恋愛悪魔の双六 3回休み

帝国城摂政 作
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兄上の様子が可笑しい。
家に帰ってから、ずっと何かを抱えているように見える。


昨日は、あまり良い日とは言えなかった。
姉上は兄上の協力によって、大人な身体つきへと変貌を遂げていた。その時は猫耳もあったんですが、朝には猫耳は消えていました。大人な身体つきはそのままでしたけれども……。
それで私もやるように頼もうとはしたのですが、その頃には兄上も伸びてしまっていたので。私の身体はそのまま。


月「〜♪お兄ちゃんの〜、力で私は〜、大人に〜♪」


姉上は横で浮かれているので、兄上の変化には気付いていないようですね。全く……。


ーごちそうさん。


花見「……お粗末さまでした」


兄上は食器を水につけて、上へ行ってしまわれた。
追いかけたいのは山々だが、まずは食器の後片付けが先だと思い、キッチンへと向かった。

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基本、家事は主婦である母上、遠藤粉雪と私、遠藤花見の両名で行っていて。
昨日は、母上が父上と温泉旅行に行ってしまわれたために私一人でしたので、時間がかかりました。
しかし、今日は兄上の奴隷(と名乗る人物)、ハートさんの手助けによって、スムーズになっている。昨日は奴隷の手助けなんて借りるかと思いましたが、こんな事ならば昨日も頼むべきでした。


ハート「……で、おふた方に告白されたマスター・隼人は固まってしまい。とりあえず、私が胸をお貸しして帰って来たわけです」


そうやって、随分と大きめの胸を張るハートさん。


花見「そこは肩だと思います」


と、私は言う。
……そうか。原因はあの2人か。


兄上と同じ部活に所属する2人。氷室彩と夕霧・L・エリス。
顔だけは写真で拝見させてもらったが、まさか同時に兄上に告白するとは……。


花見「兄上の心情も、少しは考慮して欲しかったです」


兄上を困らせて、何が楽しいのでしょう。


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意外と早く終わった食器の後片付け。私は1人で風呂に入る。
姉上?あの女はお風呂でゆっくり出来ない側の人間なので、私は1人でお風呂に入っているのです。


花見「どうにかしませんと……」


私の夢は兄上の愛人。兄と妹は決して、結ばれない。
だからこそ私は、兄上の愛人で居られるだけ。それだけで満足できる。
兄上と交わるだけで、ただそれだけで満足できる。
結婚出来なくて良い。ただ、兄上と繋がっていたい。


花見「でも……」


今の私の身体は、自分で言うのもなんですが……女としての魅力に欠ける。
徹底的に、爆発的に、徹頭徹尾、欠けている。
今、私が言った彩さんとエリスさんは、兄上の話だと『恋愛悪魔の双六』によって、とてもむ、胸も大きい魅力的な姿へと変身を遂げたらしいです。
それに比べて今の私は、


花見「……」


あえて言葉にはしませんが、理解してもらえると嬉しいです。


ちょっと前にこんな本があった。
神社の息子である主人公は、女性の胸を揉んでその女性のスタイルを変える能力を持っていた。ある日、彼は幼なじみの地味系の少女に告白されて、その女性を揉んで物凄い美少女に変える。そんな本。
あの本って主人公の視点で書かれていたから、その幼なじみの女性が何を考えているかは分からない。私もそんな本があるって事を知っているだけで詳しくは知らないけれども……。


花見「彼女は何を考えていたんでしょうかね……」


今の私は、これから同じ事を兄上にされる。だから、彼女の気持ちを考えてみました。でも……全然分からな……い。


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ーおいおい。大丈夫か?


花見「……ん?兄……上……?」


目が覚めると、兄上の顔が近くにあった。とても端正な顔が目の前にある。私は顔が少し赤くなるのを感じながら、周りを見渡す。
どうやらベッドで横になっていたようです。お風呂に入ってからの記憶がないんですけど……。


ー大丈夫?月の話によると、お風呂でのぼせてしまったようだよ。


花見「のぼせて……?」


ああ、そうですか。私、お風呂で考え事をしていて、そのままのぼせてしまったんですよね……。


花見「もう大丈夫です。兄上、心配してくれてありがとうございました」


私は深々と、兄上に頭を下げた。


ーあ、いや……。別にそこまで気にしなくて、大丈夫だよ?僕はちょっと見たてだけだし……。


兄上は恥ずかしいのか、顔を横に向ける。
でも、私は知っている。きっと兄上は心配で、ずっと横で見てたんでしょうね……。兄上は優しい人ですから。


ー起きたのなら、月とハートに無事であった事を伝えてくるよ。


そう言って、兄上が部屋を出て行こうとしていたのを、私は咄嗟に腕を掴んでいた。