次の日の朝、僕は姫野と共に一緒に学校へと向かっていた。昨日の出来事はどうやら夢では無かったようで、歩いている最中ずっと顔を少し赤らめながら僕の横を並びながら歩いていた。昨日揉んだ豊満な胸はそんな中もゆっくりと歩きに合わせて揺れていた。
(最近、どうなっているんだろう?)
昔からカメラについては人一倍情熱を持っていた僕で、確かに少なからず胸の大きな女性を撮ってきたこともある。勿論、ちゃんと許可は取っていますけれども。
そんな中もこれまでのように、露骨に胸のみにシャッターを合わせた事はないし、その胸を揉んだ機会も揉もうと思った事もない。ちゃんと理性を持って行動していた。だから、最近の僕はおかしいと言えばおかしい。
この恋愛悪魔のカメラを手に入れてからの僕は何か可笑しい。
(まさか……本当に悪魔が憑いているとか? いやいや、まさかな。悪魔なんて非日常的な存在がいるなんて……)
このカメラ、いったい何なんだろう。
「匠、昨日の事なんだけど……」
「あっ、えっとそれは……」
姫野の言葉に僕は言い淀んでいると、
「匠……。会えて……嬉しい……」
ムギュ、っと背後から大きな胸の感触が僕の頭に重みとなってのしかかる。頭の上にあるのに、まるで母親に抱かれているかのようなその感触に、僕はすぐに前に飛びのいて後ろを振り向く。そこには名残惜しそうな顔をしている金山凛香さんの姿があった。
「一日振り……。おはよう、匠……」
彼女は寂しげな表情でそう言いながら、僕の身体をその腕で抱きしめる。再び訪れる心地良い感触。
そう言えば、昨日は姫野の胸を触るなんて異常事態があって今の今まで忘れていたが、そもそもこの長身巨乳の甘えたがりと化した凛香さんをどうにかしようと思いながら、悩んでいたのだ。そして姫野の胸を触ってしまうなんて言う事件が……そう考えているうちにムニュ、っと新たに腕に温かい胸の感触が僕を包む。
もしかしてと思いながら、僕は顔を横に向けるとそこには顔を真っ赤に染めながら僕の腕をその大きな胸の中に入れるようにして押し込んでいる姫野の姿が。
「……わ、私の胸もどうかしら? 匠?」
「え、えっと柔らかくて良いと思うよ?」
「〜♪」
そう言うと共に、顔を赤らめながらも嬉しそうな顔を向ける彼女。その顔を見ているととても微笑ましい気持ちになる僕。
しかし、真上から黒いオーラが感じられる。これはもしかしなくても……凛香さんのオーラ? いや、これは結構、黒いオーラなのだが。
「……匠、私には何かある?」
「えっと、凛香さんのも僕は、い、良いと思うけれども」
「〜♪」
そう言うと共に、さっきまで感じていたおぞましいオーラは消え去り途端に微笑ましいオーラが僕を覆う。先程までが恐ろしい黒いオーラだとしたら、今は甘ったるい桃色のオーラとでも言うべきか。
どうやらこれで良いんだろうな。彼女の反応から察するに。
そして2人の爆乳女子高生達から胸の圧迫を受けながら、僕は学校の玄関へと歩いて行く。途中、他の生徒達から微笑ましい物でも見るかのような視線を感じていた。けれども、可笑しな事に一番あり得るはずの嫉妬に満ちた視線は無かった。どう言う事なのだろうか、これもこの『恋愛悪魔のカメラ』の効果だったりするのだろうか?
分からないな。このカメラにはまだまだ謎が多いから。
そして学校の下駄箱に辿り着き、ようやく巡るめく胸の感触から解放された僕は下駄箱を開けると上靴の上に見慣れない白い紙があることに気付く。紙の上には赤い大きな文字で【1人で確認してください】と書かれている。どうやら僕以外には読んで欲しくないらしい。
「……何だろうな、これ?」
僕はそう言って、二つ折りにされたその紙を僕は開く。開くとこのような文章が書かれていた。
【二階堂匠先輩へ
今日、お話ししたい事がありますのでもしよろしければ放課後、体育館裏に来てください。
京都より】
と書かれていた。
(これはもしや……あの噂のラブレター? ま、まさか貰う日が来るなんて……!)
と言うより、この【京都より】って、もしかして京都からこの手紙を送ったって意味なのか?
とりあえず僕は2人に見つからないようにして、その謎の京都から来た(?)ラブレターを鞄の中に入れて教室へ向かっていった。