恋愛悪魔のカメラ(サキュバス・カメラ)。
人の愛や恋にひどく執着している狂った悪魔が作ったカメラ。
このカメラには不思議な力が宿っており……。
高校1年生の僕、二階堂匠(にかいどうたくみ)は異常なまでなカメラ好きである。
具体的に言えば……………ネットで見つけた怪しげなカメラを即決で決めるくらいに。
「いやっほーい!」
この前、ネットで見つけた中古品。『恋愛悪魔のカメラ』、中古品で1万円する品を見つけて速攻で買ったのが、今日届いたのである。
「いやはやどんな奴かなぁ……?」
開けてみて僕は驚いた。
そこにあったのは、他で売ってるカメラとなんら変わらないデジタルカメラであった。他と違う点と言えばどこか全体的に色が桃色である事と、カメラの電池とフィルムを入れる部分ががっちりと開けられないように固定されている事であろう。
そして、一番の他のカメラと違う点。
「これ、なんだ?」
”悪魔モード”。
静画モード、動画モードに並ぶように、悪魔モードと謎のモードが存在していた。
「良く分からないな……。試し撮りでもしてみるか」
そう思い、モードを悪魔モードと言う謎めいたモードにセットして差し当っては、観葉植物でも取ろうとしてシャッターを切る。
しかし、
「……あれ?」
シャッターが切れない。
どう言った物かとデジタル画面を覗くと、
『対象が見当たりません』
と書かれている。
どうやらこのカメラ、特定の物しか対象に出来ないみたいだ。
観葉植物がダメとなると恐らく、物はダメなのだろう。
じゃあ、人は?
試しに外を歩くサラリーマン男性に画面を合わせるも、変わる気配はない。
「まぁ、このモードの事は後で考えるとして。あいつの元に行くか」
僕はそう言いながら隣の家、有栖川家へと向かっていた。
有栖川家、そこには幼なじみの女性が居る。
とは言っても、小学生だけれども……。
「入るぞぉ」
一応、勝手知ったる家だけれども、礼は大切なので挨拶をしておいた。
「いらっしゃーい、匠お兄ちゃん♪」
中から可愛らしい女の子が現れた。
姫カットの可愛らしい女の子。
有栖川姫乃(ありすがわひめの)。小学校2年生。
僕をお兄ちゃんと呼ぶ可愛らしい女の子だ。
「お兄ちゃん、それが変なカメラ?」
と、姫乃ちゃんは僕の持ってきた『恋愛悪魔のカメラ』に興味を示す。
そう、姫乃ちゃんと僕は約束をしていた。
このカメラの試し撮りに姫乃ちゃんを取るって……。
だから、取るために来たのである。
(まぁ、とりあえず静画モードで)
静画モードに変えようとして、僕はモニターを見て驚いていた。
なにせ、姫乃ちゃんに照準が合わさっていたからである。
「どうなってんだ?」
「……ん?どうかしたの?匠お兄ちゃん?」
なんか怪しんだ様子で、彼女はそう言う。
「いや、なんでもないよ」
そう言って、僕は写真を撮った。
パシャ。
新品でも出ない光が、その場を包む。
「うっ……!」
どうなっているんだ。
ふと写真を見ると、
「誰、これ?」
デジタル画面には姫乃ちゃんそっくりの女性がいた。
いや、姫乃ちゃんじゃない。姫乃ちゃんをもう少し大人にしたような、そんな顔の女性の写真だ。
それに気を取られてる暇は無かった。
「あぁ……ん!……お兄ちゃ……ん」
姫乃の顔が、写真通りの顔に変わっていく。少し大人びた17歳くらいの姫カットの女性だ。
そして、体付きも変わっていく。腕がぐぐっと長く伸び、足も伸びていく。
女の子らしい丸みをおびた感じの体つきになっていき、さらに尻も前の倍くらい、身体にあった大きさになる。
「あぁ……ん!」
そして、一番びっくりしたのは彼女の胸である。
小学校2年らしいAカップは、今まで出会った事のない、見た事のないほどの大きさになる。
「J、いやKか?
と、ともかく大丈夫か?姫乃ちゃん?」
そう僕が聞くと、
「ふふ。何可愛らしい事を言ってるんです、”匠君”。
いつものように、姫乃で良いですよ」
そう言いながら、大人びた姫乃ちゃんは小悪魔な女性の笑みを浮かべて、僕を押し倒してのしかかる。
「お、おい!姫乃ちゃん!」
「ふふ。”姫乃ちゃん”、懐かしい呼び方ですね。昔、”小学校2年生”くらいの頃は聞いてたけど。
もう”高校1年”なんだから、そんな呼び方は無いんじゃないの?」
小悪魔な笑みを浮かべて、ふふふと笑いながら彼女、姫乃ちゃん(?)は迫ってくる。
「お姉さんが、大人な事を教えてあ・げ・る」
ゆっくり迫ってくる姫乃ちゃん(!?)に危機感を覚えた僕は、そのままカメラを持って逃げ出した。
……帰ってみると、何故か姫乃ちゃんは高校1年でクラスメイトであると、クラスメイトに電話でそう断言された。
どうなってんだ、いったい?