよ!」
ー……はいはい。
早くやらないと、彩部長に怒られてしまいエリスに睨まれると言う事態に陥りそうだ。
ー……仕方ない。
僕は覚悟を決めて、サイコロを振った。